パナヴィア・トーネード(Panavia Tornado)とは、パナヴィア・エアクラフトが開発したMRCA(Multi Role Combat Aircraft:多用途戦闘機)である。
概要
多様な任務をこなせることを目指しているが、主眼は敵地に進攻して飛行場や地上部隊、物資集積所などを全天候下で攻撃する能力に置いている。敵レーダーの補足を避けるために超低空を高速で飛ぶ能力とSTOL性の両立を求められた為、可変翼機として設計された。敵地進攻の他に対艦攻撃や戦術偵察にも使えるIDS(阻止攻撃型)の他、防空戦闘機を求めた英国向けにADV(防空型)も作られている。[1]
一般に”tornado“の発音は日本語で「トルネード」と表記されるが、本来の意味である「竜巻」を指すものと区別するためか、本機を指す場合にはより原語の発音に近い「トーネード」が慣習的に用いられる。
出自
トーネードは1960年代末、旧式化したF-104 スターファイターの後継機として開発が始められた。
プロジェクト参加国は西ドイツ(当時)、オランダ、ベルギー、イタリア、カナダ、イギリスの6カ国にも上り、1968年にブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション(BAC、イギリス)/メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(BMM、西ドイツ)/フォッカー・アエロプラーンバウ(オランダ)/フィアット(イタリア)がドイツにパナヴィア・エアクラフトを共同設立したが、のちにベルギー、カナダ、オランダが脱退し、参加国は3カ国となった。
このためトーネードは機体の前と後ろはイギリス製、中央はドイツ製、主翼はイタリア製、エンジンは共同開発という、とんでもない機体になってしまったが、おかげで合理化ができ、調達費は安く収まった。初飛行は1974年。
サイズは全長:16.72 m、全幅:13.91 m(翼最大後退時8.60m)と、F-14(初飛行1970年、全長:19.10m、全幅:19.54m(翼最大後退時10.15m))よりだいぶ小さい。
バリエーションと名称
トーネードは上記3カ国の要望を満たすべくマルチロール機として設計されたが、全ての要望を1種の機体で満たすことができず、大きく分けて3つの型式が作られた。それぞれ国によって呼び名や細かい装備が違ったりするのでややこしい。
- 攻撃機型 ドイツでは阻止攻撃(InterDictor Strike)の頭文字をとってトーネードIDSと、イギリスでは対地攻撃・偵察(Ground attack/Reconnaissance)の頭文字をとってトーネードGR(+バージョンナンバー)と呼ばれる。イタリアでは何も付かない。
- 防空戦闘機型 イギリスが開発した。防空型(Air Defence Variant)の頭文字でトーネードADVと呼ばれる。空軍では名前の後に戦闘機を意味するF(+バージョンナンバー)をつけている。
- 偵察機型 ドイツが開発した。電子戦闘偵察(Electronic Combat Reconnaissance)の頭文字でトーネードECRと呼ばれる。
ニコニコ動画では
もともと日本では馴染みの薄い欧州機であり、映画やニュースなどメディアでの登場も少ないため、アメリカのF-14,15,18,22やロシアのミグ、スホイなどと比べて、認知度や人気は高いとは言いがたい。
そのため、ニコニコの動画もこれらの機体のものより少なめであるが、タグやキーワードではヒットしなくても色々な戦闘機の映像や写真を集めた動画に紛れ込んでいたりする。
また、「トーネード」タグがついた動画は、ゲーム(主にエースコンバット)に登場したトーネードに関するものがその多くを占める。
萌えポイント
※注意 この章には一部、執筆者の勝手な価値観と趣向が含まれています。
この章の内容が万人にとっての萌えポイントとは限らないことをご了承ください。
- 全体的に丸くて愛らしい印象のテーパー可変後退翼機であるが、鋭く勇ましい戦闘機の顔や無骨で角ばった力強さをも併せ持つ。また見るアングルによってもさまざまに印象が変わる。
- 外見では特に、丸いボディからピンと突き立った、納屋の戸みたいに大きな垂直尾翼がチャーミング。
- 翼角可変機構、赤外線前方監視装置、各種レーダー、慣性航法装置、逆噴射装置、各種高揚力装置、アフターバーナー、翼角連動式の兵装パイロンなど、とにかく沢山の機能を小さなボディに詰め込んでいる。またそのほとんど全てが、低空高速侵攻という一つの目的に収斂している。
- JP233ボムディスペンサーというキワモノから空中給油用の油槽ポッドまで、さまざまな兵装を搭載可能であり、それらを活かしてさまざまな分野に対応できる。
- 実際の作りこそ三国の継ぎ接ぎであるが、ステルス技術が無い時代に「レーダーが相手なら機体サイズと低空侵攻能力で勝負だ!」と困難な課題に実直に立ち向かった技術者たちの意地を感じる。
そもそも低空高速飛行は燃費が悪いので大きなタンクが必要なのに、サイズは可能な限り小さく、搭載量は多くという時点であまりの難題である。 - 湾岸戦争では各地の飛行場制圧に活躍し、犠牲を軍の予想以下に留めた。(とはいえ少ない損失とは言いがたかったが)
- もはや旧式機となりつつあるが、それでも各国空軍、さらにはサウジアラビアで現役を保っている。
トリビア
- 本機が“tornado“と名づけられた理由の一つに、英語でもドイツ語でもイタリア語でも「竜巻」を意味し、スペルも同じである(発音は多少異なる)という点がある。美しき友情の証である・・・かどうかは分からない。
- ゲーム「エースコンバット」シリーズでは、細かな型の違いこそあれ、登場機体が全て架空機である3を除きプレイヤー機として皆勤して……いたが、アサルトホライゾンでとうとうデフォルトでの収録機体から外れてしまった(2011/11/30配信のDLCで復活)。
- しかしエースコンバット6で、同じバンダイナムコ社のゲーム「アイドルマスター」とのコラボ機体(→痛戦闘機)が配信された際、実在機としては唯一トーネードのみ配信されなかった。アイドルマスターSPで新登場キャラクターが2人確認されており、エースコンバット6の未配信機もトーネードと架空機1機を合わせて2機であることから期待されていたものの……。
- STOL性の高さなどからADVが第3次F-X(航空自衛隊次期主力戦闘機)の候補に上がったことがある。ビゲン、ミラージュ、F-14,15,16,17と共に7機種に絞られるまで候補に残ったが落選し、結局F-15が選定された。
- 2007年11月、トーネードがランボルギーニ・レヴェントンと3000m走で対決した。結果は「レヴェントンは、レースの前半においてリードを保ったが、トーネード戦闘機が最後の数メートルでレヴェントンに追いつき、340km/h を超える速度でレヴェントンをかわして離陸した。」(MSN自動車 業界ニュースより引用)戦闘機は陸上走行の速さを求めて作ってはいない。そもそもトーネードは700mあれば離陸できるのだが・・・。
- 北米・EUにおける知名度は高いようで、現地のトランスフォーマー系アニメ”super gobots”に”spyeye”として登場している。名前から推測して、ECRが元ネタであろう。
関連動画
関連項目
- 戦闘機
- 攻撃機
- 痛戦闘機
- 可変後退翼
- エースコンバット
- 機動戦士ガンダム00 ガンダムキュリオスが固定式ミサイルディスペンサーを装備
- デンドロビウム 自立ミサイルディスペンサー「マイクロミサイル」を装備
脚注
親記事
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- なし
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- Su-27
- F-105
- F-106
- F-8
- F-15
- F-14
- F-16
- グリペン
- ダッソー・ミラージュ2000
- ユーロファイター・タイフーン
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