笠松競馬場とは、岐阜県羽島郡笠松町と岐南町にまたがる地方競馬場である。
岐阜県、笠松町、岐南町の1県2町で構成される一部事務組合「岐阜県地方競馬組合」によって地方競馬「笠松けいば」が開催されている。「名馬・名手の里ドリームスタジアム」の愛称にふさわしく、数々の名馬が走り、全国区となった騎手を多数輩出した競馬場として知られている。
概要
1931年に現中津川市にあった競馬場を移転する形で開場。敷地の大半が民有地という珍しい形態になっており、内馬場には水田、畑、墓地、高圧鉄塔などが混在するカオスな状態が長年続いている。このため、借地料を巡って地主と一時裁判沙汰となったこともある。
コースは1周1100mの右回りで800〜2500mまで設定。ゴール前直線は238mあり、フルゲートは長年10頭だったが、2017年11月の開催から12頭立て対応のゲートに更新しており、2019年9月11日から12頭立て競走を開始した。
競馬場の敷地が狭いことから、出走前の下見所であるはずのパドックが内馬場にあるため、ファンは当然近づけず、待機所もないため騎手はマイクロバスで乗りつけ、そこから騎乗する形が取られている。
場内には、名馬・オグリキャップの銅像と等身大立て看板、ラブミーチャンの等身大立て看板がある。
開催は名古屋競馬場と日程を調整しており、名古屋と1週交代で平日に4〜5日間開催。金沢競馬場とも相互発売を行っており、金沢競馬が開催される火曜日は休催することが多い。
レースも名古屋競馬場と東海ブロックを形成して、騎手、馬とも日常的に相互交流を図っている。重賞についても地区共通の格付け「SP(スーパープレステージ)Ⅰ〜Ⅲ」が採用されている。また、以前は金沢競馬場の冬季休催中は人馬とも受け入れていた。(現在は行われていない)
場内実況は弘報館が担当。2013年度からは南関東・金沢を担当する耳目社からアナウンサーを派遣してもらっているほか、元福山競馬実況の西田茂弘が担当することもある。
アクセスは名鉄名古屋本線笠松駅から徒歩3分(かつての最寄り駅東笠松駅は利用者低迷で2005年に廃止された)。周辺には1100台あまりの無料駐車場も用意されている。
近年でも名馬・名手を生み、地方競馬の中でも知名度の高い競馬場であるものの、肝心の営業成績は1990年代後半から低迷、2005年度以降はかなり具体的に廃止に向けて動いた時期もあり、予断を許さない状況が続いた。賞金の削減も行われたため、2011年1月〜2015年度末までは普通競走、特別競走(JRA交流除く)、準重賞では1〜3着までしか賞金が出ない時期が続いた。また、かつては「オグリキャップ記念(統一GⅡ)」「全日本サラブレットカップ(統一GⅢ)」とダートグレードが2競走開催されていたが、2005年に経営改善の一環でともにダートグレードを返上している(「全日本サラブレッドカップ」は「笠松グランプリ」に改称し、現在は両競走とも地方全国交流競走)。
本場開催が平日で、中央競馬の場外発売所「WINS」も近隣にないことから、地方競馬各場が取り入れ、名古屋競馬場の営業好転の例もある「J-PLACE」(地方競馬の販売システムでの中央競馬の場外発売)の実施が考えられるものの、笠松競馬場のトータリゼータシステムは地方競馬で唯一の日本ベンダーネットを採用しているため、開発・導入費用を単独で負担することとなることがネックとされていたが、2014年10月4日より笠松競馬場と場外発売所の「シアター恵那」をJ-PLACE笠松(恵那)として中央競馬の馬券発売を開始した。
J-PLACEの売上が好調なおかげか、2015年6月末に内馬場にあるパドックをリニューアル、2016年度から全レースの賞金を5着まで出るように戻した。また、2017年度はじめから大型ビジョンを導入するなど他場同様に回復傾向を見せている。
しかし、2020年に入ってから厩舎関係者の馬券の組織的不正購入(八百長防止のため、選手や指定された関係者が自らの関与する競技の投票券を購入するはどの公営競技でも禁止)が発覚。2021年1月19日には朝日新聞によって新たな報道がされた事で1年近くの開催中断を余儀なくされ、騎手も半分近くが関与停止などで追放されることになった。2021年9月から開催が再開されたが、今後の信頼回復が期待される一方、事件は解決していないとして笠松競馬の廃止を求める論者も出ており、前途多難といったところである。
2022年からはウマ娘 シンデレラグレイとコラボした「ウマ娘シンデレラグレイ賞」を実施(当初は2021年に行われる予定だったが、中止。朝日新聞による報道も開催予定日当日だった)。初開催となった2022年4月はうちわの配布やウマ娘のオグリキャップとタマモクロスのパネル設置といったイベントが行われたが、入場制限ギリギリの人数のが押し寄せる事態となり、亡くなったこの現代においてもオグリキャップが人を呼ぶことを見せつけた。一方で前述の競馬法違反事件を理由にした開催反対派も少なくない。
現在、ニコニコ生放送及びYouTubeにて全レースのライブ配信を実施中。YouTubeでは開催週の金曜日にサブチャンネルにて予想番組を配信している。
主な名馬
- オグリキャップ(1987〜1988在籍)
- 説明不要。笠松競馬場内には銅像が設置されている。春に行われる地方全国交流重賞の長距離戦(かつてはダートグレードだった)「オグリキャップ記念」としてレース名にもなっている。
- フエートノーザン(1987〜1989在籍)
- 中央から移籍してから連対を外したのは1回だけ(それも3着)、交流競走ブリーダーズゴールドカップ初代王者にも輝くが、連覇をかけて挑んだ全日本サラブレッドカップで故障、懸命の治療も予後不良となった悲運の名馬。
- オグリローマン(1993在籍)
- 中央移籍後の1994年に桜花賞優勝。オグリキャップの中央移籍の際に中央の馬主免許が無かった小栗オーナーは泣く泣くオグリキャップを手放したが、オグリローマンは最後まで手放さなかった。
- ライデンリーダー(1994〜1997在籍)
- 地方在籍のままでの中央遠征で一躍旋風。デビュー11連勝で4歳牝馬特別(現在のフィリーズレビュー)を勝利し、桜花賞でも4着に好走。2歳重賞「ライデンリーダー記念」に名を残す。
- レジェンドハンター(1999年~2007年在籍)
- デビュー戦2着から覚醒し、4連勝でデイリー杯2歳Sを逃げ切り4連勝、朝日杯3歳Sもエイシンプレストンの2着に激走。6歳の第14回全日本サラブレッドカップでGⅠ馬スターリングローズを相手に果敢に逃げて観客の大歓声のなか逃げ切って勝利。
- ミツアキサイレンス(1999年~2006年在籍)
- デビューから地元では負け無しの5連勝で兵庫チャンピオンシップを勝って交流重賞勝ち。最終的に交流重賞を4勝している。中央にも果敢に遠征しており、阪神大賞典では大接戦の4着を演じている。
- ミツアキタービン(2002年~2009年在籍)
- デビュー後に2勝した以降は交流重賞は好走止まりで目立たなかったが3歳秋に覚醒して中央の1000万下交流戦で2着以下をぶっちぎって圧勝。そのままフェブラリーSでも僅差4着に好走してドバイワールドカップに招待される(予防接種の関係で輸出検疫が通らず遠征断念)その後は交流重賞を2勝する活躍。
- ラブミーチャン(2009〜2013在籍)
- 元はコパノハニーという名前で中央在籍だったがデビューできずに挫折する形で笠松に移籍。名前をラブミーチャンに変えてからデビュー5連勝で全日本2歳優駿(JpnI)勝ちなど、地方馬不遇の時代で全国区の活躍。こちらも2歳牝馬重賞の「ラブミーチャン記念」として競走名となっている。
- トウホクビジン(2009〜2015在籍)
- 現存する地方競馬全場での出走を達成するなど、全国の交流重賞の常連として重賞だけで130戦完走。
主な名手
- 安藤勝己(1976〜2003在籍)
- 「カラスの鳴かない日があってもアンカツの勝たない日はない」。
- 安藤光彰(1976〜2007在籍)
- 安藤勝己の兄。地方通算2818勝。中央移籍時は1次試験から受験し合格。
- 川原正一(1976〜2005在籍)
- 兵庫移籍後の2013年に地方全国リーディングを獲得し、現在も第一線。
- 濱口楠彦(1976〜2013在籍)
- 晩年はラブミーチャンの主戦として知られる。現役のまま2013年急逝。
このほか、現中央競馬騎手の柴山雄一も1998〜2005年は当場に在籍(ただしリーディング最高位は4位)。中央移籍時は1次試験から受験し一発合格で移籍した。
厩舎
競馬場周辺の土地が狭いことから、厩舎区画は競馬場とは大きく離れた場所にあり、競走馬は馬運車ではなく徒歩で競馬場まで往復する。競馬場までの道のりには馬専用の道路があったり、信号機の押しボタンが馬に乗っていても押せるように工夫されている。笠松競馬場の横を走る幹線道路の道路標識も、馬注意や、馬の絵の描かれた標識が存在する。
しかし、このことから生活空間と競馬場の遮断が十分でないため、放馬した競走馬が場外に脱走するケースがあり、2013年にはそれによる死亡事故が発生、笠松競馬の開催が一時自粛となる事態になった。
飲食について
競馬場内の飲食に関しては、正面ゲートを入って左側に飲食スペースがある他、西スタンド3階にも軽食店を構えている。特に1935年創業の老舗・丸金食堂の串モノや縁起物の「あたりもち」をはじめとした伝統の味は競馬ファンに長年愛された味として有名。Café IL FANTINOはオープン時に洒落たカフェが笠松競馬場に出来たという事で当時驚かれており、トンテキや本格的なピザなどイタリアンな味が楽しめるためこちらも長年愛されている。
競馬場周辺にも飲食店が結構多いので、頻繁に通うファンにも安心。近隣のヨシヅヤは2023年にリニューアルされ、無印良品が併設されるなど新鮮な雰囲気になった。こちらで腹ごしらえをしておくのも良いかもしれない。
関連動画
関連項目
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