「トゥーランドット」(Turandot)とは、
本項では3.について記述する。
概要
中近東~オリエントにおける類話「謎かけ姫」のひとつ。美しい姫君が結婚する相手に謎を出し、答えられなければ命を奪う。しかし賢い王子の機転によって謎は解かれ、姫を妃に迎えるというもの。
ド・ラ・クロワの『千一日物語』は1710年に出版されたがフランス語の原本は遺失し、他国語に翻訳された本が底本となっている。この中にある「カラフ王子と中国の王女の物語」が原作となる。
物語および戯曲を原作とし、プッチーニは1920年に作曲を開始。しかしスランプにより一時期製作がストップする。
その後1924年にプッチーニは癌治療中に心臓発作を起こして死去、フランコ・アルファーノが後を継ぐ形で完成させ、1926年に初演された。
初演においてはアルトゥーロ・トスカニーニが指揮を務めた。
第三幕、プッチーニによる作曲部分が終わった所で彼は指揮をやめ、「マエストロはここまでで筆を断ちました」と聴衆に告げて指揮台を降りたという。
あらすじ
壮麗なる紫禁城前の広場で、役人が群衆を前にお触れを出す。
「清らなるトゥーランドット姫に求婚する男に告げる。姫の出す三つの謎に答えなければ求婚はかなわず、謎を解けぬ場合は死刑となる」
謎解きに失敗したペルシアの王子が処刑の為に広場に引きずり出されてくる中、亡国・ダッタン国の王子カラフは女奴隷・リューと再会する。リューはかつてカラフに密かな恋心を抱いていたが、彼女がそれを明かす事はない。そんな彼女が匿っていた元国王の父ティムールと再会し、三人は喜びを露わにする。
その時処刑の様子を見に来たトゥーランドット姫の姿をカラフは目にし、一目で彼女の虜となった。ティムールやリュー、更に宮廷の大臣ピン、ポン、パンが思いとどまらせようと説得するが、カラフは広場の銅鑼を三度打ち鳴らし、求婚者として高らかに名乗りを上げる。
ピン、ポン、パンがトゥーランドット姫に挑戦する男について話し合っていると、皇帝アルトゥームが登場。カラフに対して無謀さを解き、諦めさせようとするが、恋に燃える王子には届かない。
そこへトゥーランドット姫が登場。何故このような冷酷な仕打ちを続けるのか、それを彼女は語りだす。
「数千年前、わたくしの先祖であるロウ・リン姫は異邦人に連れ去られ、絶望の中で殺されました。彼女の無念を晴らすべく、わたくしを求め訪れるこの世全ての男に復讐を果たすのです」と。
第一の謎は「毎夜生まれては明け方に消えるものは何か?」カラフは答える、「それは希望」。
第二の謎は「赤く、炎の如く熱いが、炎ではないものは何か?」カラフは答える、「それは血潮」。
人々がどよめく中、遂に最後の謎が出題される。
「氷のように冷たいが、周囲を焼き焦がすものは何か?」
カラフは思い悩むが、やがて意を決して答える。「トゥーランドット!」
こうしてカラフは三つの謎全てに正解した。皇帝アルトゥームは約束を果たすようにトゥーランドット姫に告げるが、姫は激しく拒絶。だがそんな彼女に対し、カラフは語り掛ける。
「ならば私からは一つの謎を出そう。私の名は誰も知らぬはず。明日の夜明けまでに私の名前を解き明かしたならば、喜んで死にましょう」。
かくして北京の街に、トゥーランドット姫の命令を伝える為に兵士達が繰り出す。
「誰も寝てはならぬ!かの求婚者の名を解き明かす事ができなければ、住民は皆死刑となる!」
カラフはその命令を遠くに聞きながら、アリア「誰も寝てはならぬ」にて、自らの勝利と希望を高らかに歌う。
ピン、ポン、パンが登場し、数多の財宝や美女と引き換えにトゥーランドット姫への求婚を取り下げるよう頼みに来る。しかしカラフはこれを拒否。だがそこへティムールとリューが連行されてきた。
カラフの名を知る者として引き据えられた二人だが、老王を庇ったリューが「私だけがあの方の名前を知っている!」と名乗りを上げ、拷問を受ける。
トゥーランドット姫はカラフの名を明かすよう迫るが、リューは「私の愛は秘めたるもの、この拷問すらも喜びなのです!沈黙を貫き通せばあの方の助けになるのですから」と叫んだ。そして衛兵の短剣を奪い、秘密が暴露されぬようにと自害。決して叶わぬ愛と忠誠を貫いたリューの死を悼み、人々は姫と王子を残してその場を立ち去る。
トゥーランドット姫は、リューの命がけの献身を目の当たりにして心を激しく揺り動かされた。カラフの口づけを受けて凍り付いた心が溶け、彼女は遂にカラフを愛するようになる。
そしてカラフは自分の名を明かし、人々と共に皇帝の玉座の前へと進み出る。そしてトゥーランドットは涙と共に皇帝に告げた、「彼の名は……『愛』です!」と。
群衆は復讐の終焉と愛の勝利を高らかに讃え、皇帝万歳を叫ぶ中、物語は終わる。
補遺
『蝶々夫人』と同じく、本作では舞台となる現地の音楽が取り入れられている。
中国民謡や清国の国家、宮廷音楽や伝統的な古歌があり、異国情緒がより強調されている。
反面、中国においては長年「『トゥーランドット』は中国蔑視の作品である」として上演される事がなかった。かつてカラヤンは中国国内での上演を熱望していたが、彼ほどの指揮者であっても許可が下りなかったほどである。
しかし時代が下るにつれそのような見方は徐々に薄れ、1998年に国内初演となった。ズービン・メータ指揮、チャン・イーモウ演出という豪華な顔ぶれで、時代は明代に設定。更にエキストラとして人民解放軍を採用し、紫禁城内の特設ステージで上演され、大きな話題となった。
第三幕でカラフが自分の勝利を確信して歌う「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」は、リリコ・スピント・テノールの名曲として非常に名高い。カラフはルチアーノ・パヴァロッティの当たり役でもあり、彼の代表曲でもある。
2007年のイギリスの番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』において、ポール・ポッツが本曲を歌い、会場を熱狂させた。彼は同年の優勝者となり、携帯電話ショップの店員から歌手へと転身を遂げた。
女性が歌う事も多く、サラ・ブライトマンや本田美奈子、アレサ・フランクリンによる歌唱が知られている。
またフィギュアスケートでも使用される機会が多い。荒川静香はトリノ冬季五輪のフリープログラムにおいて本曲を使用。アジア選手として初となる金メダルを獲得した。
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