「ハワード・スコット・ウォーショウ(Howard Scott Warshaw)」とは、1980年代に活躍したアメリカ合衆国のゲームデザイナー・プログラマーである。
ゲーム開発者を引退後は、映画プロデューサーを経て心理療法士として活動している。
「『オーマイガー。史上最低のゲームを作ってしまったんだね、隠れたくなっちゃわないの?』なんて揶揄されることはありません」
1957年7月30日生まれ。大学卒業後、ヒューレット・パッカードを経て、1981年に創業者ノーラン・ブッシュネルや副社長のアラン・アルコーンが離れ、レイモンド・カサールが指揮をとっていたアタリ社に入社した。
1982年、Cinematronics社のアーケード用STG「Star Castle」の移植作業を割り当てられたウォーショウだったが、アタリ2600の性能問題から移植作業が困難となった結果、突然変異したハエを主人公にしたSTGに作りかえてしまった。しかしテストの結果は好評で、「Yars' Revenge」のタイトルで売り出されると、アタリ2600の最高傑作と言われるまでの売り上げと高評価を記録した。
続いて映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のアタリ2600用ゲーム化の仕事を与えられたウォーショウは、1人用ながらコントローラーを2つ使用してアイテム操作とキャラ操作を行うアクションアドベンチャーゲームに仕上げ、こちらも商業的に大成功を収めた。
「僕はYars' Revengeを作ったあとにレイダース/失われたアーク《聖櫃》を作り、2つのゲームで大成功を収めました。この2つのゲームはミリオンセラーを達成しています。当時の僕は自分が関わったゲームは全て成功すると信じていました」
そして、コモドール64らと家庭用ゲーム機市場を争っていたアタリが映画「E.T.」ゲーム化の独占権獲得に成功すると、スティーヴン・スピルバーグからのリクエストという事もあり、ヒットメーカーのウォーショウが抜擢された。
なおアタリの親会社のワーナー主導で進められた版権交渉について、レイ・カサールは、
と考えていたが、この意向は無視して交渉は進められた。
しかし版権の獲得交渉に時間を費やした結果、クリスマス商戦に間に合わせる為に「Yars' Revenge」や「レイダース」開発に一人で4~7ヶ月かけていたウォーショウに対して与えられた開発期間は5週間ほどしかないという状況だった。
休む暇なく超短期間で社運を賭けたゲーム開発というハードな状況に折れなかったウォーショウは、映画のゲーム化ということでドットイートゲームなどありきたりゲーム内容にする事を良しとせず、主人公のE.T.がマップを探索して宇宙船のパーツを集めるストーリー性のあるパズルゲームとして完成させた。
※開発期間の短さから、それまでグラフィックもすべて自作していたウォーショウだったが、「E.T.」ではグラフィックデザイナーの「ジェローム・ドムラット(Jerome Domurat)」を起用して為、家庭用ゲーム機用ソフトでははじめてグラフィック担当者クレジットされたゲームとなった。
そして1982年のクリスマス商戦に投入されたアタリ2600用「E.T.」は150万本のセールスを記録した。
メッセージ類の無い探索ゲームというとっつきづらさや、穴に落ちるとゲームが進行不能になるバグの存在などもあって高評価とまではいかなかった「E.T.」だったが、市場を見誤ったアタリが400万本も生産していた為、150万本の売上でも半分以上在庫がさばけていない状況だった。結果、アタリは3億1000万ドル(当時のレートで約736億2800万円)の損失を出してしまい、親会社のワーナーの株価も大暴落してアタリ倒産のきっかけとなり、後にアタリショックと呼ばれるアメリカの家庭用ゲーム機市場崩壊のはじまりとなってしまった。
膨大な赤字をうみだしてした「E.T.」は、後年に史上最悪のゲームタイトル10本に選出されるなど「史上最低のゲーム」「アタリ崩壊のきっかけを作った伝説のクソゲー」と言われるようになり、売れ残った大量の在庫は、後に「ビデオゲームの墓場」と呼ばれるようになるニューメキシコ州の埋め立て地に他の在庫と共に埋められたという都市伝説が残った。
アタリを離れたウォーショウは、ゲーム開発者を辞めてドキュメンタリー映画制作の道へと進み、ロシア人のアメリカ移住を記録した映画「From There to Here: Scenes of Passage」や、アタリ倒産の経緯をたどる「Once Upon Atari」などのドキュメンタリー映画を制作した。
2011年にジョン・F・ケネディ大学で心理療法士の資格を取得。2013年には「Yars' Revenge」がニューヨーク近代美術館にビデオゲームコレクションとして収蔵される事が決まった。
そして2014年、ウォーショウも立ち会いの元、ニューメキシコ州の埋め立て地「ビデオゲームの墓場」の発掘が行われ、埋められていたアタリ2600用「E.T.」等が掘り出されて都市伝説ではなくリアルの出来事であった事が証明された。その際掘り出された「E.T.」にはeBayで400ドルもの値がつけられた。
「今もこのゲームが話題になることに、私はとても感情的になる」
「なぜなら、私はいまだにこのゲームが話題の中心になることにとても大きな意味があると感じているからです。「『E.T.』のゲームは失敗ですか?」と皆が質問してくることを私は気にしていないし、私にとっては決して失敗作ではありません」
とインタビューに答えている。
前記の通り、ウォーショウ自身はアタリ2600用ゲームのヒット作を数本手掛けていた実績もあり、「E.T.」については超短期な開発スケジュールを押し付けたうえに、利益優先で市場を見誤った本数生産してしまったアタリの経営陣の問題の方が大きかったといえる。
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最終更新:2025/12/08(月) 18:00
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