バズーカとは、アメリカで開発された一連の携行型対戦車ロケットランチャー・シリーズの愛称である。
バズーカはロケットランチャーであってバズーカ「砲」ではないので念の為。
概要
第二次世界大戦中にアメリカはM1 2.36インチ対戦車ロケット弾発射機を開発したのだが、当時アメリカで有名だったコメディアン、ボブ・バーンズがショーのために作ったオリジナル楽器によく似た形をしていたことから、この愛称が付いた。
バリエーション[1]
- M1…口径2.36インチ(60mm)。筒に引き金と照準装置が付いているだけの簡単な構造で、射手と弾薬手の2名で運用する。後部から成形炸薬弾頭のロケット弾を装填し引き金を引くとロケット弾が発射される。1942年に制式化された。
- M9…本体を二分割できるようにして携行を容易にしたもの。
- M20…ティーガーやパンターといった防御力の高い新戦車に対してM1やM9の威力不足が露見したために大口径化して貫徹力を高めたモデル。1944年から1945年にかけて開発された。口径3.5インチ(89mm)。1945年10月に制式化された時は大戦が終結していたので生産されなかったが、その後勃発した朝鮮戦争においてM1やM9ではT-34/85に効果が無いことが判明し急遽生産に移された。
- M20B1/M20A1…重量を約500グラム削減した改良型がM20B1、筒後上部のボックス型の接電装置を改修したものがM20A1である。B1にA1改修を施したものはM20B1A1と呼ばれる。
歴史
ロバート・ゴダードがロケット推進を研究しているときに共同研究者のクラレンス・ヒックマンと共に開発した。2人は1918年にこの兵器を披露したが、当時はまだ成形炸薬弾を使っていなかった。成形炸薬弾とセットで使われるようになったのは1942年からである。[2]
第二次世界大戦中に米国が大量に生産し、ドイツや日本の装甲車両相手に戦果を挙げた。一部は鹵獲され米軍車両に向けて使用された他、ドイツ等ではバズーカを参考にした対戦車兵器「パンツァーシュレック」も開発された(日本の対戦車ロケット開発は戦争には間に合わなかった)。
第2次世界大戦中には活躍したバズーカだが、後の朝鮮戦争中には北朝鮮のT-34に対して力不足を指摘されるようになった。理論上バズーカはT-34に対して十分な威力を持っているはずであり、T-34の装甲も特に強化されていたわけではなかったのにもかかわらずこのような威力不足が指摘された背景には、大戦後長期保管されていたバズーカの炸薬が劣化していたことがあったのではないかと考えられている。
のちに口径を拡大したスーパー・バズーカ(HEAT弾頭の威力は同じ技術水準であればおおむね口径に比例する)が導入されるとこの威力不足問題は解決したが、今度は鹵獲されたバズーカによって国連軍の戦車が被害を受ける事例が報告されるようになった。
バズーカおよびスーパー・バズーカを含む系列兵器はアメリカ以外の同盟国でも広く制式採用されており、戦後の陸上自衛隊でも使用している。
一般名詞化
ながらく「バズーカ」という語が日本において最も著名な肩撃ち式兵器であった為に、日本のフィクションにおいては、まったく構造の異なる兵器が「バズーカ」と呼ばれるケースがしばしば見られる。こうしたフィクションにおけるバズーカは、「肩撃ちする、威力が高い砲」であり、弾倉があって何発も連射出来たり、発射するものがビームやレーザーだったりする事が多い。
ガンダムシリーズではザク・バズーカやハイパー・バズーカ等に代表される大型砲が初代ガンダムより多用されており、のちにビームバズーカだのメガバズーカランチャーだのと言った様々な「バズーカ」が登場した。
近年では「バズーカ」の記憶が薄れた(かわってR・P・G! が台頭しつつある)こともあってバズーカの一般名詞的な使用も減りつつあるようである。
余談ではあるが、ミリタリーを全く知らない人に同様の兵器を説明する場合は
「無反動砲」「ロケットランチャー」と言っても分かって貰いづらいが
「バズーカ砲みたいなやつ」と説明するとなぜか分かって貰いやすい…といった用途(?)はある。
自衛隊[3]
日本には余剰化していたM1及びM9が貸与され(後に供与に変更)、1952年以降はM20やM20B1も供与されるようになった。M20、M20B1にはA1と同様の改修が施されM20改4、M20B1改4と改められた。M1およびM9は退役しているが、M20は後方支援部隊の自衛火器としてまだ残されているようで、「自衛隊装備年鑑」にも現役装備として掲載されている。
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関連項目
脚注
- *「陸自普通科対戦車火器発達史① 供与バズーカから国産対戦車ミサイルへ」奈良原祐也 軍事研究 2017年3月号
- *「戦争の物理学」バリー・パーカー 藤原多伽夫:訳 白揚社 2016 pp.328-329
- *「陸自普通科対戦車火器発達史① 供与バズーカから国産対戦車ミサイルへ」
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