エヴァンゼリン・ミッターマイヤー(Evangelin Mittermeier)とは、「銀河英雄伝説」に登場するキャラクターである。
声優は山本百合子(石黒監督版OVA)、潘めぐみ(Die Neue These)。
帝国暦463年ないし464年生まれ。ウォルフガング・ミッターマイヤーの妻で、母の遠縁にあたる。クリーム色の髪、すみれ色の瞳、バラ色の頬を持ち、活発で明朗軽快な女性。父親が戦死したため、ミッターマイヤー家に引き取られた。
物語中では、彼女がミッターマイヤーにとって最愛の妻であること、そして夫との仲睦まじい姿がたびたび繰り返して描写され、屈折した女嫌いの漁色家であるオスカー・フォン・ロイエンタールとの対照性が強調されている。
明るくもの静かで献身的な性格だが、軍人の妻としての姿勢も出来ており、ミッターマイヤーがロイエンタールの叛逆討伐に出征する時の発言などから、芯の強さを持ち合わせている事が伺える。
なお、本伝最後の台詞である「屋内へはいりましょう、あなた」を発するのは彼女である。
ちなみにエヴァンゼリン(エーファンゲリン)は英語圏の名前で、ドイツ語圏では珍しいのだとか。
ミッターマイヤーがエヴァンゼリンと初めて出会ったとき、彼は「燕が春空に身をひるがえすような明るさと軽快さ」を印象として感じている。
彼女はミッターマイヤーとの結婚から何年もたっても明るく軽やかな女性でありつづけた。体型も少女のころからまったく変わっておらず、子供がいないこともあって結婚から何年もたっても新婚当時のういういしさをなお保っており、幼いころ同様に「身をひるがえすさまが燕を思わせ、家事をこなすようすが音楽的なまでに軽快で、ミッターマイヤーを喜ばせる」のだった。こうした、幼いころから変わらないエヴァの軽快な足取りは、夫が妻について自慢してやまない点のひとつだったという。
帝国暦476年ごろ、父親の戦死によりミッターマイヤー家に引き取られる。12歳だった476年夏、当時士官学校在学中で寄宿舎生活だったミッターマイヤーが夏に久々に実家へ帰省したことで、将来の伴侶と出会う。そして7年後の483年ごろ、立派な青年士官となったミッターマイヤーから求婚され受諾。つつましやかな結婚式をあげる。時にエヴァンゼリン19歳、ウォルフガング24歳であった。
その後もミッターマイヤーはラインハルト・フォン・ミューゼルと出会い、彼の下で様々な戦いに出征してゆくこととなるが、そのたびにエヴァは軍人の妻として、信頼と不安をないまぜにしながら夫のいない家を守った。やがてゴールデンバウム王朝はローエングラム王朝に取って代わられ、夫ウォルフは軍人として位人臣を極めることとなる。
新帝国暦1年8月末、フェザーンへの大本営移動とともにミッターマイヤーがオーディンを出立すると、夫がフェザーン、ハイネセン、イゼルローン回廊と転戦するあいだ長く離れ離れとなった。ウォルフがオーディンに帰ることはついになく、この不本意な別居状態が解消されるのは、翌年7月の遷都令によってオーディンの政府高官と家族が一斉にフェザーンへと移転した時のこととなる。フェザーンへの旅行は、人類史上もっとも長い距離を征した男の妻が生まれてはじめて経験する長旅であった。
フェザーン到着時には、ミッターマイヤーが宇宙港まで副官も従卒も伴わずに出迎え、肩を並べて歩く姿が周囲の人々を驚愕させた(石黒監督版OVAではマントも色鮮やかな元帥軍服で平然と待っている姿が印象的)。二人はそのままありふれた無人タクシーで大本営にむかい、皇帝ラインハルトに挨拶している。このとき求婚時の逸話が話題にのぼったことが、のちの”夏のおわりのバラ”につながるのである。ちなみに夫妻はこののち皇帝ラインハルトに玄関まで見送りを受け、新居まで徒歩で帰宅した。
新帝国暦2年のロイエンタール元帥叛乱事件に際しては、親友との戦いに出向くミッターマイヤーを送り出し、帰宅時にはロイエンタールの息子を抱く夫を出迎えた。事前にヒルデガルド・フォン・マリーンドルフからの連絡を受けていた彼女はロイエンタールの遺子を養子にしたいという夫の願いを快く受け入れ、ただひとつの条件としてその赤子を「フェリックス」と名付ける。この時、ロイエンタールの従卒であったハインリッヒ・ランベルツもミッターマイヤーの被保護者としてともに暮らすこととなった。
翌3年初頭、夫のそばで皇帝ラインハルトとヒルデガルドの結婚式に参列する。同年夏、皇帝ラインハルトの臨終にあたってヴェルゼーデ仮皇宮に呼び出され、夫とともに1歳2ヵ月のフェリックスを連れて参内。フェリックス・ミッターマイヤーが皇子アレクサンデル・ジークフリードに対面するさまを見守り、皇帝ラインハルトの臨終に立ち会った。
夫ウォルフにとって、最愛の妻エヴァはなによりもかけがえのない存在であった。そして彼女は、勇猛果敢・果断即行において誰も比肩するもののない帝国軍随一の勇将が、およそ名将らしからぬ姿を見せてしまう相手でもあった。
かつて帰省時に初めて会った時、母親からエヴァのことを伝えられたウォルフの反応は興味なさげな生返事だけだったが、以後休暇ごとにまめに帰宅するようになったせいで未来の”疾風ウォルフ”の隠れた作戦目的は両親からはみえみえだった。何事にも大胆なウォルフが、求婚を決意するまでに7年の時間を要した。実際に求婚する際には戦場よりも緊張し、遠くから見ていた父親が歯がゆく思うほどに手間取った。剛勇をもってなるウォルフでさえも、エヴァを失うという想像は考えるのもいやなほどに不吉で不快なことだった。やがて帝国軍の宿将・宇宙艦隊司令長官となった後でさえ、フェリックスを連れて行く際には求婚以来の緊張を見せるほどだったのである(その勢いでハインリッヒ少年は忘れ去られかけた)。
ウォルフがエヴァに内心を吐露することも多く、新王朝成立直後からヒルダこそが皇妃にふさわしい、皇子はさぞ聡明になるだろうと語ったり(エヴァに「結局はおふたりのお気持ち」となだめられた)、ウォルフがフランツ・フォン・マリーンドルフより後任の国務尚書に推されたときは「おれに政治家がつとまると思うかい」と聞いてみたりしている。ただし、当然ながら政治の素養があるでもないエヴァの反応は個人的なレベルのものにとどまった。
また、ロイエンタールの叛乱時には、討伐に出征するウォルフに対し、夫の親友としてロイエンタールを敬愛しているが、夫の敵となるならば無条件で憎むことができる、と、涙をこらえながらも気丈に告げている。ウォルフの出征はけして珍しいことではなかったが、この時ばかりは相手がロイエンタールであり、エヴァには夫の無事の帰宅を祈る特段の事情があったのである。
ウォルフからエヴァへのプロポーズが、のちの勇将らしからぬものであったことは既に述べた。その詳しいいきさつは以下のとおりである。
プロポーズを決意した彼は、休暇をとって町に出ると、軍服のまま花屋に飛び込んで(花屋を怯えさせながら)花束を買い求める。「女の子によろこばれそうなやつ」というオーダーを聞いた花屋の店主がすすめたのは黄色いバラで、彼は店の黄バラの半分を買って花束に仕立ててもらった。ところが、黄色いバラはおよそプロポーズにふさわしからぬもの(花言葉は「嫉妬」「気紛れな愛」「薄れゆく愛」など)だったのである。ウォルフがそれを知ったのは当然ながら後のことで、のちに夫婦と皇帝ラインハルトとの歓談の場で求婚時に持っていった花を問われた際に苦笑している。
さてエヴァはというとミッターマイヤー家の庭で芝生を手入れしていたが、そこに花束とともにチョコレートとラム酒入りスポンジケーキ(フランクフルター・クランツ)をたずさえたウォルフがしゃちほこばってあらわれる。しかし、エヴァの笑顔の前に、彼は用意していた台詞をふきとばしてしまい、エヴァはじっとうつむいたまま、身振り手振り、しどろもどろのプロポーズに聞きいった。やがてエヴァは、満身の勇気をふるったウォルフに抱き寄せされ、接吻することとなる。この時、彼は「自分自身よりも貴重なものが地上に存在し」ていることを知り、ウォルフの父(遠くから見ていた)は「でかした」とつぶやいたのであった。
のちにエヴァは、ウォルフと結婚したことについて「わたくしが求婚をうけたのは、相手が将来性のある有能な士官だったからではありませんわ。あなただったからですよ」と語っている。「それがわかっていれば、おれはもうすこし格好よく結婚を申しこめた」とは、対するウォルフの談である。
以上のように、エヴァとウォルフは大変仲睦まじい夫婦であったが、望まぬまま父親となったロイエンタール曰く「造物主の悪意を信じさせるのに充分」な事に、子供にだけは恵まれなかった。
やがて彼ら夫婦は、叛乱を起こして死んだロイエンタールの子をフェリックスと名付けて育てるとともに、ロイエンタールの従卒ハインリッヒ・ランベルツを引き取り、ミッターマイヤー家の住人は倍に増えることとなった。この家族は『ミッターマイヤー元帥評伝』の執筆者が述べたとおりの「たがいにまったく血のつながりがない四人」であったが、その家庭生活は平和で、それでいてにぎやかなものだった。
ちなみに、子供が出来なかった理由が疾風ウォルフがベッドの上でも疾風だったからかどうかは定かではない。
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最終更新:2024/12/10(火) 15:00
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