出雲駅伝とは、島根県にて毎年スポーツの日に実施される大学対抗の駅伝競走である。正式名称は「出雲全日本大学選抜駅伝競走」。正月の箱根駅伝、11月の全日本大学駅伝と並び「学生三大駅伝」と称され、秋から冬にかけての駅伝シーズンの開幕戦である。
概要
第1回(当時の名称は「平成記念 出雲くにびき大学招待クロスカントリーリレーフェスティバル」、1994年より現名称)の開催が1989年と、三大駅伝のなかでは最も新しい大会である。第1回大会は次走者にタッチするという独自の方法で引継ぎがなされていたが、第2回からは他の大会でもおなじみの各校独自の襷によるリレーとなった。
2014年の第26回大会は台風19号の影響により、2020年の第32回大会は新型コロナウイルスの感染拡大により、それぞれ中止となった。
島根県でパソコンを製造していることから富士通グループの富士通Japanが協賛しており、上位3チームにFMV LIFEBOOKを贈呈している。
コース
過去に数度変遷があり、現在は出雲大社前を出発して出雲平野をぐるりと回り、再び出雲大社前を通過して出雲ドームへと至る全6区間・45.1kmである。かつては箱根駅伝同様に一畑電車の踏切を通過する箇所があったが、2015年大会からのコース変更で解消された。
- 第1区(出雲大社正面鳥居前 → 出雲市役所・JAしまね前 8.0km)
- 第2区(出雲市役所・JAしまね前 → 斐川直江、5.8km)
- 第3区(斐川直江 → 平田中ノ島、8.5km)
- 第4区(平田中ノ島 → 鳶巣コミュニティセンター前、6.2km)
- 第5区(鳶巣コミュニティセンター前 → 島根ワイナリー前、6.4km)
- 第6区(島根ワイナリー前 → 出雲ドーム、10.2km)
他の大会と比べて距離が短く(最長区間でも箱根駅伝の最短区間(20.8km)の半分以下である)、全体的に平坦であることもあって非常にスピーディーな展開(優勝タイムは2時間10分前後で、1kmあたり3分を切るペースである)が特徴である。
距離が短いこともあって途中棄権が起こらない大会として知られていたが、2017年(第29回)に法政大学と岐阜経済大学の2校が途中棄権。2023年(第35回)も1校が棄権するなど、各大学がギリギリまで選手が追い込まれているのではないか?という意見が出る昨今の駅伝情勢がこの大会にも出てきている弊害なのかもしれない。
逆転の6区
総距離が短く、かつ最終区間が倍近い距離を誇ることから、最終区間における逆転劇が過去34回の大会(2024年時点)において13回発生している(ちなみに全日本駅伝は55回中9回、箱根駅伝は100回中9回)。第8回大会では早稲田大学が57秒差の9位から8人抜いて優勝している。
また91~95年(第3回~第7回)にかけて山梨学院大学が5連覇(2021年現在においても最多連覇記録)を達成したが、全てケニア人留学生による最終区区間賞(うち4回は逆転優勝)であり、当時の留学生の名前からオツオリ通り、マヤカ街道とも呼ばれたこともある。
08年(第20回)には日本大学が1分29秒差をひっくり返して優勝。この年は留学生が最終区の1人のみだったためにまだ問題にならなかったのだが、その翌年に日本大学は留学生2人を使って最終区逆転で連覇。全日本大学駅伝も同じ布陣で最終区で1分53秒差をひっくり返して二冠を取りながら、留学生の出場が1人に規制される箱根駅伝で15位と大敗。結果として留学生規制論が高まることとなり、全日本大学駅伝は2011年に留学生の出場を1人に規制。出雲駅伝は表向きの規制は行われていない(アイビーリーグ選抜が出場するのも理由の一つと思われる)ものの、留学生の出場は実質ひとりまでに2011年以降はこれに習う形で各大学が自粛している。
なおこの09年は山梨学院大学が首位でアンカーの留学生に襷を渡したが、日大に40秒差をひっくり返され、留学生がアンカー勝負で逆転されるという珍事も起こっている。なお08年、09年ともに山学と日大の留学生は6区で両者が対決して区間1・2位を独占したがいずれもタイム差がほぼ1分ついていたので、40秒というタイム差では実力通りにひっくり返されたと言ってしまえばそれまでだったりする。
最近の大会のアラカルト
19年(第31回)は國學院大學が最終区逆転で初優勝。同大学の監督である前田康弘氏は駒澤大学の監督(2023年より総監督)である大八木弘明氏の教え子、かつ現監督である藤田敦史氏の1年後輩に当たり、同大学の全日本大学駅伝における初優勝時のメンバーでもある。この年は駒澤大学が2位に入り師弟でワンツーフィニッシュとなり話題となった。
ちなみに22年(第34回)でも駒澤大学が優勝、國學院大學が2位と再び師弟でワンツーを独占、24年(第36回)にも國學院が後半3区間を連続区間賞を取るなど5年ぶりに2回目の優勝を飾り、3連覇を狙った駒澤が2位に入ったことで、2019年以降に開催された5回の大会のうち3回がワンツーフィニッシュとこの2校が驚異的な強さを見せている。
21年(第33回)は東京国際大学が大会史上初の初出場初優勝を達成。強力な留学生と日本人エースがいたことから優勝候補筆頭であったが、3区で首位に立ち、アンカーの留学生に繫いだ時点で30秒近いリードを奪ってそのまま差を広げて逃げ切るという横綱相撲で勝つという非常に強いレースを見せた。なおアンカーの留学生に襷が渡った時点でトップ中継し、そのまま逃げきりが決まったのは第6回の山梨学院大学以来、27年ぶり2回目の出来事でもあった。
23年(第35回)は駒澤大学が2年連続の大会新記録で2連覇、しかも1区から一度も首位を譲らない完全優勝のオマケ付きと圧倒的な強さを見せた。その一方で100回を記念した箱根駅伝の予選会が地方大学にも門が開かれる影響で結果的に調整不足となった関西勢の不振が目立ち、大阪経済大学が1区棄権、立命館大学が過去ワーストとなる15位大敗を喫した。それでも関西大学が11位となんとか地方最上位に入って、辛うじて地方の雄としての面目は保っている。一方で中国・四国勢が初めて2校とも増枠をもぎ取る健闘を見せた。なお2位でゴールした創価大学が全国レベルの駅伝では初となるドーピングで失格となり、大会後の10月時点で同大学には既にドーピング違反が通告がされていたが、翌年2月に日本学連から失格が正式に公表された。なお故意によるドーピングではないため、大まかな処分としては出雲駅伝の公認記録抹消と該当選手の記録及び資格停止という2つのみにとどまったほか、その年度の箱根で8位に入って出雲の出場資格を満たしたことで、翌年の出場も問題なく認められている。
24年(第36回)は前述したとおり國學院大学が駒澤・青山学院との三つ巴となったレース展開を制したが、大きな変動があったのは下位の方で後述したアイビーリーグ選抜が終始6位以内をキープして最終5位と大健闘。地方勢は古豪の京都産業大学が中盤まで関東勢と競り合う意地を見せたものの、終盤の5~6区に失速して12位にとどまったが、4年前にワーストの19位に沈んだリベンジを果たすとともに地方最上位になって関西の面目を保った。他では北信越学連選抜が13位と初めて北信越地区が増枠を獲得。北海道学連選抜も14位で3度目の増枠を勝ち取るなど、選抜3チームが大健闘した。
出場枠
2015年までは関東・関西・東海・九州・中四国(開催地枠)地区に単独チームの枠が割り当てられ、北海道・東北・北信越(+中四国)地区は学連選抜という形での出場であった。2016年以降は前年大会の成績をもとに8地区に1から10までの出場枠が割り当てられ、その中で大学単独チームまたは学連選抜チームが出場する。出場枠の割り振りは各地区の学連で異なり、例えば関東なら同年の箱根駅伝の上位10校である。なお北海道学生選抜が過去に2度増枠を勝ち取ったことがあり、2枠の時は大学が単独出場しており、例年は学連選抜しか出場しない東北や北信越も増枠を勝ち取った場合はそこに習う可能性が高い。
これとは別にアイビーリーグ(アメリカ北東部にある8つの難関私大の総称。日本でいうところの早慶上理)から選抜チームが第10回以降に招待参加している(2021-22年はコロナもあって参加せず)けどぶっちゃけ弱い。ただし1区で区間賞争いの見せ場を作ったことは何度かあり、2005年には区間新記録で1区をトップ通過している。だが24年には珍しく上位狙いを宣言した通り2区間で区間2位で走ったほか、2区中盤まで首位争いを演じてその後も順位を大きく落とさず過去最高の8位(11-12年)を上回る5位と健闘した。
2015年までは前回大会の上位3校にシード権が与えられていたが、シード権を得た延べ81チームのうち71チームが翌年も出場枠を獲得し、残る10チームのうち5チームが出場を辞退(同年の箱根駅伝でシード権を獲得できず、同じ10月に開催される予選会に回ったため)した経緯もあり廃止された。ちなみに三大駅伝で唯一関東以外の大学がシード権を獲得したことがある(2008年の九州・第一工業大学)。まあ箱根駅伝は関東ローカルで地方勢参加できないし、全日本は地方勢が強かったころ(=日テレが箱根駅伝の中継始めて一極集中する前)はシード権自体がなかっただけで4回(福岡大学3回・京都産業大学1回)優勝してるけど。
なお2015年までに出場辞退が相次いだ理由は箱根駅伝の予選会を出雲駅伝の一週間後に控えているという過密日程が影響している。その結果として出雲の出場権を得ていても箱根予選会に回るチームは出場辞退が半数、残りの半数も2.5~3軍がメインで出場するという事が常態化していたため、2015年を最後に上位3校のシード枠が廃止されたのは当然の結果ともいえる。
テレビ・ラジオ中継
箱根駅伝の中継が好評なこともあってか第1回よりフジテレビが中継を担当している。しかし放送時間の都合上、例年半数のチームがゴールしたあたりで中継は終了する。これは全日本駅伝も同様であり、よほど遅れない限り完全中継する日テレがすごいのだが。
なお2022年よりTverでもフジテレビと同時中継されるようになり、Tverがインターネット放送枠であることを活かして放送時間が長めにとられていることで、こちらでは全チームフィニッシュまで視聴可能となっている。
関連動画
ニコニコでは過去のハプニングやハイライトなどがいくつか上がっている。
関連リンク
関連項目
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