1972年クラシック世代とは、競馬において1969年に生まれ1972年にクラシック競走を走った(旧4歳、現3歳を迎えた)競走馬の世代である。
日本競馬史上屈指の強豪が集い、グレード制が導入される遥か前の時代でありながら現在でも最強世代の一つに数えられ、クラシックを走った年である昭和47年から「花の47年組」と呼ばれた世代である。
クラシック戦線と古馬戦線で主力の顔ぶれが全く異なる世代であることも重要。
クラシック戦線では、阪神3歳Sを8馬身差で圧勝したヒデハヤテが関西総大将と見られていたが、皐月賞前に無念の戦線離脱。代わって弥生賞まで無傷の5連勝の「重戦車」ロングエースと、スプリングSでヒデハヤテを下してきた「貴公子」タイテエムが皐月賞で2強を形成したが、それを3番人気だったサラ系のランドプリンスが撃破して皐月賞馬となり、この関西馬3頭が「関西三強」として日本ダービーで死闘を繰り広げた。そのダービーはロングエースが勝利し、名手・武邦彦にダービージョッキーの称号を贈った。
秋はロングエースとランドプリンスが不調に陥る中、タイテエムが残る一冠の菊花賞へ万全の体制で乗りこんだが、春はこの「関西三強」の後塵を拝していた関東総大将イシノヒカルがタイテエムを撃破して菊花賞馬となると、そのまま4歳牡馬として初めて有馬記念も制し、関西三強を押しのけ年度代表馬となった。
三冠全て惜敗し「無冠の貴公子」と呼ばれたタイテエムも翌年の天皇賞(春)で悲願の勝利を挙げた。
クラシックで死闘を繰り広げたこの4頭は揃って5歳春までで燃え尽きたが、代わって古馬となって台頭した面々が、1歳下のハイセイコーが巻き起こした空前の競馬ブームの中でハイセイコーらに立ち塞がった。その代表は、命の危険すらあった骨折から復活し73年の天皇賞秋と74年の有馬記念を制して70年代最強馬とも言われたタニノチカラ、ブービー人気からハイセイコーやタニノチカラを退けて重賞初勝利を有馬記念で飾ったストロングエイト、真偽不明ながらその最期が競馬界に大きな波紋を巻き起こした宝塚記念優勝馬ハマノパレードの3頭である。
他に牡馬では長距離での正確なラップ逃げで有名だったトーヨーアサヒ、2・3週間に1走という超ハイペースで出走を続け重賞最多出走記録を作ったイナボレス、五冠馬シンザンの初期の産駒でレコード勝ちを5回という今でも残るレコード最多タイ記録を残したスガノホマレ、大種牡馬ヒンドスタンの最後の大物ハクホオショウ、複数の競馬場を回り「旅芸人」とも称されたノボルトウコウ、多くの曰くつきの勝利で本人は関係ないにもかかわらず「死神」などとあだ名されたタケデンバード、母のエイトクラウンとの史上唯一の宝塚記念母子制覇を果たした中距離の快速馬ナオキなどが有名。
牝馬では桜花賞で武邦彦に八大競走初勝利を贈ったがオークスのクラシック登録をしておらず初代三冠牝馬の称号を逃した二冠牝馬アチーブスターと、そのオークスを制したタケホープの半姉タケフブキ、朝日杯3歳Sで牡馬を蹴散らし4歳で古馬重賞を2勝して最優秀4歳牝馬をアチーブスターと分け合ったトクザクラ、短距離戦で活躍した快速牝馬キョウエイグリーン、1番人気に支持されたビクトリアカップで悲劇の最期を遂げたタカイホーマなどが知られる。
障害競走では中山大障害を4連覇、障害競走9連勝など圧倒的な強さを見せ、中央競馬初の獲得賞金3億円越え、障害馬初の顕彰馬に選ばれたグランドマーチスが代表。
地方競馬では「アラブのメッカ」と言われていた園田・姫路競馬の代表馬で、初めて地方競馬全国競走として行われた全日本アラブ大賞典に勝利し日本一となったタイムライン、そのタイムラインのライバルと目された大井競馬のスカレーがいる。
海外では当時世界的にはまだレベルが低かった日本に凱旋門賞を勝った牝馬として初めて日本に来たサンサン、欧州競馬史上最大の悪役と言われたのちの大種牡馬ロベルト、サンデーサイレンスの父として日本競馬に大きな影響を与えた気性難の良血馬ヘイロー、ダンシングブレーヴの父としても知られる大種牡馬リファール、アメリカ二冠馬リヴァリッジ、「ネイティブダンサーの隔世遺伝」の代表格であるシャーペンアップ、ナイスネイチャの父にしてトウカイテイオーの母父でもあるナイスダンサーなどが有名。
この世代は前年から流行していた馬インフルエンザと厩務員のストライキの影響でダービーの開催が史上最も遅い7月9日になるなどクラシックのレースの日程が大きく変わり、特に有力馬だったヒデハヤテ、タイテエムなどは良くも悪くもその影響を大きく受けることになった[1]。クラシック三強を形成した3頭とイシノヒカルは各陣営が「別の年なら三冠を狙えた」と言っていたほどだったが、同じ年に揃ったが故にレースで戦うごとに一瞬も油断できなくなり、前述の通り4頭すべてが5歳の春で燃え尽きてしまう結果になった。しかし古馬になって本格化してきた同世代の多くの馬たちにより古馬の重賞戦線は平地、障害ともに総なめにされ、73年の八大競走を全て勝利、有馬記念を同世代で3連覇[2]、当時から存在し現在GⅠに格付けされている古馬重賞を同世代だけで完全制覇するまであと一歩のところまで迫るなど[3]、幅広い距離や適性を持つ多士済々の顔触れが揃い、一つ下のハイセイコーを筆頭とする1973年クラシック世代の大きな壁として立ち塞がることになった。
| 競走名 | 1972年(現3歳/旧4歳) | 1973年(現4歳/旧5歳) | 1974年(現5歳/旧6歳) |
|---|---|---|---|
| 皐月賞 | ランドプリンス | 4歳馬限定戦 | |
| 東京優駿 (日本ダービー) |
ロングエース | 4歳馬限定戦 | |
| 菊花賞 | イシノヒカル | 4歳馬限定戦 | |
| 桜花賞 | アチーブスター | 4歳牝馬限定戦 | |
| 優駿牝馬(オークス) | タケフブキ | 4歳牝馬限定戦 | |
| 天皇賞(春) | タイテエム | ||
| 天皇賞(秋) | タニノチカラ | ||
| 有馬記念 | イシノヒカル | ストロングエイト | タニノチカラ |
| 競走名 | 1972年 (現3歳/旧4歳) |
1973年 (現4歳/旧5歳) |
1974年 (現5歳/旧6歳) |
1975年 (現6歳/旧7歳) |
1976年 (現7歳/旧8歳) |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京障害特別(春) | |||||
| 阪神障害ステークス(春) | ケイキット | ブゼンサカエ | |||
| 中山大障害(春) | グランドマーチス | グランドマーチス | |||
| 京都大障害(春) | グランドマーチス | ||||
| 阪神障害ステークス(秋) | カネロンド | フジチャイナ | |||
| 東京障害特別(秋) | トキ | ヒロサンダー | |||
| 京都大障害(秋) | ブゼンサカエ | グランドマーチス | グランドマーチス | ||
| 中山大障害(秋) | グランドマーチス | グランドマーチス |
| 競走名 | 1971年 (現2歳/旧3歳) |
1972年 (現3歳/旧4歳) |
1973年 (現4歳/旧5歳) |
1974年 (現5歳/旧6歳) |
1975年 (現6歳/旧7歳) |
|---|---|---|---|---|---|
| 朝日杯3歳ステークス | トクザクラ | 3歳馬限定戦 | |||
| 阪神3歳ステークス | ヒデハヤテ | 3歳馬限定戦 | |||
| ビクトリアカップ | アチーブスター | 4歳牝馬限定戦 | |||
| 安田記念 | ハクホオショウ | キョウエイグリーン | |||
| 宝塚記念 | ハマノパレード | ナオキ | |||
| 高松宮杯 | タケデンバード | ||||
| スプリンターズステークス | ノボルトウコウ | キョウエイグリーン | |||
| アラブ大賞典(春) | ジャズ | ミツノセカイ | |||
| 読売カップ(春)(~1973) セイユウ記念(1974~) |
ヒシマツタカ | ||||
| タマツバキ記念(春) | キースター | シロタマツバキ | |||
| タマツバキ記念(秋) | シロタマツバキ | ||||
| 読売カップ(秋)(~1973) シュンエイ記念(1974~) |
ジャズ | ||||
| アラブ大賞典(秋) | ヒシマツタカ |
| 競走名 | (現2歳/旧3歳) |
(現3歳/旧4歳) |
(現4歳/旧5歳) |
競走名 | (現3歳/旧4歳) |
(現4歳/旧5歳) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全日本三才優駿 | ヤシマスウパー | 3歳馬限定戦 | 楠賞 | フジマンデン | 4歳馬限定戦 | |
| 羽田盃 | トキワタイヨウ | 4歳馬限定戦 | 千鳥賞 | タイムライン | 4歳馬限定戦 | |
| 東京ダービー | トキワタイヨウ | 4歳馬限定戦 | アラブダービー | タイムライン | 4歳馬限定戦 | |
| 東京王冠賞 | サンコオーリキス | 4歳馬限定戦 | アラブ王冠賞 | スカレー | 4歳馬限定戦 | |
| 競走名 | (現3歳/旧4歳) |
(現4歳/旧5歳) |
(現5歳/旧6歳) |
(現6歳/旧7歳) |
(現7歳/旧8歳) |
(現8歳/旧9歳) |
| 開設記念 | 馬インフルエンザ により開催中止 |
ネロ | ||||
| 東京大賞典 | フリユーフアスト | |||||
| タイムライン | ||||||
| 農林水産大臣賞典 |
| 啓衆社賞 | 優駿賞 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 表彰部門 | (現2歳/旧3歳) |
(現3歳/旧4歳) |
(現4歳/旧5歳) |
(現5歳/旧6歳) |
1975年 (現6歳/旧7歳) |
| 最優秀3歳牡馬 | ヒデハヤテ | 3歳限定部門 | |||
| 最優秀3歳牝馬 | トクザクラ | 3歳限定部門 | |||
| 最優秀4歳牡馬 | イシノヒカル | 4歳限定部門 | |||
| 最優秀4歳牝馬 | アチーブスター | 4歳限定部門 | |||
| タニノチカラ | タニノチカラ | ||||
| 1972年廃止 | |||||
| 最優秀障害馬 | グランドマーチス | グランドマーチス | |||
| 最優秀アラブ | ジャズ | ||||
| 年度代表馬 | イシノヒカル | ||||
| 公営日本一 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 表彰部門 | ||||
| 最良の3歳牡馬 | サラ | パールナデイア | 1972年廃止 | |
| アラ | タイムライン | 1972年廃止 | ||
| 最良の3歳牝馬 | サラ | シマトウリユウ | 1972年廃止 | |
| アラ | カズタカクイン | 1972年廃止 | ||
| 最良の4歳牡馬 | サラ | 1972年廃止 | ||
| アラ | 1972年廃止 | |||
| 最良の4歳牝馬 | サラ | 1972年廃止 | ||
| アラ | 1972年廃止 | |||
| 最良の荘馬牡馬 | サラ | 1972年廃止 | ||
| アラ | 1972年廃止 | |||
| 最良の荘馬牝馬 | サラ | 1972年廃止 | ||
| アラ | 1972年廃止 | |||
| 公営日本一 | サラ | 1972年廃止 | ||
| アラ | 1972年廃止 | |||
| 前世代 | 当記事 | 後世代 |
|---|---|---|
| 1971年クラシック世代 | 1972年クラシック世代 | 1973年クラシック世代 |
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掲示板
2 ななしのよっしん
2022/10/16(日) 22:35:14 ID: KkDcpEYKkP
ヘイロー・ロベルト・リファール・シャーペンアップと何気に海外種牡馬も大豊作の年だね
3 ななしのよっしん
2025/03/30(日) 00:18:05 ID: LJdL9ByEHq
ダービー限りで燃え尽きたロングエース
脚が弱いながら菊花賞有馬を増沢末夫も絶賛の豪脚で連勝するも、脚を痛めて強さを失ったイシノヒカル
サラ系故に種牡馬としての機会はほぼなかったランドプリンス
ようやく華開いたと思えば次走で予後不良、ハマノパレード
華開く寸前で予後不良級の大怪我で引退、斜陽の青森でしかチャンスがなかったハクホオショウ
花の47年組と呼ばれたが存外不幸続き
4 ななしのよっしん
2025/09/01(月) 16:29:16 ID: enDWrmkYdI
海外種牡馬のヘイロー、ロベルト、リファール、ナイスダンサー
これらは今の日本競馬界でも影響が出るぐらいスゴい
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/16(火) 11:00
最終更新:2025/12/16(火) 11:00
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