競輪とは、競技用自転車を用いて争うスポーツ競技で、競馬・ボートレース(競艇)・オートレースと同じく公営競技の一種。なお自転車競技(トラックレース)にも同名の種目があるが、競技性質などの違いから、こちらは「ケイリン」と呼んでいる。
所管官庁は経済産業省で、運営は公益財団法人JKAが担当している。かつては日本自転車振興会が運営を担っていたが、2008年4月1日にオートレースの運営団体である日本小型自動車振興会の事務を引き継ぐ形でJKAが誕生した。
これ以降は特に記述がない限り、日本の競輪について説明する。
概要
1周250~500mのコース(バンク)を2000~3000m走行して1着を競い、通常は7人または9人で行う。
ただし、この距離を常に全力疾走するわけではなく、最初に先頭誘導員(紺地にオレンジのラインが入った服を着て、ヘルメットのカバーに審判員からペースの指示を受けるためのスピーカーがついている)を置いて、残り1周回半で鐘(ジャン)が鳴らされ、誘導員が退避したのち、本格的に競走が始まる(誘導員が離れるタイミングは状況により前後する)。そうなると一番の見所はゴール直前の争いだが、ゴールライン通過速度は通常50~60km/h、速ければ70km/hを超えるともいわれる。
選手につけられる車番号と色は、①白・②黒・③赤・④青・⑤黄・⑥緑・⑦橙・⑧桃・⑨紫である。 また、4・5番を4枠、6・7番を5枠、8・9番を6枠とする枠番号もある。基本的に4番・6番・8番の選手はそのレースの中で比較的成績が落ちる選手を割り当て、特に6番の選手が最も格落ちの選手となる。そのため、4・6・8番が絡んだ車券は高配当となることが多く、俗に「ヨーロッパ」と呼ばれる。
投票券(車券)は、2枠複(18通り)・2枠単(33通り)・2車複(36通り)・2車単(72通り)・ワイド(36通り・的中3つ)・3連複(84通り)・3連単(504通り、以上9車出走の場合)の7種類で、1枚100円から購入可能。 また、場によっては重勝式(チャリロト・Kドリームス・オッズパークLOTO)も発売しているが、こちらはインターネット上のみでの発売なので、専用の銀行口座を開設する必要がある。 かつては単勝・複勝も存在したが、特殊な競技性質や売り上げの低さを理由に自然消滅(廃止)となった。しかし最近では復活の動きもあり、2021年10月からの千葉250mでは単勝が復活する予定となっている。
- 基本的に7車立てで、全選手L級1班となり昇降格はない
- フレームはカーボン、後輪はディスクホイール(強風時はスポークホイール)
- 自転車競技の「ケイリン」ルールで、いわゆる「ヨコ」の動きは禁止。そのため連携する「ライン」の概念は無い
- 男子より距離が短い(1500m~1666m)
- 誘導員はバックストレッチ側からスタートし、ホームストレッチを過ぎたところから選手がスタートする
- 「予選1」「予選2」のポイントで決勝進出者が決定
など、競技の「ケイリン」寄りの独自ルールとなっており、当たりやすさや選手のキャラ揃いのおかげか、売上はなかなかのようである。
また、最近ではミッドナイト競輪という新たな試みも行われており、まずまずの売上をあげている。特徴は以下の通りで、2021年現在はナイター設備のある半数以上の競輪場で実施されている。
使用する自転車について
俗にピストレーサーと呼ばれ、あらかじめ決められた規定にそって部品を選び、組み上げられるものである。サドルは普通のものに比べて硬くて細く、高さを少し変えただけで加速のしやすさが変わってくるため、かなり神経を使う。ギアは空回りしない固定ギアを用いる。ギアのスプロケットは選手によって選択でき、「大きいギアの歯数÷小さいギアの歯数」で求められるギア倍数は車券を買うときに重要な要素となる(ただし4倍未満に制限)。ハンドル等は選手の体格に合わせ、オーダーメイドで作られるため、トータルで20万円~50万円程度かかる。
この自転車にはブレーキがない。減速したい場合、後ろへペダルを踏む(バックを踏む)ことで行う。ブレーキによる急減速での追突事故防止の為である。
なお、最初期は郵便配達などで使われる「実用車」で競輪をしていた時期もあった。ムチムチの太ももをした選手がママチャリを漕いでバンクを走るのもそれはそれで見たい気もするが
競走戦術・ラインについて
競輪において重要(選手にとっても予想をする客にとっても)なのが、ラインと呼ばれるものである。
これは、同地区、同期、師弟関係の選手同士がそれぞれ隊列を組み、その前後によって役割を持って戦う方法である。競走前(前レース終了後)に選手紹介を行い、だいたいこのような並びでいくというものを観客に示す。基本的なラインの組み方としては、逃げ-追い込み-追い込みという3車の組み合わせが主で、斡旋も逃げや追い込みの一方に偏らないよう割り振っているのが普通である。
ただ、場合によっては同地区の選手がおらず、あぶれた者同士でラインを組んだり、地元以外の選手で組んだり(遠征)、ラインが組めず1人でレース(単騎)せざるを得なくなったりということもある。このような例以外にも、中部と近畿、中国と四国でラインを組むこともしばしば見られる。
以下に基本的な地区別のラインを記載する。これは2014年に統合される(中国と四国のみ、2000年に統合)されるまでの各地方の自転車競走会の管轄と一致する。ただし、関東地方は新潟・長野・山梨の甲信越地方をNHK同様関東に含めたり、千葉・神奈川・静岡の3県を特に南関東(南関)と呼んでラインを区別したり[1]、福井県を近畿地方として扱ったりと、一般的な地方区分とは異なることに注意が必要。
地区 | 府県 | 競輪場 |
---|---|---|
北日本 | 北海道・青森県・岩手県・宮城県 秋田県・山形県・福島県 |
函館・青森・いわき平 |
関東 | 茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県 東京都・新潟県・長野県・山梨県 |
取手・宇都宮・群馬・大宮 西武園・立川・京王閣・弥彦 |
南関東 | 千葉県・神奈川県・静岡県 | 千葉・松戸・川崎・平塚 小田原・伊東温泉・静岡 |
中部 | 愛知県・岐阜県・三重県・石川県・富山県 | 名古屋・豊橋・岐阜・大垣 四日市・松阪・富山 |
近畿 | 大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県 奈良県・和歌山県・福井県 |
岸和田・京都向日町・奈良・和歌山・福井 |
中国 | 岡山県・広島県・山口県[2] | 玉野・広島・防府 |
四国 | 香川県・徳島県・高知県・愛媛県 | 高松・小松島・高知・松山 |
九州 | 福岡県・大分県・佐賀県・長崎県 熊本県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県 |
小倉・久留米・武雄 佐世保・別府・熊本 |
この他に、選手個人の戦法として逃げ・追いこみ・またはこの両方を使い分ける自在型がある。おおよその傾向としては、若手選手が逃げ(ラインの先頭)、ベテランの選手が追い(ラインの2番手以降)となる。
また、捲くり、かまし、中割り、競り、ハンドル投げ・・・など様々なテクニックや戦法があるので調べてみるとよい。そしてハマっていくとよい。
競輪選手
現在、国内で約3000人※(男女)が活躍しており、日本のプロスポーツとしては最大規模である。
これらの選手はS級3段階・A級3段階の計6段階に区別され、中でもS級S班はKEIRINグランプリに出場した9人のみに許される最高階級であり、参加する競走の希望制、予選シード権の確約(一部除く)、ビッグレースの優先出走権、1ヶ月間のオフ休み設定可能など、様々な特権が得られる。これに次ぐS級1班も300名弱と、一握りの選手のみである。
競輪選手になるには、静岡県伊豆市の日本競輪選手養成所に入所し教育・訓練を受けたのち、試験を合格することが前提となる(必ずしも入学する必要はないが、無入所での合格は相当厳しい)。 競輪学校に入学するには、17歳以上で高卒(高卒認定可)であることが必要で、試験に合格しなければならない。国体等での自転車競技の成績優秀者や各種スポーツでの実績がある人は技能試験が免除される。
晴れて選手になると、最初はA級3班の選手としてスタートする。ここから実績を積み上げて上位ランクに行けば、より上位のレースに参加できるようになるうえ獲得賞金も平均して高くなる。また、ある特定のレース(レインボーカップ)での入賞や3回連続完全優勝(9連勝)をすることで昇級(昇班)できる。
※ 彼らとは別に、外国人選手も毎年5、6人参戦する(短期免許制度)。 選手は競輪学校で短期免許を取得し、日本の選手と同じルールの下で戦う。参戦選手はみな世界的な実績を持ち能力が高く、階級はS級2班(L級1班)扱い。
大百科に記事のある選手 ※この他に選手が登録されていたら、追加をお願いします
- 神山雄一郎(栃木・61期)※グランドスラム(G1を全制覇)を達成している唯一の現役選手
- 村上義弘(京都・73期)※2012年KEIRINグランプリ制覇、弟・博幸もトップレベルの競輪選手であり弟子
- 伏見俊昭(福島・75期)※アテネオリンピック銀メダリスト
- 長塚智広(茨城・81期)※アテネオリンピック銀メダリスト、引退
- 武田豊樹(茨城・88期)※スピードスケートから転向しトップレーサーに、2014年KEIRINグランプリ覇者
- 浅井康太(三重・90期)※2011年寛仁親王牌・オールスター競輪制覇
- 深谷知広(愛知・96期)※デビュー20連勝を記録、デビューからS級昇級最短記録(56日)保持者
- 田村風起(奈良・107期)※本業よりもアイドルマスター「田村P」として有名
競走体系
競走の格が高い順に、以下のように分類される。GⅢ以上は原則としてS級選手のみ参加できる。GⅢ以上の開催は年度で1回のみ(例外あり)である。また、GPは立川・平塚・京王閣・静岡・岸和田の持ち回り開催、競輪祭は小倉競輪場で開催される。
- GP(KEIRINグランプリ)
- GⅠ(日本選手権、高松宮記念、寛仁親王牌、オールスター、競輪祭、全日本選抜)
- GⅡ(サマーナイトフェスティバル、共同通信社杯、ヤンググランプリ)
- GⅢ(各競輪場の記念競輪、国際トラック競技支援競輪)
- FⅠ(S級とA級1・2班が参加できる。他にもGⅠ・GⅡの別定トーナメント)
- FⅡ(A級選手が参加できる、最も開催回数が多い。他に全日本プロ選手権記念(参加はS級選手)、ミッドナイト競輪(S級シリーズ含む))
競輪場・場外売場
競輪場は日本に43場、場外発売場はおよそ70ヶ所、ほぼすべての都道府県に所在している。ともに無いのは長野県、石川県、沖縄県である。
- 競輪場
いうまでもなく競輪競技を行う場所。国体等の自転車競技場としても使われる。周回長は250m・333.3m・335m・400m・500mの5種類(最も多いのが400m)。また、直線とコーナーの繋ぎに使われる曲線(緩和曲線)もマッコーネル・クロソイド・レムニスケートなどがある。そして直線の長さ、コース幅、コーナーの傾斜(バンク角)、建物の位置など、様々な要素が組み合わさっている。43場のうち小倉と前橋は全天候型ドームバンクであり、天候に影響されず快適に楽しめるようになっている。 かつては東京後楽園(現在跡地には東京ドームが建っており、地下にバンクがある)、甲子園、西宮(阪急西宮スタジアム。競輪開催時に格納したバンクを出す)、住之江(ボートレース住之江の近隣)といった場所にも存在していたが、財政上の問題、役目の終了により廃止に至った場も多数ある。最近では一宮競輪場が2014年3月16日をもって廃止。現在もいくつかの場で自治体により廃止が検討されている。また、2021年10月には改装された千葉競輪場で、全天候型・木製の250m国際規格バンクにて新たな形での競輪「PIST6(250競輪)」を開催する。 - 場外車券発売場
車券の発売のみを取り扱っており、レースはモニターを通しての衛星中継となる。主として「サテライト○○(地名)」の名称を用いている。 発売するレースは場によって異なるので各場の発売日程を確認しておきたい(施行者が同じ場でのレースや特別・記念開催は必ず発売されるといっても差し支えない)。 基本的に入場無料(指定席は有料)であるが、有料会員制のところもある(ST横浜、ST大阪など)。 軽食なども売られており、サテライト独自に予想誌を発行していることもある。また、前述の通り運営団体がJKAとなったことでオートレースの車券を発売するスペースを設け、新たに「オートレース○○」として車券売り場を開設するところも増えてきている。
現状は・・・
かつては競馬よりも人気があったと言われるほどに栄えていたものの、近年は衰退の一途を辿る一方であり、特にビッグレースでの売上が落ちてジリ貧状態である。ラインなどの予想の難しさ等もあってとっつき難い面もあるため、客層の年齢も他の公営競技に比べて高く、ネタにされそうだが本当に「若者離れ」、というか競輪の世界に入ってもらえないでいる。選手募集も1回での定員減少され、現状では規模縮小の可能性も高い。
最近ではミッドナイト競輪が好調とも言われているが、2007年にて約209億円を記録した寛仁親王牌(前橋)が、2016年同場同開催で約83億円と61%減、グレードレース売り上げ最低記録を更新する有様。2020年からの無観客開催により売上は回復しつつあるが、さらに成長著しいボートレースもミッドナイト開催に乗り出すなど、あまりうかうかしてはいられない状況に変わりはない。
近年では寺崎浩平や山口拳矢など、デビューから連勝するような有望新人の登場、別府競輪の男達が話題になっている。一方でmixiが運営するTIPSTARにより前述のPIST6や各種競輪場でのレースが通年配信されたりと、インターネットによる競輪配信が拡大している。
大韓民国の競輪
韓国にも公営競技としての競輪が存在する。釜山・慶南・ソウル(光明)の3ヶ所に競輪場があり、慶南とソウルはドームバンクである。いずれも周回長は333.3mの模様。 ルールこそ日本とほぼ共通だがラインの概念が薄く、ケイリンに近い個人競技としての色が強いものとなっている。
日本のものとは共通点も多いが、主な違いとして、7車立てで7番車が桃色、1日14レース行うこと、投票券の種類(単勝・複勝・2連複・2連単・3連複)、などがある。 興味がある方は是非とも観に行かれてはどうだろうか。
トピックス
- ~3月31日:東日本大震災の影響を受け、開催自粛。
- 3月17日:財団法人JKA(競輪の統括団体)が義援金3億円を寄付、その他各所団体も寄付等を行う。
- 4月1日:豊橋FⅠ・福井FⅠより開催再開、以後1年間すべての開催は被災地支援競走となる。
- 4月5日:競輪公式サイトリニューアル。
- 4月15日:短期登録選手(外国人選手)の来日中止を決める。
- 4月28日:防府競輪で重勝式車券(オッズパークLOTO)の発売開始。
- 5月5日:成田和也(福島88期)・伏見俊昭(福島75期)両選手が合わせて130万円を義援金として寄付。
- 5月10日:男子101期候補生36名・女子1期候補生35名が競輪学校入学。
- 5月19日:ニコニコチャンネルに『にこなま・けいりんチャンネル』(ch2002)開設。
- 6月5日:第62回高松宮記念杯競輪(前橋)で深谷知広(愛知96期)がデビュー最速・平成生まれ初のGⅠ制覇。
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関連リンク
- 競輪オフィシャルサイト|KEIRIN_JP
- 競輪TV!スピードチャンネル (競輪専門のCS放送局)
- にこなま・けいりんチャンネル (ch2002)
脚注
- *なぜ関東だけ区別されているのかは諸説あるが、かつて神奈川県にあった花月園競輪も合わせると南関東の競輪場は7ヶ所になり、関東とほぼ均等になるためと言われている。
- *2021年現在、鳥取県・島根県登録の選手はいない(野崎菜美選手は島根出身だが登録地は山口)
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