ボートレースとは、6艇(てい)のモーターボートを操るボートレーサー(競艇選手)が一周600mの水上コースを3周してその順位を競う競技。競輪・競馬・オートレースと並ぶ公営競技で、日本で最も知られるモータースポーツの一つ。
競艇(きょうてい)とも呼ばれているが、公式では後述する2010年からブランド名「ボートレース」に統一して呼称している。
所管官庁は国土交通省。
概要
ボートレースが初めて開催されたのは1952年4月6日、長崎県大村市である。公営競技の歴史としては競馬に次いで新しい。
かつては「モーターボート競走」や「ボートレース」と呼称されていた。1997年から2009年までは「競艇」という統一された呼び名を使っていたが、2010年になってなぜか再び「BOATRACE」と呼称を戻した。また、これに合わせるかのように5月の笹川賞を皮切りにファンファーレも19年ぶりに一新された。評判はいまひとつのようだが・・・
ボートレースを原作としたマンガとしては「モンキーターン」や「競艇少女」などが挙げられ、特に前者を読んで競艇選手になったというケースは多い。
競艇選手について
選手(ボートレーサー)を志望する場合、ボートレーサー養成所にて1年間の訓練を受けて選手登録試験に合格する必要がある。養成所への入所条件が段階的に緩和された影響で、別の競技選手や社会人から転身する例も近年増加傾向にある。しかし入所競争率は平均20倍ほどの狭き門であり、入所できたとしても過酷な養成課程で半数ほどが脱落、最終的に選手として登録できるのは毎期25名前後となっている。
他の競技と比べて選手寿命が長く定年による強制引退制度もないため、還暦を迎えても現役を続ける選手もおり、ベテラン限定のレースも組まれている。ただし、あまりにも成績不振であったり失格を繰り返した場合は引退勧告が突き付けられたり、レースの斡旋をされなくなることで事実上の引退に追い込まれるケースもある。また3年に1度健康診断が行われ、ここで一定基準を満たしていない場合も選手登録が抹消される。多くの選手は体力の衰えと体重維持の問題で50歳前後で引退する。
選手は全国に点在する支部のいずれかに所属し、支部からレースの斡旋を受けて各レースに出場する。選手は成績によってA1・A2・B1・B2の4段階にランク分けされ、高ランクになれば大きいレースに斡旋される。特にSG競走は原則A1級の選手しか出場できない。ランクは半年ごとに勝率を基準に決定され、成績次第ではB2級から一気にA1級に昇格する例もある。なお勝率とはレースごとに賞金とは別に獲得できるポイントの合計を出場レース数で割った数字のこと。A1級ともなれば絶えず斡旋が入り続けるため、まともに休みが取れなくなる問題を抱えており、本来罰則であるはずのフライング休みを長期休暇と考える選手も存在する。
他の公営競技も同様だが、公平性確保のため開催期間中選手はレース場から出ることができず、外部との接触も禁止されている。通信機器も持ち込みが禁止されており、スマートフォンはもちろんのことNintendo SwitchやSteam Dackも通信機能があるためこの制限に引っかかる。このため公営競技の選手にとってはゲームボーイアドバンスが気兼ねなく持ち込める最新のゲーム機だったりする。
艇番と色、勝舟投票券について
1号艇:白、2号艇:黒、3号艇:赤、4号艇:青、5号艇:黄、6号艇:緑となっている。この辺りは他の公営競技と同じ。
勝舟投票券(舟券)の買い方もおおむね同じだが、1位から3位のうち2艇を当てるいわゆる「ワイド」という券種の呼び方が拡大連勝複式(拡連複)という呼び方になっている。購入の際は注意されたい。
6艇しかいない関係で単勝や複勝(複勝は2着までが的中)は配当のうまみがなく殆ど売れない。ボートレース場では単勝複勝のマークカードが別になっているのが普通。逆に、3連単はより当てやすくそこそこに票も割れるので、現在の舟券の主流である。
モーター整備について
競走で使うモーターとボートは開催の前日に抽選で決められ、割り当てられたモーターをいかにして維持・整備するかがカギとなる。レーサーとピットクルーが分業されている大半のモータースポーツとは異なり、ボートの整備まで選手が管理するというのが最大の特徴だろう。最高のモーター(俗に超抜機という)を手に入れても整備に失敗したり、転覆したりしてはせっかくの超抜機も台無しになってしまうことがある。
さらに、エンジンを取り付ける際に傾斜角度(チルト)を上下させることによってスピードや旋回性能を一層高める。
また、選手は「ぺラ」と呼ばれるプロペラを日々開発し、開催時に持ち込んでそのプロペラに合わせた整備を行い、レースの合間に試運転を繰り返す。このプロぺラ開発の際に仲の良い選手や師弟関係にある選手たちが手を組んで開発を行ったりすることもある。(ぺラグループ)
だが、行き過ぎたプロペラの開発合戦や、選手への負担がかかりすぎる事を防止するために、この制度を2012年4月で廃止、各競艇場に配布したプロペラのみでレースに臨む新しいプロペラ制度が施行されている。多少の調整は現在でも可能で調整の型枠となるペラゲージの持ち込みまでは規制されていないため、レース場に複数のペラゲージを持ち込む選手も多い。
また、交換した部品やチルト角度はスタート展示の際に公表される。
競走格付けについて
レースは規模に応じて下記の5段階に分類されている。
格付け | 説明 |
---|---|
SG | スペシャルグレードの略でボートレース界の最高峰に位置づけられる。 原則A1級の選手しか出場できず、全国から有力選手が集結する。 出場基準は全レースで異なっており、勝率や獲得賞金、ファン投票などで決定される。 開催場所は持ち回りで、毎年夏ごろに次年度の開催場を決定。 同一年度(4月~翌3月)で同じボートレース場が複数のSGを開催することはできないが、 年度が年をまたぐ都合、同一年に鳳凰賞とそれ以外のSGが同一場で開催されることはありえる (2022年の大村では実際に鳳凰賞と賞金王決定戦・同シリーズ戦が開催される)。 鳳凰賞・笹川賞・グランドチャンピオン決定戦・オーシャンカップ・モーターボート記念 全日本選手権・チャレンジカップ・賞金王シリーズ戦・賞金王決定戦の全9競走。 賞金王決定戦とシリーズ戦は同じレース場で同時進行する(SG開催制限の例外)。 中でも格式が高い鳳凰賞・笹川賞・モーターボート記念・全日本選手権・賞金王決定戦は GRANDE5と呼称されており、更に賞金王決定戦はその中でも別格扱いされている。 |
GⅠ | SG同様に全国から選手が集まる競走だが、 こちらは主催する支部の選手を優先して斡旋する傾向が強い。 A1級の選手で占められるのはSG同様だが、レースによってはA2級からの出場もある。 各レース場の周年記念競走、レース場改装記念のダイヤモンドカップ、地区選手権が該当。 SGに準ずる規模のプレミアムGⅠ(PGⅠ)もあり、SG同様全国持ち回りで開催される。 |
GⅡ | ほとんどのレースがGⅠもしくはGⅢに偏っているためレース数が極端に少なく 全国でも年間で10競走ほどしか組まれていない。2010年代以前はもっと少なく7競走程度、 最も少ないときはたったの2競走しかなかった事すらある。 そのため度々見直しの必要性を問われている格付け。 一部例外を除き斡旋対象はA2級以上。 持ち回り開催されているレースもあり、SGやPGⅠが開催されないレース場に割り当てられる。 |
GⅢ | 企業の名前を冠した企業杯競走・オールレディース・マスターズリーグなど。 階級による出場制限はなく、B2級でも斡旋されれば出場できる。 |
一般戦 | 上記に当てはまらないレース全てがこれに当てはまる。 フライング休み明けは初戦は必ず一般戦に斡旋される。 |
格付けによって賞金も大きく変わるため、上位レースへの斡旋の有無は選手の収入に直結する。特にSGの優勝賞金は他の格付けと比べて破格であり、いずれもGⅠの周年記念競走の3倍以上に設定されている(賞金王シリーズ戦だけはこれに当てはまらないがそれでも十分に高額)。シーズン終盤のチャレンジカップと賞金王決定戦は獲得賞金順に出場枠が埋まるため、それまでいかに格付けの高いレースで好成績を残せるかが重要となる。
レースの展開
コース上 | 競艇場内 |
---|---|
スタート展示 | |
周回展示 | |
↓ | レース情報発表 |
次々レース・スタート練習 | 舟券発売開始 |
コース点検・ゴミ除去作業 | 発売締切り |
ピットアウト | ↓ |
コース取り | ↓ |
スタート | ↓ |
ゴール | ↓ |
確定 | 払戻金支払い |
他の公営競技と比べて、ゴールから確定・払戻までの時間が極端に短い。水面で争う競技の性質上、僅差でのゴールがほとんどないことが主な理由である。
用語解説
用語 | 説明 |
---|---|
スタート展示 | 簡単にいえばレースのリハーサル。各選手の戦略やレース展開、スタート位置を予想する。 |
コース取り | スタート時の横方向の位置取り。スタート前には水面上に一定間隔で艇が並び、内から順に1~6コースという。1コースを特にインコースという。競艇は基本的にインコースが有利である。そのため基本的には1コースを狙うことが多い。 中には積極的に6コースを狙いに行く選手もいる。また新人選手は基本的に6コースに入る。 |
周回展示 | 選手紹介を兼ねた試走。3回ターンを見る事ができる。この際、モーターの状態や選手とボートとの相性、選手自身の状態などをチェックする。 |
ターンマーク | 水面上にある赤白三角形のブイ。スタートして最初に向かうのが第一ターンマーク(1マーク)、その次に向かうのを第二ターンマーク(2マーク)という。 |
スタート | フライングスタート方式といい、大時計の針が0秒から1秒を指す間にスタートラインを通過する。0秒のタイミングより早くスタートラインを通ってしまうとフライング(F)、1秒より遅いと出遅れ(L)。 |
モーター | 普通はエンジンと呼ばれるものなのだが、ボートレースではモーター呼びが普通。 全員が同一規格同一ロットのモーターを使用する。ただし、1年間複数レースに跨がって同じモーターを使うので、その過程でそれぞれのモーターに個体差ができる。モーターの性能を読むのも予想の重要な要素である。 |
プロペラ | モーターに装着して推進力を得る。プロペラもレースを経て形状が変化し劣化していくので、それを選手が工具で修正して整備する。かつては選手自身がプロペラを持っていて、それをレース場であてがわれたモーターに装着して走っていたが、制度が変わり、今はレース場のモーターに備え付けとなっている。 |
決まり手 |
1着の艇が1周1マークでどのように先頭を取ったのか、を示す。 |
欠場 | レースに参加しなかった扱い。怪我等による事前欠場と、フライング・出遅れによる欠場がある。それぞれ、欠場艇に関する発売済みの舟券は返還(発売額と同額の払戻)となる。 |
失格 |
何らかの理由でレースから途中除外をされること。レースには参加しているので「欠場」とは異なる。舟券の返還もない。ただし全艇が欠場もしくは失格になった場合はレース自体が不成立となり、舟券の返還がある。また4艇が失格になってしまうことで3連系の舟券のみが不成立となるケースもある。 |
留守番 | 留守番(ボートレース)の記事参照 |
スタートの重要性
ボートレースのボートには構造上ハンドルとアクセルしかなく、ピットアウトしてしまえば止まれないため静止してのスタートはできない。そのため、決まった時間内にスタートラインを超えなければならないというフライングスタート方式が採用されている。
選手にとってみれば、スタートをうまく切れないと自分の思い描いていたレースができなくなってしまう。また、フライングや選手責任の出遅れ(スタート事故という)をしてしまえば、30日間レースに出られないというペナルティもある。同開催中に繰り返しフライングをしてしまうと2回目は60日、3回目は90日出場停止期間が上乗せされてしまう。
また、0.05秒以上のフライング(通称「非常識なF」)を起こしてしまうとかつては即日帰郷(その日のレースが終わったら即帰宅。競輪で言う失格処分にあたる)処分というペナルティも加えて課されていた。2022年5月以降は即日帰郷が無くなった代わりに、出場停止が5日プラスされるように変更された。
阿波勝哉は、フライングを繰り返してしまったことで実に6ヶ月もの間無収入状態となり、その間ひたすら建築関係の工事現場でアルバイトしていたという。それ位、選手にとっては過酷な罰則である。しかしA1級の選手にもなるとフライング休みくらいしかまとまった休みが取れないため、長期休暇と割り切る選手もいる。
最高ランクのSG優勝戦でスタート事故を起こしてしまうと、1年間賞金王決定戦以外のSG出場不可+休み明けから6ヶ月間G1・G2選出除外という地獄が待っている。しかし山崎智也のように、この苦難を乗り越えて再びSGを制する選手も数多い。
かつて一部のボートレース場ではフライング警報装置が採用されており、フライングしそうな場合はボートから警報音が鳴るようになっていた。逆に言えば警報音が鳴らない限りフライング失格の危険は無いので選手自身のスタート感が鈍くなる問題も抱えていた。現在はいずれのレース場でも廃止されている。
スタート事故があったときは売上金から舟券を買ったファンに対して額面通りに金を返さなくてはならない。ゆえに主催者(市町村など)に入る利益が減ることとなるので、主催者側からしてみれば当然スタート事故は無い方がよい。
ボートレースでは、選手も主催者側もスタート事故に気をつけねばならないのだ。
全国のボートレース場
日本最北のボートレース場は群馬県のボートレース桐生であり、北海道・東北地方には設けられていない(過去にも存在していない)。ただ、岩手にボートレース場があるとの噂もある。
各場でYouTubeチャンネルを展開しており、レース中継や舟券対決を行っている。
関連動画
関連コミュニティ&チャンネル
関連項目
競艇場
アナウンサー
選手(名前の前の数字は登録番号)
- 2447 上島久男
- 3070
先生山室展弘 - 3347 矢後剛
- 3590
ヘマノヤ濱野谷憲吾 - 3721 守田俊介
- 3852 澤大介
- 3857 阿波勝哉
- 4075 中野次郎
- 4211 村田敦
- 4283 石井裕美
- 4412 大原由子
- 5259 野田昇吾
生放送主
関連官庁
関連リンク
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