調整ルームとは、日本の競馬において騎手が利用する施設の事である。
なお似た言葉でジョッキールームがあるがこれは主にレース当日に競馬場内で騎手が利用する休憩室、準備室で調整ルームとは異なる施設であったりする。
概要
調整ルームはJRAと地方のNARにもあるが、本記事では主にJRAの調整ルームを主体に記述する。
JRAの全競馬場の10か所および、美浦トレセン、栗東トレセンの合計12か所にあるのだが、この施設は主に週末にあるレースの前日までに騎手が利用することになる。外部との接触禁止のため原則騎手しか入ることが出来ず、家族や馬主調教師も入ることはできない。また短期免許制度で来日する外国人騎手の通訳も入ることができない。(この間の通訳は職員が対応)。例外なのは設内で勤務している職員や、医療従事者、調理師など認められた者は施設内に入れるがむやみに接触することは禁じられている。
施設内は外部との接触禁止の観点からスマホ等の通信機器の持ち込みも禁止となっており、施設内に入る場合は応接室などで騎乗予定のレースがすべて終了するまで預ける形となる。
例え騎手同士の連絡目的だとしても、外部と通信可能な機器の持ち込み及び使用は禁止である。 [1]
ただしゲーム機についてはダウンロード済みなどで、そのゲームにチャットなどの機能がない、Wi-Fiなどの接続が出来ない状況にしているなどを、職員が確認できれば許可もあるようである。これはポータブルDVDも同様。
また施設内に入ったら翌日の早朝まで原則施設の敷地外に出ることは禁止となっている(トレセンの場合は早朝の調教のみ外出可能)。これらのルールを守らなかった場合は制裁、騎乗停止の重い処分になることもある。
厳しくしている理由は公正競馬の確保のためである。実際、1965年に大規模八百長事件「山岡事件」が起きてから制度が厳格化されたという。
施設内の部屋は和室と洋室があり、選択することが可能である。ほかに飲食ルームやサウナや浴室、娯楽施設などもあり騎手は自由に利用できる(後述)。
執筆している2023年時点では、施設内には騎乗日の前日の21時(土曜日に騎乗予定があれば金曜日、日曜日のみの場合は土曜日)までに入る必要がある。以前は16時や12時など早い段階で入る必要であった。他の公営競技と異なり門限が遅いため、外で夕食を摂ってから調整ルーム入りする騎手もいるという。
若手騎手などで厩舎に所属している騎手は競馬場の調整ルームを利用せず、各トレセンの調整ルームを利用する場合がある。これは騎手の仕事もあるものの、同時に厩舎に所属している場合は競走馬の世話も務めであるため当日の引き運動などを終えた後、マイカーもしくはJRAが用意した車などで競馬場に向かう(この場合、預けていた携帯電話は一旦返却され、競馬場到着後に再度預ける)。また関東地方競馬など連日開催が続く地域ではこれでは騎手がほとんど帰宅できなくなってしまうため、別途自宅待機の制度を定めている地区もある。
なお何らかの正当な理由でその時間に入ることが出来ない場合は、電話などで遅れる旨を伝える必要がある。(天候災害などで新幹線といった移動手段が大幅に遅延となった場合など)
この移動時間や土日で騎乗する競馬場が異なるといった場合は、到着予定時刻を伝える必要がある。
これ以外の私的な理由などや連絡がない場合は制裁、場合によっては騎乗停止などが科せられる場合がある。
なお騎乗予定がある騎手は調整ルームを利用するのが原則なのだが、上記で書いた正当な理由で施設に入る時間に間に合わない場合などや、2020年の新型コロナの感染対策といったケースなどではホテルなどを利用することを許可されることもある。
またJRAの騎手が地方競馬のレースに騎乗するために遠征する場合は、該当の競馬場の調整ルームに入る必要はなく、当日の騎乗予定の最も早いレースの前検量の定刻までに到着出来れば良いことになっている。
地方競馬の騎手がJRAのレースに騎乗する場合も同等の扱いとなる。
調整ルーム内部
調整ルームは当然ながら、一般向けに公開されていない。しかし、密着取材やテレビ番組などで幾度かメディアの取材が入ったことがある。本項ではそれらの情報を基に記載する。
- セーフティボックス
財布、腕時計、スマホ等通信機器は暗証番号付きのロッカーに預ける。 - 食堂
夕食・朝食はここで取る。門限が21時なので夕食を外で済ませることが可能。簡易売店もあり、料金はレース後に精算する形になる。また、他の公営競技と違い、飲食物(アルコール含む)を自由に持ち込むことも可能。 - 娯楽室
食堂と一緒の場所もある。
娯楽室にはテレビや将棋盤の他、一般紙・スポーツ紙・競馬新聞が揃っている。 - 居室
他の公営競技が相部屋である中、個室である。和室か洋室、禁煙か喫煙を選択することが可能。外国人騎手はミルコ・デムーロを除き洋室を選ぶのが一般的。
部屋には布団とテレビ(洋室の場合はベッド)しかないが、前述の通り飲食物の他、雑誌や新聞を持ち込むことが可能。
逆に言えば、インターネットが一切使用出来ずに一晩過ごすことになるため、過ごし方が重要。
福永祐一の場合、部屋で競馬エイトを広げながらレースプランを組み立てていたとのことだが、それを弟分の川田将雅に何回か盗み見された事がある模様。幸英明の場合は大量のお菓子を持ち込んで全部平らげてしまう。 - 浴場
多くの騎手が減量でお世話になるサウナも完備。
他の公営競技では
競馬以外の公営競技(競艇、競輪、オートレース)でも、やはり公正確保の為、各会場ごとに調整ルームと同様の選手宿舎が備わっている。但し集合時間が競馬より早い12時の競技もあり、更に拘束期間が長くて1週間と長期間だったりと、競技によって様々。
基本的な設備は居室以外ほぼ同じ。宿舎の居室は、競艇はリビングと選手の寝室から成る半個室型、その他は2段ベッドが備わる4人1部屋の相部屋。長期滞在が多くなる為、洗濯機コーナーもある。またドーピング防止の為、アルコール類を含む飲食物の持ち込みを禁止している競技もあるが、簡易売店で事足りる模様。特にアルコール類は簡易売店にノンアルコール飲料が売ってるので、それで晩酌する選手もいる。
当然、携帯電話の持ち込みは禁止、さらにはゲームも桃太郎電鉄のような対戦要素が絡むものや、トランプや花札といったアナログゲームも禁止。近年ではカメラも禁止になっている。競艇の場合、2021年に発覚した「西川事件」を機に、到着時に空港の保安検査場と同じ金属探知機を導入して通信機器の持ち込み防止策を強化している。
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *例えば東京競馬場内の調整ルームを利用している騎手同士で普通に会話をすることは問題はなかったりする。同じ騎乗予定のレースの作戦等については問題になるが、馬の特徴(気を付けるべき悪癖など)の確認は許可の範囲内。
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