鉄道模型とは、鉄道を題材とした模型のことである。ここから派生する幅広い趣味や付随する活動のことも指す。
概要
他の模型と同様、対象(鉄道車両)を所定の縮尺・線路幅(ゲージ)で縮小し再現しており、縮小の仕方(スケール)により多数の規格・セグメントに分かれる。人間が乗れるライブスチーム(遊園地などにあるミニSL等)のような大きなスケールから、全長9㎝程の小さなスケールまであり、基本的には大きなスケールからより小さなスケールが派生し、徐々ユーザーが移行している。世界的にはゲージ16.5㎜のスケールが最も愛好者人口が多いとされているが、日本ではゲージ9㎜のスケール(Nゲージ)が最も愛好者人口が多い。最近では鉄道模型の愛好者を「模型鉄」と呼ぶこともあるとか。
逆に他の模型と違うのは、「作って飾って楽しむ」だけではなく「作って動かして楽しむ」模型であること。従って外見上の品質のみならず動力機構・走行性能もこだわりのポイントである。一方で動かして楽しむことが主眼に置かれたNゲージにおいては、作る必要のない「完成品」が市民権を得ている。ただし、高品質の完成品が供給されていることから、走らせることはおろか飾ることすらせずひたすら「収集」する愛好者もいる。
経緯(キング・オブ・ホビー)
発祥は不明な点が多いが、19世紀初頭には欧州において大きなスケールの模型が登場・発売されていたようである。日本にも19世紀末には一部の好事家が輸入し手に入れていたらしい。20世紀に入ると日本国内にいくつかの模型メーカーが創業したが、主な販売先は国内ではなく、趣味として成熟していた欧米への輸出であった。戦後、世情が安定するとまずOゲージ(縮尺1/45、ゲージ32㎜)やその日本ローカル規格であるOJゲージ(ゲージ24㎜)が普及し、その後は16番ゲージ(縮尺1/80、ゲージ16.5㎜)、Nゲージ(縮尺1/150、ゲージ9㎜)の順に普及が進み、趣味としても次第に一般化していった。この頃の名残りで現在でもゲージ論や縮尺論が起こる訳だが、海外製品の流通や流用により、鉄道模型が国内でも普及した事は知っておかなければならない。
鉄道模型は、キング・オブ・ホビー(趣味の王道)と称する事がある。これは鉄道車両を模型として製作し飾るというだけではなく、線路を敷設し情景を作り上げ、更に走行させるなど多彩な活動を内包し、ゆえに広範な知識と知見・製作技術・センスを併せ持つことが必要となる「総合芸術」としての性質が強いためである。日本ではともすれば「大の大人がおもちゃに夢中になっている」などとややネガティブに捉えられることが少なくないが、海外ではむしろ趣味としての評価は高い。
主な規格【縮尺、ゲージ】
世界的な統一規格があるわけではなく、地域による違いも多い。当項目における紹介も主な縮尺のみである。
- 5インチゲージ【1/12、127㎜】
- 前述のライブスチームに使われる規格。欧米にはより大きな規格も存在する。
- Oゲージ【1/45、32㎜】、OJゲージ【24㎜】
- この辺りから屋内向け・一応大衆向けの規格といえる。OJは日本独自の規格。
- HOゲージ【1/87、16.5㎜/12㎜】
- 個別記事も参照。ゲージ12㎜は近年提唱・展開されている日本独自の規格で、イギリスのTTゲージとは異なる。
- 16番ゲージ【1/80、16.5㎜/13㎜】
- HOゲージの記事も参照。ゲージ13㎜は比較的古くから提唱・展開されている日本独自の規格。
- HO(16番)ナロー【1/80、9㎜】
- HO(16番)のスケールで軽便鉄道を作る際の規格。Nゲージのレールを用いることが多い。
- Nゲージ【1/140~160、9㎜】
- 個別記事も参照。日本型は1/150(新幹線は1/160)。
- Zゲージ【1/220、6.5㎜】
- 定着している規格としては世界最小[1]で、メーカーはドイツのメルクリンのみ。小さいにも拘らず高価。
規格が乱立している背景?
そもそも国内・海外問わず鉄道模型愛好者には2つの考え方の違いが存在している。
1の考え方に従うと、実物の大きさの違いを同じゲージ(と建築限界)にまとめるために、複数の縮尺をいっしょくたにして一つの規格にまとめる考え方になる。新幹線車両と在来線車両が、長さはともかく幅・高さがほぼ同じになることを容認する考え方である。
対して2の考え方に従うと、スケールを基軸として、実物のゲージが違えば模型で使用するレールも違うものにする、という考え方になる。極論すると同じ1/87でも近鉄大阪線の電車は16.5㎜、同南大阪線の電車は12㎜で走らせるべき、ということになる。
どちらの考え方にも長所・短所が背中合わせのように存在するので、統一を目指すことは不可能に近い。
日本の鉄道模型
日本は空間的・金銭的制約から、鉄道模型という広範な趣味活動のうち、特定の活動に絞る人が多いとみられる。
- 車両工作
- どのスケールでも日本型車両はなかなかリリースされず、昭和の時代はフルスクラッチがある種当たり前で、材料も真鍮など金属、木材、工作用紙など様々である。やがて供給が容易なキットが流通するが、当初は金属製であり、「治具を当てて現物合わせで曲げ加工」とか「いったん切断した薄い真鍮板を平滑になるようにはんだ付け」とかの高等テクニックが求められたりした。その後は小スケールだとプラキットが流通するようになり、工作のハードルもぐっと下がっている。また16.5㎜以下のスケールでは台車・パンタグラフ・無線アンテナやら通風器やらがパーツとして供給され、自作やドレスアップに活用されている。さらに塗装も自前で、ことに塗る技術ばかりではなく調色のセンスも求められたが、これまた近年は塗装済みキットも普及している。
- レイアウト作り
- 鉄道模型ではいわゆるジオラマのことを「レイアウト」と呼称する[2]。模型車両を脱線などを起こすことなく走らせる線路配置・電気配線は事前のきちんとした設計やテスト走行を繰り返し行う必要があるし、情景(シーナリー)や構造物(ストラクチャー)を作って配置するにはいろいろ考えることが多い。野放図にビルを配置したら線路も車両も隠れて見えないとか、山とトンネルを作ったけど点検口を作りそびれて脱線車両が取り出せないとか、失敗もしがちである。ストラクチャーはかつてはあっても海外製品ばかりで、純日本の家屋などは車両同様フルスクラッチせざるを得なかったが、ことにNゲージであればTOMIXの完成品やグリーンマックス(GM)・ジオラマコレクション(ジオコレ)のキットが流通し、これもレイアウト作りの難易度を下げる貢献がある。
- 走行
- 前述のように小スケールであれば車両の完成品が豊富に供給されており、畳やフローリング、テーブル上に道床付レールを組み、完成車両を走らせるのも立派な活動の一環である。もっとも度を越してプラレールかジェットコースターか、というような線路配置を組んでみる者もいる。
車両でもレイアウトでも、「実際に考え、手を動かし、世界で唯一の作品を作る」という願望を持つユーザーは多いのではないだろうか?
ニコニコにおける鉄道模型
ニコニコ動画にアップロードされている内容としては、走行動画やキットの加工方法など多岐に渡るが、中でもニコニコ技術部タグの付く、高度な模型製作技術や、電子工作技術を披露する動画の人気が高い。
また近年では、ニコ生による実際の組立放送もユーザーによって開始されているので実際に製作してみたいという人は参考にしてみると良い。
関連動画
Nゲージ
HOゲージ
技術系
関連項目
脚注
子記事
兄弟記事
- なし
- 6
- 0pt