ARX-8 レーバテインとは、賀東招二氏のライトノベル「フルメタル・パニック!」、及びそれを原作とするアニメシリーズに登場する人型兵器、アーム・スレイブの機種名である。
概要
東京での決戦で大破したARX-7 アーバレストに代わり、宗介の乗機となったラムダ・ドライバ搭載のAS。M9 ガーンズバックやARX-7 アーバレスト、またはZy-98 シャドウやヴェノム(コダール)といった標準の第三世代ASやその派生機が比較的細身のシルエットなのに対し、マッシブなシルエットを持つ。赤と白を基調にした、AIアルと宗介の静かな怒りを表すかのような色合いと姿をした機体。
名の由来は、北欧神話に登場する魔剣レーバテインより。本来はレヴァンティン等、「ヴァ」表記が読みに近いが、ARXシリーズのARX-6ハルバード(M6 ブッシュネルをベースにした実験機)、ARX-7 アーバレストの記載的特徴を引き継がせたとの事。
詳細
機体名 | ARX-8 レーバテイン |
全高 | 8.7m |
基本重量 | 10.3t |
最高自走速度 | 不明 |
最大跳躍高 | 80m以上 |
最大作戦行動時間 | 30時間 |
動力源 | パラジウム・リアクター ロス&ハンブルトン PRX3000 (推定4800kw) |
固定武装 | GAU-19/S 12.7mmガトリングガン×2 XM18ワイヤーガン×2 |
基本携行装備 | セワード・アーセナル 165mm多目的破砕・榴弾砲 ジオトロン・エレクトロニクス GRAW-4単分子カッター ロイヤル・オードナンス M1108対戦車ダガー アライアント・テックシステムズ M1097対AS用手榴弾 オットー・メララ ボクサー2 76mm散弾砲 |
最終決戦仕様 追加装備・兵装 |
XL-3緊急展開ブースター 妖精の羽 「ブラックマンバ」 短射程空対空ミサイル 「GEC-B」 40mmアサルトライフル 「ゼーロス」 20mmガトリング式機関砲 デコイユニット |
備考 | 胴部にAI制御の補助腕×2 |
ARXシリーズには本来存在しない機体で、ミスリル壊滅後の建造のため正式にはミスリル所属でも無い。建造に協力したギャビン・ハンターが機体番号を付け、機体名はアルの自称である。
東京での戦いで破壊されたアーバレストの残骸は日本政府に接収されたが、元ミスリル情報部のレイス並びハンターが共謀してAIアルのコアユニットを持ち去った後、ウィスパードのクダン・ミラの協力によりコアユニットを再起動させることに成功。機体設計はAIアル自身が行い、ミラとハンターが開発に協力した。当然ながら搭載AIはアル。
宗介とアルが敗北した相手、レナードの乗るウィスパード専用ASベリアルに対抗するための攻撃能力を追求しており、大型戦闘機や戦闘艦船並の出力を持つロス&ハンプルトン社の試作パラジウム・リアクター「PRX3000」を搭載。M9 ガーンズバック以上のジェネレータ出力を、パワー重視の駆動系でフル稼働させる事によって、既存ASの常識を遥かに超えたパワーを叩きだす。
ジェネレーターの常軌を逸した大出力により膨大な熱が発生するため、後頭部よりポニーテール状の放熱柵(コダールタイプと同じもの)が飛び出し、機体冷却をカバーする。
再会並び搭乗直後、戦闘状況にあった事から試しに跳躍した宗介は航空機事故並みの30Gの衝撃を受けたと思ったら80m上空に居たという状況に「なんなのだこれは?」と驚いたほど(その時のアルは宗介に「中々のものでしょう?」と、AIなのにドヤ顔が想像できる回答を返した)。
これは、ミスリル運用のM9が最大跳躍高45mである事からラムダ・ドライバ無稼働の試し状態ですら約2倍弱の跳躍力であり、(オペレータが耐えられるかはさておき)フルパワーで跳躍したらもっと大変な事になると思われる。
また、大出力ジェネレータの恩恵は稼働の際に大きな電力を必要とするラムダ・ドライバにも影響し、ラムダ・ドライバ搭載ASとしては一つの完成形であった筈のコダールタイプ3体を、いとも簡単に撃破(拳で突き破る、蹴りで真っ二つ、足払いで敵を一回転半)した上に、ベヘモスの重量(踏みつけ)を押し返すほどの常識外れのパワーを発揮した。
更には、通常ASでは撃った途端に腕が吹き飛ぶ反動の「セワード・アーセナル 165mm多目的破砕・榴弾砲(デモリッションガン又は爆砕砲)」を装備、ラムダ・ドライバ稼働時のみの使用だが、規格外のパワーと共に本編当時におけるASというカテゴリを大幅に逸脱した大火力を持つこととなった。
その一撃は、ラムダ・ドライバの恩恵も合わさって踏みつけてきたベヘモス、遠方に退却しようとするベヘモスを一発で仕留める程で、僅か数分の間にコダールタイプを3機、ベヘモスを3機仕留める戦果をあげる事となる。
他にも、M9などでは対戦車ダガーやAS手榴弾などが収められていた部分には、AI制御の補助腕が装備されており、マガジン交換などの宗介の行動の補助だけでなく、投擲や射撃なども別々に行えるようになっている。宗介は「気持ち悪い」と言ったが、アルは気に入っている様子。
特殊な装備・武装
- セワード・アーセナル 165mm多目的破砕・榴弾砲
- デモリッションガン、爆砕砲などと呼ばれる、本来は工兵用の建造物・構造物の破壊を目的とした装備。ASが持って射撃するには反動の大きすぎる武装だが、それを強引にAS用装備として転用してある。撃った時点で腕が吹き飛ぶ反動のため、ラムダ・ドライバの稼働が必要。
短射程モードの他、長距離射撃用に着脱式の砲身を装着して「ガン・ハウザーモード」を取ることで、最大射程を30kmまで到達させる事も可能な、本機最大火力・最大射程の武装である。ラムダ・ドライバを併用しての射撃が前提だが、その状態での火力はベヘモスを一撃で沈める威力を誇る。
十数年を経たアナザーの時代では同社製のAGS-3 155mm先進的榴弾砲(デモリッションガン3)を搭載したM9A1E1が存在するが、こちらはラムダ・ドライバの無い通常のASであり、設計段階でAS本体と砲自体に効果の高い衝撃吸収機構を搭載する事でようやく射撃を可能にしている。 - ラムダ・ドライバ・キャンセラー「妖精の羽」
- 「妖精の羽」は後にレーバテインに搭載された、ラムダ・ドライバを無効化する装置。肩部分に搭載される。設計はウィスパードの久壇未良(クダン・ミラ)。
ラムダ・ドライバ使用時とは異なり、作動中に「そんなものは無い」と強く念じる事で効果を発揮する。尚、莫大な電力を消費する上に効果発動時は自身もラムダ・ドライバの恩恵を受けられなくなる諸刃の剣だが、ラムダ・ドライバ搭載機との戦いにおいては、ファルケ搭載の「妖精の眼」と同じく、ミスリル残党の作戦の要、生命線となっていた。ラムダ・ドライバによって自在に宙を飛んでいたベリアルは、妖精の羽の作動により恩恵を失って落下している。 - XL-3 緊急展開ブースター
- 敵の巣となったメリダ島へ単機でレーバテインを送り込むために、整備班のエドワード・サックス中尉が2つのXL-2を強引につなぎあわせて作成したもの。XL-3の名前が付いているが正規のラインナップではなく、サックス中尉が勝手に名付けた物である。
決戦へ挑むためにこれでもかと武装を搭載して空力的に不安定な状態のレーバテインを、莫大な推力で「羽はついているものの、もはや飛行というよりは投射に近い」状態で飛ばす。幾度も被弾しながらも絶望的な火力包囲の中を最後まで粘り強く飛び、宗介達を送り届けた。
問題点
ASというカテゴリの兵器から大幅に逸脱した究極的な火力・戦闘能力を追求した機体ではあるが、大出力の試作型ジェネレータ、強力なパワーを実現させる駆動系、ラムダ・ドライバ、膨大な発生熱を処理する冷却システムを搭載した結果、他の部分でしわ寄せを被っている。
電子兵装の脆弱さ
まず、破格の戦闘能力と引き換えにペイロードに余裕が無くなったため、ECS(電磁迷彩システム)は搭載されていない上、電子兵装(ECCS等)については「サベージよりはマシだがM6に毛が生えた程度」のレベルとなった。単機では敵に発見されても身を隠す事ができず、不可視ECSを稼働させたASを捕捉する事が困難なのである。ミサイル相手には脆弱だとアル自身が認めている。
電子兵装周りについては僚機のM9などからデータリンクでカバーする事を想定してオミットした様子だが、単体行動や通信阻害の際に不安が残る。
作戦行動可能時間の更なる低下
次に、大出力のジェネレータを搭載した事とラムダ・ドライバ搭載により、稼働時間が極端に短くなってしまった事も挙げられる。アーバレストの時点で通常ASであるM9よりも稼働時間が減少していたが、標準的な他ASの最大作戦行動時間が100時間以上なのに対し、本機は僅か30時間である。
パーツ疲弊の速さ
他に、通常ASの限界を超えた出力で動作させる駆動系は、基礎がM9である所に詰め込んだ強引な設計が仇となり、フレームをはじめとする部品疲労を殊更早く引き起こしている。戦闘が続くも補給もままならなくなった状況では、初戦闘時のような行動は数度が限度と示唆されていた。
投入機会の難しさ
通常の第三世代ASであるM9とラムダ・ドライバ搭載ASの戦力比は、千鳥かなめの見立てでは8:1とされる。さらにASを駆逐するガンボートとして開発されたベヘモスは通常戦力では歯が立たない(ミスリルが唯一無二の例外)。単純計算で第三世代AS三十機超に相当する戦力を、レーバテインは単機で数分の内に撃破するという強烈な初陣を飾った。
その為、アマルガム側はレーバテインを最重要目標として警戒し、全力での集中攻撃か、あるいは確認時点で全力撤退するなどの状況が暫く続いた様子。いかにレーバテインとラムダ・ドライバが強力であっても万能では無いため、前述の欠点も含めると「本気を出せない」状況が続く事となる。
ミスリル側は機体の行動時間や前述の機体疲労の兼ね合いから、不可視ECSを展開した輸送ヘリに隠し、文字通り切り札として投入を待つ戦術を取ることになった。
妖精の羽
ラムダ・ドライバ搭載機をただのASと化すレーバテインの切り札でもある妖精の羽だが、これの稼働中は莫大な電力を消費するため機動力が落ち、また、自身もラムダ・ドライバを使用できなくなる。
ラムダ・ドライバを最大限活用するベリアルや、その周囲を固めるラムダ・ドライバ搭載ASへの対抗手段なのだが、出力が落ちラムダ・ドライバが使えないレーバテインの状態は、AIアル曰く「電子兵装の貧弱なデッドウェイトだらけの欠陥M9」との事。
もう一つのARX-8
M9 ガーンズバックをベースにラムダ・ドライバを搭載して製作されたと思われる機体。こちらは囮として使用された。
アーバレスト無きミスリル残党側にラムダ・ドライバ搭載機が渡ることを懸念したアマルガム側が、ラムダ・ドライバやAS用の部品・素材の生産や搬送状況からARX-8の建造を察知、ギャビン・ハンターが貨物に偽装してトラックで輸送中していた機体を奪取する。奪われた機体は、レナードの元に送られ、その見分後に一度も起動する事無く徹底的に破壊された。
ラムダ・ドライバの中核を成す流体プロセッサが大きめだった以外は、レナード曰く「つまらない設計の機体」との事で、ワンオフの実験機であったアーバレストと比較して、コダールタイプのような「量産を前提としたラムダ・ドライバ搭載機」を偽装したか、または本来のARX-8計画の機体であったのか、謎が残る。
尚、囮となったこの機体とギャビン・ハンターの犠牲によりARX-8 レーバテインは完成、レイスの手によって宗介の元へ届けられる事となる。ハンターさんは瀕死なだけで死んでません。
特記事項
小説やコミックで登場した段階にもかかわらず、XL-3や妖精の羽、はたまた武装てんこ盛りの最終決戦仕様に至るまで、リボルテックやROBOT魂シリーズで製品展開がされた異例の機体となった。
また賀東招二氏が脚本を担当したらき☆すたの回にて「レバ剣拾った!?」というこなたのセリフがあるが、放送時期と登場時期が程近いレーバテインに因んだ会話と思われる。
関連動画
関連コミュニティ
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関連項目
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