"男爵"ウォリス・ウォーリック("Baron" Wallice Warwick)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
「螺旋迷宮」に登場する自由惑星同盟軍人。”七三〇年マフィア”の一人で、石黒監督版OVAにおける旗艦は<ルーカイラン>。黄色がかった紅葉色の髪と瞳を持つ中背の伊達男という容姿と気障な台詞回しで女性に人気が高く、同盟人であるにもかかわらず”男爵(バロン)”という、「貴族気風だが所詮は男爵がいいところ」という揶揄も含んだ愛称を受けていた。本人もこの愛称を気に入っており、自ら堂々と”バロン”と名乗って臆するところがなかったという。
指揮官としては偉大というほどではなくとも有能で、ブルース・アッシュビーの作戦行動に不可欠な人材だったとされる。私人としても華やかで、その趣味は奇術、カード占い、ダンス、ギター、トランペット、チェス、ダーツ、スキー、恋と極めて多彩、そのいずれも「一流の寸前」といわれる技倆に到達し、本人曰くの「上手なアマチュア」として人生を謳歌した。
惑星パラスの生まれ。宇宙暦730年、同盟軍士官学校を次席で卒業する。首席であるブルース・アッシュビーらとともに様々な戦功を上げ、ファイアザード星域会戦の大勝利をはじめとして”七三〇年マフィア”の名を高からしめた。745年頃、中将に昇進し第5艦隊司令官に就任。
宇宙暦745年の第二次ティアマト会戦では、序盤から運悪く孤立したジョン・ドリンカー・コープの第11艦隊を援護。コープとの連係を回復したのち突出して積極攻勢に移ったが、帝国軍シュタイエルマルク艦隊の絶妙な側面攻撃を受け「背中から胸へと槍を突き刺され、その槍をえぐりまわされて傷口をひろげられる」状態に陥った。中盤には帝国軍カイト艦隊を中央突破する第4艦隊司令官フレデリック・ジャスパーと連係して帝国軍を圧迫、自軍も損害を被りつつも、局地的ながら敵を潰走させることに成功している。
終盤では、繞回運動の結果同盟軍後方に出現した帝国軍の前に立ちはだかり、「つねひごろのダンディーぶりをかなぐりすて」る指揮ぶりを見せてアッシュビー率いる別働隊の到着まで戦線を維持した。その後のいわゆる「軍務省にとって涙すべき40分間」では、再びジャスパーと連係し、帝国軍コーゼル大将を戦死させる。
この戦いで指揮官アッシュビーを失い”七三〇年マフィア”が離散した後は、宇宙暦749年に大将に昇進。751年、宇宙艦隊司令長官に任じられるも、大きな会戦も無いうちの753年に軍を退役した。1年の休暇を経て一期3年間、私立大学の学長を務め、退任後惑星パラスの知事に立候補し当選する。一期4年ののち、ハイネセンの政界にうつり本格的に政治家の道を邁進した。
宇宙暦760年、早くも最高評議会入りし国防委員長に就任、同時に元帥号を授与される。”七三〇年マフィア”の生存者としてはもっとも速い元帥昇進であった。また、この翌年に統合作戦本部長が交代するまでの1年間は同盟軍の3TOPである国防委員長、統合作戦本部長、宇宙艦隊司令長官がすべて”七三〇年マフィア”で占められていた(ウォーリック、ファン、ジャスパー)ことになる。
その後も、社交界と政界の双方で順風満帆な人生を送ったが、ある時、国防委員会事務局の汚職事件により自殺者が出たことから国防委員長を引責辞任。更に愛人の麻薬中毒死などの不祥事が重なった結果、ウォーリックは失脚・引退を余儀なくされた。宇宙暦766年、心臓発作により死去。享年56。
常にウォーリックの一歩先を行き、士官学校卒業時は首席であったブルース・アッシュビーには思うところがあったのか、「おれはアッシュビーの下でいい。最高責任者になるなんて野暮なことさ」と韜晦したような、冗談交じりの言を残している。実際、第二次ティアマト会戦中の作戦会議ではついに対立に進展し、「もうブルースひとりに武勲を独占されるのは飽きた」、「最高司令官だけで戦争ができるか」と激語を発している。
この事についてはアルフレッド・ローザスにも、概要にも述べたように「なにをやっても、一流の寸前までいけた男」と評価されており、公私様々な事柄に高い能力を発揮しながらも、結局一流のものにするだけの執念には欠けていたことへの哀惜を感じさせる。
明確な記述はないが、第二次ティアマト会戦ではしばしばフレデリック・ジャスパーと巧妙な連係を取って行動しており、戦術能力の相性が良かったようである。ウォーリック退役時の後任の宇宙艦隊司令長官もジャスパーであった。
酒が一切飲めない体質であるジョン・ドリンカー・コープのアップルジュースをシャンペンに差し替える悪戯を実行したことがある。飲んだ直後にコープは全身にジンマシンを出して昏倒し、ウォーリックは自由惑星同盟軍史上初めてジンマシンを理由に始末書を書かされることになった。
女性関係は華やかで、女性人気が高かっただけでなく、彼自身も若くて歯ならびの美しい女性を特に好いたという。しかし晩年には、五年来の愛人が麻薬中毒死するというスキャンダルが失脚の契機となっている。
その他、ウォーリックの従兵を務めた中にチャン・タオがおり、後々までほとんど崇拝同様の尊敬を受けている。彼は、ウォーリックの周囲にときどき「ろくでもない人間」がいたと語っている。また、アレクサンドル・ビュコックは彼が第二次ティアマト会戦で指揮した第5艦隊の将兵のひとりであった。
掲示板
8 ななしのよっしん
2018/07/31(火) 23:55:54 ID: WAolCaMiYQ
>>5
シェーンコップやポプラン・ロイエンタール絡みの事態は、一部の重大事件を除くと後腐れのなさが強調されている趣がある。
外伝4巻P.61・第2次ティアマト星域会戦のハイライトで、帝国軍の主力が挟撃部隊と呼応して進撃し、同盟軍の寄せ集めの主力による追尾を受けながらも、不完全ながら(時計方向への)繞回運動を果たして第5・第8艦隊の後背に出て猛攻を仕掛けて来た時、第5艦隊指揮官として矢面に立たされている(経歴で『立ちはだかり』とあるのは不適切)。
その際に、『奴らを通すな!』と絶叫しているが、第1次世界大戦・ヴェルダンの戦いでのロベール・ニヴェル・フランス陸軍中将の発言“ Ils ne passeront pas/On ne passe pas.”が元ネタだという事を今頃になって知った。
勝利によって民主共和制を死守したという点では、“¡No pasarán!(スペイン語版), pasaremos”(イタリア語・セットで『奴らの政治的主張を通すな!我らはそれを通すぞ』という意味)を想起させられる。
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9 ななしのよっしん
2020/06/22(月) 20:20:39 ID: 5uLBB7EToJ
この人含めて730年マフィアについて思うのは、アッシュビーは確かに彼らの功績と栄光を
顔役として独占する形となったけれど、同時に社会の悪意や嫉視、不運も一身に引き受けていて、
結果として僚友の防波堤にもなっていたのかなという感じがする
10 テバサキカラス
2022/03/13(日) 10:53:55 ID: y1xfKfWYji
軍人としては宇宙艦隊司令長官(制服組のNo.2)、政治家としては国防委員長(閣僚だが最高責任者ではない)、つくづくNo. 1に縁がない。
なれなかったのか、ならなかったのかは微妙なところだけど。
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最終更新:2025/12/10(水) 19:00
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