ムムタズマハル(Mumtaz Mahal)とは、1921年イギリス産まれの競走馬である。
近代競馬のスピードの祖と言う程に後世に影響を残した名牝。
通称「Flying Filly(天を駆ける牝馬)」
父The Tetrarch、母Lady Josephine、母父Sundridgeという血統。
父のザテトラークはヘロド系の父系を持ち、2歳時の7戦7勝という成績もさることながら6ハロンのレースで数十馬身ぶっち切る、5ハロンのレースで0.5ハロン以上出遅れながら勝利するなど訳の分からない伝説を数多く残したスピードを持った名馬。しかしながら種付けが嫌いという原因で11世代の中でわずか130頭しか産駒を輩出する事が出来なかった為、ヘロドのサイアーラインを後世に残すことが出来なかった。
母レディジョセフィンの競走成績は6戦4勝ながら、繁殖牝馬として大活躍。ムムタズマハルの他に、姉のレディジュラーは名種牡馬のフェアトライアル(ブリガディアジェラードの父系、現在も存続中)を輩出している、
母父サンドリッジは英愛リーディングを獲得したこともある当時のイギリスを代表するスプリンターの一頭。
名前の由来はムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンの第一王妃「ムムターズ・マハル」より。世界遺産のタージ・マハルに眠っている夫妻である。
父も母父も名スプリンターであったムムタズマハルは両親から類まれなるスピードを、父から芦毛を強く受け継いだ他、立派な馬体を誇っており、1歳時のセリで当時イギリス史上2番目の価格の9100ギニーで取引された(当時1位はセプターの1万ギニー、個別記事参照)。
2歳4月の調教で既走馬を28ポンド(約12.7kg)重い斤量でちぎったことで「とんでもないのが来たぞ!」と評判になったムムタズマハルは、5月に5ハロンのレースでデビューし連戦連勝。デビュー戦で馬なりのまま後の英オークス馬ストレイトレースに圧勝したり、5ハロンのレースなのにゴール前で手綱を緩めて10馬身千切ったりなど卓越したスピードを披露していた。しかしながら2歳最後のレースでは湿った馬場と疲労で吸血鬼アーカードという馬に半馬身差に敗れ、6戦5勝の成績で終える。とは言え2歳のフリーハンデでは2位の牡馬よりも2ポンド高く、上述の通称に加え父ザテトラークに匹敵するほどの評価を獲得していたのだった。
3歳の緒戦は英1000ギニー(1マイル)であったが、残り2ハロン付近で失速、2着に敗れる。その後オークスは距離が長すぎるということでマイル戦のコロネーションSに向かったが、7頭中5着のボロ負け。彼女はマイルでも長すぎる程、スタミナが不足していたのだった。
だが短距離のレースに戻ると2連勝。特に2戦目のナンソープS(5ハロン)では、1つ上でジュライカップなどを勝った強豪ドレイクを6馬身離す等、短距離では向かう敵無しだった。このレースを最後に引退し、通算10戦7勝。5~6ハロンのレースしか勝利していないが、勝ったレースではいずれも圧勝劇を繰り返した。
引退後はアイルランドで繁殖入りし、後にフランスに移動。9頭の産駒を輩出し、第二次世界大戦によってドイツ軍に牧場が接収されても本馬のみは残され、1945年2月に死亡した。
直子に目立った活躍馬はいなかったが、その内2頭の牝馬、マーマハルとムムタズビガムが繁殖入りしてからが本番である。
マーマハルの直子マームードは1936年の英ダービーにおいて、1995年の*ラムタラに破られるまで保持されたレコードを記録するなど活躍。種牡馬入りしてからも素晴らしく、産駒のアルマームードはノーザンダンサーの母ナタルマとヘイローの母コスマーを産み出した。*サンデーサイレンスの血統はマームードの4×5のクロスがあり、マームードの影響を受けている。マーマハルの牝系はヨーロッパや日本にも広がり、代表的な競走馬はミゴリ、プティエトワール、ザルカヴァ、タニノギムレット、アラムシャー、ワールドクリーク・スマートファルコン兄弟、アルピニスタ等が該当する。
続くムムタズビガムの活躍も凄まじい。直子に大種牡馬ナスルーラを輩出し、産駒は世界中で活躍。それらの詳細は、ここではとても書き切れないので個別記事を参照されたい。
他にも孫世代に*サンデーサイレンス・*ブライアンズタイムの父系祖先ロイヤルチャージャーを輩出。牝系も世界中で活躍し数多くのステークスウイナーを輩出した。代表牝系にカラムーン、シャーガー、ハビブティ、オーソーシャープ、リズンスター、ホクトベガ、オクタゴナル、ゴールデンホーン、クラックスマン、メロディーレーン・タイトルホルダー姉弟、ベリーエレガント等がいる。
その他、ラストムマハルからはイギリス史上最高クラスのスプリンターと誉れ高い快速馬アバーナントが産まれ、牝系もコウエイトライが出るなど健在である。
これらの直系以外にもミスタープロスペクターにはナスルーラの血が入っている他、ネアルコフリーと言われたホーリーブルにもマームードの血が入っているのでムムタズマハルはかなりの確率で血統表に入っているのである。
と言うよりもノーザンダンサーもミスタープロスペクターも*サンデーサイレンスもナスルーラもマームードもロイヤルチャージャーも入っていない馬を探すほうが難しい。ちなみにモンズーンがこれに該当するが、彼の血統には上述のフェアトライアルが入っているので、厳密に言えばレディジョセフィンの血を持たない馬がいるのを探すのはもっと難しい。もしそんな馬が今でもいるのなら是非教えて欲しいものである。
それ程までに今のサラブレッドに影響を与えている「Flying Filly」ことムムタズマハル。エクリプスがサラブレッドの父と言うならば、彼女は現代サラブレッドの母と呼んでも良いのではないか。
| The Tetrarch 1911 芦毛 |
Roi Herode 1904 芦毛 |
Le Samaritain | Le Sancy |
| Clementina | |||
| Roxelane | War Dance | ||
| Rose of York | |||
| Vahren 1897 栗毛 |
Bona Vista | Bend Or | |
| Vista | |||
| Castania | Hagioscope | ||
| Rose Garden | |||
| Lady Josephine 1912 栗毛 FNo.9-c |
Sundridge 1898 栗毛 |
Amphion | Rosebery |
| Suicide | |||
| Sierra | Springfield | ||
| Sanda | |||
| Americus Girl 1905 栗毛 |
Americus | Emperor of Norfolk | |
| Clara D. | |||
| Palotta | Gallinule | ||
| Maid of Kilcreene |
クロス:Doncaster 5×5(6.25%)、Speculum 5×5×5(9.38%)、Rouge Rose 5×5(6.25%)
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最終更新:2025/12/11(木) 00:00
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