パンツァーファウスト(ドイツ語で戦車鉄拳を意味する)とは、第二次世界大戦中にドイツ軍が開発した歩兵携行対戦車用兵器である。
本稿では現在陸上自衛隊を含むでも使用されている110mm個人携帯対戦車弾(LAM)ことパンツァーファウスト3についても記述する。
概要
構造は至って簡単で、直径5cm・長さ1mの鉄パイプ状の発射筒先端に(モデルによって異なるが)直径15cmのHEAT(成形炸薬弾)がついている。構造としては黒色火薬を装薬としたクルップ型無反動砲に属する。発射筒にある安全装置兼照準装置を立ち上げ、スリット状の穴を通して角度や距離を判断して撃つだけ、という簡単かつ手軽な対戦車兵器である。ちなみに弾体はロケット推進ではなく、初速が比較的遅いため、弾道は山なりを描いて着弾する形となる。これを使ったブービートラップも有名である。
1943年に最初の型「パンツァーファウスト30」が生産に入った(パンツァーファウストの型式名の数字は有効射程をメートルで表す)。穿孔力は初期で約100ミリ、後に200ミリになり、射程はともかく威力については一応充分だった。その後パンツァーファウスト60、100、150が生産された。[1]
敗色濃い末期ドイツ軍で、戦車に対抗するため数多く生産され、当時のドイツ軍を撮影した映像には必ず登場するといってもいいほど大量に配備され、歩兵を随伴しない戦車にとってはかなり脅威だった。 (戦車だけでは周囲をすべて見ることはできないため、パンツァーファウストをもった兵士が遮蔽物に隠れながら接近、側面から攻撃…ということができるため)
戦後、ソ連軍がパンツァーファウストの最終モデルをほとんどまるパクリしたRPG-2を開発した…と言われているが、パンツァーファウストが使い捨てなのに対して、RPG-2は再装填が可能、ピストルグリップを備え、トリガーを用いた撃発システムを使用しているなど、両者の設計は大きく異なる。
パンツァーファウストはスイスでもコピー品が製造されたほか、戦後ドイツ軍の歩兵用対戦車兵器としてパンツァーファウスト44、パンツァーファウスト3へと続いていくことになる。
ちなみに独特な形状が好評らしく、ガンダムシリーズにおいてザクII改やケンプファーなどがパンツァーファウストそっくりの武装、シュツルムファウストを装備していたりもする。
・・・ちなみに、ドイツ語の名詞全てには、それぞれ男性、女性、中性と性別が存在するのだが、何故かパンツァーファウストは女性名詞である。戦う女は強いということであろうか。
パンツァーファウスト3 / 110mm個人携帯対戦車弾(LAM)
第二次大戦後、当時の西ドイツが開発した携行型対戦車兵器。構造的にはRPG-7と同様のロケット弾(を発射する無反動砲)で、クルップ型無反動砲の問題となるバックブラスト(後方爆風)を防ぐために、鉄粉によるカウンターマスを装備しており、閉所からの発射が可能となっている。 (発射時の反動を発射筒後端のカウンターマスが受け止める、デイビス式と呼ばれる無反動砲である。細かい粉体のカウンターマスは空気抵抗で速やかに速度を失い、後方に危険域を持たない。これにより狭い塹壕内、建物中からの発射を行っても火炎や煙が比較的少なく、発射制限がかなり緩和されることになる)
本体は再利用可能な射撃装置(照準器及びグリップ)と弾頭が装填されたチューブで構成されており、チューブは発射ごとに使い捨てされる。
陸上自衛隊ではこれを110mm個人携帯対戦車弾(Light-weight Anti-tank Munition)として採用。陸自ではあくまで「対戦車弾」として弾薬扱いで調達している。
平成2年度(1990)調達分からはIHIエアロスペース(旧日産自動車宇宙航空部門)によるライセンス生産で調達している。[2]
操作も簡単、値段も安価、生産メーカーおよびその価格から「空飛ぶ日産マーチ」といった隊員間の通称も存在していたりと陸上自衛隊ではかなり重宝されている。反面、弾頭がやたら重く、構えたときのバランスが悪いので、長時間構えると腕が辛い、84mm(カールグスタフ)よりも予備弾がかさばる、といった特徴もある。
関連動画
こちらは陸上自衛隊が運用しているパンツァーファウスト3(110mm個人携帯対戦車弾)。
射撃訓練映像です。
MMDモデル
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関連項目
脚注
- *「戦車と機甲戦」野木恵一 1981 朝日ソノラマ p.86
- *110mm個人携帯対戦車弾
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