奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島は、日本の世界遺産(自然遺産)である。2021年7月登録。
概要
この地域は黒潮と亜熱帯高気圧の影響を受け、温暖多湿な亜熱帯性気候となっており、常緑広葉樹多雨林に覆われている。中でも奄美大島や徳之島、沖縄島北部、西表島は生物多様性が特に高く、絶滅の危機に瀕する固有種も多い地域である。
大陸と陸続きになったのち、分断と孤立の長い歴史を経て、陸域生物は独特の進化を遂げていった。これらの生物は各島ごとに種分化や固有化のパターンが異なっている。
このことが世界に評価され、2021年に世界遺産として登録された。
なお、本件の構成要素には海洋域は含まれていない。
屋久島と尖閣諸島
南西諸島北部には1993年に世界自然遺産に登録された屋久島があるが、本件との違いとして生物分布が異なることが挙げられる。生物地理学では、生物の分布が異なる場所に境界線を引くが、屋久島と奄美大島の間にあるトカラ列島の悪石島と小宝島の間に、境界線となる「渡瀬線」が引かれている。渡瀬線の付近は温帯と亜熱帯の境界でもある。
一方、尖閣諸島にも貴重な動物が生息していることから、本件の範囲に含めるべきという意見があった。政治的な思惑も絡み、中国政府も牽制する動きを見せたが、環境省は「奄美・琉球と尖閣諸島は成り立ちが異なるため、包括することは考えにくい」として、尖閣諸島を本件の範囲に含めることはしなかった。
登録までの経緯
国内選考
環境省と林野庁が2003年に選定した自然遺産候補3件のうち、「知床」と「小笠原諸島」が世界遺産として登録された一方、「琉球諸島」はなかなか進展がなかった。検討の段階では大隅諸島、トカラ列島、奄美群島、沖縄諸島、先島諸島、大東諸島が対象とされていた。
2013年に対象地域を奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島の4島と決定。2016年に世界遺産センターの暫定リストに掲載された。国内の保護体制を充実すべく、地元と協議のうえで国立公園の新設・拡張が行われた。
視察
2018年の登録を目指し、前年の2017年10月に国際自然保護連合(IUCN)の視察を受けた。生物多様性は一定の評価を得たが、推薦範囲について注文が付き「登録延期」の勧告となった。
推薦を一旦取り下げ、仕切り直しとなった2019年の視察では、前回指摘を受けた点の改善度がポイントとなった。しかし、翌2020年に発表となる視察結果の勧告が、新型コロナウイルスの流行により延期される。世界遺産委員会の開催も延期となり、本件の審査・登録の先行きが不透明となってしまった。
世界遺産登録へ
2021年7月、1年遅れの世界遺産委員会がオンライン形式で開催。2020年分の推薦資産とあわせ、2021年分も審査が行われた。
この世界遺産委員会で登録が議決され、正式に登録が決まった。翌日には北海道・北東北の縄文遺跡群も登録され、2日連続の世界遺産登録決定となった。
構成資産一覧
鹿児島県の奄美大島・徳之島、沖縄県の沖縄島北部(やんばる)・西表島で構成される。
名称 | 所在地 | 面積(緩衝地帯) | 備考・別名称 | |
---|---|---|---|---|
奄美大島 (あまみおおしま) |
奄美市 宇検村 大和村 瀬戸内町 |
11,640ha (14,663ha) |
年間降水量3,000mmという大雨によって豊かな森林が育まれている。奄美大島が北限となるヒカゲヘゴや、固有種のアマミノクロウサギ、ルリカケス、オオトラツグミなどの貴重な動植物が多数生息している。 | |
徳之島 (とくのしま) |
エリアA (北部) |
徳之島町 天城町 |
791ha (999ha) |
奄美群島で2番目に大きい島。世界遺産の登録範囲は島内2か所。アマミノクロウサギのほか、トクノシマトゲネズミ、オビトカゲモドキ、トクノシマエビネなどの固有種が生息している。 |
エリアB (中部) |
徳之島町 天城町 伊仙町 |
1,724ha (1,813ha) |
||
沖縄島北部 (おきなわじま-) |
国頭村 大宜味村 東村 |
7,721ha (3,398ha) |
南西諸島最大の島。北部地域は「山原(やんばる)」の名でも知られ、ヤンバルクイナをはじめとした希少な動植物が生息している。世界的に乾燥・砂漠地帯である北緯27度付近の、貴重な森林である。 | |
西表島 (いりおもてじま) |
竹富町 | 20,822ha (3,594ha) |
島の9割が亜熱帯の自然林で、日本に生息しているマングローブ7種全てが分布する唯一の島。西表島でもっとも有名な固有種のイリオモテヤマネコは、国の特別天然記念物と絶滅危惧種に指定されている。 |
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関連項目
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