松倉重政とは (マツクラシゲマサとは) [単語記事]

「松倉重政」（まつくら・しげまさ 1574 ～ 1630）とは、戦国時代から江戸時代初期にかけて

「大和国五条藩（奈良県五條市）時代は名君」
「肥前国島原藩（長崎県島原市）時代は暴君」

と評価が真っ二つに分かれている良い意味でも悪い意味でも築城の名人にして島原の乱の元凶であるキリシタン最狂の敵。

五條の名君

大和国の戦国大名筒井家の重臣で島左近と並ぶ筒井家の右近こと松倉重信の子に生まれる。

筒井順慶が没して跡を筒井定次が継いだ筒井家が大和から伊賀へと転封となると、父と共に伊賀に移り、その後、父の死に伴い20歳で家督と伊賀梁瀬城主の任と8000石の領地を継いだ。

関ヶ原の戦いの際は、主君・筒井定次と共に徳川家康の東軍に属し、井伊直政の指揮下に加わって活躍した。

その後の幕府側のでっちあげと言われる筒井定次の改易により、松倉重政も伊賀の所領を失ったが、関ヶ原の戦いで武功を挙げて徳川家康に覚えられていた事から、大和国五条藩一万石の所領を与えられて大名に出世した。

※筒井定次の改易処分は、お約束の「悪政」「酒色に溺れて政務を省みない」といった駄目君主追放の基本テクニックが使われており、豊臣恩顧の家臣である筒井家を大坂近辺より排除する目的で理由をでっちあげたとする説がある。（その後、大和国には徳川外様の大物・藤堂高虎が入った）

五条藩一万石を与えられた松倉重政は、二見城（五條市二見）に入って8年程を城下の振興をはかり、商人を集める為に紀州街道沿いに「新町」を開設して商業と交通の要衝となる五條の礎を築き、松倉重政が肥前島原に移封された後に廃城となった二見城も、築城名人の松倉重政により、川岸段丘等の地形を巧みに利用した建築物であったといわれている。

この頃の功績により、現在の奈良県五條市では、松倉重政が「豊後守」を名のったことから「豊後様」として高い評価をうけており、新町には松倉重政の頌徳碑が建ち、江戸時代には松倉祭りや豊後祭りと称した感謝祭が行われて、名君として崇められていたと言われている。

五條藩の頃のきれいな松倉重政の逸話としては、大坂の陣の頃に大和郡山城を守っていた筒井定慶の小勢に対して大野治房が強襲をかけた際に、筒井定慶が逃げ出して後も郡山に残った友人・間宮光信の救援要請に対して松倉重政は、

友を置き捨てるのは侍の本意ではない

と、率いる兵は裸足で松倉重政自身もまともに甲冑をつけていないという大慌ての中で夜を徹して郡山まで駆けた奇襲により大坂方の兵は郡山より撤退したという、まだ名君の頃の脳筋武人らしさがにじみ出る話がある。

島原の暴君

大坂の陣での道明寺方面での活躍で、大和五条一万石から肥前日野江（後の島原藩）四万石に移封された松倉重政は、五條時代と同一人物なのか？と疑いたくなるような暴君振りを露にし、

一国一城制により、周辺の城を廃棄して島原城を建築する際に分不相応な壮大な城を築城した。
島原城の建設資金を捻出する為に、検地をやり直して石高を実際の倍以上に見積もって領民に厳しい税をかけた。
築城名人の腕を見込まれて依頼された公儀普請の資金を賄う為にありとあらゆるものに税を設定した。
有馬晴信の旧領だった為キリシタンが多かった島原において弾圧を行った。

といった建設資金捻出の為の無理矢理な税の設定と徴収や、当初は穏便だったキリシタン弾圧も、徳川家光の「お前何してんの？それじゃ甘いよ？改易されたいの？」な一喝により、徹底的な弾圧に切り替えて、信者の顔に「吉利支丹」の焼印を押したり、雲仙岳の熱湯を使用して拷問や処刑を敢行する等、没した際に宣教師から神の罰による狂死と言われる程の弾圧を行った。