ポケモンは怖い生き物です!とは、『Pokémon LEGENDS アルセウス』の登場人物 ラベン博士の台詞である。
概要
アルセウスによって大昔のシンオウ地方―ヒスイ地方に転送されてしまった主人公。倒れていた主人公を見つけたラベン博士は、主人公の「ポケモンを恐れず捕獲できる」才能に気づき、ポケモン図鑑作成を手伝ってほしいと依頼する。
こうして主人公はギンガ団の調査隊の一員として、ポケモン図鑑完成を目指すことになる。
「ポケモンは怖い生き物です!」
と真剣な顔で主人公に警告する。これまでのシリーズとは異なり、この時代では大半の人間がポケモンを恐れている。ポケモンに友好的なラベン博士でさえ断言するくらい「ポケモンは怖い」というのがこの時代では一般常識なのだ。
Q.ポケモンは怖い?
ポケットモンスターといえばもはや日本を代表するキャラクターコンテンツ。ポケモンに詳しい人もそうでない人も、「怖い」というよりはむしろ「かわいい」「カッコいい」といったイメージの方が強いのではないだろうか?
確かにポケモン図鑑には「ガスを吸ったインド象は2秒で倒れる」とか「魂を奪いに暗闇から現れる」とか物騒な文面が見られるし、TVアニメや劇場版ではポケモンが暴れて大変なことになったりする。
一方ゲームでは「草むらはポケモンがいて危険」という旨の台詞や伝説のポケモンが天変地異を起こすといったイベントはあるものの、基本的にはポケモンとポケモンとが戦う(ポケモン同士を戦わせる)システムであり、ポケモンがプレイヤーに直接危害を加えるような描写はほとんどない。野生のポケモンが飛び出してきたところで、主人公は一先ず手持ちのポケモンを繰り出して対応する。手持ちが全滅しても、即座にポケモンセンターに飛ばされるだけだ。
シリーズ全体を通しても、ポケモンは怖いモンスターではなく人間のよきパートナー、友人、家族のような存在として描かれていることが多い。
ゆえに今さら「ポケモンは怖い生き物です!」と言われたところでいまいち説得力がなく、ほとんどのプレイヤーは「今回はそういう設定なのね」と聞き流したり、それどころか内心「そんなわけないじゃん」とタカをくくっていたことだろう。
A.ポケモンは怖い生き物です!
しかし、いざ冒険に出てみると
- 主人公は基本的にポケモンをボールに収納したまま、つまりほぼ丸腰のまま広いフィールドをたった一人で冒険する。
- できることは歩く走るなどの「移動」、ローリングによる「回避」、落ちているアイテムを「拾う」、そしてモンスターボールやきのみなどのアイテムを「投げる」ということくらいである。特にこの「アイテムを投げる」という動作は①アイテムを選ぶ、②そのアイテムを構える、③カーソルで投げたい方向を決める、④投げるという手順を踏まねばならず、狙った個所にスムーズに投げるにはコツを掴む必要がある。移動しながら(逃げながら)投げる場合はなおさら難しい。
- 『LEGENDS アルセウス』ではポケモンだけでなく主人公にも体力が設定されており、高所から落ちたりポケモンの攻撃を受ければダメージを受ける。ダメージを受け続ければやがて力尽きて拠点に戻される。「目の前が真っ暗になった」というお馴染みのワードの重みが違って聞こえてくる。
- ビッパやムックルなど一部のポケモンを除き、ほとんどのポケモンは主人公に気づいた途端に容赦なく攻撃してくる。
- たいあたりなどはかわいいもので、さいみんじゅつやでんじは、挙句はかいこうせんやギガインパクトを生身の主人公相手に何の躊躇いもなくぶっ放してくる。
- コリンクやブイゼルのようなかわいいポケモンですら執拗に追いかけて攻撃してくる。逃げる途中で他のポケモンに見つかって集団で追いかけられたり、囲まれて袋叩きにされる羽目になることも。
- ホーミング性能がある特殊技も多く、逃げても追いかけてくる。空を飛んで逃げたとしても追尾してくる。
- ドジョッチなどは陸上にいる主人公に向かって水中から攻撃を仕掛けてくる。序盤では主人公は水上へ進めないため、一方的に攻撃される。
- ふと気が付いたら隣にゴーストタイプのポケモンがいる。夜の闇の中、死角から突然さいみんじゅつをかけられて眠らされる。
- 「オヤブン」と呼ばれる、通常ポケモンの数倍のサイズの個体が徘徊しており、見つかると雄たけびだけで主人公にダメージを与えてくるほど強力。目は爛々と赤く輝いており怖い。伝説など一部を除くすべてのポケモンにオヤブンが存在し、例外なく好戦的。
- 最序盤で行ける範囲にすらレベル40クラスのポケモン(オヤブン)が徘徊している。
- フィールドが広くて迷ってしまい、崖から落ちたり川に落ちたりして体力を削られた挙句ポケモンに襲われるという泣きっ面に蜂な目にあうなんてこともある。
- もちろん手持ちポケモンを繰り出せば、お馴染みのポケモンバトルに移行できる。だが、前述の通り投げる手順を踏んでいる隙に攻撃を受け、ポケモンを呼ぶのに失敗したりする。
- 複数のポケモンに気づかれている状態で手持ちを出すと、一対多のバトルになる。結局手持ちポケモンが代わりにボコられるだけ。
- さらに手持ちが全滅しただけではベースキャンプに戻らず、本当の意味で丸腰の状態で野生ポケモンと対峙することになる。次はお前だ。
- キングやクイーンとの戦いでは特定のタイミングでしか手持ちのポケモンを繰り出すことができず、そのタイミングが来るまではキングたちの繰り出す猛攻を必死に躱し続けなければならない。サトシに「かわせ!」と言われるピカチュウの気持ちがわかる。
と、これまでのポケモンとはまるで違う遊び方に多くのプレイヤーが苦戦を強いられ、「ポケモンは怖い生き物です!」という言葉の意味を心に刻むことになるのだった。アクションゲー攻略のスキルがそれなりに求められるため、難しいと感じるプレイヤーも多かった模様。
もっとも、ストーリーを進めればライドポケモンが使えるようになり、野生ポケモンから逃げやすくなる。慣れれば野生ポケモンの動きを見切って攻撃をかわすこともできるようになるし、背後から忍び寄ってボール一発で捕獲するなんてこともできるようになる。ポケモンはそういうゲームじゃない? 否、少なくとも『LEGENDS アルセウス』とはそういう作品である。
作中では先輩が「ピカチュウの攻撃で数日寝込んだ」と苦笑いしながら語ってきたり、ポケモン図鑑の記述通りフワンテに子供たちが拉致されるクエストがあったり、主人公はポケモンを怖がらないというだけで村人たちから気味悪がられたりと、ヒスイの時代ではポケモンはいろんな意味で怖い生き物なのであった。
このような過酷な環境に適応した結果がスーパーマサラ人なのかもしれない。ゲームのシステムという都合もあるが、高所から落ちたりポケモンの攻撃受けたりしても数回なら耐えられる主人公もたいがいおかしい。
ちなみに、数カ月後に発売されたポケットモンスタースカーレット・バイオレットではオープンワールドが採用され、マップ上のポケモンに近づいて捕獲するという『LEGENDS アルセウス』に似たシステムになっているのだが、さすがにポケモンが主人公にわざを放つことはない(主人公に向かって来るポケモンもいるが、その場合は手持ちポケモンでのバトルに移行する)。にもかかわらず、ポケモンに近づかれると『LEGENDS アルセウス』のトラウマが蘇ってしまったというプレイヤーもいるようだ。
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