Contatinment Fiction (略:Confic) は、いくつかのムーブメントによるCreepypasta創作の総称である。
基本的に何かしらの異常存在 (アノマリー) を『Contain (収容)』する団体を中心に描くシェアード・ワールド創作コミュニティとして成立する。日本においては訳語が一切定まっておらず、またこの概念がそもそも人口に膾炙していない。非公式に「封じ込め創作」などと訳されることはある。
代表的なコミュニティに、SCP FoundationやRPC Authority、The Backroomsなどがある。ただし、SCP-ENメンバーはこの語の存在 (及びこの創作区分) を認めていない。
概要
もともとはアメリカの掲示板サイト、4chanの/x/ (Paranormal/超常現象板) を中心とするムーブメントが世界中に波及したものであり、現在も4chanのContainment Fictionに対する影響力は大きい。かつてより、The Holders, SCP Foundation, The Backroomsなどさまざまなコミュニティが勃興した。中には、The HoldersやWayward Societyなどのようにコミュニティが離散したり非アクティブになってしまったものもある一方で、SCP FoundationやRPC Authorityのように勢力を保ち続けているコミュニティも存在する。
なお英語圏ではContainment Fictionというジャンル名での捉えられ方も一般的になりつつある一方で、この概念を産み出し広めているHarmonyFM (旧称Roget)がSCPコミュニティから追放された人間であることもあり、SCP-EN (オリジナルのSCP Wiki) の内部の人間からは「Containment Fictionなる概念は認めない」という意見も出ている。Containment Fictionの研究を行っているContainment Fiction WikiはHarmonyFMが運営しているが、HarmonyFMサイドはSCPコミュニティへの批判的な解説が目立っている。なおSCP-JPメンバーはこの語に抵抗がないか、この語にそもそもとして興味を持っていないケースが目立つ。
Containment Fictionは基本的に「収容」を主眼としており、異常なアノマリーと、それを収容しようとする何者かの間のストーリーを描いていくことが一般的である。これはThe Holdersのころからそうであるが、SCP Foundationが現在この分野のトップランナーとなる。一方で、SCP Foundationが成熟していくにともない、いわゆるポリティカル・コレクトネスへの配慮や性的な描写の削減が行われてきており、これを純粋な創作コミュニティとしての死と捉えた者たちが離脱し、RPC Authorityをはじめとした派生コミュニティが産み出されていく契機となった。
一方で他国のSCPコミュニティは創作にあまり政治を持ち込まないこともあり、「新しい創作コミュニティが増えたんだ、へー」くらいのテンションであることも多い。
構成要素
Containment Fictionのキモはなんといってもアノマリーである。この世の法則に従わざる異常が存在し、それを放置することで人類社会に致命的なダメージを与える。故に、収容作業に携わる必要があるのだ、というのがContainment Fictionのベースだからである。
しまいこむからには、管理手順書などを当然用意していなければならない。結果として、創作の多くは「アノマリーに関する報告書」が中心となる。
そして個々のアノマリーや、その収容作業に携わる人々を描いた物語もまた同じコミュニティサイト上に投稿される。これが「Tales」である。
シェアード・ワールドなので、カノン (一次設定) の範疇がどこまで含まれるかなども変わってくる。カノンの変更で過去のオブジェクトの削除も辞さない確固たるカノンを設定するRPC Authorityのようなタイプもあれば、「財団の存在ですら前提としなくて良い」SCP Foundationのようなゆるいコミュニティもある。
これらのコミュニティは、世界観がある一定のクオリティを保てるように評価制度を導入していることが多く、低品質と判断された記事は改稿または削除を求められる。
歴史
CreepypastaコミュニティとThe Holdersの登場
1990年代にUsenetグループにホラー作品が投稿されたころからインターネットではクリーピーパスタが流行し、創作と共有・再配布が繰り返されていた。Black Eye KidsやThe Dionaea Houseといった創作が当時のネットでは流行していた。こうしたCreepypastaコミュニティは、やがて4chanができると当初は/b/に集まっていたが、2007年に新たな板として超常現象板である/x/が開設されるとに集まるようになっていく。
最初のContainment Fictionとして区分され得るコミュニティ、The Holdersは2006年頃に/x/で産み出されたCreepypastaコミュニティであり、直に独自サイトを持つようになった (現在は消失しているが)。 538のオブジェクトを収容している人々 (Holders) についての創作であり、これらは一緒になってしまうと恐ろしいことになってしまう、というものであった。なおこのHoldersのコミュニティはいくつものサイトが併存したり生まれ変わったりした挙句最後は空中分解している。
『無題2004』が産み出した「財団」
このころになるとThe Holders以外にもTed the Caver, Treedogなどのコミュニティが産まれていた。そんなある日、/x/にとある画像が投稿された。それは加藤泉という日本の彫刻家が産み出した、とても不気味なポーズの彫像、『無題2004』であった。
やがて/x/の住人であったMoto42は、この不気味なポーズの彫刻について、ひとつのショートホラーを投稿した――それは「SCP-173」という名前のものだった。中途半端な番号からは、同質のものが他にもあるということを世界観として理解させるとともに、それまでの他のコミュニティとことなり、不気味さよりも不思議さを感じさせるものであった。
このアイディアを面白がった人たちがスレッドを作り続けていたが、4chanはアーカイブ機能を持たず、スレッドの乱立も好まれなかったため、やがてEditthisウィキファームに最初のSCP Wikiが産み出された。そしてこのころにいくつものアノマリーが産み出された。多くは批評家から低品質と非難され消えていったが、SCP-682 (不死身の爬虫類) のようにオリジナルのまま現在でも生き残っているものもある。まあクソトカゲなんてどうやって殺したらいいのかわからんが。
Editthisはやがて、「コミュニティ機能の欠如」を指摘され、新たな活動拠点としてWikidotが選ばれるようになった。これが今日でも知られている現・SCP Wikiである。
SCP Wikiはそれまでの体系的な要素を持たないコミュニティと比べ、世界観を強固に持ち、アノマリー同士の関連付けがなされていったことで力を持ち、結果として多くの人に評価された。そして英語圏外にも広まっていき、ロシアや韓国などをはじめいくつもの翻訳・創作コミュニティが産まれたのである。当然本邦でもコミュニティが形成され、ねこがどこにでもいたり、緋色の鳥が襲いかかってきたり、寿司が回ったりしている。
創作と政治、そして離脱者
こうして成功を収めたSCPコミュニティであったが、/x/を飛び出してひとつの大きな創作コミュニティになったことで、やがてさまざまな属性の人間が集まるようになる。かつては言ってしまえばオタクやホラーマニアだけが集まっていたアングラ創作サイトだったSCPコミュニティは、SCP-252-ARC (ゲイ・ボム) や旧SCP-166 (年頃のサキュバス) などといったマイノリティへの侮蔑的表現や強い性的描写が見られており、これらはポリティカル・コレクトネスの波に飲まれて消えていった。しかし旧来からこれらの創作を好んできた者達は、「そもそもここは創作サイトであって政治的なコミュニティではない」という反発を強めていくことになる。
そして2018年6月に、財団がPride Month (LGBTを始めとした性的少数者の権利を主張する運動) に合わせてロゴを虹色に塗ったことで、そのLGBT当事者を含めた幾人もの人たちが反発を強めた。一方で管理者権限持ちは「これを批判するってことは差別主義者だから無視して良い」と冷たい態度を彼らに取るようになる (実際、Faggot (ホモ) といった単語を使う差別主義者もいたことは間違いはないのだが)。
いち早く離脱した者達が作ったのがWayward Societyであった。この作品群は、SCP Foundation とはことなり、「異常をむしろ理解し共有して対処していこう」とする、マイルドな蛇の手のような組織、ウェイワード・ソサエティを中心とする創作群である。
次に産まれたのが、RPC Authorityである。こちらはSCP Foundationと相似的な、すなわち「あの頃のSCP」を取り戻そうとする運動であり、Von PincierなどのSCPコミュニティに多大な貢献をしてきたメンバーを含む大移動であった。これはSCP Foundationの世界観への大きな打撃でもあった。
とはいえ、コミュニティはアンチSCPで分裂しただけであるため、更にそこから多くの団体に分裂していくことになる。そうして活動の場をうまく構築できないまま放棄されたサイトもあったが、RPC Authorityが他のコミュニティに再結集を呼びかけることで一定の勢力を獲得することに成功し、SCP Foundationのカウンターパートとして現在でも生き残っている。
なお韓国などでも似たような騒動は起きていたようだが、大半のSCP支部ではこのようなムーブメントに乗っかる話は出なかった。そもそも政治的な話をあまり創作に持ち出さなかったためである。
第2世代Containment Fiction――Liminal Fictionの黎明
2019年5月、不安を掻き立てる画像という趣旨で投稿された風景画像が投稿された。これはLiminal Spaceというネットミームのひとつとしてあげられたのだが、やがて/x/の住民によって新たな創作コミュニティが勃興した。言わずとしれた、The Backroomsである。
Liminal Spaceからの派生であるため、「異常な物」ではなく、「異常な場所」を主題としているが、それ以外の創作の方法論は似通っているため、Containment Fictionの変種として言及されはじめた。
Backrooms (Fandom版) 、The Backrooms (Wikidot版)、Liminal Archives、Timeless Placesなどがコミュニティとして産み出されている。
主要なコミュニティ
- SCP Foundation - 言わずとしれたContainment Fictionの代表格。
- The Wandarer's Library - SCP Foundationの公式派生サイトで、SCP Universeと密接な関わりを持つ『放浪者の図書館』を中心とした創作群。
- Wayward Society - 異常の発見と知識の探究・共有を目指すウェイワード・ソサエティを中心とした創作。
- RPC Authority - SCP Foundationの離反者が産み出した新たな創作コミュニティ。
- The Backrooms - この世の裏にある裏の世界についてのLiminal Fiction。Wikidot版とFandom版が存在する。
関連リンク
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