体罰(英:physical punishment)とは、主に教育的な目的のもと、肉体に苦痛を与える罰を加えることである。
概要
体罰は、親から自分の子供に、教師から児童生徒に与えられるのが一般的である。
肉体に苦痛を与える方法としては、拳、平手などで叩く以外に、廊下に立たせるなどがあり、これも体罰に含まれる。
その他、体育会系の部活において、監督・指導者・先輩からの理不尽なシゴキとして行われたり、ブラック企業において新入社員や成績の悪い人間に対して平然と行われる場合もある。
- 失敗や間違い、態度、成績に対する罰として行われるもの
- 体罰を行う側の機嫌や娯楽、ストレス発散として行われる悪質なもの
- 前提として体罰を行う側が悪いとは思っていない場合も多い
現代日本では、体罰は教育現場においては法的に認められず、生徒がなんらかの罰則を受けるような行いをしたとしても、肉体的苦痛を与えるような懲戒方法はしてはならない、ということになっている。
とはいえ、違反したとしても、暴行罪・傷害罪等で裁かれない限りは特に罰則等もないため、取り締まり切れていないのが現実である。
また、親から子に対する体罰は、2020年4月から違法行為となることが明文化された(「法律」の節で後述)。さらに、子供に過度の苦痛を日常的に与えているような場合は、児童虐待に該当する可能性がある。
厚生労働省は親から子への体罰を防止するためのキャンペーンを張っており、折に触れて告知活動を行っている。
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体罰の例
叩く
拳で頭を叩く、顔を平手で打つなど、もっとも問題視されやすい体罰の方法。
しかし、昔は教師が生徒に暴力をふるうのは当然とされていた。教師として生徒に教えることを「教鞭を執る」というが、この「教鞭」はその名のとおり鞭であり、黒板を指したりするほか、生徒を打つために使われていたものである。
立たせる
例えば、授業中に質問に答えられなかった生徒を、授業が終わるまで立たせるとか、宿題を忘れてきた生徒を廊下で立たせるなどがこれにあたる。
直接的な暴力と比較すると、問題視されにくい傾向にあるが、特に廊下などに立たせる場合は、生徒が授業を受けられない状態になるということなので、義務教育期間内にあっては、子供の「教育を受ける権利」の侵害、教師の「義務教育を受けさせる義務」の不履行にあたるとして問題となることがある。
しごき
「腕立て伏せ」「兎跳び」「校庭を走らせる」など、苦痛を与える目的で命じるのは体罰にあたる。
こういった体罰的な指導は時折運動部などで見られ、「根性を育てる」などと正当化されることもあるが、スポーツ科学的には効果の程が疑問視されていることも多い。
特に兎跳びに関しては筋力効果どころか関節への負担が大きすぎるため逆効果。
うさぎ跳びは効果なし?禁止や体罰とされた理由はなぜ? | 今日のはてな? (kenny-dfd.com)
体罰を是とする立場
しかし、逆に体罰を肯定する意見もある。
特に日本では何かしらの問題を起した子供に対して停学処分にするなどの処置が取れない為、体罰が規律を破る事へのペナルティとして存在して然るべきだという声や
理を説いてもそれを理解出来ないあるいはしようとしない子供が居る以上、体罰によってわからせるしか無いというものである。
事実、教育現場では教師が強く出れないのを良い事に自分勝手に振舞う子供の存在も問題になっている。
この為、体罰を行った教師に対する減刑嘆願が行われるケースもある等、体罰が一概に悪であるとは決め付けられない。
根性論・体育会系としての体罰
無論、極端な根性論等による暴力は論外であるという事は決して忘れてはならない。
- 俺の時代はこれが当たり前だった
- 俺が偉いんだから黙って従え
- 体罰に耐えてこそ強くなれる
- 体罰に耐えられないような根性の無い奴は勝てない
- (理不尽で効率の悪い方法であっても)苦しむ事こそが美徳である …日本人の悪癖である。
- 文句を言うならもう来なくて良い、指導を行わない
…といった老害指導者は未だに存在し、体罰を受けた側が後輩に対して同様の体罰を行う、その後輩が先輩になった際に同様の体罰を行う…といった負の連鎖が続いていた事例もある。
(→根性論)(→体育会系)(→同調圧力)
監督・指導者側が元有名選手だったり功績を残した人間だった場合、学校側が体罰を認識していても逆らえないといった側面もある。[1]
もちろん功績を残した人間=指導者として優れた人間という保証はない。教師として指導者としての教育を受けてきた訳でもないためやりたい放題である。
法律
学校教育
日本では、学校教育法第11条で教員による懲戒権を認めているが、体罰を禁じている。
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。但し、体罰を加えることはできない。 教育基本法第十一条
平成24年に起きた大阪府桜宮高校体罰暴行自殺事件を受けて、文部科学省は平成25年3月13日に「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」という通知を全国の教育委員会委員長、首長、学校長などに出した[2] 。
家庭教育
日本では、民法第822条で、親権者による子への懲戒権を認めている。
ただし、児童虐待防止法第2条で、児童虐待を「身体に外傷が生じるおそれのある暴行、著しい減食・暴言」などと定義しつつ、第14条では児童へのしつけを理由にして第822条を超えるような懲戒をしてはならず、もし行ったら暴行罪や傷害罪などの罪を免れないとしている。
しかしこの児童虐待防止法第14条はかつて「体罰」の言葉が含まれていない、このような文面であった。
第十四条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
2 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。
そのため、「この体罰は民法第820条・第822条の範囲だ」「民法第820条・第822条の範囲なら体罰は禁じられていないのだ」と強弁するものに対する抑止力が弱かった。
しかし2019年6月に「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」(略称:児童福祉法等改正法)が成立し、2020年4月から施行された。この法律で定められた児童虐待防止法の改正で、第14条にはこのような文面に変わった。
第十四条 の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
2 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。
つまり「体罰を加えること」が民法第820条を「超える行為」であることが明文化され、この改正によって体罰は明確な違法行為となった。
関連動画
報道
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関連チャンネル
関連項目
- いじめ / かわいがり
- 海軍精神注入棒
- 戸塚ヨットスクール
- ブラック企業
- 体育会系
- 根性論
- 老害
- 体罰の会
- ゲーム脳
- 人権
- 学校
- 教育
- 管理教育
- 部活問題
- 毒親
- 虐待
- 児童虐待
- 児童相談所
- 社会問題
- パワーハラスメント
- 野原しんのすけが野原みさえに受けた体罰の一覧
外部サイト
脚注
- *「こんな優れた人に指導してもらっているのだから文句を言ってはいけない」と現場を知らない上層部が盛大に勘違いしているパターンもある。
- *“体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)”.文部科学省.(2013年3月13日)2019年7月15日閲覧
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