派遣社員とは、人材派遣会社から派遣された労働者である。またはそれに準じる雇用形態のこと。
派遣社員は、人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に派遣され、派遣先の指揮命令を受けて働く労働者であり、いわゆる非正規雇用の一形態である。
労働者派遣については、人材育成や人件費を少なく抑えたい派遣先企業側と、勤務内容や時間を選択したい労働者側の双方にニーズがあるが、非正規雇用労働者の増加問題と合わせて近年大きく注目されている。また、派遣に伴う差別や待遇格差、悪質業者の横行等、多くの社会問題を抱えた雇用形態でもある。
労働者派遣は、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な雇用形態となっている。そのため、「労働者派遣法」において派遣労働者のための細かいルールが定められている。
労働者派遣では、法律上の雇い主はあくまで人材派遣会社である。よって事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければならない。
しかし、実際に指揮命令をしている派遣先は全く責任を負わないというのは妥当ではなく、労働者派遣法において派遣元と派遣先が責任を分担するべき事項が定められている。
労働者派遣は古くから存在したが、正式には1986年の労働者派遣法施行によって開始され、これまでに3度の法改正が行われている。直近の改正は2015年。また、関連する法律としては「労働契約法」がある。
派遣には、「登録型派遣」と「常用型派遣」の2つの派遣形態がある。
「登録型派遣」は、派遣を希望する労働者が派遣元に登録し、派遣の都度、派遣元と有期雇用契約を結び、派遣期間が終了したら労働契約も終了する。
「常用型派遣」は、派遣される労働者が当初から社員として派遣元に雇用され、派遣先で就業する。また、2013年の法改正により、「常用型」の中に「無期雇用派遣」が新設されている。無期雇用派遣の詳細は、後述。かつては「日雇い派遣」「ワンコールワーカー」と呼ばれる形態の派遣もあったが、2012年の法改正で廃止されている。また、派遣先からさらに派遣を行う「二重(多重)派遣」は禁止されている。しかし、業務委託契約やフリーランス契約と称して、これらの多重派遣を行う悪質な業者は後を絶たないため要注意である。偽装請負の記事も参照。
平成29年の厚生労働省による派遣労働者実態調査によると、2017年10月1日現在で、派遣労働者が就業している事業所の割合は 12.7%となっている。業務は「一般事務」が 33.1%と最も高く、次いで「事務用機器操作」19.1%。派遣の種類は「登録型」は 53.9%、「常用雇用型」は46.1%。ただし、性別では、男は「登録型」39.0%、「常用雇用型」61.0%と「常用雇用型」が高く、女は「登録型」68.5%、「常用雇用型」31.5%と「登録型」が高くなっている。
派遣社員は、派遣先の正社員と待遇差があることが多く、また、正社員から冷遇されたり、「派遣さん」と呼ばれてお客様扱いを受けることもある。給料格差よりも、そういった疎外感や人間関係のストレスにより、派遣社員は多くの悩みや劣等感を抱えている。また、こうした正社員と派遣社員の摩擦によって様々な事件が起こっている。
「同じ仕事に従事する労働者は皆、同じ水準の賃金が支払われるべきだ」という考え方であり、国際労働機関(ILO)等では、基本的人権のひとつとされている。
しかし、日本国内の正規雇用と非正規雇用との間には、明確な待遇差が存在し、この問題は顕在化している。不安定な雇用形態などとともに、派遣社員や契約社員が「貧困の巣窟、ワーキングプアなどを生み出す格差社会の元凶」の一つであるとされることもある。
2018年6月29日、働き方改革関連法が成立し、安倍内閣は正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差の改善に対して取り組む姿勢を示し、2018年12月28日、厚生労働省は 「同一労働同一賃金ガイドライン」を作成し公表している。2020年4月からはさらに徹底されることになっている。
労働契約法と労働者派遣法の改正により、労働派遣業界は2018年に2つの大きな問題に直面した。それが無期雇用派遣と抵触日問題である。
2013年4月1日の労働契約法の改正に伴い、新たに設けられた「無期雇用派遣」は、一般派遣とは異なり、派遣会社と契約の終了日を決めずに派遣社員として働く形態のことである。
同一の派遣会社との間で、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者からの申請により、無期労働契約に転換できるようになった。その際、労働者は申し込みをするだけでよく、派遣会社はこれを断ることができない。また、対象の労働者は、いつでも何度でも申し込みを行うことができる。
2018年4月1日に施行後5年を経過し、初めて「無期雇用派遣」が誕生した。派遣元が雇用を保証してくれるためメリットも大きいが、「無期雇用派遣」はあくまで派遣の一形態であるため、社員ではない。そのため、社員と比べて待遇差があり、一度「無期雇用派遣」になってしまうと正社員になりづらいというデメリットもある。
「無期雇用派遣」を選択する場合には、慎重な判断が求められる。
2015年の労働者派遣法改正により、派遣労働者は業種に関わらず、同一の組織で派遣社員として働ける期間は3年間と定められた。
2018年9月30日、2015年9月30日の施行から3年が経過し、法改正後初めて「抵触日」を迎えることとなった。
しかし、この日を契機に、派遣可能期間に抵触することを理由として、多くの派遣労働者が人材派遣会社から契約を打ち切られている。実質的には解雇と同等であり、派遣切りの2018年問題として大きな社会問題となった。
また、抵触日制度は本来、不安定な非正規雇用の解消を目指したものであり、正社員として直接雇用してほしいという理由から施行されているが、実際には全員が正規雇用されるわけもなく、今後も抵触日を迎える派遣社員にとっては悩みの種となり続けている。
紹介予定派遣は、派遣期間終了後(最長6カ月)、本人と派遣先企業双方合意のもとに正社員あるいは契約社員として直接雇用される派遣形態である。前述の抵触日問題を解決する方法のひとつとして、企業と労働者のどちらにもニーズがあるが、社員雇用を前提としているため狭き門である。
2008年11月に発生した世界的な金融危機後、日本でも雇用情勢が急激に悪化し、派遣労働者の中途解雇や雇い止めが多発し、大きな社会問題となった。職と住居を失った失業者のため、東京の日比谷公園に「年越し派遣村」が一時的に設置されたことで、それに関係する騒動も記憶に新しい。→派遣村
不況の際には人員整理のために派遣切りが行われるため、そういった場合、派遣社員は職を失うリスクが高く不安定な雇用実態が浮き彫りとなっている。
以前の派遣事業は「一般派遣事業(認可制)」と「特定派遣事業(届出制)」の2つが存在していたが、届出制であった特定派遣は規制が緩く、それを悪用する派遣会社(主にIT業界)が増えたため、2015年9月30日の派遣法改正で特定派遣が廃止され、許可制の一般派遣に一本化された。
法改正後、経過措置として国に届け出をしておけば、特定派遣を継続することもできたが、2018年9月29日をもってこの経過措置が終了し、これ以降は特定派遣事業を行うことができなくなっている。
偽装請負の他にも、様々な違法行為を行う悪質業者が存在している。
2012年の労働派遣法改正により、派遣元事業者が労働者を特定の一社または複数者に限定して派遣することは、労働者の雇用機会損失につながるため禁止された。(労働者派遣法第7条)
例外として、60歳以上の定年退職者を派遣労働者として雇い入れ、その割合が派遣労働者全体の3割以上である場合や、派遣労働者の労働時間の割合が8割以内(8割規定)である場合は認められる。
しかし、人件費の節約などを目的に、企業が子会社として派遣会社を設立し、自社やグループ会社に派遣させる「専ら派遣(グループ内派遣)」を行う企業は依然として存在し問題となっている。
2012年の労働者派遣法改正で、事業所ごとのマージン率の平均値は公開が義務付けられている。
しかし、派遣労働者の賃金について、派遣先の企業が払う派遣料金から仲介手数料を差し引く割合(マージン率)は、多くの派遣会社が労働者本人に公開していないという実態がある。そのため、労働者は仲介手数料をピンハネされていても気づきにくいという問題があり、悪質な人材派遣会社も往々にして存在する。また、諸経費や消耗品代・登録料などの名目でだまし取る「中抜き」もしばしば問題となっている。
その他様々、ブラック企業(+対処法)を参照。
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録音・録画といった記録・自衛策・通報も非常に有効。(→記録)
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最終更新:2024/12/22(日) 15:00
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