対戦車兵器とは、読んで字の如く戦車を撃破するための兵器である。
概要
対戦車兵器は戦車の撃破を主目的として開発・運用される兵器のことである。兵器の形式ではなく目的で区別するカテゴリーのため、対戦車兵器と呼ばれる兵器は多種多様である。以下にその例と解説を列挙する。
対戦車砲
高初速の徹甲弾を発射して戦車の装甲を貫通させることを目的とした砲。機動力に欠けるので、歩兵部隊が戦車に対抗するために使用される防御的兵器である。特徴としては、直接照準のみで間接照準は行わない、高初速を出すための長砲身、戦場で動き回る戦車を確実に捉えるために砲の左右への可動範囲が広い、敵に見つからないよう全高は低い、などがあげられる。また、徹甲弾だけでなく榴弾を発射しての対歩兵攻撃にも使用される場合がある。
第二次世界大戦までは主要な対戦車兵器だったが、戦車が恐竜的進化を遂げ、それに対抗するために対戦車砲も巨大化して重くならざるを得なくなり、対戦車能力を伸ばし始めた戦車や機動力のある自走砲、より簡易な無反動砲、対戦車ロケットランチャーの登場により対戦車兵器としての価値を失い、退役していった。
対戦車ライフル
対戦車砲のライフル版、要は高初速の徹甲弾で戦車の装甲を貫通させようという銃である。第一次大戦の頃の、機関銃 弾に対する防御力のみを持たせた戦車には有効であったが、第二次世界大戦で戦車の装甲が強化されるとたちまち陳腐化。「歩兵が携行する対戦車兵器」の座は 対戦車ロケットや無反動砲に譲った。
詳しくは対戦車ライフルの項へ
梱包爆薬
単純に言えば大量の爆薬をカバンにいれて一セットにした超強力な爆弾。元々は工兵が建物を爆破するために開発されたが、大量の爆薬ということで戦車にセットして起爆してやれば大ダメージを与えることが可能だったため、対戦車兵器に転用された。正規に開発されたモノ以外にも現地で爆薬をかき集めて作った急造のモノも存在する。戦車に触れられるくらい肉薄しなければならないという欠点があったが、爆薬さえあれば対戦車戦闘に使えるということであちこちで使用された。日本軍では布団爆弾と呼び、歩兵にとって主力の対戦車兵器だったようである。
(日本軍では、戦車の車体上に設置して時限式の信管を作動させて使用した。)
対戦車地雷
大量の爆薬を戦車の底で起爆させることで、戦車の最も弱い部分の一つである底面や履帯を破壊することを目的とした地雷。だいたい2kg~10kgくらいの爆薬を詰めて、人間程度の重さのモノが載っても起爆しないように設定されている。ただし人間が乗っても絶対安全というわけではない。バリエーションとして、磁石で車体にくっつけてから起爆する吸着地雷や、リモコン起爆式の対戦車地雷も存在する。余談ではあるが、ドイツは吸着地雷が敵軍によって開発・使用されるのを恐れ、車体の磁性を消すツィンメリット・コーティングを開発し戦車に塗布していたが、バズーカやPIATを開発した英米は戦車に肉薄しなければ使えない吸着地雷を全く開発しておらず、結局これはドイツの早とちり・杞憂に過ぎなかった・・・・・・なんてエピソードがある。
日本軍では、爆弾を抱えたまま戦車の下に飛び込んで自爆する、特攻兵器であるかのイメージが強いが、
本来の使用方法は、他国の吸着地雷と同じである。
自爆攻撃に使用されるようになったのは、アメリカ軍が吸着地雷対策として戦車に木板やスパイクを装着したことで、吸着地雷がくっつかなくなり、天板に乗って爆薬を設置できなくなったためである。
例:九九式破甲爆雷
対戦車擲弾
戦車の損傷や破壊が可能なレベルの爆薬を一塊にして、投擲できるようにしたグレネード。手で投げるタイプ、ライフルグレネードとして小銃に装着して発射するタイプ、専用の擲弾発射器で発射するタイプの3つに大別される。手で投げるモノには、現場で手榴弾に追加で爆薬を巻きつけた即席のものも存在する(というか恐らくこちらが発端である)。戦車の進化により、単純な爆発で戦車を撃破するには人間では投げられないレベルの爆薬が必要となったため、粘着榴弾や成形炸薬弾を利用したタイプが登場したりもしたが、最終的に手投げ式は廃れた。現在ではライフルグレネードか擲弾発射器で発射するタイプが使用される。擲弾発射器には対戦車ロケットランチャーや無反動砲としたものもあり、個別の対戦車兵器をカテゴライズする際に非常に面倒なことになっている。
例:PIAT、パンツァーファウスト、RPG-7、RKG-3、タテ器
対戦車ロケット弾
対戦車能力(大抵は成形炸薬弾)を持つロケット弾。通常、ロケットランチャーと合わせて歩兵1~2人で運用可能なように設計される。第二次世界大戦でアメリカ軍が使用したバズーカがその先鞭で、軽装の歩兵部隊にも安価に対戦車能力を持たせることが可能となった点が非常に画期的だった。バズーカを鹵獲したドイツ軍は急いでこれを解析・模倣してパンツァーシュレックを開発している程である。しかし、射程が短い、命中率が低い、噴煙が後方に噴射されるので閉所では使えないなどの問題があり、後にロケットを大型化し誘導能力を持たせた対戦車ミサイルに発展する。
対戦車ミサイル
対戦車ロケットに誘導能力を持たせた兵器。第二次世界大戦後に開発された兵器ではあるが、現在では歩兵部隊にとって必須とも言ってよいモノである。最新の対戦車ミサイルでは最大で数kmの射程を持ち、撃ちっぱなし能力や戦車の装甲が最も薄い上面を狙うトップアタックモードなどの機能が実装されている。が、その代償として高価となっており、狙う目標によってはより安価な対戦車ロケットランチャーや無反動砲との住み分けが行われている一方、対艦ミサイルよりは安いとして小型の舟艇を攻撃することを想定した対戦車ミサイルも存在する。
歩兵に持たせるものも多いが、より大型で車両に搭載するタイプや、攻撃ヘリや戦闘機に搭載する空対地ミサイルも存在する。
詳しくは対戦車ミサイルの項へ
無反動砲
カウンターマスや火薬ガスを砲弾の発射と同時に後ろに放出することで、作用反作用の法則により反動をゼロ、あるいはほぼゼロにする兵器。砲身を薄く軽く作ることができるため、歩兵が持ち運べる簡易な砲として利用される。成形炸薬弾を使用することで対戦車戦闘も可能であり、対戦車ロケットと比較して命中精度が良く、対戦車ミサイルと比較すると安価なため、対戦車ミサイルと並行して配備・運用している国もある。欠点としては、後方にカウンターマスや火薬ガスが放出されるため、使用時には後方にスペースを十分確保する必要がある点があげられる。
砲弾を装填すれば何度でも使える再利用式、一回使用したら終わりの使い捨て式、射程延長のため砲弾にロケットブースタを搭載したもの、砲弾が砲身内に収まっているもの、砲弾が無反動砲の先端に取り付けられているもの等々、形式はさまざまである。
詳しくは無反動砲の項へ
対戦車犬
爆薬と起爆スイッチ(垂直に立てた木製レバー)を背負わせた犬。第二次世界大戦時のソ連の対戦車兵器である。敵戦車の下に飛び込ませて爆薬を起爆させ、それで戦車を破壊しようという魂胆で、そのため犬には戦車の下に餌を置いて戦車の下=餌があると条件付けして飛び込ませる訓練が施された。
が、実際に戦場で使用したところ、戦場の轟音にビビってもとの味方陣地に飛び込んで起爆しただの、訓練でドイツ軍の戦車を用意できなかったので自軍の戦車で代用していたため現地でも味方の戦車に飛び込んで見事撃破しただのとトラブルが多く、あっという間に姿を消した。一応、ドイツ軍はこの動物兵器にかなりビビったらしい。
刺突爆雷
棒の先に成形炸薬弾を取り付け、これで装甲板を突いて起爆、もって戦車を撃破しようという日本軍驚異の対戦車特攻兵器。他国からすれば狂気の沙汰としか言いようがなかったが、真っ当な対戦車兵器の無い日本軍では重宝され、現地生産も行われていたようである。第一次インドシナ戦争でもベトナム側によって使用された。
実際には不発が多く、装甲板を突く前に使用者が死傷することが多かったため、効果は薄かったらしい。
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