「バンパイア・ボート」なるものはこれまでに存在したことがなく、ましてや財団の管理下にもなかったことが明らかになった後、SCP-048はまたもや(記録上から)取り除かれました。現在、このエラーは低レベル研究者が彼の「すばらしい物語のアイデア」を保存しようと試みた際、彼のハードディスクの代わりにSCP-048のために残されていた空白のスロットにデータを上書きしたために生じたものと信じられています。上記の研究者は、さしあたり全ての記録保管の職務から解任されました。 - O5-11
SCP-048 - SCP財団より,2022/08/28閲覧
SCP-048とは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)のナンバーである。
概要
SCP-048はオブジェクトではない。先述の通り、オブジェクトのナンバーである。簡単に言えば、このナンバーに割り当てられたオブジェクトは存在しない。
このSCP-048に割り当てられたオブジェクトは、どんなオブジェクトも個人の失敗に関係なく、破壊・停止・盗難・その他の理由による遺失がなされてしまう。かつ、このSCP-048に割り当てられた人員はもれなく死亡・四肢切断・懲戒処分等で回転率が高くなってしまっている。
このSCP-048というナンバーに迷信がうまれたことで、職員の士気を維持するという意味からSCP-048は何も割り当てない (欠番) ことが決定されたという。
むろん、これをくだらない迷信だと切り捨てた研究者もおり、実際に迷信であると証明しようとした博士がなにかをこのナンバーに割り当てたりもした。しかしそのオブジェクトは偶然ゴミ箱に投げ込まれて遺失してしまい、更にそれと全く無関係な理由でその博士の腕は食堂のミキサーの事故で切断されてしまった。これにより、O5評議会メンバーの指示でSCP-048は再度欠番に指定されてしまった。
更に、低レベル研究員が自身の「すばらしい物語のアイデア」を保存しようと試みた際に、自分のハードディスクではなく、SCP-048のスロットにデータを上書きしてしまったことが判明し、記録上からも取り除かれている。当該研究員は記録保管の職務から解任されているが、スロットのデータを上書きしてしまったということは過去のSCP-048の情報は消えてしまっていることであろう。とりあえず、その「バンパイア・ボート」なるアイデアは記録から抹消し、再度SCP-048はO5評議会メンバーの指示で欠番に指定された。
SCP-048にまつわる裏話
SCP-048がなぜこんな報告書になっているのか。それは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』における一連のトラブルが要因である。
かつてより、SCP Foundationコミュニティでは、素晴らしくないと見做した作品に低評価 (Downvote) を行うことができる。そして、高評価より低評価のほうが上回るとその記事は削除対象となり、作品世界から抹消されることになる。
SCP-048は、どういうわけか投稿された作品がどれもこれも低品質であり、矢継ぎ早に削除されていった。更に、その時点で投稿されていたSCP-048の記事の上に、過去に削除されたSCP-048 (Vampire Boat)が上書きされるという荒らしじみた事件まで発生した。この騒動を苦々しく見ていたDrClef氏 (本項執筆者にしてクレフ博士の中の人) はヒートアップを防ぐために、SCP-048というナンバーそのものを財団世界内でタブー扱いにするという方法を取ったのである。
上記の逸話への疑義
……と、上記のような逸話が一般的に現行のSCP-EN、ないし他のコミュニティでも語られてきた。おそらく、ピクシブ百科事典でもアニヲタWiki(仮)でも見かけうる、まさしく「親の顔より見た逸話」であろう。
しかし、『SCP Foundation』をはじめとした『Containment Fiction (何がしかの機関がアノマリーを収容するタイプの創作)』をまとめている『Confic Wiki』はこれは偽史だと主張している。
Confic Wikiの主張としてはこうだ。もともとSCP-048のスロットにはEditthis Wiki時代から存在した喋る犬のアノマリー、Joeyが存在していた。しかしこの犬、しばしば脱走を試みようとするくせに、なぜか財団全サイトへのアクセスが許可されていて、要求すればアルコールとチョコレート以外の飲食物も与えられる、また嗜好品も望む限り与えられるという特別収容プロトコルが制定されていた。ただ犬が喋るというだけで、である。この犬は2008年7月14日から2009年1月21日まで、Editthis WikiからWikidotへの移行を通してSCP-048のスロットを占有していたが、Dr Gears氏により削除された。
この際にDrClef氏は「よりよいSCP-048が書けないならすぐに消すぞ」と言及していたが、残念ながらこのあと、低品質記事ラッシュがはじまった。2009年1月24-25日の『The Edge of Twilight』、2009年1月27-28日の『A Normalizer』、2009年1月30日-2月12日の『Necklace of Greed』。これらはいずれもDr Kondraki氏が低品質だったとして削除している。そしてその直後、先述のDrClef氏は本記事、『呪われたSCPナンバー』を書き上げた。その後、ここまでの削除に関与してきたDrClefの盟友、Dr Kondraki氏は補遺を記述する――すなわち、『Vampire Boat』の上書きを示唆する補遺である。
そう、ここまでの歴史上一度も「上書き事件」なんてものは存在しなかったのである。削除記録にも「Vampire Boat」なる記事の削除記録もなく、またSCPシリーズIのリスト記事の編集履歴にもVampire Boatは存在していなかった。Confic Wikiはこれを理由に、「バンパイア・ボートなる記事は存在せず、Dr Kondraki氏がこの逸話を勝手に作り上げたのではないか」としたのである。もともとDr Kondraki氏はDrClef氏の盟友であり、彼が勝手な補遺を付け加えようがDrClef氏が怒ることもなかっただろう。結果、存在しないヒートアップ事件がSCPコミュニティの歴史に組み込まれてしまったというわけである。Confic Wikiは数名のメンバーがSCP-048に「Vampire Boat」があったことを主張していることも確認した上で、彼らがDr Kondraki氏の追記より前にその存在に言及していないこと、うち1人は2015-2016年に活動しており、Vampire Boatを見ていたとするには不自然なことを指摘している。
Vampire Boatは削除された記事の墓地というアノマリー、SCP-5356において言及されているが、Vampire Boatがそもそも存在しなかったとなると、「そもそも生きてさえいなかったのに埋葬された」というなかなか奇妙な話になってしまう (削除された複数のSCP-048が現行のSCP-048に書かれた創作の影響を受けてVampire Boatに変質している、と考えてもいいのだろうが) 。
もっとも、最後の旧SCP-048『Necklace of Greed』は存続していた期間が長い。個のオブジェクトが一度上書きされ、その後差し戻されてから削除された可能性も十分ある。Confic Wikiの管理人がかつてRogetとしてSCPコミュニティに所属し、シニアスタッフとの間のトラブルによって追放されたharmonyFM氏であることも考慮に入れてこの疑義は読まれなければならないだろう。
SCP-048にまつわる考察
SCP-048はしばしばこのような疑義が呈される――あくまで (最初のSCP-048が) Neutralizedになるだけで、オブジェクトクラス分類なしにはならないのではないか、と。
確かに通常ならば、それがどんなにくだらない理由であろうとも、無力化したオブジェクトはNeutralizedになる、というのが自然である。しかし、本項ラストの記述を見てみてほしいのだが、このオブジェクトナンバーの報告書のスロット自体、低レベル研究員が誤って「バンパイア・ボート」という物語を上書きしてしまったことが記されている。こうしてみると、SCP-048に割り当てられたオブジェクトはそれ本体だけでなく、それに関する言及もまたくだらない理由で消失したり、削除されてしまう可能性が高い (先述のミキサーで手を失った博士が言及しているオブジェクトも [データ削除済] になってしまっている) 。
そして過去いくつあったかは知らないが、現時点でそれらSCP-048と呼ばれていた何がしかはいずれも存在せず、また記録も抹消され言及もできなくなってしまっている (=今SCP-048と呼ぶことができるなにかは存在しない) ことがうかがえる。その状態で、SCP-048を欠番認定したのであれば、もはやSCP-048というアノマリーは存在しないのでオブジェクトクラス割当なし、というのは変ではない。オブジェクトクラスはオブジェクトが存在して初めて割当がなされるものだからだ。
関連動画
関連静画
関連コミュニティ・チャンネル
関連リンク
- SCP-048 - SCP Foundation
- SCP-048 - SCP財団
- SCP-048 - Confic Wiki - Vampire Boatの不在に言及した記事。
- SCP-048-ARC - SCP Foundation - Joeyの記事。
- SCP-048-ARC - SCP財団 - 上述の記事の日本語訳。
関連項目
- SCP Foundation
- 内輪ネタ
- SCP-2165 - 『救い難き物』。とにかく赦されないオブジェクト。Decommissionedの暗喩であるという説がある。
- SCP-2357 / SCP-6154 / SCP-153-KO / SCP-154-KO / SCP-CN-445 - 報告書そのものが異常なオブジェクト仲間。
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