サブリミナルとは
- 映像や音声における表現手法の一つ。本稿で記述
手法そのものを言う時は「サブリミナル手法」、それによってもたらされる(と言われている)効果は「サブリミナル効果」と呼ぶのが正しいが、ニコニコや日常会話の中では単に「サブリミナル」だけで使われる事が多い。 - ボーカロイドのオリジナル曲「サブリミナル」の事。
概要
サブリミナル【subliminal】とは「潜在意識に働きかける様子」を意味の単語である。
静止画像を連続して表示する事で成立している動画の中に、1コマやそれと同程度の非常に短い時間だけ別の画像を混ぜ込むことにより、視聴者に気づかれる事無く混ぜ込んだ画像のイメージを潜在意識下に植えつける事が出来ると言われている手法である。
人間は視覚から映像の情報を連続して得ると、その速さが1秒あたり画像10枚あたりから個々の画像を個別に認識できなくなり、一連の動画のように認識するようになる。
実際は1秒あたり10コマ程度の荒い動画では、他の部分と全く違う画像を1コマだけ混ぜると「何の画像だったのか」までは分からなくとも、「明らかに違う画像が混じっている事」自体は気づく場合が多い。しかし1秒あたり20コマや30コマ以上になる精密な動画の中に1コマだけ紛れ込ませると、「混じっている事」自体にも気づかなくなる。
「混じっている事自体にも気づかないほど一瞬」の情報だと、意識できる程はっきりした情報として感知できないが、そのような画像が視覚情報として得られたという事自体は脳は認識しているため、無意識の中にその情報が刷り込まれてしまう。理性で制御できる意識下の情報ではないため、人はそうやって刷り込まれた情報に自然と従ってしまう行動が「サブリミナル効果」の概要である。
近年では、ゲーム、カラオケ、パチンコなどの娯楽もの(パチは賭博ものだが)は、映像や光の点滅と大音量の環境下であるため、また行きたくなるような快感が得られることも「これはきっとサブリミナル効果があるんですよ!」と言う風な使われ方をすることが多い。
漫画などでは「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」に登場するウェザー・リポートのスタンド能力「ヘビー・ウェザー」がこの効果を意図的に引き起こす事が可能。その発生方法も”オゾン層を操作して太陽光の性質を変化させる”というトンデモ能力により発現する。
科学的検証
現在、一般的にはサブリミナル効果は確たる根拠の無いものとして、「えせ科学」の一つと考えられている。
理論上では、大脳皮質の視覚野が視覚情報を感知できる0.1秒と言う限界を下回った場合、映像情報そのものが不正確になるため、どのようなメッセージが込められていたとしても狙ったとおりの影響が出る事がないとされている。
1957年、ジェームズ・ヴィカリ(James.M.Vicary)という、マーケティング業の男性が、映画館で上映された映画「ピクニック」のフィルムに、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが写ったコマを5分ごとに一コマずつ、繰り返し挿入した、という実験が最初にサブリミナル手法について行われた実験とされている。
実際はその前後に映画の興行主等によってもサブリミナル手法はいくらか用いられていたと言われており、「コーラとポップコーンのおいしそうな写真だけではなく、『ポップコーンを食べよう』と言う文字列でも効果がある」と言うような報告も存在する。
しかしこの実験はきちんとした論文も無く、後日実験を行ったジェームズ・ヴィカリ本人が不十分な実験だったと告白している事から、信頼に足るものではないと結論付けられている。そもそも、この話自体が話題づくりを狙った当時の映画の興行主の創作話であったという説すらある。
しっかりした環境の下で行われた実験としては、「1桁の数字を一瞬だけ見せ、4以下ならAのボタンを、5以上ならBのボタンを押す」と言う実験において、「6を0.03秒だけ見せた後に9を0.1秒見せる」と「6を0.03秒見せた後に2を0.1秒見せる」では、正解のボタンを押すスピードが後者の方が明らかに遅いという実験結果が出ている。(認識できていないはずの6と言う数字が、4以下であるか5以上であるかの判断に影響を及ぼしているという事)
また、先述の大脳皮質の視覚野に障害※を持つ患者のうちの一部は、目が見えないはずであるにも関わらず、目の前に置かれた「何も入っていないガラスケース」と「品物が入っているガラスケース」のうちから品物が入っている方を高確率で言い当てたと言う実験結果も報告されている。
これらの事から、大脳皮質の視覚野とは別に、0.1秒以下の情報すらも認識できる別の視覚野の存在が示唆されており、サブリミナル効果もここに関連したものなのではないかと言われているが、あくまで示唆されているだけであり、やはり証明に至っていない。
※ 皮質盲と呼ばれる障害。眼球やその周辺の視神経は健常者と全く同じように機能しているにも関わらず、大脳の視覚野が正常に機能していないために、目が見えない状態に陥っている事を言う。
過去に起きた問題
1995年5月、TBSによるオウム真理教関連の番組において、無関係な場面でオウム真理教元代表・麻原彰晃の顔が何度も挿入されていた事が判明し、郵政省による厳重注意の上でTBSが謝罪するという事件が起きた。その後、1989年放映の日本テレビ系アニメ『シティーハンター3』においても麻原彰晃の顔が一瞬だけ挿入されていた事が判明し、こちらも問題になり、同じく厳重注意→謝罪という流れになった。
実際は、サブリミナルもしくはそれに近い手法で一瞬のみの映像を混ぜ込むといった手法は1980年代初めから当たり前のように行われており、上記の麻原の件が初ではない。しかし今までは番組自体に関連している画像であったり、特別なメッセージは何も込められていない、いわゆる「お遊び」として行われていた物であった。(ゲームの隠し要素のように、ユーザーに発見してもらうためのサプライズ)
上記の2つの件ではサブリミナルに用いられたのが、当時世間を良くない方向に騒がせていた渦中の人物であったという事で、マイナスイメージを伴って大きく騒がれたのである。
規制
麻原彰晃の件より、業界全体で厳しい自粛が始まった。後の1997年のポケモンショックの件で、より一層に映像としてのサブリミナル手法に規制がかかる。
日本では法律による規制は何も無いが、日本放送協会(NHK)と日本民間放送連盟がそれぞれサブリミナル手法を用いた表現を禁止する声明を発表しているため、先述の郵政省による厳重注意の前例を合わせると、実質的には禁止されているに等しい状態である。
これらの事件の後に、「SMAP×SMAP」のCMにサブリミナル手法を用いているのでは?と疑われたことがある。その真相は、この番組が「フジテレビで収録して仕上げたVTRを関西テレビに送り、関西テレビから全国に向けて発信する」という特殊な制作・発信体制であることが原因であり、つまりは「発信局が関西テレビであるために関西基準のCMを全国に流すため、フジテレビ側が一部関東向けのCMに差し替える必要があるのだが、切り替えの際に技術的な問題でどうしてもサブリミナル的な現象が発生してしまうから」というものであった。しかし、その事情を知らない(または理解できない)一部の者は、理由の説明があってもなおサブリミナル効果を狙ったものという疑いを持ち続けていたそうな。
映像としてのサブリミナル手法をやりたい場合はネットでどうぞ。ただし、自己責任で。
宗教団体によるサブリミナル効果
熱心な勧誘活動と献本で有名な「エホバの証人」という新興宗教団体があるが、彼らが配っている本、雑誌にサブリミナル効果がある不気味な絵が掲載されていると指摘されている。
ただし、そういった指摘をしているウェブサイトなどを参照すると「ここをこう傾けると顔が」「ここを鏡合わせにするとこんなサタン的な絵が、文字が」といったこじつけ臭いものであったり、「人物の顔への光の当たり方がおかしい」「足の曲がり方が不気味」という感じの、単に絵描きの技術の問題に由来していそうなものであったりする。こういった点を見るに、「エホバの証人」の布教手法や教義によって迷惑をこうむった人々、あるいは単に陰謀論が好きな人々が、「これはサブリミナルだ」と拡大解釈してしまっている可能性も高そうである。
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関連項目
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