記憶の壺とは、マジック:ザ・ギャザリング史上最も許されなかったカード[1]である。
カードの性能
(T),記憶の壺を生け贄に捧げる:各プレイヤーは、自分の手札のカードを裏向きのまま追放し、カードを7枚引く。次の終了ステップの開始時に、各プレイヤーは自分の手札のカードをすべて捨て、これにより自分が追放した各カードを自分の手札に戻す。
思わずテキストを二度見してしまう超強力手札増量アーティファクト。一時的に全員の手札が全回復する。
MoMaの吹雪を進む当時のプレイヤー達が、スポイラーリストに書かれたこのカードでどれだけ絶望したかは言うまでもない。
これからが本当の地獄だ
さて、どう見てもMoMaの安定度に大貢献です本当にありがとうございました、な《記憶の壺》。
ほどなくしてMoMaとは違う《記憶の壺》を主体としたデッキが作り出された。
対戦相手の手札が捨てられたときに2点のダメージを与えるエンチャント《偏頭痛》と
《記憶の壺》の効果で大ダメージを狙うメグリムジャーというデッキである。
このデッキのひどいところは、まずコンボパーツの《記憶の壺》が強力なドローカードであるため
パーツ探しとコンボ進行が並行して行われる点、
そして、《記憶の壺》、《偏頭痛》を出す順番、《記憶の壺》の能力起動タイミング、《偏頭痛》と《記憶の壺》を戦場に出さなければいけない枚数に大きな自由度があることである。
これによって、どこから呪文をプレイしてもカード探ししている間にコンボが成立してしまう。
マナを増やしてカードを増やして、またカードを増やして気がついたら相手が死んでいる。
だから架空デュエル栄えしないんだよなぁ…
もうだめだぁ・・・おしまいだぁ
メグリムジャーの常軌を逸した戦闘力は、強力でかつコストが激安なマナ生成アーティファクトを抱える
type1(現ヴィンテージ)で最大限に発揮された。
まだカードの制限がゆるかった当時ではサーチカードも豊富に使えたため、Time Walkによる追加ターン獲得を考慮に入れた先攻1ターンキル率は90%を超えたという。
エクステンデッドではメグリムジャーの使用者がグランプリ(大型の国際大会)のベスト4とベスト8に入った。
使用可能になってから1ヶ月に満たず、デッキの完成度では発展途上にも関わらずの結果である。進化すれば更なる躍進が容易に予想できた。
なお、スタンダードの大型トーナメントではこれといった記録を残していない。理由は後述。
こ・・・この俺に!慰めなんか無用だぁ!
こうして当時のMTG全フォーマットに地獄を引き起こしにやってきた《記憶の壺》だが、
そのヤバさが制御不能であることがすぐにばれてしまったため、
DCI(MTGの競技プレイを整備している組織)から緊急声明が発表されて1999年4月1日に
type1で制限カード、そして同時にスタンダード、エクステンデッド、Type1.5、ウルザ・ブロック構築の全てのフォーマットで一斉に禁止カードとなった。
1999年3月1日にトーナメントで使用可能になってからここまで1ヶ月のことであった。
この間スタンダードでグランプリ、プロツアーなど大型トーナメントは行われず、スタンダード版メグリムジャーは全国の草の根トーナメントでしか見ることはできなかった。そのため残された記録は少ない。
ここからは余談なのだが、1999年と言えば2ちゃんねるが設立された頃であり、今とは比べ物にならないほどインターネット環境は貧弱で使用者も少なかった。
人気はあったとは言え、所詮アメリカ産ゲーム。この緊急声明を知る手段は意外と少なく、 おもちゃ屋の片隅に積まれているチラシしかない人もたくさんいた。
この頃、《記憶の壺》の強力っぷりの噂を聞いた中学生くらいの子が高額レアと《記憶の壺》を交換する光景がちらほら見られたものである。
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関連項目
脚注
- *公式トーナメントで使用可能になってから0日でtype1で制限カード指定、type1.5で禁止カード指定された《精神の願望》や、このカードよりもスタンダードでの禁止は早かった(17日)が、ほかのフォーマットでの禁止がまだなされていない《創造の座、オムナス》とどれが許されざるカードかは議論の余地があるかもしれない。
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