概要
メタゲーム[Metagaming]とは、ゲームデザインの制限や環境の範囲を超えた戦略、ゲームの外部要因に応じて起こり得る結果の分析から導かれる意思決定のこと。
これは平たく言えば"ゲーム外で(もしくはゲームが始まる前に)行われる駆け引き"のことである。戦略という意味での"ゲーム"については下記の記事で丁寧に解説されているのでまずはそちらを読んでみよう。
メタゲームは政治や経済における戦略的意思決定だけではなく、競技や遊戯としての卓上ゲームやビデオゲームのゲームプレイでもこの概念は広く用いられていることもあれば、意図せず発生していることもある。
卓上ゲームやビデオゲームにおける"メタゲーム"は以下のような例が該当する。
- チェスや将棋で相手の戦法や定石を対局前に予想して対局時に相手の戦術が動く前に封じておくこと
- ロールプレイングゲームおいてプレイヤーが既に知っているか事前に調べていたロールプレイ上では知りえない情報(キャラクターの設定上は初めて遭遇するモンスターのステータス情報、ダンジョンの構造…)を元に攻略すること
- 「汝は人狼なりや?」などの推理ゲームでプレイヤー間の情報ではなくゲームマスター役の性格や言動から推理すること
- カードゲームで相手が使用するデッキ(山札)の構成や主要なカードを予想、考慮した上で自身のデッキを構成、選択すること
- ビデオゲームの対戦で相手プレイヤーもしくはチームが選択するキャラクター構成を考慮し、その上で自分やチームのキャラクター構成を決めること
- など…
特にカードゲームにおける"相手の構成を予測して自身の構成を考慮する"というメタゲームの概念は有名であり、一対一の相性が発生する他の対戦型ゲームでもその戦略概論が引用されることも多い。この今日のカードゲームにおけるメタゲーム概論はマジック:ザ・ギャザリングの生みの親、リチャード・ガーフィールド氏によって1995年に雑誌のコラム上で提唱されたものが発祥元である。
以降本記事では、このカードゲームや対戦型ビデオゲームにおける"メタゲーム概論"を中心に解説する。
ゲーム前の戦略そのものを意味する"メタゲーム"と、メタゲームによって形成された構成を呼ぶ俗称の”メタ”と、構成選択を呼ぶ"メタゲーム"と、それらのどれかを単に略した”メタ”という呼び方を前説明無く同じ文章中に並べてしまうと文脈での判断が難しく、閲覧者や編集者に誤解や混同を招く可能性があります。現にこの記事の過去の版では何だかあやしい文章もありました。 |
カードゲーム
ここでいう"カードゲーム"とは、自分の山札と手札を用いて一対一で対戦を行う卓上ゲームとそれを元にしたビデオゲームのことである。
カードゲームはどのようなデッキの構成でも(強い、弱いという評価の振れ幅はあっても)何らかの弱点が出来るように設計されていることが多い。一部には例外もあるが、特定のカードや構成が突出しまうと相性の無いカードや相性の悪いカードが陳腐化してしまうため基本的にはゲームの面白みを損なわぬよう修正される傾向にある。
そこでプレイヤーはデッキの流行り廃りから相手プレイヤーが使用するデッキの構成を読んで、流行ってるデッキを投入するか、それとも流行ってるデッキの弱点を突いたデッキを用意するか、それとも意表を突いて誰も知らない、あるいは使われないデッキをあえて投入する…といったように、実際に試合を行う前にデッキの相性を考慮した戦略を立てるのである。
これがカードゲームにおけるゲーム外の駆け引き、メタゲームである。
以上のことを考慮して、デッキやサイドボード(サイドデッキ)を構成すること、対策をすることは日本国内のコミュニティ間ではメタゲームという言葉を動詞化して「メタる」とも呼ばれている。なお、"メタる"という呼び方は日本独自のものであり、英語圏で該当する言葉は「Hate」である。
トーナメント試合におけるメタゲーム概論とメタ構成
例えば、トーナメント形式での大会試合で前情報が何もなければプレイヤーはカード枚数の調整やプレイングを鍛えたり戦略の練り直しを行い、ほとんどのデッキに対して強いデッキ持っていくことが試合で勝つことの最適解となる。
ここで、ある程度大会で使用されるデッキの傾向がわかっているとしたらどうだろうか?
どんなデッキが来てもそこそこに戦えるデッキも悪くはないが、例えば大会参加者の中に「A」という型のデッキを使用している人が殆ど居なかった場合、「A」を対策するカードは全くの無駄になってしまう。「A」が居ない事が予め分かっていれば、無駄になるカードを抜いてより有効なカードに差し替えることが出来る。逆もまた然りで、「B」という型のデッキが多数を占める大会環境であると予測出来るなら、「B」への対策カードが存分に使える。
大会で使用されるカードやデッキの傾向を予測し、より有利な選択ができていれば、何人もの相手と戦う際に勝率を上げることができるのである。
事実、マジック:ザ・ギャザリングをはじめとしたカードゲームの試合では、このメタゲーム概論によって大会を制した例は数多い。トーナメントという大会形式だからこそともいえるが、それだけに連戦連勝のためにメタゲームが大きく作用していることを象徴していると言える。
メタ構成の一巡 (すくみ関係の発生)
プレイヤー間で流行して使用者の多い安定カードや構成は「主要メタ」「トップメタ」「環境トップ」とも呼ばれる。しかし、カードゲームにおけるデッキ構成のメタゲーム概論は流行に左右される要素が大きいために、時期によって安定したメタ構成がぐるぐると入れ替わることも珍しくない。メタ構成が入れ替わった結果、 場合によっては再び似たような状況に戻ってくることもある。この現象は俗に「メタが一周する」「メタが一巡する」とも呼ばれる。
- デッキや特定のカードの「A」が流行、他のデッキを駆逐
- 「A」に強い「B」が開発され、環境を支配
- 「アンチB」として「C」が台頭
- 増加した「C」に有利な「D」が台頭
- ここまで来ると、「D」は「A」への対策を考慮していないため「A」が復権
(1に戻る)
また、こうしたメタ構成の変遷をしっかりと読み取り、構成変遷の中にあるデッキを使用せず、その変遷の外にいるデッキを敢えて構築することで、いわゆるダークホースとして好成績を収めることも出来る。このような、メタ構成を逸脱したデッキは「地雷デッキ(Rogue Deck)」と呼ばれていて、相手に情報アドバンテージを与えにくくデッキも個性的になるという利点がある。
メタ構成戦略以外のメタゲーム
以上で解説したカードゲームにおけるメタゲーム概論とは主にトーナメント(競技レベル)で行われる主要カードやデッキの構成の駆け引きのことではあるが、カジュアルプレイ(仲間内などでの気軽な対戦)においてもメタゲームという概念がないというわけではない。
例えば、友人や知人のカードやデッキの好みと傾向がわかっていれば、相性上でより有利な環境を構成することもメタゲームだったりする。ただし、これは戦略というよりはソーシャル・エンジニアリングに近い行為でもあって、このように特定の対戦相手をターゲットにした戦略は「対人メタ」「身内メタ」と呼ばれ、嫌われがちな行為でもあるので注意。友人は大事にしよう。
MOBA
MOBAとはリアルタイムストラテジー(RTS)から派生したゲームジャンルで、プレイヤーごとに特有の効果やスキルを持ったキャラクター(ジャンル内では発祥元に由来して"ヒーロー"とも呼ばれる)を選択して6人前後で構成されたプレイヤーの2チームで対戦を行うオンラインゲームである。
プレイヤーが使用するヒーローは、ロール(近接戦闘、遠距離戦闘、回復…などの役割)に基づいて設計されており、MOBAというゲームの試合は自分のチームのロールやスキルの構成、そして相手チームのヒーローとの相性が大きく影響する。この構成はロールの人数で分けて「1-1-1-2」「2-2-2」といった数字で表されることもある。
MOBAは試合開始前にヒーローを選択しチームの構成を決める時間が設けられており、この間に行われるチーム間の戦略がMOBAにおけるメタゲームである。構成を作り上げることは「Build」と呼ばれ、その中で現在の環境で安定した構成は「メタ(Meta)」とも呼ばれている。
ポケットモンスター
ポケモンもまたキャラクターを選択して対戦を行うゲームであるため、相性に基づいた戦略とメタ構成、そして構成戦略が発生する。流行のポケモンとその構成をいかに撃破するかは常に要求されるものであり、育成方法や使用技も様々な型が研究開発されている。
2014年に開催された大会の優勝者はメタ構成とは無縁だったポケモン、"パチリス"を起用という奇策に出た。大会参加者は当時の環境で強いとされていたメタ構成、いわゆるガチ編成のミラーマッチを想定して各選手達が訓練する中、まさかのパチリス1匹を止められないという事態が発生した。
この出来事はコミュニティ間でミーム化してニコニコ大百科にも個別記事が作られている。詳しくは該当記事を参照。
その他対戦ゲーム
※この項目は特定のゲームタイトルの内容を解説する文章が不足しています。専門用語やミームを並べるだけではなく、対象のゲームタイトルや当時の環境を知らない閲覧者と編集者でもゲームプレイの内容が伝わるよう解説された文章を書くこと、解説記事に誘導することが望ましいです。みなさまの加筆修正をお待ちしております。
格闘ゲーム
格闘ゲームのキャラクターの性能にはそれぞれ個性がある。対人対戦格闘ゲームでは、相手プレイヤーや選択するキャラクターへの対応をする「マッチアップ」や、プレイヤー個人の戦法を予測するというメタゲームが発生する。
複数人のタッグチームを組む大会では、相性の良いキャラクターでマッチングするようチーム間でオーダーの采配と読みあいが発生するところもメタゲームとして楽しまれる一面であるとも言える。
最強の戦略とは…?
あらゆる対人対戦型ゲームには強い定石、強いデッキ、強いキャラ、強い構成…といったこれさえあれば勝てるかも、というお手本のような戦略が存在している。
そのような安定した強い戦略はゲームのルールが最初に作られたときからあったというわけではなく、多くのプレイヤー達が試合と"駆け引き"を積み重ねたことによって形成されたものであり、形成され続けるものである。
例え今日の最強の戦略や最強の構成があったとしても、それがゲーム(試合)で使われる前に行われるゲーム(戦略)によって常に最強は崩されようとしている。メタ構成のカウンターはメタ構成、メタゲームのカウンターはメタゲームだからだ。
ゲームの研究はカードゲームにおけるメタゲーム概論、学問におけるゲーム理論が登場するよりもはるか昔から行われてきた。数多くの偉人たちによる研究やゲームに関する格言が残されており、歴史を遡れば旧約聖書や魏志倭人伝にもそうした逸話を見ることができる。
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