オーコはマジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)に登場する人物(プレインズウォーカー)またそのカードである。初出は2019年10月発売の『エルドレインの王権』。
オーコはフェイ、妖精的な種族のプレインズウォーカーです。エルドレイン次元の出身ではありませんが、エルフによく似ているため種族について疑いを持たれることはありません。自分の華やかな魅力とその有用性をよく心得ており、巧妙な弁舌をもって他者を意のままに翻弄します。会話においては相手の感情を巧みに読み取り、その心の内にある欲求をくすぐり、抑えつけられていた不満を揺さぶります。答えたくない質問をはぐらかすのは大得意です。優れたシェイプシフターであり、自らだけでなく、他者の姿も自在に変化させることができます。精神魔法にも通じており、心を操る、忘却させるといった技を巧みに用います。
カードとしてのオーコ
オーコは現在エルドレインの王権にて出現する《王冠泥棒、オーコ》と、プレインズウォーカーデッキに封入されている《トリックスター、オーコ》の2種類が存在する。
Oko,Thief of Crowns/ 王冠泥棒、オーコ(1)(緑)(青)
伝説のプレインズウォーカー — オーコ(Oko)
[+1]:アーティファクト1つかクリーチャー1体を対象とする。それは能力をすべて失い、基本のパワーとタフネスが3/3の緑の大鹿・クリーチャーになる。
[-5]:あなたがコントロールしているアーティファクト1つかクリーチャー1体と、対戦相手がコントロールしていてパワーが3以下のクリーチャー1体を対象とし、それらのコントロールを交換する。
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発売と当時に各フォーマットで採用された、『エルドレインの王権』のトップレアカード。様々なフォーマットのアーキタイプで姿を見せ、その存在感を示している。
どこがそこまで使われるような強さなの?
ぱっと見では分かりにくいが、まず非常に硬い。
初期忠誠度が4で主に使用する能力が共に+であるため、出たターンに忠誠度が5以上になっている事がほとんど。+2から入ればスタンダード同環境に存在するメタカードの1つである丸焼きですら耐えうる硬さを誇り、以降も+能力を中心に使用していくため、数ターンで忠誠度が10を超えているなどというのはザラ。
こうなってしまうと生半可なパワーのクリーチャーや火力カードでは倒せなく、黒の確定除去レベルのカードでないと倒せない。この硬さこそオーコの真骨頂である。
また、ここまでの硬さを持ちながら非常に軽い。
緑が含まれるカードであるためマナクリーチャーを経由して2ターン目から定着する事が自然と可能となっており、そのような早いターンでは倒すために攻撃するためのクリーチャーの数もパワーも不足している事がほとんどであるため、倒しきる事が難しい。そのため、この軽さも硬さに直結する要因と言えよう。
それだけでここまで騒がれる強さなの?
オーコが硬さと軽さを持ち合わせたカードである事がお分かりになったところで、各能力に注目していこう。
(食物トークンは2マナタップと生贄に捧げる事で3点のライフを得るアーティファクト)
+2から入る事でいきなり忠誠度が6になれる能力。前述の丸焼きのような5点火力カードからも圏外に逃げられる。
ライフゲインをする能力はMTGにおいてそこまでアドバンテージを得ているように見えないのだが、これだけでオーコに+2とライフ3点を生み出している事になる。
これはアグロデッキにおいては致命的で、5点分のダメージを毎ターン2マナで帳消しにされているようなもので、プレイヤー自身を攻めようにも毎ターン無償で3点のライフを回復され、かといって元となるオーコを殴りにいってもその驚異的な硬さで残り続けるという厳しい状況を生み出されてしまう。
スタンダードではこの食物をギミックとしたフードデッキの中核カードとなっており、食物からマナを生み出す金のガチョウや、食物を使用する事で無敵の格闘、ブロックを行える意地悪な狼などと抜群のシナジーを形成している。
また、生み出す食物はアーティファクトであるため、親和や即席のようなアーティファクトをシナジーとするデッキやキーワードとも相性が良い。アーティファクトと親和性が高い色である青を含んでいるため、自然とその手のデッキに入りやすいのも強みで、最高工匠卿、ウルザがいれば青マナを生み出す食物を与えつつ構築物にパワーを与えたり、あの悪名高き土地であるトレイリアのアカデミーに毎ターン青マナを供給出来たりと、色々なカードとシナジーを形成する能力でもある。
[+1]:アーティファクト1つかクリーチャー1体を対象とする。それは能力をすべて失い、基本のパワーとタフネスが3/3の緑の大鹿・クリーチャーになる。
オーコをオーコたらしめている能力であり、一番の核となる能力。
相手の強力なクリーチャーやアーティファクトをただの鹿へと変貌させ、またこちらの後半腐ってしまいがちなマナクリーチャーや場に干渉出来なくなった使い捨てアーティファクトなどを戦力となる鹿へと変えていける。
死亡時の能力すら許されず、場に出た際の能力を持つ、速攻で攻撃出来る、対象に取れないクリーチャーでなければ何もすることなく3/3の鹿に変えられてしまうため、これまで活躍してきたファッティやフィニッシャーと呼ばれたクリーチャーたちは使用に際し、その存在を再考させられる事となった。対処しにくく攻撃すればほぼ終わる最高のフィニッシャーとなっていたあのエムラクールですら攻撃出来なければただの鹿になる魔法をかけられてしまう。
またアーティファクトも対象に含まれているため、ワームとぐろエンジンのような凶悪なクリーチャーはもちろん、一方的にアドバンテージを得続ける剣サイクルや殴打頭蓋のような装備品、相手を強烈に妨害する虚空の杯や罠の橋なども鹿に変える事で被害を抑える事が出来るようになる。アーティファクトは下の環境に行けば行くほど厄介なカードが増えるため、メイン採用が増える理由もここに一因する。
この変貌先の大鹿の3/3というサイズはMTGにおいては見過ごせないサイズであり、本来プレインズウォーカーがパワー3の攻撃に常に晒されるような状況は致命的である。しかしオーコは+1での変身で残る忠誠度は5のため殴られても場に残るどころか、+2と続ける事で更に残り続ける事が可能で、相手に3/3を与えてから2ターンの猶予を作る事が出来る。この3/3を残す事が単体でデメリットになりきらないのも絶妙であり、他のプレインズウォーカーと一線を画す部分でもある。
そして、この能力は自ら生み出す食物も鹿とする事で逆に戦力にする事が可能。これにより、2ターンに1回だが3/3の戦力を生み出せる自己完結したカードでもあるため、メインから相手の妨害とフィニッシャーを兼ねており、コンボデッキやロックデッキ、コントロールデッキ相手にも腐る事の無い能力になっている。
[-5]:あなたがコントロールしているアーティファクト1つかクリーチャー1体と、対戦相手がコントロールしていてパワーが3以下のクリーチャー1体を対象とし、それらのコントロールを交換する。
交換元は自らが生み出す食物があるため、無理に用意する必要が無い。近年は死儀礼のシャーマンや闇の腹心、若き紅蓮術士など放置すると危険なシステムクリーチャーが多いため、これらを鹿に変えずに奪う事でこちらのアドバンテージ源に出来るのは強力。スタンダードでも1つ前のセットに現れた冒涜されたもの、ヤロクや風の憤怒、カイカなどの強力なクリーチャーたちも鹿に変えずに自ら運用する事でメリットに出来てしまうクリーチャーたちは、このカードの存在により更なる被害を生みかねない事になってしまう。
また上記以外にも青と緑のカードという事で、下の環境では意志の力や否定の力、活性の力など一線級のカードたちのピッチコストに充てられるため、複数枚ハンドに来てしまっても腐りにくいのもこのカードの隠れた強みになっている。
もしかして弱点がない?
アグロ、ミッドレンジ、コントロール、コンボ、ロックデッキ全てに一定以上の効果を発揮するため、基本的に腐る事は無いカードといえる。
ただし、オーコの能力は基本的に1体ずつしか対応出来ないため、複数のクリーチャーやトークンを並べるデッキとは基本的に相性が悪い。小粒クリーチャーをばら撒く戦法は鹿化が無意味な相手であり、かといってライフゲインしようにもトークンは1枚で複数体生み出すカードが多いのでアドバンテージを失わずに詰められるパターンが多い。事実、スタンダードでオーコを中心としたフードデッキが苦手としていたのが、ゾンビトークンを土地を置くだけでばら撒き続ける死者の原野デッキであった。また、自身を守るための鹿は飛行が無いので飛行トークンによる戦術に対してはブロッカーにすらなれないので、オーコのみで対応し切る事は難しい。
他にもオーコの能力は結局のところ鹿に変えたところでクリーチャーを残してしまっている事には変わりないので、クリーチャーを強化するデッキとも相性はそれほど良くはない。特に+1/+1カウンターを乗せる相手の場合は3/3の鹿の上に更に+1/+1カウンターが残ってしまうため、鹿同士のにらみ合いに持ち込めず、不利になりやすい。
また、いくら硬いとはいえプレインズウォーカーを直接破壊するような黒の除去カードや青のパーマネントを破壊する赤霊破や紅蓮破といったカードの前には無力である。しかし、確定除去カードでないと対処が難しいという評価がこのカードの強力さを物語っている。
王冠泥棒の現状と今後
スポイラーで登場するや否や注目カードとして脚光を浴び、発売と当時にスタンダードで食物とのシナジーを中心としたフードデッキの中核カードとして活躍。
このオーコを中心としたフードデッキの対抗馬である《死者の原野》が禁止された直後の日本で行われたグランプリ名古屋2019(使用フォーマット:スタンダード)ではトップ8中7名がオーコを4枚採用した青緑を中心とするフードデッキであった。
その後もトッププロたちが争う2019ミシックチャンピオンシップⅥ(使用フォーマット:スタンダード)においても2日目に残ったうちオーコを採用するデッキが約71%(しかもその大半がフードデッキ)という事態になった。トップ8も6名がオーコを使用したデッキとなっていた。全体使用率が70%に及んだというのはMTG史上初でここまでの支配率を誇ったデッキ(とカード)は前例が無い。あの親和ですら禁止前の全盛期で50%程である。
また、このようにオーコを中心としたフードデッキが環境を支配したことによって、本来ならメインデッキに採用されるはずもない緑対策カードが(主にオーコを除去するために)当たり前のようにメイン積みされ、挙句の果てにその対策カードをかわすための対策カードをメインに忍ばせる者すら見られるほどであった。
このようなスタンダードの活躍だけに留まらず、その勢いは各フォーマットへ広がり、モダン、レガシー、ヴィンテージ、また新フォーマットとして制定されたパイオニアや近年人気が広まっている統率者戦でも大暴れしており、瞬く間に活躍の場を広げた。主にスタンダード以外では食物シナジーよりも純粋なカードパワーによる採用が多い。
その活躍ぶり、実績、カードパワーから、史上最強のプレインズウォーカーである《精神を刻む者、ジェイス》を超えたと断言するプロプレイヤーもいるほどである。
しかし、このあまりの暴れっぷりから禁止カードに指定される事を恐れてオーコを手放すプレイヤーも出始めており、価格面で見ると高騰と下落を繰り返す難儀なカードでもある。
事実、MTGアリーナにおいては実装後1ヶ月強の2019年11月5日にブロール(スタンダード限定の統率者戦のようなフォーマット)では禁止カードに指定された。これは「クリーチャーを戦場に留めたまま無力化する」というオーコの性質が統率者戦において有効すぎることにも起因する。
シンデレラの登場する世界観の『エルドレインの王権』で一躍シンデレラとなったオーコ。だが、11月18日の禁止改定発表において22日付でスタンダードで禁止カードに指定された。10月頭に発売されてから、わずか49日間の命だった。これはMoMaの2大パーツ(トレイリアのアカデミー・意外な授かり物)の発売日から80日、使用可能期間61日より短く、これより短いのは記憶の壺(発売日から45日、使用可能期間31日)しかない。なお、同時にフードデッキで多数採用されたむかしむかし(同セットカード)とオーコへの対処を困難にしていた夏の帳(基本セット2020)も禁止となった(ローウィン以前のカードは発売日と使用可能になる日付が異なるため、両方併記するが、どっちにせよ歴代2位である)。
後に12月16日の禁止改定発表において17日付でパイオニアでも禁止カードに指定された。スタンダードにて猛威を振るった青緑系を中心とするシミックフードがパイオニア環境においても他を圧倒する勝率、支配率を誇ってしまったためと公式から解説された。こちらでは夏の帳、むかしむかしのほうが先に禁止指定されていたがそれの後を追った。
更に1月14日の禁止改定にてモダンにおいても禁止カードに指定された。最高工匠卿、ウルザと組み合わされたウルザフードと呼ばれるデッキがミラーマッチを除く勝率が55%以上と圧倒的な数字を出しており、その一番の要因であると見られたため。禁止改定前のモダンGPでもトップ8の内、4名がこのウルザフード使用者であった。ちなみにオーコ使用デッキはトップ8に7名である。またウルザフードを除く全体的な使用率でもオーコは40%を超えて全体使用率では2位を10%以上離してぶっちぎりの1位。ありとあらゆるデッキに入っており、SCGのチームモダンでも優勝者3人のデッキ全てで使用されていたどころか、色の合わないデッキにも強さや汎用性から色を足して無理やり投入されており、モダンのメタゲームと多様性を破壊しているのも禁止理由であると発表された。
発売から僅かな間に様々なフォーマットで禁止されたオーコであるが、エターナルフォーマットにおいては周りのカードパワーと統合が取れていると見られていたため、しばらくはプレイアブルカードとして存在を認められていた。しかしその存在感は発売後すぐからかなりのもので、クロックパーミッションデッキの王道「Delver-Go」、氷雪カードを中心としたコントロールデッキ「Snowko」の2大デッキを中心にコンボデッキやアグロデッキを含め、他デッキタイプにも色を合わせて使用する他フォーマットと同じ現象がレガシーにも起きてしまった(これは夏の帳など他のカードの存在も一部起因している)そのため、アーティファクトを中心としたデッキ、更には同カラーのパワーカード「ウーロ」を相方にすると生半可なアグロやミッドレンジデッキではその圧倒的なカードパワーの前に対抗する事が出来なくなってしまった。そのカードパワーはレガシーのカードプールにおいても全体使用率でトップ5に名を連ねる程で構築を固定化してしまうほどであり、逆にどんなカードにも簡単な回答となるカードとなってしまっていた。この事態が変わる事を望まれ、2021年2月16日にレガシーにおいても禁止カードに指定された。
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