主にウルトラシリーズを中心に、他と一線を画す独創的な特撮映像を作り出したことで有名。
「エキセントリック」「前衛的」など、その作風を表す言葉は様々である。
『天才』とも『問題児』とも言われた、とにもかくにも強烈な演出家であった。
一方、ピンク映画の世界においても、押しも押されぬ変態監督として名を馳せた。
苛烈な性描写と、それを目も眩むような色調やカメラワークで映し尽くす彼のピンク映画は、非常に衝撃的な映像体験である。
が、登場人物のモノローグだけで申し訳程度に物語を進行させたり、説明臭い会話ばかり使ってしまったりと、演出的には褒められたものでない部分もある。これは、ピンク映画に限らない。
1959年に早稲田大学を卒業。外務省勤務を経てラジオ東京(現:TBS)に入社。演出部に配属され、演出家の第一歩を歩み始める。
音楽番組やテレビドラマの演出を手がけていたが、スチール写真の多様、唐突な街頭インタビューの挿入、過度にアップや引きを多用する、ラストシーンに突然暗転させて雪を降らせるなど奇抜な演出を多用したため、TBS上層部や視聴者から抗議や苦情がよく殺到した。
しかし、この奇抜な演出を円谷英二は評価していた。
この後、英二の息子で、当時TBSに勤務していた円谷一の口添えもあり、TBSのテレビ映画制作セクションであった映画部に異動することとなる。ここに籍を置きつつ、外注先への派遣という形で円谷プロダクションの作品にも演出家として関わることとなっていく。
本編においては、小道具・大道具越しに登場人物を映す構図が有名。特に鳥篭と食器が大好き。
また、役者を正面や真横から取るのを嫌っているのか、ひたすら斜めから映りまくる。そして、時には魚眼レンズを用いて凄まじい接写を行い、かなり歪んだ映像を作り出す。
これらの特徴だけで恐らく、実相寺の作品であると見分けが付く。
また、照明の使い方が非常に独特で、人によっては「邪道」と見なすほど。
特に後期において、シチュエーションに沿っているかどうかは二の次で、まるで心象風景のような強烈な光を作り出すことを優先している。何気ないアパートの一室で、緑やら赤やらの照明を躊躇なく用いている。
時には凄まじい逆光の中で撮影を行うこともある。これは、後述の『故郷は地球』などで顕著に見られる。
ちなみに、役者に関しては基本的に興味がなかったようで、演技よりも画作りにひたすら集中していたという。
逆にピンク映画を作っている間の、性行為のシーンにおいての演技指導、というより役者への注文はかなり細かかったらしい。
初めてメガホンを取ったのは、ウルトラマン第14話『真珠貝防衛司令』であった。
真珠を餌にする怪獣・ガマクジラを醜く肥った怪獣として描き、美しく上品なイメージの真珠と醜い怪獣の対比をストーリーに取り入れようとした。
見る人によってはガマクジラは充分醜い怪獣だが、当時の実相寺が求めていたのはまだまだこんなものではなかったようだ。
同作品史上でも異色として知られる第23話『故郷は地球』では、母国に見捨てられた悲壮な怪獣(人間)・ジャミラを登場させた。
目が眩むような光・色調の中、ジャミラの悲壮な運命が明らかになって行く本編描写が特徴的で、特にラストシーンにおいてのイデの独白が有名。
そして、エキセントリックな余り円谷プロを追い出されかけたのが、第34話『空の贈り物』であった。
全体的にギャグ調に描かれているこのエピソードでは、科特隊の面々が、カメラに向かって一列に並ぶ「家族ゲーム」にも通じるような構図でカレーを食べている中、怪獣・スカイドンが出現する。
ここで実相寺は、慌てたハヤタがスプーンで変身しようとするというシーンを作り出した。
これが円谷プロ内のベテランスタッフの怒りを買い、ひと悶着起きてしまったようだ。
完全に追い出されてしまったのが、ウルトラセブン第8話『狙われた街』。
モロボシ・ダンとメトロン星人による“ちゃぶ台シーン”が生まれたエピソードである。
撮影当時は、実相寺を含めてスタッフ一同大笑いしながらこのシーンを作り上げたそうだが、放映後になって、海外輸出を視野に入れているのに何でちゃぶ台なんぞ出したのだとプロデューサーから大目玉を喰らい、以後しばらく、ウルトラセブンに関わらせてもらえなくなってしまった。
なお、ちゃぶ台シーンだけでなく、夕焼けを背にして対峙するセブンとメトロン星人の映像も人気である。
『帰マン』以来ウルトラシリーズに関わらない期間が続いたが、今作で久々に復帰。
第37話『花』、第40話『夢』を演出する。
『花』では、満開の桜の咲く日本庭園をハレーションの強い映像で表現しつつ、ティガとマノン星人の対決の中に、檜舞台の上での舞うような戦いのシーンを挿入した。
『夢』では、夢の世界から飛び出して暴れる怪獣に、同じく夢の中で変身して立ち向かうティガの姿を描いた。
第38話『怪獣戯曲』を担当。
錬金術によって生み出され、創造主の書いた戯曲の通りに暴れまわるバロック怪獣・ブンダーを登場させる。
いつも通りに冴え渡る本編の演出もさることながら、空間を捻じ曲げる能力を持つブンダーの様子を、万華鏡や鏡に映されたような映像にして表現した特撮パートは、『ウルトラマン』に登場したブルトンの描写にも通じる強烈な映像であった。
最後のウルトラシリーズ演出となったのが、ウルトラマンマックスの第24話『狙われない街』であった。
タイトルどおり、『狙われた街』のセルフリメイクというか続編であり、何と『狙われた街』に登場し、アイスラッガーで真っ二つにされたメトロン星人がこっそり生きていたという設定。
親しい役者である寺田農をメトロン人間体に据え、前作の描写を踏襲しつつ、地球に愛想をつかせたメトロン星人が帰って行くという物語を作り上げた。
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最終更新:2024/05/12(日) 11:00
最終更新:2024/05/12(日) 11:00
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