アイスバケツチャレンジ(Ice Bucket Challenge)とは、筋萎縮性側索硬化症(通称:ALS)の研究を支援するために、病気のことを認識してもらうことと寄付を呼びかける慈善運動である。
概要
基本の形は「氷水を頭からぶっかぶるか、ALSの団体に寄附をするか、その両方をする」→「次にそれをやる人を指名する」という流れである。
ちなみにこの指名は、「(君もアイスバケツチャレンジを)やらないか?」という誘いであり強制ではない。
2013年ごろから一部の界隈では類似の事が行われていたらしいが、これは様々な分野の募金へと分散したものでありALSに特化した動きではなかった。それが2014年7月ごろから、爆発的に流行りだすと同時に、ALSを支援する方向に集中し始めた。
その理由としては諸説ある。「あるプロゴルファーがALSの団体に募金しつつアイスバケツチャレンジを行ったのがきっかけ」「元大学の野球チームのキャプテンだったALS患者が広めた」などが、ある程度根拠がある説とされているようだ。「ALSを患ったアメリカの患者の父親が、病気のことを知ってほしいということを目的に、自ら氷水をかぶり、その姿を動画サイトに投稿した。その動画を見たアメリカの俳優が拡散した」という話もある。
なお、アメリカでは氷水は祝福を意味し、「元気付ける」という意味合いもある。スポーツの分野においては、大きな試合に勝利した際、選手たちが監督に氷の浮いたスポーツドリンクをタンクごとぶちまける「ゲータレードシャワー」が有名。ただし、この文化は世界共通のものでは無いため、日本などでは罰ゲーム的な意味合いに受け取られることが多かったことも記しておく。
レディー・ガガ、ネイマール、バラク・オバマ、ジョージ・ウォーカー・ブッシュなど世界中の著名人まで行うようになり、日本でも芸能人や実業家、プロスポーツ選手、声優までもがチャレンジするくらいに広まった。
上記のバラク・オバマ大統領のように、氷水を被らず寄附だけすることを選んだ人物も居る。またオバマ大統領以外の大物政治家として、韓国のロックバンドが韓国の朴槿恵大統領、中国の習近平国家主席、日本の安倍晋三首相の3人を指名したこともあった[1]。このときの安倍首相も「氷水を被って体調を崩したら政務に差し支える」という理由で寄付のみを選択している。
これら以外にも大量の著名人が自らが預かり知らぬところで勝手に指名されているが、当然ながらそのほとんどはスルーされている。
成果
これによって、ALSという難病について広く認知されるようになり、各国のALS関係の団体に多額の寄付が集まった。
アメリカにある「ALS Association」は、このチャレンジの広まりにより数十万人の新たな募金者を得て、2014年7月末からの約一か月で日本円にして40億円以上の寄付金を得たという。これは前年に一年かけて同団体が得た募金の2倍を超す。
この資金を「ALS Association」は治療薬の研究開発・治験に投入。この投資によって新たな薬剤が開発された(開発コード「AMX0035」。フェニル酪酸ナトリウムとタウルルソジオールの合剤)。この薬剤はALS患者に投与した場合に日常生活機能喪失の遅延や総生存期間の延長に有効であるという治験結果が得られ、商品名「Albrioza」としてカナダで、「Relyvrio」としてアメリカで、2022年に承認された。
他の団体でも、「Project ALS」は前年同時期の50倍の、「ALS Therapy Development Institute
」は10倍の寄附が集まったとしている。
との声明を発表している。
こうした状況を見るに、このチャレンジは単なる空虚なお祭り騒ぎではなく、確かな成果が得られていると言えるだろう。
批判
反面、この運動に対して「氷水をかけることは身体的な危険がある」、「本来の目的が忘れられている」、「水を無駄遣いするな」、「強制ではないとはいえ、一方的に指名される事には圧力を感じる(無視するとイメージの低下に繋がるためやらざるを得ない)」などの批判的な意見も決して少なくはない。
最後の点については、対等の関係にある親しい友人に「こういった事に参加したいのだが指名してもいいか?」と事前に相談しておき、了承を得られた相手だけを指名する……といった工夫で避けられるかもしれない。テレフォンショッキングかな?
危険性についても確かに皆無ではない。急激な低温にさらされると、皮膚の血管が一気に収縮するので血圧が急に大きく変動すると言われる。心臓や血管の持病がある人やお年寄りは、命の危険もあるのでやめておいた方がよい。もちろん体を冷やしたことで単純に風邪をひく危険性もあるし、消防車を用いた大規模なチャレンジを行おうとした消防士が事故死するという事例も発生している。
ALSに関する各団体の反応
各団体は「大変助かっている」と感謝しきりである。
ただし注意の声も挙げており、例えば「ALS Association」は「水の使い方には注意!渇水で困っている地域の人は、水は他の事に使おうね」と言った意味の注意文を、公式サイト内のこのチャレンジに関するページに載せている。
皆さまへのお願い
「アイスバケツチャレンジ」で、冷たい氷水をかぶることや、寄付をすることは強制ではありません。
との文章が記載されている。
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関連項目
脚注
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