退屈するって、どんな気分なのかしらね。
《修繕》(しゅうぜん)とは、マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)のカードである。初出は1999年発売の『ウルザズ・レガシー』。
概要
ソーサリー
修繕を唱えるための追加コストとして、アーティファクトを1つ生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから、アーティファクト・カードを1枚探し、そのカードを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
自分のアーティファクトを別のアーティファクトに作り変えてしまう、イカれたカード満載の『ウルザ・ブロック』の中でもトップクラスにイカれたカードである。2017年現在、レガシーで禁止、ヴィンテージでも制限カードに指定されてる。
元は《Transmute Artifact》というカードである。こちらは生贄にしたアーティファクトと、場に出したアーティファクトのマナコストの差を追加で支払う必要があった。マーク・ローズウォーター(通称マロー)がこのカードをリメイクするに際し、「『追加のマナを支払う』テキストが、少し邪魔くさい」と思ったため、その部分が削られて《修繕》が作られた。結果、「サーチ+マナコスト踏み倒し」を1枚で行なってしまう、屈指のイカれカードになってしまった。
スタンダードの当時は、一部のブッ壊れカード(《記憶の壺》とか)以外には1枚でゲームを決めてしまうようなアーティファクトはなかったため、アーティファクトのマナ加速から《ミシュラのらせん》や《からみつく鉄線》などで相手のマナを縛り上げる、《ファイレクシアの処理装置》と《崩れゆく聖域》のコンボで巨大なトークンを安全に量産する、などを場面によって使い分ける“ティンカー”(スーサイド・ブラウン)というデッキのキーカードとして活躍した。当時は周りのデッキも強く、有力なデッキのひとつという扱いだった。特に2000年の世界選手権はティンカーが有利なメタゲームだったため、優勝・準優勝をティンカーが独占した。
エクステンデッドでもティンカーは活躍し、《激動》が追加されてからは大量のマナ加速からの《激動》の連打という勝ちパターンも備えるデッキとなった。とはいえ、この時点でもまだ《修繕》は許されていた。
時は流れて2003年10月、アーティファクトをフィーチャーしたエキスパンション『ミラディン』が発売された。発売から1ヵ月後には、エクステンデッドのプロツアーが開催された。
そして、わずか2ヵ月後に、《修繕》がエクステンデッドで禁止カードに指定された。
ミラディンの大嵐
『ミラディン』にはアーティファクト・土地という、土地でありアーティファクトでもあるカードが収録されていた。これにより《修繕》の追加コストが楽に払えるようになり、ティンカーの弱点のひとつであった安定性が強化された。
そして、『ミラディン』には重たい代わりに1枚でゲームを決めてしまうようなアーティファクトがたくさん収録されていた。
Bosh, Iron Golem / 鉄のゴーレム、ボッシュ (8)
伝説のアーティファクト クリーチャー — ゴーレム(Golem)
トランプル
(3)(赤),アーティファクトを1つ生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。鉄のゴーレム、ボッシュはそれに、生け贄に捧げられたアーティファクトの点数で見たマナ・コストに等しい点数のダメージを与える。
6/7
ティンカー待望のデカくて使いやすいアーティファクト・クリーチャー。これまでは自力でアンタップしない《ファイレクシアの巨像》を使っていたことを考えると雲泥の差である。2ターン目から殴って適当にアーティファクトを投げつけて3キル、なんてのも稀によくある。
Goblin Charbelcher / ゴブリンの放火砲 (4)
(3),(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。あなたのライブラリーを、土地カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。ゴブリンの放火砲はこれにより公開された土地でないカードの数に等しい点数のダメージをそれに与える。もし公開されたカードが山(Mountain)である場合、ゴブリンの放火砲は代わりに2倍のダメージを与える。公開されたカードを、望む順番であなたのライブラリーの一番下に置く。
普通に使えばダメージが安定しないカードだが、《マナ切り離し》という「ライブラリーから土地カードを全部取り除く」カードがあったため、強力な瞬殺コンボとして成立した。
(4),(T),精神隷属器を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。あなたはそのプレイヤーの次のターンの間、そのプレイヤーをコントロールする。(あなたはそのプレイヤーが見ることのできるすべてのカードを見て、そのプレイヤーのすべての決定を行う。)
「対戦相手をコントロールする」という派手な能力をもつアーティファクト。相手のターンの行動をすべて自分が決められるので、「自分で呪文を唱えて、自分で打ち消す」、「自分のクリーチャーだけが死ぬようにアタックする」など、やりたい放題できる。特にエクステンデッドなどの、使えるカードの多いフォーマットはデッキに入っているカードが強く、上記の《ボッシュ》や《ゴブリンの放火砲》を“自分に”起動させればだいたい試合終了である。
これらのアーティファクトが追加された結果、前述のプロツアーはティンカーとその派生デッキばかりとなり、トップ8には実に28枚もの《修繕》が使われていた。あまりに環境が早くなりすぎ、「(先手後手を決める)ダイスロールの勝者がマッチの勝者となる」と“MOMAの冬”並みの寒い事態となってしまったのである。
エピソード
- 明確にマローがやらかしたと判明しているため、マローの社長室ネタではよく槍玉にあげられる。自身のコラムでも「Poorest Fix(最低の修正)」と認めている[1]。
- この手のカードは使えるカードが広くなればなるほど強くなるのが常であり、レガシー・ヴィンテージでの禁止・制限には発売から1年も経たず指定されている。
- 『ミラディン』の強力なアーティファクトは、意図的に《修繕》の存在を無視して作られた。禁止されるのも当然である。
関連動画
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関連項目
脚注
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