ゴーフォーワンド(Go for Wand)とは、1987年生まれのアメリカの元競走馬である。牝・鹿毛。
かつての最強牝馬にして全米の競馬ファンのトラウマ・ラフィアンの再来と謳われたが、運命とはかくも皮肉なものかと嘆きたくなるような結末を迎えることとなった。
父は当時売り出し中の種牡馬Deputy Minister、母はデラウェアH連覇など活躍した名馬で、この馬を生んだ時22歳という牝馬Obeah、母の父Cyaneという日本だといまいちピンと来ない感のある血統。ちなみに日本絡みの馬では*エンドスウィープの母父Dance Spellが半兄に、ブローザホーンの3代母*アサーテインが半姉にあたる。また彼女の4代母Aromaの半姉Feolaの曾孫にHighclereがいるため、一応ながらディープインパクトの遠戚でもある。
東海岸のベルモントパーク競馬場でデビュー。そのレースで4馬身ちぎると、続くアローワンス(一般競走)ではなんと18馬身ぶっちぎり。わけがわからないよ。
こうして、とんでもない牝馬がいると評判になり、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズへのステップとしてベルモントパークのGIフリゼットステークスに挑むが、既にGIを2勝していた*ステラマドリッド[1]に敗れ2着となってしまう。
しかし本番では2番人気となったもののきっちり巻き返し快勝、最優秀2歳牝馬に選ばれた。
3歳になっても止まらない。翔ぶが如くである。ケンタッキーオークスを見据えてキーンランド競馬場のGIIIで復帰するとこれまた快勝。同じくキーンランドのGIアッシュランドステークスも2着*シャロン[2]に5馬身付けて圧勝し、ケンタッキーオークスを1番人気(単勝1.4倍)で迎えるが、Seaside Attraction[3]に逃げ切られてまさかの2着に敗れてしまう。
しかし、東海岸に帰ると再び翔ぶが如き強さを発揮。GIばかり5戦し全て勝利。前半2つのGI(マザーグースS・テストS)で同世代はほぼ完全に負かし、アラバマステークスでは2分0秒8という牡牝混合戦でも滅多に見られない時計[4]で2着に7馬身差をつけて圧勝[5]。マスケットステークスとベルデイムステークスでは昨年のトリプルティアラ馬*オープンマインドを含めた東海岸のめぼしい古馬をも圧倒的スピードでねじ伏せ、もはや残されたライバルはただ一頭。
アルゼンチンから移籍して以来、重ねたGI勝利はアメリカだけで11勝、並ぶ者の無き西海岸の最強牝馬、バヤコアである。
そして、この2頭は1990年のブリーダーズカップディスタフで激突と相成った[6]。人気は僅かにゴーフォーワンドが先行。しかしBayakoaも僅差での2番人気。
ゲートが開くと勢い良く外からBayakoaが飛び出すが、内枠を利してゴーフォーワンドがハナを奪う。そして猛烈なペースで爆走する2頭。ただでさえ回避に次ぐ回避で7頭立てだったレースは既にマッチレースの様相となってしまった。
ハナを切るゴーフォーワンド、1馬身弱後ろからBayakoaがプレッシャーをかける展開が延々続き直線へ。直線に入りBayakoaも外から追いすがるが、内でゴーフォーワンドの脚色もいい。これは1988年のディスタフ並の名勝負だ! ブリーダーズカップ史に残る激戦になる! そう、皆が思った。
……残り200mで、ゴーフォーワンドの右前脚が砕け散るまでは。
結果として勝ったBayakoaが後続につけた差は7馬身近くあった。マッチレースに等しい、激しすぎる消耗戦であった。だがブリーダーズカップ史に残るはずだった名勝負は、翔ぶが如く駆け抜けた若き新星の葬送となってしまったのだった。レース後に新婚旅行に出発するはずだったウィリアム・バジェット・ジュニア師や、悲劇をまともに目の当たりにしてしまったファンの心痛は計り知れないものがある。
ちなみにBayakoaも7歳になった翌年は年齢のせいか、このレースで消耗しきったのか、はたまた事故を目の当たりにしたのがメンタルに響いたのか1勝も出来ずに引退している。
通算成績13戦10勝。負けた3戦もこのブリーダーズカップを除けば連対しており、「ラフィアンの再来」のあだ名にふさわしい快速牝馬であった。死後にエクリプス賞最優秀3歳牝馬を受賞している。
現在、ゴーフォーワンドは故郷サラトガで静かに眠っている。 その死後、マスケットSは「ゴーフォーワンドハンデキャップ」に改名され、本馬を記念するレースとなっている(現在のグレードはGIII)。
| Deputy Minister 1979 黒鹿毛 |
Vice Regent 1967 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
| Natalma | |||
| Victoria Regina | Manetrier | ||
| Victoriana | |||
| Mint Copy 1970 黒鹿毛 |
Bunty's Flight | Bunty Lawless | |
| Broomflight | |||
| Shakney | Jabneh | ||
| Grass Shack | |||
| Obeah 1965 鹿毛 FNo.2-f |
Cyane 1959 鹿毛 |
Turn-to | Royal Charger |
| Source Sucree | |||
| Your Game | Beau Pere | ||
| Winkle | |||
| Book of Verse 1956 鹿毛 |
One Count | Count Fleet | |
| Ace Card | |||
| Persian Maid | Tehran | ||
| Aroma |
2歳上の半姉*アサーテインの曾孫に2024年の宝塚記念を制したブローザホーンがいる。
掲示板
1 ななしのよっしん
2012/03/28(水) 18:55:29 ID: ajPjAdepHf
才能に満ち溢れた天才少女が、栄光を独り占めにしている女王に健気に挑戦するという場面は想像しやすいし面白い。
しかしあのような結末になるとは。
2 ななしのよっしん
2012/03/29(木) 22:46:30 ID: xmF9+knsKT
この馬といい、ラフィアンといい、日本のサイレンススズカといい、競馬にはこの手の事故はつき物とはいえやるせないな・・・
3 ななしのよっしん
2024/08/05(月) 21:31:45 ID: b1zghZPetr
ディープインパクトの遠縁だったの最近知った(4代母Aromaの半姉Feolaがディープインパクトの6代母)
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最終更新:2025/12/05(金) 17:00
最終更新:2025/12/05(金) 16:00
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