F-22( Lockheed Martin/Boeing F-22 Raptor)とは、アメリカのロッキード・マーティン社が開発した戦闘機である。愛称はラプター(Raptor:猛禽類の意味)。
概要
1981年に開始されたアメリカの先進戦術戦闘機計画(Advanced Tactical Fighter:ATF)によって、F-15の後継機として開発された。
ATFは旧ソ連のSu-27に対抗するために計画されたもので、ステルス性、スーパークルーズ(アフターバーナーを使用せずに超音速で巡航する)、STOL(短距離離着陸)性が求められた。最終的にはロッキードのYF-22(試験機には頭にY、実験実証機には頭にX(所謂Xナンバー)が付く)、ノースロップ(現:ノースロップ・グラマン)/マグドネル・ダグラスのYF-23が製作されてテストが行われ、整備性と機動性などから、YF-22が選定された。
当初は「ライトニングII」という愛称が付けられていたが、後に同社のF-35に与えられる事となり、F-22には代わりに猛禽類を意味する「ラプター」が与えられた。ラプターはタカやワシなどの様な捕食鳥類の総称の事を指し、F-15の愛称であるイーグルや、F-16のファイティングファルコン(ファルコンはダッソー社のビジネスジェットの商標であるため、ファイティングが付く)などの鳥を総称することで、何者よりも強いと言ったニュアンスがある。
その後、1995年半ばまでにテスト機13機が製造され、1996年末よりF/A-22(F/A=Fighter・Attackerの意味)として米議会に予算計上されたが、2005年の運用開始直前にAは消え、F-22に戻っている。
2009年に、当時のゲーツ国防長官は高額の製造コストを理由に生産の中止を決断。当初749機を調達する予定だったが、生産は188機で打ち切られた。[1]
2011年に最終号機がロールアウトし、生産は完了した。当初は複座型も予定されていたが、開発されなかった。また、FB-22という本機ベースのデルタ翼爆撃機の計画もあったが、これも結局実現しなかった。
実戦に投入されたのは2014年で、シリアにあるISの拠点を空爆する作戦に参加している。[2]
F-22は既に初飛行から四半世紀が経過しており、米空軍は初期型のブロック20については退役を希望している。[3]
機体の特徴
このF-22は現在でも世界で一級の戦闘能力を持つF-15を凌駕する為に開発されただけに、様々な最新テクノロジーと最先端技術が使用されている。
一番の特徴はステルス性である。自機に照射されるレーダー波を別方向に逸らし、RCS(レーダー断面積)を極力減らすことによって敵のレーダーによる探知が困難になるように機体外形がデザインされている。
電波吸収剤(RAM:Rador-Absorbent Material)についてはボーイング製のものがEMD試験2号機で採用され、以降の機体はすべてこの塗装が行われている。[4]
コクピットはディスプレイが多数並び、F-15Eのコクピットを進化させた様なものとなっている。このF-22のシステムはボーイング777型旅客機にも採用されているプログラム言語「Ada」によって記述され、220万行と言う膨大なプログラム数で記述されている。
エンジンはP&W社のF119を採用し、上下に動く推力偏向パドルを動かす事で機動性を高めている。無論スーパークルーズが可能。ただしパイロットにかかるGも増大する事から、パイロットスーツも新しく開発された。
搭載装置[5]
- AN/APG-77…機首に装備されたAESAレーダー。最大探知距離は非公開だが、250km程と見られている。
- AN/ALR-94…機能的にレーダー警戒受信機(自機に照射された敵のレーダー波を検知して警報を出す)に近いものだが、F-22のそれはさらに高度化されており、機体各部に30個以上のアンテナを配置することで360度全周をカバー、尚且つあらゆるレーダー周波数帯に対応するものとみられている。恐らくこの装置によって、APG-77の探知距離圏外にいる敵をレーダーを使う事なく捕捉できる(+AIM-120の中間誘導にも使える)し、電子情報収集でも効果を発揮するだろう。
- AN/AAR-56…MLD(Missile Launch Detector)と呼ばれる赤外線光学センサー。AAMやSAMの発射炎の赤外線を検知し、パイロットに飛来方向を警告する。
- AN/ALE-52…チャフ/フレア射出装置
- AN/APX-100(V)…敵味方識別装置
- AN/ASQ-220…CNI(通信、航法、識別)を担当する装置。F-22では他のF-22との通信にIFDL(Intra Flight Data Link)と呼ばれるデータリンクを使用している。これはF-22だけで使用されているもので、例えば自機で対処できない目標がある場合、その目標情報を編隊内の他のF-22に送信しこれを攻撃させるといったことが可能。それぞれのF-22がAWACSのように機能するということであり、これによってF-22で構成された編隊はAWACSや地上レーダーの支援が受けられない空域でも戦闘を行える。
兵装・機外搭載
F-22は胴体側面に2つ、胴体下面に2つのウエポンベイを持っており、ミサイル、爆弾はここに搭載される。武装はベイのカバーを開いてから発射/射出される。また固定武装として胴体右側にM61A2 20mmバルカン砲を搭載しているが、これも発射口はカバーがされており、発射時のみ開く。
- 胴体側面のウェポンベイ…AIM-9サイドワインダーが搭載される。
- 胴体下面のウェポンベイ…AIM-120アムラーム、GBU-32 JDAMが搭載できる。現在はGBU-39も搭載可能になっていると思われる。
※GBU-39…SDBと呼ばれる小口径の爆弾。弾体重量250lb(113kg)で滑空用の翼を備えており、最大で75km離れた位置から投下できる。
また、主翼には機外搭載ステーションが4つあり、最大4本の増槽を搭載可能。
創作作品におけるF-22
- エースコンバットシリーズ
シリーズ皆勤の機体であり、後半に使用可能となる高性能機として位置付けられている。多くの作品で主役級の扱いを受けており、04では特にそれが顕著。主人公メビウス1の愛機として、多くのプレイヤーに強い印象を残した。エースコンバット04のメビウス中隊、5のスペシャルカラー、6のDLCではメビウスカラー・アイドルマスターの天海春香の痛戦闘機カラー(どんがラプター)、エースコンバットX(グリフィス機)など、バリエーションにも恵まれている。 - サイドワインダーシリーズ
MAX以外の作品に登場。Vでは敵のエース部隊が本機体を使用する。 - エナジーエアフォースシリーズ
全作品に登場。最高クラスの基本性能に加え、ステルスモードを発動することで、ロック切り替え機能が制限される代わりに敵に索敵されなくなる。エイムストライクやOverGでは、翼下にAIM-120、AGM-84、燃料タンクを搭載可能。ステルスモードを犠牲にする代わりに、最大で2発のAIM-9、14発のAIM-120(加えて4発のAGM-84または4本の燃料タンク)を搭載できる。 - ガサラキ
米軍横田基地に配備された機体が登場。基本的に作中登場する人型兵器、TAは戦闘機(というか航空機全般)相手には無力という設定だが、作中ではやられ役ポジションに甘んじている。もっとも、これはあくまでも主人公であるユウシロウが規格外なだけである。 - トランスフォーマー(劇場版実写映画)
初めて実機のF-22が登場した実写映画。スタースクリームの変形状態がこれであるほか、米空軍所属機が複数登場。トランスフォーマー相手でもそれなりに戦うことができていた。 - ビビッドレッド・オペレーション
連合防衛軍所属機として登場。ただし文字通りのやられ役扱いであり、活躍の度合いとしてはF-35の方が上。
関連動画
関連コミュニティ
関連リンク
- F-22 Raptor | Digital, Dominant, Ready | Lockheed Martin
- H.Amdt.295 to H.R.2266 - 105th Congress (1997-1998) | Congress.gov | Library of Congress ※オビー修正条項。1998年度の米国国防歳出法に加えられたもので、F-22の外国政府への販売に関する作業に国防予算を支出することを禁じている。
関連項目
脚注
- *https://www.cnn.co.jp/usa/35082044.html
- *トラブル続きの米軍F22がシリア空爆に参加、初の実戦 2014.9.25
- *もう “世界最強の戦闘機” F-22が退役!? 背景には意外に厳しい米空軍の台所事情 2022.12.25
- *最強戦闘機F-22ラプター ジェイ・ミラー/石川潤一訳 2007
- *F-22 Raptor―スーパーファイター (イカロスMOOK)ビル・スウィートマン 1999
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