「お前が始めた物語だろ」とは漫画『進撃の巨人』に登場する台詞である。
概要
「諫山創」による漫画作品『進撃の巨人』の第88話「進撃の巨人」(作品タイトルと同じサブタイトル)に登場する台詞である。同話は単行本の22巻に収録されている。また、アニメではSeason 3の第58話「進撃の巨人」で登場する。
発言者は「エレン・クルーガー」で、発言相手は「グリシャ・イェーガー」。
この第88話はサブタイトルからもわかるように作品全体のキーとなる回で、その中で以下のように印象的に用いられており、さらに作中でもう一度類似の台詞が登場することなどもあって、読者の印象に残りやすいようだ。
進撃の巨人のセリフの中でも汎用性が高いので「お前が始めたことだろ」といった意味合いで、ネット上(例えばニコニコ動画でのコメントなど)で書き込まれることもよくある。
作中での描写
「マーレ」という国家に迫害されている民族「エルディア人」であるエレン・クルーガーは、同じエルディア人でありマーレに反旗を翻すための秘密組織に所属していたグリシャ・イェーガーに対して、自分たちエルディア人らを救うための重要な任務を任せようとした。
だが、息子ジークに裏切られてマーレに密告され、拷問を受け、さらにはついさっき目の前で組織の仲間や妻ダイナが意思を持たない「無垢の巨人」に変化させられてしまったばかりでもあるグリシャは心が折れてしまっていた。彼は座り込んだまま立ち上がることもできず、クルーガーが語るその任務を拒もうとする。
クルーガーはグリシャの家族の写真を彼に見せようとしたが、彼は「俺に憎しみを思い出させようとしても無駄だ 俺に残されたのは…… 罪…だけだ」と言って聞き入れようとしない。だが、クルーガーはそんな彼にこう話し続けた。
それで十分だ
お前を選んだ一番の理由はお前がマーレを人一倍憎んでいるからじゃない お前があの日壁の外に出たからだ
あの日お前が妹を連れて壁の外に出ていなければ お前は父親の診療所を継ぎ ダイナとは出会えず ジークも産まれない 大人になった妹は今頃結婚し 子供を産んでいたかもしれない
俺達は自由を求めその代償は同胞が支払った そのツケを払う方法は一つしか無い
俺は ここで初めて同胞を蹴落とした日から
その行いが報われる日まで進み続けるんだ 死んでも 死んだ後も
これは
お前が始めた物語だろ
最後の「これは お前が始めた物語だろ」という台詞の背景には、クルーガーが差し出しているグリシャの家族の写真、ショックを受けているグリシャ、そして過去の記憶としての「壁の外に出ようとする幼いグリシャと妹の姿」が描かれている。
これより以前の話で描かれているが、子供の頃にグリシャは妹「フェイ」とともに軽率に「許可なく出てはいけないエルディア人収容区の外」に出てしまい、その時に見とがめられた結果としてマーレの当局者により妹は惨殺されてしまっていたのだ。
つまり、クルーガーはグリシャに「お前の妹が、そして妻が悲劇的な最期を迎えたそもそもの元凶はグリシャが妹とともに「出てはいけない壁の外」に出ることにした、その選択にあるのだ」と認識させ、その選択の責任を取るようにと迫ったのである。
この言葉に背中を押されてしまったグリシャは立ち上がり、クルーガーの示した「ツケを払う方法」を受け入れてしまうことになるのだった。
「父さんが始めた物語だろ」
類似の台詞が、『進撃の巨人』の第121話「未来の記憶」でもう一度登場する。同話は単行本の30巻に収録されている。アニメではThe Final Seasonの第20話(通算79話)「未来の記憶」で登場する。
発言を向けられたのはまたもや「グリシャ・イェーガー」で、発言者は彼の息子「エレン・イェーガー」である。エレンは、兄「ジーク・イェーガー」の力により、ジークと二人で父グリシャの過去の記憶を見ることになった。
グリシャは、クルーガーに示されていた「ツケを払う方法」、すなわち「壁の中の真の王家に代々受け継がれている、「始祖の巨人の力」を奪う」という目的のために、「真の王家」たるレイス家の人々の前に訪れていた。
グリシャはレイス家の人々を殺して食することで始祖の巨人の力を奪うために、自らがクルーガーから受け継いでいた「進撃の巨人」の力を発動しようと、メスを自分に突き立てんとする(傷を負うことが、巨人に変身するためのトリガーになっている)。史実として、グリシャはここでレイス家を惨殺して「始祖の巨人」の力を奪っているのだ。当然、ジークはグリシャがこのまま巨人に変身してレイス家の人々を殺戮する光景を見せられるものと考えていたが……。
グリシャは「できない… 私に…子供を殺すなど…」「私は… 人を救う… 医者だ…」と膝をついて項垂れてしまう。
グリシャの記憶の世界を覗いている、つまり過去の歴史を見ているだけのはずなのに、史実と異なる展開になっていることに驚きいぶかしむジーク。だが、エレンは膝をついているグリシャの元へ進むと、彼の耳元でこう囁いた。
何をしてる 立てよ 父さん
忘れたのか? 何をしにここに来たのか?
「グリシャの記憶を覗いている」だけのはずなのに、エレンがグリシャに語りかけ始めたことに「…な」と絶句するジーク。
しかも、グリシャはエレンの言葉が聞こえているかのように顔をひきつらせ、そんなグリシャにエレンは冷たい表情で言葉を投げかけ続けた。
復権派の仲間に ダイナに クルーガーに 報いるために進み続けるんだ 死んでも 死んだ後も
これは
父さんが始めた
物語だろ
最後の「これは 父さんが始めた 物語だろ」という台詞の背景には、取り落したメスを拾って決意の表情で自分の手を貫くグリシャ、眉根を寄せた厳しい表情でグリシャを睨んでいるエレン、驚愕するジークなどのほか、グリシャの妹の姿の回想も描かれていた。
作中でも印象的な台詞「お前が始めた物語だろ」が繰り返された上、それを発言したのが作品の主人公であるエレン、そしてその発言がよりによって「父親の原点をほじくり返しつつ、幼い子供を含めた一家惨殺を犯すように父親にそそのかす」という意図のもとに発言されたもの……という衝撃展開であった。
このような経緯から、作品のファンたちにとってもドン引き印象深い台詞となっている。
関連動画
アニメ版の公式動画
アニメ版の該当部分切り抜き動画
関連チャンネル
関連リンク
関連項目
- 8
- 0pt