予後不良とは、治療後の回復が見込めないことである。
本項では競走馬(主にサラブレッド)の予後不良について述べる。
※人間の医療で患者の容態を「予後不良」と表現する場合は「後遺症が残る」など「理想的な治療の経過を経ない」ことも含めての意味となる。後述する競走馬のそれと異なり「生命の危機」の意味だけではないし、生命の危機を示す場合でも人間の場合安楽死は通常の場合許されていない。このため「人間の医療しか知らない」人と「競馬の用語しか知らない」人の間でこの単語を使うとコミュニケーションに齟齬をきたすことがあり、注意を要する。
ダービースタリオンについて語るスレ#12 |
競走馬は500㌔前後の馬体重があり、その自重を常に4本脚で支えなければならない。
ガラスの脚と呼ばれるほど華奢な脚で全馬体重をギリギリで支えている。
3本脚で自重を支えることは不可能に近く、前脚・後脚とわずに重度の故障をしてしまえば他脚にも弊害(蹄葉炎と呼ばれる、簡単にいえば血行不良等により馬の蹄等が腐っていくような症状)が起こってしまう。痛みによって暴れたり、最終的には衰弱死して死んでしまう。
「体重を支えられないなら寝かせてやったり天井から吊るしたりプールに浮かべてやればいい」と思うかもしれない。だが、馬の脚とは厄介なもので、体重が適度にかかり続けないと蹄への血行が維持できないつくりになっている。したがってこの場合でもやはり蹄葉炎の発症を避けることが極めて困難なことに変わりがない。また、草食動物である馬は長い腸管を持っており、適度な歩行運動を続けていないと容易に腸捻転や溜まったガスによる胃破裂を起こしてしまう。
さらに、そもそも論として馬は「治療方針」を理解できないので、「なぜ安静にしていなければならないのか」もわからない。すると馬にとってはそれは「理不尽に拘束されている」のと何も違いがないので、過大なストレスを溜め込み暴れて怪我をさらに悪化させてしまう(上記の理由から麻酔で眠らせ続けるわけにもいかない)。
よって、重度の故障を発生した競走馬の治療は、高額の費用を注ぎ込んでも期待した結果を得る可能性は(ビンゴガルー、ヤマニングローバル、サクラローレル、ミルリーフ、ヌレイエフなどの例外もあるものの)ほぼゼロに等しく、治療の間に馬に与える肉体的・精神的苦痛も甚大なものになる。したがって、故障が発生した時点で速やかに安楽死をさせることが最善とされている。
「重度の故障」の主な原因は「重度の骨折」か「重度の脱臼」の2つがほとんどである(下記の馬も全てどちらかに分類されている)。骨折は大体想像がつくが、脱臼について解説しておくと、自動車並みのスピードで走っている馬がレース中に脱臼すると、人間のように骨だけ脱臼、ということはまずあり得ず、靱帯等を損傷するか(関節脱臼)、皮膚を突き破るか(開放性脱臼)してしまう。これだけ大きな脱臼になると元に戻すことは現在の医学では非常に困難なのである。
競走中の出来事に「予後不良」と書かれている場合と、「死亡」と書かれている場合があるが、この2つは明確に異なる。前者は、診断の段階では生きており、その後安楽死処分を行ったというもので、後者は診断の段階ですでに死んでいたということである(例えば2021年3月28日のレースに関して言えば、マーチステークスでベストタッチダウンは急性心不全で死亡しているのに対し、阪神第2レース(3歳未勝利)でゴースルーザルーフは開放骨折で予後不良の診断が下されている)。また、多くの場合、競走中に故障が発生したら競走中止になることが多いが、完走してしまうこともあり、「完走したのに予後不良」ということも起きる(ラブエターナルは2021年3月13日中京第2レース(3歳未勝利)で最下位で入線後、予後不良と診断されている)。こういう場合、「競走中止」ではなく「競走中疾病」のところに記述される。当然、レース直前の故障で予後不良になれば「競走除外」のところに記述されるはずである。
ハマノパレードは安楽死ではなく、発症から一昼夜激痛に苦しませた末に屠殺場にて屠殺されてしまっている。「さくら肉『本日絞め』400㌔㌘」になるという当馬の末路が明るみになって反響を呼び、その後日本における予後不良の馬に対する安楽死のシステムが確立されるに至った。
ラフィアン・テンポイント・サクラスターオー・バーバロ・マティリアル・サンエイサンキューは馬主等の意向により延命治療が施された。
ラフィアンは最初の手術の際に暴れて患部を蹴ってしまい治療を断念。
他の3頭は最初の手術は一応通過し、延命治療が開始された。
テンポイントは最初の手術の段階での失敗が発覚し、そのためあっという間に蹄葉炎を発症したため、故障から約1ヶ月後にそのまま衰弱死した。
サクラスターオーは最初の段階では一応安定していたものの、半月後には早くも蹄葉炎発症の傾向が出始めたため、体重の減少やボルト埋め込み手術で蹄葉炎発症の回避を模索したものの、容体は良化せず、最終的には体重減による衰弱が原因で新たな故障を発症したため、故障から約4ヶ月半後にあらためて安楽死となった。
バーバロは故障から2ヶ月後に左後脚に蹄葉炎を発症したものの驚異の回復力で復帰。その翌月には歩く姿まで見せており、これは!・・・と思われたものの、その後左後脚と両前脚というトリプル蹄葉炎を発症。約8ヶ月という長き闘病も虚しく、あらためて安楽死となった。
マティリアルは手術は成功したものの、3日後にストレス性の出血性大腸炎を発症し安楽死されることとなったが、その実行前に出血性ショックで死亡した。
サンエイサンキューは2年間に及ぶ闘病生活で延べ6度に渡る手術を受け、蹄葉炎も併発しつつも一時は4本足で歩けるまでに快復したものの、最後の手術の5日後に心臓麻痺を起こし死亡した。
ホクトベガは日本国外で予後不良となったため、検疫の関係でその遺体を日本に持ち帰ることができなかった。
またレース中ではないが、アドマイヤキッスは調教中に右第3中手骨骨折が判明し、手術は成功したが静養中に疝痛で暴れた際に患部に新たな開放骨折を発症し、予後不良・安楽死となった。
予後不良になった最期のレースをまとめてみた。
ダビスタでの予後不良
掲示板
142 ななしのよっしん
2023/11/01(水) 19:34:09 ID: 8uiI+807yd
神様神様言ってはしゃいでる人には自分が応援している馬が事故で亡くなる経験を一度でもしてみろと言いたい。
143 ななしのよっしん
2024/02/26(月) 05:45:01 ID: OWAgsY/0bc
クリエイターの筆を折るのも予後不良って言うんだっけか?
折るのが仕事ってのも異常だけどね
144 ななしのよっしん
2024/04/07(日) 03:28:46 ID: Dp6XcbpjH7
名種牡馬のスウィンフォードは予後不良級の故障をしたがLivockなる獣医師の手腕で生存できたってのがウィキペディアやらに書いてあるけど、このリヴォックなる人物の詳細が海外サイトも巡って見たが分からぬ
競馬界に相当な貢献をした人と言えるだろうに
クリケット選手のジェラルド・リヴォックの父親は獣医だったってのと、1912年にマーチハウスに引っ越ししたウィリアム・リヴォックなる獣医師がいるってのは出て来たが、関係あるのかどうなのか……俺の英語力ではこれ以上分からん
史料に当たろうにもどれに当たればいいものか
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最終更新:2024/11/05(火) 13:00
最終更新:2024/11/05(火) 13:00
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