ユーロファイター・タイフーンとは、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツがEF2000(EFA)計画によって共同開発した多目的戦闘機(マルチロール機)である。
概要
ヨーロッパ4か国共同の開発計画は1988年にスタート、1992年にはユーロファイター2000とネーミングされた。その後2002年にはユーロファイター・タイフーンとリネームされ、2003年にイギリス、ドイツ、イタリア、スペインの4か国で配備が開始された。[1]
JAS39と同様にカナードとデルタ翼を組み合わせたクロースカップルドデルタの形状を取っており、翼端を除いて13ヶ所ものハードポイントがあるのが大きな特徴。またアフターバーナーなしでのスーパークルーズに対応しており、全備重量でもマッハ1.3を発揮できる。前面のRCS(レーダ断面積)はF-22に及ばないものの電波吸収材の多用によりF/A-18E/Fやラファールよりは小さいとされている。
イギリス防衛評価研究所の試算をもとに、改良型Su-27(Su-35相当)と撃墜/被撃墜で比較するとEF-2000は3~4.5となる。(F-22Aは9~10、F-15Cは0.76、F-16ブロック40は0.26となる)
トランシェ
ユーロファイターは段階的に能力の拡大を図る形で開発・生産を行っている。調達の大きな区切りとして「トランシェ」があり、トランシェごとに細かい区切りの「ブロック」がある。最新型は「トランシェ3A」で(3Bも計画されていたが中止)、ドイツは2020年に、保有しているトランシェ1を更新する機体として「トランシェ4」を導入する方針を決めている。[3]
厳しい現実
トランシェ3では新開発のアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーの導入が予定されている。現行のユーロファイターが搭載しているユーロレーダー社の「CAPTOR-M」(メカニカルスキャン方式)のアンテナ部分をAESAにした「CAPTOR-E」(現在はECRS:European Common Radar Systemと呼ばれている)の実用化は遅延しており、各国の予算不足からかさっぱり進展してない。
※メカニカルスキャンでは、電波の発信から受信までアンテナ部を動かす必要があるので、レーダー幅などに制約を受ける。AESAの場合、アンテナを構成する発信・受信機が電子的に位相を変えつつ送受信を行うので、レーダー探知距離などの性能がメカニカルスキャンよりも優れる、とされている。ユーロファイター以外の戦闘機ではすでに実装が進んでおり、航空自衛隊のF-2が搭載しているJ/APG-1、F/A-18E/F・Block2が搭載するAN/APG-79などがある。
現状、2007年から開発していて2015年実用化という予定はいくらなんでも時間がかかりすぎかもしれない。その間、J/APG-1がAAM-4を運用するためなど各種のアップデートを行い探知距離を延ばしたJ/APG-2になるほか、AN/APG-79は限定的な電子戦能力まで備えるなどに比べるとその動きは低調と言えるだろう。
この間、インドでの126機導入の輸出チャンスがあったといわれるがこのレーダー部分がネックとなり、ダッソー・ラファールの採用が決まった(ラファールはパッシブ型電子走査アンテナ(PESA)レーダーを搭載)。
2013年6月。海外向けの輸出拡大が低調であることを受けて製造元のEADSでは、レーダーをAESAへしないと導入に有利に働かないと、開発諸国(イギリス・ドイツ・スペイン・イタリア)に予算承認を求めている。2011年に基本合意に達したものので、まだ正式調印ではなく、今後の推移はまだ不透明であるといえるだろう。
2015年7月23日、イギリス空軍とインド空軍で行われた演習「インドラダヌーシュ」では、「3~4.5で有利」と言われていたはずのフランカー(正確にはSu-30MKI)相手に0対12で完敗するという失態を犯した。さらに、その対戦の中には2機のタイフーンで1機のフランカーと戦うも返り討ちにされる場面も存在したと言われている。
関連動画
▼MMD-OMF モデル部門 No.027 『ユーロファイター・タイフーン(三機セット)』 (モデラー:シナモソ)
関連項目
- 戦闘機
- 軍用機の一覧
- マコタイフーン(エースコンバット6におけるアイドルマスターの菊地真の痛戦闘機)
- F-X ※航空自衛隊のF-4の後継機を選定するF-Xの候補にも挙げられていたが、[4]この時は最終的にF-35が選定されている。
脚注
- *「ユーロファイター・タイフーンの全貌」今泉裕貴 航空情報2005年10月号
- *今年で初飛行から半世紀!2024年に節目の年を迎える戦闘機3選 2024.3.30
- *「ユーロファイターのトランシェとブロック」井上孝司 J-Wings 2022年11月号
- *http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2012/2012/html/n2352000.html
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