L.A.コンフィデンシャルとは (エルエーコンフィデンシャルとは) [単語記事]

L.A.コンフィデンシャル(現代：L.A.Conf ide nt ial)とは、1990年に発刊されたジェイムズ･エルロイの『L.A.四部作』の三作目にあたる小説、及びそれを原作とした1997年公開の映画である。

概要

1950年代のロサンゼルス市警。マフィアのボスの逮捕、酔った警官が容疑者に暴行した「血のクリスマス事件」などの騒然としたロサンゼルスの世相を背景にし、カフェで元刑事を含む6人が殺害された「ナイトアウルの虐殺」の捜査をする3人の刑事と、彼らが捜査の中で直面する警察内部の腐敗、ロサンゼルスの裏側。物語はこの三人を中心とし、混沌としたL.A.を描いている。

映画版は、ワーナー･ブラザーズが制作。カーティス･ハンソンが監督･制作･脚色を兼任した。
本作はラッセル・クロウとガイ・ピアースの出世作となった。クロウは本作後、『グラディエーター』や『ビューティフル･マインド』でアカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞。ガイ・ピアースは『メメント』や『英雄の条件』、『英国王のスピーチ』に出演し、HBOで放送されたテレビ･ミニシリーズ『ミルドレッド･ピアース幸せの代償』でプライムタイム･エミー賞助演男優賞を受賞した。

映画版ストーリー

1950年代のロサンゼルス。大マフィアのミッキー･コーエンの逮捕をきっかけに、彼の後継者として裏社会の利権を欲する血みどろのギャング抗争が勃発。コーエンの部下達は次々と殺され、彼らが手中に収めていた麻薬はいずこかへ消えていく。一方、彼らを取り締まるLAPDも過激化と腐敗の一途を辿り、拷問による自供や正当防衛の偽装、情報の横流しや賄賂が常態化しつつあった。

クリスマスイブの日、警官に危害を加えて連行されてきたメキシコ系容疑者たちが、警察署内で警官から集団リンチされる事件が起こる。父のような立派な警部を目指し、唯一リンチに加わらなかったエド･エクスリー巡査（ガイ･ピアース）はありのままを証言し、同僚を売る形で警部補に昇進する。一方で正義感に溢れるものの暴力的なバド･ホワイト巡査（ラッセル･クロウ）は停職処分となり、その相棒のステンズランド巡査は免職。更に刑事ドラマのアドバイザーとして「ハリウッド･ジャック」の異名を取りつつ、裏ではタブロイド紙と癒着しているジャック･ヴィンセンス巡査部長（ケヴィン･スペイシー）も、一時的に左遷されることになった。

数か月後、コーヒーショップで客と店員の6名が皆殺しにされる強盗殺人事件が発生。被害者の1人にはステンスランドが含まれていた。更なる出世を志すエドはジャックを自分の捜査に抱き込み、復讐に燃えるバドも独自の捜査を開始する。

やがてエドは犯人と思われる3人の黒人を追い詰め、銃撃戦の末に全員を射殺する。これで事件は解決したと思われたが……。

受賞

第64回ニューヨーク映画批評家協会賞、第２３回ロサンゼルス映画批評家協会賞で作品賞を受賞。

第70回アカデミー賞では９作品にノミネートされ、作品賞の最有力候補だったが、同年の末に公開された『タイタニック』が11部門を受賞したため、本作は助演女優賞と脚色賞の2部門のみを受賞した。

史実とのリンク

物語自体はフィクションだが、当時の世相を交えるために実際に発生した出来事や人物を巧みに織り込んでいる。

ミッキー・コーエンの逮捕	映画の冒頭で大物ギャングのミッキー・コーエンが逮捕されているが、本物のミッキー・コーエンも1950年に脱税で逮捕されている。
血のクリスマス事件 (Bloody Christmas)	バドやステンスランド達が留置中の被疑者に暴力を振るい乱闘騒ぎを起こすが、1951年のクリスマス・イブにLAPDは同様に乱闘騒ぎを起こしている。これは警察官の暴力を端的に表す事例として、当時も騒がれた。
ジョニー・ストンパナートラナ・ターナー	エドが女優そっくりの高級娼婦と間違えて、本物のラナ・ターナーを娼婦呼ばわりする場面。あそこでラナはジョニーと一緒にいるが、本物の二人も恋愛関係にあった。史実のジョニーはラナに日常的に暴力を振るっていたため、後に彼女の娘に刺殺されている。
刑事ドラマとテクニカルアドバイザー	ジャック・ビンセンスがテクニカルアドバイザーを務めていた刑事ドラマ「名誉のバッジ」。元ネタは1950年代から放映された刑事ドラマ「ドラグネット」(Dragnet)である。これは実際にLAPDが扱った事件を基に物語が作られていたのだが、映画と同様に現役警察官のテクニカルアドバイザーがいた。LAPDの強盗課に勤務するマーティン・ウィン巡査部長がその人。彼は風紀課や殺人課勤務で勤務した経験も有する。賄賂の名人だったかどうかは知らん。
新しい警察本部	映画のラストシーンで新しい警察本部に移る旨が本部長より伝えられるが、この新しい本部とは1954年に実際に竣工したロス市警本部のこと。当初は警察管理ビル(PAB)と称されていた。後に病死したウィリアム・H・パーカー本部長の名前にちなみ、パーカーセンターと改名された。ウィリアム・H・パーカーはLAPD近代化の父と呼ばれており、腐敗と暴力対策に取り組んだ。 2009年に竣工した新市警本部はニューパーカーセンターと命名されている。