1983年クラシック世代とは、競馬において1980年に生まれ1983年にクラシック競走を走った(旧4歳、現3歳を迎えた)競走馬の世代である。
概要
シンザン以来19年ぶりにして、初の内国産馬の血を引くクラシック三冠馬、「ミスターサラブレッド」ミスターシービーを代表とする「シービー世代」。おそらく現在でも花の47年組(72世代)、TTG世代(76世代)オグリ世代(88世代)などと並んで、年代の83世代より代表馬であるシービー世代の方が通りがいい数少ない世代の一つである。
日本馬による初のジャパンカップ勝ち馬カツラギエース、短距離からマイルで圧倒的な強さを誇ったニホンピロウイナー、大波乱の象徴ギャロップダイナ、「天才」田原成貴に初の八大競走勝利をもたらしたリードホーユー、日本競馬がまだ東高西低だった時代に西の競馬ファンの期待を一身に背負って走った関西の星スズカコバン、「2000mで2分を6回切ったスピード馬」ウインザーノット、クラシック戦線でミスターシービーと激戦を繰り広げたメジロモンスニーやビンゴカンタ、ド派手な走りで重賞戦線を沸かせたアスコットエイトとシンブラウン、前人未到の6年連続重賞勝利を達成したドウカンヤシマなどが有名。
牝馬においては牡馬クラシック路線とは打って変わって実力伯仲であり、桜花賞は社台総帥一番の期待馬シャダイソフィア、オークスは1~5着がハナ、アタマ、ハナ、アタマの世紀の大激戦を制し、「女帝」エアグルーヴとの母娘制覇でも知られるダイナカール、当時牝馬三冠最終戦に位置付けられていたエリザベス女王杯は夏の上り馬ロンググレイスがそれぞれ制した。他にはレース4日前に手術を受けその手術痕が残ったまま出走して勝利したダスゲニー、10頭中6頭が競争中止し「死の大障害」と言われた中山大障害を無事完走し、1番人気ライバコウハクを最終直線で差し切り勝利したブルーフラールがいる。このうちロンググレイスやダスゲニーは共に牝馬クラシック路線を戦ったグローバルダイナと一緒にGIレースで2着や3着になるなど、古馬になってからも牡馬相手に互角の勝負を繰り広げ、人によってはこの世代こそ牝馬最強世代だと評することもある。
地方競馬においては史上4頭目の南関東三冠馬にして、東京大賞典を勝利して四冠を達成し、翌年中央に移籍しミスターシービーとも対戦したサンオーイ、そのサンオーイが移籍した後に東京大賞典を勝利してロツキータイガーやスズユウと大井で激戦を繰り広げたテツノカチドキなどがいる。
海外には輸入された産駒が当時としてはやたらと日本の芝で強かったアイルランドの大種牡馬カーリアンがいる。
4歳になった1984年からは日本競馬にグレード制が導入され、八大競走から中央平地GI15競争となる大変革にも立ち会った。そのため八大競争を走った最後の世代となり、3歳暮れの有馬記念を制したリードホーユーが八大競走最後の優勝馬となった。導入後のGI15競争のうち、当時外国馬が圧倒的に優勢だったジャパンカップを含む14競争で勝利を収めるなど世代の強さも際立っている。古馬での活躍馬は短・中距離(1,200m~2400m)に多く集まっており[1]、長距離で結果を残していたミスターシービー、リードホーユー等が故障して戦線離脱してしまったことも影響したか、85年のサクラガイセンの2着を最高位として天皇賞(春)を勝つことはできず[2](84年の勝者は2つ上のモンテファスト。85年の勝者は1つ下のシンボリルドルフ)、惜しくも完全制覇は逃している。
この世代は三冠馬ミスターシービーという存在がありながら古馬になってからも活躍した馬が多く、グレード制導入による大レースの増加という追い風もあり、古馬混合のG1級競走を制した馬が6頭と[3]、脚部不安でミスターシービーが精彩を欠く中でも世代の強さを大いに証明した[4]。世代で上げたGⅠ級競走18勝(内古馬GⅠ10勝)の記録はオグリキャップを代表とする88世代に更新されるまで最多記録を維持していた。3歳(旧4歳)時はまだグレード制前ということもあり活躍馬のほとんどがクラシック三冠のいずれかに出走してシービーと直接対決していることもあって[5]、その対決に勝利して三冠を達成したシービーの強さも逆に語られることにもなった。84年に三冠を無敗で達成したシンボリルドルフとの直接対決にシービーはすべて敗れてしまったものの、「永遠なる皇帝」にして「たった三度の敗北を語りたくなる馬」であるルドルフの3度の敗北のうち、アメリカ遠征での1敗を除く日本での2つの敗北はどちらもシービー世代の馬によるものだったのである。
勝利馬
中央平地GI級
中央平地18勝。
世代別
| 競走名 | 1982年(現2歳/旧3歳) | 1983年(現3歳/旧4歳) |
| 朝日杯3歳ステークス |
ニシノスキー |
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| 阪神3歳ステークス |
ダイゼンキング |
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| 皐月賞 |
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ミスターシービー |
| 東京優駿(日本ダービー) |
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ミスターシービー |
| 菊花賞 |
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ミスターシービー |
| 桜花賞 |
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シャダイソフィア |
| 優駿牝馬(オークス) |
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ダイナカール |
| エリザベス女王杯 |
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ロンググレイス |
古馬GI級
| 競走名 | 1983年(現3歳/旧4歳) | 1984年(現4歳/旧5歳) | 1985年(現5歳/旧6歳) | 1986年(現6歳/旧7歳) |
| 天皇賞(春) |
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| 安田記念 |
1984年よりGI昇格 |
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ニホンピロウイナー |
ギャロップダイナ |
| 宝塚記念 |
斤量別定重賞~83年 斤量定量GⅠ84年~ |
カツラギエース |
スズカコバン |
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| 天皇賞(秋) |
84年より2000mに短縮 |
ミスターシービー |
ギャロップダイナ |
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| マイルチャンピオンシップ |
1984年新設 |
ニホンピロウイナー |
ニホンピロウイナー |
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| ジャパンカップ |
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カツラギエース |
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| 有馬記念 |
リードホーユー |
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中央障害重賞
| 競走名 | 1983年(現3歳/旧4歳) | 1984年(現4歳/旧5歳) | 1985年(現5歳/旧6歳) | 1986年(現6歳/旧7歳) |
| 東京障害特別(春) |
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ネイティブボーイ |
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| 阪神障害ステークス(春) |
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| 中山大障害(春) |
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ブルーフラール |
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| 京都大障害(春) |
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ポットヒーロー |
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| 阪神障害ステークス(秋) |
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| 東京障害特別(秋) |
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| 京都大障害(秋) |
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| 中山大障害(秋) |
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代表的な馬
- 「ターフの演出家」 ミスターシービー
- '83:牡馬クラシック三冠[皐月賞(八大競走)、東京優駿(八大競走)、菊花賞(八大競走)]、共同通信杯4歳ステークス、弥生賞 '84:天皇賞(秋)(GI)、他サンケイ大阪杯(GII)2着、毎日王冠(GII)2着、有馬記念(GI)3着
- '83優駿賞最優秀4歳牡馬、最優秀父内国産馬、年度代表馬
- '84最優秀父内国産馬
- JRA顕彰馬
- 日本史上初の父内国産馬のクラシック三冠馬[6]
- シンザンからテイエムオペラオーまでの間で一番人気で天皇賞(秋)を勝った2頭のうちの一頭[7]
- 2000mに短縮された後の天皇賞(秋)を勝利した唯一のクラシック三冠馬[8]
- 「翔馬」 カツラギエース
- '83:NHK杯、京都新聞杯、他神戸新聞杯2着 '84:宝塚記念(GI)、ジャパンカップ(GI)、サンケイ大阪杯(GII)、毎日王冠(GII)、京阪杯(GIII)、他有馬記念(GI)2着
- '84最優秀5歳以上牡馬
- 日本馬初のジャパンカップ勝ち馬
- 「マイルの皇帝」 ニホンピロウイナー
- '82:阪神3歳ステークス2着 '83:きさらぎ賞、CBC賞 '84:マイルチャンピオンシップ(GI)、スワンステークス(GII)、朝日チャレンジカップ(GIII)、他読売マイラーズカップ(GII)2着 '85:安田記念(GI)、マイルチャンピオンシップ(GI)、読売マイラーズカップ(GII)、京王杯スプリングカップ(GII)、他天皇賞(秋)(GI)3着[9]
- '83優駿賞最優秀スプリンター
- '84優駿賞最優秀スプリンター
- '85優駿賞最優秀スプリンター
- 史上初の春秋マイルGI制覇達成
- 史上初のマイルチャンピオンシップ連覇達成
- 獲得賞金世代最多
- 「あっと驚く ギャロップダイナ」
- '84:根岸ステークス3着 '85:天皇賞(秋)(GI)、他フェブラリーハンデキャップ(GIII)2着、京王杯スプリングカップ(GII)3着 '86:安田記念(GI)、東京新聞杯(GIII)、他有馬記念(GI)2着
- 「関西総大将」 スズカコバン
- '83:神戸新聞杯、他阪神大賞典3着 '84:京都大賞典(GII)、他宝塚記念(GI)2着、阪神大賞典(GII)2着、高松宮杯(GII)2着、鳴尾記念(GII)2着、サンケイ大阪杯(GII)3着 '85:宝塚記念(GI)、他天皇賞(春)(GI)3着、サンケイ大阪杯(GII)3着、京都大賞典(GII)2着 '86:京都大賞典(GII)
- 「悲運の名牝」 シャダイソフィア
- '82:函館3歳ステークス '83:桜花賞(八大競走)、サファイヤステークス、他エリザベス女王杯2着、報知杯4歳牝馬特別3着、東京優駿(八大競走)17着 '84:スワンステークス(GII)2着、CBC賞(GIII)2着 '85:阪急杯(GIII)、他京阪杯(GIII)3着
- 「5世代GI制覇初代」 ダイナカール
- '83:優駿牝馬(八大競走)、ターコイズテークス、他報知杯4歳牝馬特別2着、セントライト記念2着、桜花賞(八大競走)3着、ローズステークス3着 '84:アルゼンチン共和国杯(GII)3着 '85:アメリカジョッキークラブカップ(GII)2着、中山記念(GII)3着
- '82最優秀3歳牝馬
- '83最優秀4歳牝馬
- 「グランプリの覇者」 リードホーユー
- '83:有馬記念(八大競走)、他京都新聞杯2着
- 日本最後の八大競走勝ち馬。
- 唯一重賞勝利が有馬記念(GI級競走)1勝のみという記録を持っている。
- 「古馬牝馬の筆頭」 ロンググレイス
- '83:エリザベス女王杯、ローズステークス '84:金杯(西)(GIII)、他サンケイ大阪杯(GII)2着、京都大賞典(GII)2着、天皇賞(秋)(GI)3着
- '84最優秀5歳以上牝馬
- 「世代の障害女王」 ブルーフラール
- '85:中山大障害(春)
- 13年ぶりの牝馬による中山大障害勝ち馬
- 「ミスターシービーのライバル」 メジロモンスニー
- '83:シンザン記念、他皐月賞(八大競走)2着、東京優駿(八大競走)2着、神戸新聞杯3着 '85:高松宮杯(GII)
- 「天才少女」 ダスゲニー
- '83:クイーンカップ、報知杯4歳牝馬特別、サンスポ賞4歳牝馬特別 '84:安田記念(GI)2着、ダービー卿チャレンジトロフィー(GIII)2着、京王杯オータムハンデキャップ(GIII)3着 '85:東京新聞杯(GIII)2着
- 「遅咲きの女傑」 グローバルダイナ
- '83:サファイヤステークス2着、ローズステークス2着、エリザベス女王杯3着 '84:小倉大賞典(GIII)2着、宝塚記念(GI)3着、京阪杯(GIII)3着 '85:小倉大賞典(GIII)、北九州記念(GIII)、サンスポ阪神牝馬特別(GIII)、他高松宮杯(GII)2着、小倉記念(GIII)3着
- '85最優秀5歳以上牝馬
- 「年に一度の ドウカンヤシマ」
- ''82:京成杯3歳ステークス '83:函館記念、他セントライト記念3着、京都新聞杯3着 '84:金杯(東)(GIII)、他京王杯スプリングカップ2着 '85:東京新聞杯(GIII)、他中山記念(GII)2着 '86:朝日チャレンジカップ(GIII)、他函館記念(GIII)3着 '87:金杯(西)(GIII)
- 日本競馬史上初の金杯東西制覇達成
- GI未勝利馬による中央芝重賞6勝
- 中央芝6年連続重賞勝利記録保持者
- 「大外の逃げ馬」 シンブラウン
- '83:阪神大賞典、他菊花賞(八大競走)3着 '84:阪神大賞典(GII)、他北九州記念(GIII)3着 '85:セントウルステークス(OP)、他日経新春杯(GII)2着、鳴尾記念(GII)2着 '86:日経新春杯(GII)2着
- 83年の阪神大賞典は芝3000mの世界レコード
- 史上初の阪神大賞典連覇達成
- 「大井の太陽」 サンオーイ
- '82:青雲賞3着 '83:南関東競馬三冠[羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞]、東京大賞典、京浜盃、他東京盃2着 '84:札幌日経賞(OP)、他札幌記念(GIII)2着、安田記念(GI)3着、毎日王冠(GII)3着
- 「地方競馬初の3億円ホース」 テツノカチドキ
- '84:東京大賞典、他東京記念2着、大井記念2着 '85:大井記念、関東盃、他川崎記念2着、東京記念2着、東京大賞典3着 '86:大井記念、他報知オールスターカップ2着、オールカマー(GIII)3着、川崎記念3着 '87:帝王賞、東京大賞典、他川崎記念3着
- そのほかの活躍馬
- ダイゼンキング 阪神3歳ステークスなど '82最優秀3歳牡馬
- ニシノスキー 朝日杯3歳ステークス
- サクラガイセン アメリカジョッキークラブカップ(GII)、天皇賞(春)(GI)2着など
- カネクロシオ ステイヤーズステークス(GIII)など
- テュデナムキング 中山記念(GII)、有馬記念(八大競走)2着、天皇賞(秋)(GI)2着など
- ビンゴカンタ 菊花賞(八大競走)2着、オールカマー(GIII)2着など
- ボールドマツクス 浦和記念など
※括弧内の格付けは当時のもの。太字は現在のG1級競走。
関連リンク
関連項目
| 前世代 | 当世代 | 後世代 |
| 1982年クラシック世代 |
1983年クラシック世代 |
1984年クラシック世代 |
脚注
- *特にこの年から2000mに短縮された天皇賞(秋)での成績は飛びぬけていて、84年はミスターシービー(1着)、テュデナムキング(2着)、ロンググレイス(3着)、カツラギエース(5着)。85年はギャロップダイナ(1着)、ウインザーノット(3着同着)、ニホンピロウイナー(3着同着)。86年はウインザーノット(2着)、ギャロップダイナ(4着)と、3年にわたり掲示板内に入って猛威を振るった。
- *しかしその勝てなかった天皇賞にも2着だったサクラガイセンのほかにスズカコバン(3着)、ミスターシービー(5着)と同世代が掲示板に3頭入っており、特に長距離が弱かったというわけではなかった。
- *三冠馬が登場した世代は三冠馬自身が飛びぬけて強く、それ以外の馬が活躍できないことが多い。例えばもっとも比較しやすいであろう翌年登場したシンボリルドルフの世代では、古馬G1を勝った馬は宝塚記念を制したスズパレード1頭にとどまっている。
- *シービーの調教師や騎手は最も強かった時期をダービーの時、同じく生産者は菊花賞の時だったと言っていた。古馬に入ってからは出走するのもやっとの状態だった。
- *主な活躍馬で対戦経験がないのは3歳時は自己条件戦をうろついていたギャロップダイナとウインザーノットくらいである。牝馬では桜花賞を勝ってダービーに参戦してきたシャダイソフィアとも戦っている。
- *次に登場する父内国産馬のクラシック三冠馬は2011年のオルフェーヴルである
- *もう1頭はニッポーテイオー
- *3200m時代にはシンザンが勝利している。また三冠牝馬はアーモンドアイが勝利している
- *ウインザーノットと3着同着。
- *ニホンピロウイナーと3着同着。