コミケ幕張メッセ追放事件とは、1991年8月に開催予定であったコミックマーケット(C40)が、会場となる予定の施設であった「幕張メッセ」より、開催を拒否された事件。
いわゆる性表現を中心に問題とされ、当時の有害コミック騒動の一環とする見方もある。これ以降、千葉県および幕張メッセでの同人誌即売会は不可能となり、コミケ以外にも大きな波紋を及ぼすことになった。
1975年に初めて開催されたコミケは以降、順調に規模を拡大。81年のC18において参加者が1万人を突破し、中小規模の会場では収容できない事態が度々発生していた。この混乱を鎮めようとスタッフの権限を大幅に強化した上で参加者の統制を図る一派(「コミケ警備隊」)が誕生するも、同年のC19において分裂騒動を起こして事実上消滅する(コミケ分裂騒動)。
このコミケ分裂騒動を機に「表現の自由」「参加者間の平等」などの原則が確認されたことにより、かえって参加者は爆発的な増加を見せるようになる。また、皮肉なことに、分裂騒動で既存の開催会場である川崎市民プラザが使えなくなり、代わりとして日本でも有数の会場規模を誇っていた日本国際見本市会場(晴海)を使うようになったことも増加に拍車をかけることになる。
88年冬、とうとう会場の確保が不可能となり、コミケ史上初の中断をはさむことになる(春に延期することでこれに対処)。翌89年夏、ついに参加者が10万人を突破。もはや、開催会場は当時晴海を抜いて日本一の規模を誇っていた幕張メッセ以外に選択肢はなくなり、同年冬のC37より幕張メッセに会場を移動することになる。
さかのぼる81年より始まったアニメ「うる星やつら」の影響により、性表現を含むいわゆる男性向け同人誌が急増。吾妻ひでおらによるロリコン漫画同人誌「シベール」が最大大手(現在で言うところの壁サークル)となるなど、いわゆるロリコンブームが起き、既存のアニメブームに乗じて勢いを加速して行った。
女性向けでは85年より「キャプテン翼」ブームが起き、こちらも性表現を扱う作品いわゆる女性向け同人誌が急増。男性向けと合わせてコミケ=成人向け同人と言う印象も強まり始める。
当時は同人誌の局所規制なども存在せず、むしろ競うように過激な性表現・性器描写を描くようになり、商業向けの成年漫画と比べても良く言えばおおらか、悪く言えば無法状態であった。また、18歳未満の青少年への販売も事実上禁止されておらず(ただし、こちらは当時の商業書店と比べても緩かった訳ではない)ゾーニングは進んでいなかった。
また、同人誌とは別にいわゆるコスプレも市民権を得始める。バブル時代の開放的な雰囲気もあり、キャラになりきることよりも露出そのものを楽しむ男女も増え、警察や周辺住民からたびたび苦情を受けていた。
これらの魅力もコミケと成年向けジャンルの拡大に一役買うことになる。
89年7月、宮崎勤による東京・埼玉幼女連続誘拐殺人事件(宮崎事件)が発覚。宮崎がコミケ参加者であったため、マスコミの取材が殺到し運営は対策に忙殺された。その中にはあまり好意的でないマスコミも含まれており、参加者全員を宮崎と同一視する報道も少なからずなされることになる。
また、この宮崎事件は漫画業界全般に波及。90年に和歌山県で行政に出版規制を求める住民運動が始まり全国的な運動に発展。いわゆる有害コミック騒動が勃発した。
当初は商業向け作品や出版社へのバッシングが続いたが、91年には同人業界に飛び火。2月、まんがの森など複数の同人誌販売店に家宅捜索。以後、同人誌サークルや印刷業者にまで手が回り、関係者が数十人が逮捕される。
90年冬の幕張メッセでのコミケ開催後、拾得物として千葉県警に届けられた同人誌の中に数冊の無修正本が紛れていたことが発覚。コミックマーケット準備会と幕張メッセ関係者が事情聴取を受ける事件が発生した。
幕張メッセ側はこの事件と漫画・アニメ産業への偏見、さらに当時はバブル景気(正確には崩壊していたが)による会場側の売り手市場だった時勢も合わせて鑑み、同人誌即売会はリスクが高いと判断。開催が決定していたにも関わらず一方的に91年夏のコミケ(C40)に会場を使用させないことを通告する。
準備会はこの決定に驚愕し、再三に渡る再考または事情説明を求めたが満足する回答は得られなかったと言う。幕張メッセでの開催が不可能であることが鮮明になるに連れて、準備会の焦りと緊張は深まって行く。
延期であるなら88年冬の前例も存在した。しかし、これはあくまで拡大に伴ったハード面・自己都合の問題による中止であり、翌年春の開催も決まっていたため影響は最小限にとどまっていた。翻って、今回の場合は会場側の胸三寸による一方的な中止であり、しかもそれが官公庁またはその影響下にある施設であったため、下手に先例を作ればコミケのみならず全ての同人誌即売会が全国の会場から締め出される可能性があったのである。
最終的に準備会は幕張メッセとの交渉を断念。古巣である晴海と復帰に向けての交渉を開始。失敗すれば即開催中止かつ準備会解散と言うプレッシャーの中、粘り強く会合を続け、ついに見本誌のチェックとわいせつ物の排除を条件に開催を認めさせることに成功する。
C40は最終的に期日通りに開催され、見本誌チェックや販売停止処置などで若干の混乱を起こしつつも無事に日程をこなすことが出来た。
これ以後、晴海会場が消滅する95年までコミケは晴海での開催が続くことになる(晴海第三期時代)。消滅後は後継会場である東京国際展示場(ビックサイト・有明)に移り、現在に至るまでこちらの会場である(有明時代)。
一方、千葉県はこれ以降も性表現への規制を徹底させ、94年に全国でも厳しいページ制限(全ページの20%または20ページを超える本を有害図書とする)を含んだ青少年育成条例を成立させる。幕張メッセではコミケ追放以降も同人誌イベント「コミックシティ」が開催されていたが、こちらも条例の影響と警察側の圧力を受けて幕張を去っている。
81年のコミケ分裂騒動と並んでコミケの存続が危ぶまれた事件の中でも最大の危機だったとされる。しかし、コミケ分裂騒動はあくまで内紛であり相手側の大義も薄かったため、実際の危機感では本事件と比べ物にならなかったと言う指摘もある。コミケはもちろん、多くのオタクの歴史を描いた書物でも取り上げられる事件であり知名度が高い。
準備会は晴海・有明という良き理解者を得たが、規制情勢によって開催が左右される事態がいつ再来するか分からないためしばらく代替え地選びに奔走することになる。しかし、幕張メッセ以上の会場は首都圏では存在せず不景気と人口減によりコンベンションセンター建設も考えにくいため、現在でも会場の不安は解決されていない。
また、この事件以降、局部修正への圧力が強まり、見本誌チェックが恒例化し違反書物の販売停止とマジックペンによる修正が行われている。実際に捜索を受けた同人誌委託販売店もこの動きに追随したため、商業誌と比べて同人誌の修正は薄いと言う傾向はもはや過去のものとなっている。しかし、女性の中には男性向けのみの規制と言う誤った認識が現在でもあり、たびたび問題を起こし準備会側が「女性も規制される」と言う注意喚起を発する事態も起きている。
コスプレについては同人誌と関係がないため幾度となく「コスプレ不要論」が取り沙汰されたが、他のコスプレイベントよりも厳しい規制を行うことでこれに対処。しかし、近年になり販売物としてのコスプレ写真集が増え販売停止事例が急増。さらに「販売停止になるほどに過激」と言う箔をつけたあと、通販や商業ルートで販売する悪質な事例もあり対策に苦慮している。
この事件とシティの追放事件により、準備会や参加者および同人関係者の幕張メッセと千葉県への不信は強いと言われる。千葉県がここまで居丈高な態度を取った理由として、上記の社会的なオタクバッシングやバブル景気による売り手市場の情勢の他にも、教育県としての自負が挙げられることがある(成田闘争により70年代に教育現場が崩壊しており、この反動として管理教育への志向が大変強い。全国でも珍しい学生自治がほとんど認められていない県でもある)。
しかし、バブル崩壊によりイベント数も減少。拡大を続ける有明と対照的に幕張の開発は進まず、現在でも東京のイベント会場の後塵を拝している。また、準備日を入れて年に8日も全館使用するイベントは同人誌即売会のみならずコミケのみであり、数十億円とも言われる経済効果と合わせて「幕張メッセは大魚を逃がした」と言う評価もある。
2000年代に入り、東京でも条例を強化して規制を強める動きが出ており、開催不能になった際の代替え地として幕張メッセが度々上がる。幕張メッセ側も態度を軟化させていると言われ、保険として開催の際の場所分けや動線の計画も存在するとされる。
2015年、五年ごとに行われて来た記念行事(コミケットスペシャル6)において幕張メッセが使用されることが決定。東京五輪の際の代替え会場としての布石とされるが、準備会も「手打ちではない」と漏らしており不信感を持つ参加者の配慮もなされている。
掲示板
86 ななしのよっしん
2023/06/13(火) 00:27:05 ID: pO4/ooOUos
撮影会の主催者や参加者、イベントに弁当仕出したお店とかへの炎上被害も深刻だけど
それ以上にネトウヨインフルエンサーといった悪辣なスポンサーがその人たちにつくことを危惧している
政治的な話題で炎上すると左右問わずそういう事が起こるから怖いんだよな
87 ななしのよっしん
2023/06/14(水) 06:49:55 ID: fefA/oNQbe
>>85
ナチスが共産主義者を連れさったとき、私は声をあげた!私は共産主義者ではなかったから。
ナチスが社会民主主義者を牢獄に入れたとき、私は声をあげた!社会民主主義者ではなかったから。
ナチスが労働組合員らを連れさったとき、私は声をあげた!労働組合員ではなかったから。
しかし…私が人権を奪われたとき、私のために声をあげる者は誰一人いなかった。
私がナチスだったからだ。
88 ななしのよっしん
2023/06/22(木) 17:18:17 ID: kFy+zOJwgn
>>83
煽り抜きに、その認知の歪みといじめられっ子の間に何の関係があるというんだ?
いじめられっ子への風評被害じゃないか?
そんなもん、ただの陰謀論者で十分じゃないか馬鹿馬鹿しい
>>86
まあ政治的な不都合に対して、擦り寄られるまでもなく対立勢力を担ぎ上げるというのは常道ではあるが・・・
とは言え、このレベルだと流石に分が悪いと思われるのか、まともな政治家には大抵無視されるんだよな
結果、インフルエンサーと変わらんキワモノばかり集まりがち
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最終更新:2024/05/05(日) 00:00
最終更新:2024/05/05(日) 00:00
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