中村拓磨とは、鳥人間コンテスト2011 人力プロペラ機ディスタンスの部、優勝チーム「東北大学 Windnauts」のパイロットである。
鳥人間コンテスト常連で幾度もの優勝経験を持ちなおかつ最長到達距離36000mを持つ東北大学Windnauts
しかし今大会にかける思いはいつもと違う物であった。
2011年鳥人間コンテストに出場した東北大学のチームは、2011.3.11の大地震によって甚大な被害を受けた東北を勇気付けようと奮起していた。校舎や施設は被災し、甚大な被害を被ったものの、幸い機体やチームのメンバーに大きな被害は無く、周囲の援助を受け出場する事になる。
満を持して飛び出していったパイロット中村拓磨。順調な滑り出しを見せ、3km地点をクリアーし、更なる飛行を予感させた。
「直進するッ…!!」
4kmを目前としたところだった。機体に備え付けられたカメラが捕らえたのは中村の悲痛な叫びだった。
「聞こえる?桂・・・GPSの信号が無い。」ここまで順調な飛行を続けていたWindnautsを襲ったトラブル、そしてその声は地上に届いていなかった。
「あの・・・何も聞こえない・・・無線が・・・」むなしく響く声
さらに風に流されて進路は陸側へ向かってしまう。絶体絶命の危機に陥ってしまったのだ。
「対岸は見える・・・だがこれはダメなんだろう・・・?」
優勝を目指すWindnautsの機体は無情にも大きく旋回し、スタート地点へと戻りだした。それを悟り必死に進路を修正しようとする中村と方向を修正しろと叫び続ける事しかできないメンバー。そのまま3km地点を大きく割り、2km地点近くまで飛行してしまう。
「もう・・半分くらいの体力を使っている・・・帰って来れるのか?・・・これで・・・」
大きく旋回し、スタート地点へと進路を取ってしまった機体を必死に戻そうとする中村。しかしその間にも体力はどんどん消耗されていってしまう。
何かが吹っ切れたのかもしれない・・・中村は「エンジンだけは一流のところを見せてやるぜ」といい機体の進路の建て直しに全力を注ぐ。
その光景を天が見ていたのかは定かではない。しかしその結果2km地点と3km地点の間で完全に旋回し、進路の建て直しに成功する。
「やっと戻った・・・うわ・・だいぶ流されてるな」
旋回に成功したが戻ってきたのは3km地点大きな旋回によりかなりの距離を流されてしまっていた。
大きな旋回をし大地震の事を奇想したのかもしれない・・・順調な滑り出しから突然の通信系の重大なトラブルと風による大きな回り道、復帰したことによってより前向きに見ることができたのだろう。
だんだんと息も絶え絶えとなってくる中村。計測距離は5kmを超え10kmに近づく。
「押されてる・・・・わかってる・・・」再び風に煽られ進路を流されてしまう機体。必死に前に進ませようとする中村とそれを見守り続けるメンバー。観客も固唾を呑み見守る。
「わかってるけど・・・・」「あぁぁぁあぁぁぁ」中村の咆哮が響く。
流されながらも確実に前へ・・・前へと進めていった。
18kmを過ぎたあたりだろうか・・・懸命にペダルをこぎ続ける中村を襲った突然のこむら返り。ここまでの総飛行距離は20kmを大きく超えて30kmをも超えていた。1時間以上もペダルをこぎ続けた中村の足に限界が訪れたのだ。
「片足だけでまわすのは・・・右も限界に近い・・・・」
それにより機体は徐々に高度を下げ水面に触れるような状態にまで陥ってしまう。
「左足が・・・攣ってる・・・・アアアァァァしがぁぁぁぁぁぁぁ」
ペダルを踏み続けるのは郷里への想いか、仲間との友情か、己の力の誇示なのか・・・左足の痙攣にもかかわらずペダルを踏み続ける。
「アァァ・・・アァァァァうごけぇぇぇ!!!!!」
自らを奮い立たせる中村
「アアァァ・・・ィタイッ・・・」
「まわれっ!!回らんかーっ!!」
必死に、一途に、懸命に、こぎ続けるペダル。そして中村がここまでに踏み続けてきたペダルは・・・計測距離は18kmを超え総飛行距離は34kmにも達していた。
幾度も車輪が水面に触れ着水しそうになる。それを懸命にこらえる中村
その懸命な姿は幾多の大きな傷を受けながらそのたび立ち上がり懸命に日本を支え続ける日本人の姿そのものだった。
ついに中村は限界を迎えてしまう。距離を聞こうとすると同時に着水。
しかしその飛行距離は35km近くになり計測距離は18687.12mにもなった。
その後東京工業大学が8182.8mで着水した事で、優勝が決定。
震災から142日目に東北大学は悲願の鳥人間コンテスト優勝を果たしたのだった。
その姿を見たものは勇気付けられ、人間の死力というものを知ったという。
大会終了後、中村は本放送を待たずして渡米、本編やネットからの反響はアメリカで知ることとなった。
「日本ですっごくブームになってるよ。」と伝えられた時、彼はこう答えたという…
中村、君の帰りを待っている。
先のコンテストの後米国のパデュー大学へ留学。成績優秀者として表彰されたとのこと。留学中にはフライトスクールに通い、自家用機パイロットの資格を取得。
ドイツへのサマーリサーチなどを経て東北大学卒業、ジョージア工科大学大学院へ進学。現在は博士課程に在籍。専攻は航空宇宙工学。主な研究内容はUAV(無人航空機)制御である。尚、大学院進学の際併願したカーネギーメロン大学、ペンシルバニア大学、パデュー大学、チューリッヒ工科大学、ローザンヌ工科大学大学院に合格している。
ちなみに本人は動画を認知しているようで、自身も当時の発言をネタにしたりと楽しんでいる様子である。「エースコンバットとゼータガンダムの奴がお気に入り」だそうである。
鳥人間放送したからかブログや2ちゃん,ニコニコに色々と僕に対するコメントが(笑) 褒められるのは嬉しいけど,どんな大学行ってようが研究してようがパイロットだろうが夢を追ってようが無かろうが,あの動画はとりあえずキモいし暑苦しいだろ(笑)
(本人twitterより)と述べている。
なお、セスナで湖の上空をとびながらプロポーズしたとのことである。
とは本人談。いいね!いい人生だよ!
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最終更新:2024/11/09(土) 09:00
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