セルゲイ・スロヴィキンとは (セルゲイスロヴィキンとは) [単語記事]

セルゲイ・スロヴィキンとは、ソビエト連邦及びロシア連邦の軍人である。

概要

ロシアのプーチン政権において、航空宇宙軍の総司令官を務める上級大将の階級にあり、ショイグやゲラシモフに次ぐ軍の最高幹部として知られる。

2015年からアサド政権を支援するためロシア軍が介入しているシリア内戦に、2017年から司令官として関わり、ラッカやデリゾールなどシリアの重要拠点の作戦で成果を見せ、任務終了後に「ロシアの英雄」の称号を受ける。しかし、民間人などへの犠牲を厭わない残忍な作戦を行ったため、「アルマゲドン将軍」の異名を持つ。その後、同年11月にロシア航空宇宙軍の総司令官を拝命した。

2022年 2月から行われているウクライナ侵攻においては、南部軍集団（クリミアからウクライナ南部へ浸透することを目的とする軍）の司令官だったが、当初の目標がほぼ頓挫した6月には事実上、10月には正式にウクライナ侵攻の総司令官に任命される。

だが、その後のウクライナの反攻によるヘルソンの放棄などの失態、2023年 6月に反乱を起こしたプリゴジン及びワグネルとの深い繋がりが災いして、6月28日に逮捕、8月18日には航空宇宙軍総司令官の職を解かれた。

エフゲニー・プリゴジンは8月23日に航空機事故で亡くなり、27日にその死亡がDNA鑑定で確実なものになった。スロヴィキンの今後が案じられる。

来歴

1966年にノヴォシビルスクで生まれ、オムスクの高等連合軍司令部学校で士官としての教育を受け、1979年よりはじまったアフガニスタン侵攻では、1980年代後半よりロシアの特殊部隊であるスペツナズの一員として従軍。軍歴をスタートさせる。

ソ連崩壊に前後して生じたクーデター未遂事件では、陸軍大尉として反クーデターのデモ隊の鎮圧に関与。参加者のうち3名を殺害したため、失敗後に逮捕されるが、大統領になったエリツィンの鶴の一声で告訴が取り下げられる。1995年には武器の横流しの疑いで軍事法廷より有罪判決が下ったが、受け取った人物が競技目的で売ってくれと頼んだことが発覚したため覆されることになった。

その後、2004年の第二次チェチェン紛争では自動車ライフル師団を率いて反乱鎮圧に赴く。その際に彼は取材に来た新聞記者に対して「交戦規則、特に過激派の容疑者を射殺せずに拘束する規定が鎮圧の妨げになっており、民間人を半ば盾にとってテロリストに隠れられたら発砲を躊躇してしまう」という趣旨の発言を行い、「鉄の拳」を持つ峻厳な指揮官として評判を得ることになる。後にアルマゲドン将軍と呼ばれる残忍さや冷徹さが垣間見える。

チェチェンでの任務を終えた彼はその後も順調に出世し、2010年の1月にはヴォルガ・ウラル軍管区の参謀長に就任し、中央軍管区への編入ですぐに職を解かれるが、同年11月にはロシアの憲兵隊創設の責任者となった。発足の暁には長官になることも内定していたが、ロシア軍事検察庁の横槍でその人事は頓挫し、対立が発生する。だが、それでもキャリアの積み重ねは止まらず、2013年 10月には東部軍管区の司令官にまで上り詰めた。

2017年のシリア内戦の介入においては概要の通り大きな活躍を見せ、アサド率いるシリア政府軍はISILに大半を占拠されていた状況から一気にシリア全土の半分まで取り戻すことに成功した。これを受けて、12月28日にロシア連邦の英雄に選ばれる。その後2020年の11月までシリア駐留ロシア軍の総指揮をとっていたが、アメリカの人権団体の報告によれば、人権上の問題が生じた違反行為の指揮責任を負うべき人物としてスロヴィキンをあげている。