『カルメン』(Carmen)とは、
本項では2.および3.について記述する。
概要
メリメの小説「カルメン」は1845年に月刊誌「両世界評論」に発表された。2年後に単行本化され、彼の代表作の一つに数えられている。
作中では考古学者がスペインで出会ったバスク人の男の物語を語るという体裁になっており、情熱的なジプシー女・カルメンに振り回された挙句、悪事を犯して身の破滅を招いた事が記されている。
これを原作とし、1874年にジョルジュ・ビゼーはオペラ『カルメン』を製作。
演出としてタバコをくわえて踊る工女や不道徳な内容から批判を受け、初演は不評だったものの、徐々に評判を上げ、ウィーン公演の話が持ち上がる。ビゼーは契約を結んだが程なく心臓発作で急逝、晴れの舞台をその目で見る事はなかった。
現在ではフランス・オペラの代表作に数えられ、世界的にも人気を博している演目である。『ハバネラ(恋は野の鳥)』『闘牛士の歌』などの名曲が広く知られている。
また本作で主役を演じるカルメンはメゾソプラノの歌手が演じるのが通例で、メゾソプラノが主役を張れる数少ない作品でもある。
あらすじ
衛兵伍長のドン・ホセの許嫁、ミカエラが彼を訪ねて来るところから物語は始まる。同僚のモラレスがそろそろ交替の時間だと告げた為にミカエラは一旦去るが、そこへ入れ違いにホセが登場する。
朴訥なホセをモラレスがからかっている所で、煙草工場から休憩時間に入った女工達が登場。その中に一際美しいジプシーの女・カルメンがいた。
輝くような美貌と大胆かつ激しい性格で若い男達を魅了するカルメンだったが、ホセは彼女に興味を示さなかった。挑発するように赤い薔薇の花を投げつけて去っていくカルメンを無礼な奴だと怒りながらも、ホセは徐々に彼女に惹かれてしまう。
そこへミカエラが戻ってきてホセの母から託された手紙を渡す。遠い故郷を懐かしみ、将来結婚する事を確認する二人。
ところがミカエラが去るとにわかに騒がしくなる。女工達が喧嘩を始め、大騒動になったのだ。騒動の中心にいたのはカルメンだった。
上官の命令でカルメンを逮捕し、縄で縛るホセ。しかしカルメンは彼を誘惑し、縄を解かせる事に成功、逃亡してしまった。逆に逃亡幇助罪でホセは逮捕されてしまう。
時は流れ、セビリアの街はずれの酒場。
カルメンは仲間達と踊っていたが、そこに登場した闘牛士・エスカミーリョに一目惚れしてしまう。
そこへ出所したホセが現れ、カルメンへの愛を情熱的に歌い上げた。衛兵の名誉を捨ててまで自分を助けてくれた男相手についその気になるカルメンだったが、衛兵を集めるラッパの音を聞いたホセが帰ろうとすると「あんたの愛はその程度なの!?」と激しくなじり、「私を愛しているなら、一緒に密輸団に入りなさい」と命じる。
こうしてなし崩し的に犯罪者への道を歩む羽目になったホセだったが、この時既にカルメンの心はエスカミーリョに移っていた。そんな彼女はカード占いをするが、何度繰り返してもカードは「死」を指し示すのだった。
一人見張りに立つホセをミカエラが訪ねて来る。しかしそこにエスカミーリョが現れ、二人はカルメンを巡って決闘となってしまった。密輸団の連中が二人を制止すると、エスカミーリョは一同を闘牛場に招待すると約束し、悠然とその場を立ち去る。
相手は絶大な人気を誇る闘牛士、既に愛の勝敗は決していた。打ちひしがれるホセに、故郷の母が危篤であるとミカエラが告げる。そんな二人に「さっさと立ち去るがいい」と言い渡すカルメンを残し、ホセはミカエラと共に故郷へと向かうのだった。
所は変わり、セビリアの闘牛場。大変な賑わいの中、次々と出場する闘牛士たちが行進する。
歓呼の声に迎えられる中、カルメンに愛を誓い、闘牛場へと消えていくエスカミーリョ。一人広場に残ったカルメンの目の前に、やつれ果てたホセが姿を現した。
復縁を迫るホセに対し、カルメンは既に愛は去ったと言い捨てる。「復縁しなければお前を殺す」と脅すホセに「やれるものならやってごらん!カルメンは自由に生まれて自由に死ぬんだ!」と告げると、かつて彼からもらった指輪を抜き取り、彼に投げつけた。
この仕打ちにホセは逆上、闘牛場へ向かおうとしたカルメンを刺殺。狂ったように「愛するカルメン!」と絶叫する中、物語の幕は下りる。
補遺
スペイン語圏では「マリア」と並びポピュラーな名前で、町中で「カルメン!」と声を上げると結構な数の女性が振り向くという。
楽曲は広く人口に膾炙しており、フィギュアスケートに用いられる事が多い。著名なところではエフゲニー・プルシェンコのソルトレイクシティ五輪におけるFSプログラム(通称『やけくそカルメン』)など。
またホラーゲーム『Five Nights at Freddy's』ではとあるキャラが登場する時にオルゴール版の「闘牛士の歌」が流れ、みんなのトラウマと化している。
「カルメン」は劇中での描写通り、魔性の美貌と性格で男を破滅に導く「ファム・ファタール(運命の女)」の一例に数えられる。
同時に「愛に生き愛に死ぬ、情熱的な女」の代名詞でもあり、ピンク・レディーの楽曲『カルメン'77』など、その名が使われる事がある。
アメリカでは1994年からテレビアニメ『怪盗カルメンサンディエゴ』(Where on Earth Is Carmen Sandiego?)が製作、放送された。日本でも同年からNHK教育で放送されている。
国際的な窃盗団「V.I.L.E.」の女首領、カルメン・サンディエゴの活躍を描いたピカレスクアドベンチャーで、赤いトレンチコートと帽子がトレードマークの美女として描写されている。
2018年にはNetflixでリメイクアニメのオンエア、および実写版映画の製作が発表された。放送開始は2019年予定。
関連動画
関連項目
- オペラ
- ジョルジュ・ビゼー
- ジプシー
- 闘牛
- アルルの女
- クイズ世界はSHOW by ショーバイ!! - 前奏曲がクイズのBGMに使用される
- 競馬ファンファーレ - 衛兵の交代冒頭のファンファーレが、名古屋競馬場で使われている(過去には笠松競馬場でも使用)
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