Nゲージとは、鉄道模型における規格の一つである。
転じて鉄道模型における商品カテゴリを指す名称ともなっている。
概要
縮尺1/148~1/160、線路幅(ゲージ)9mmという規格を指す。北米・欧州における鉄道模型のスタンダードは「HOゲージ(縮尺1/87、ゲージ16.5㎜)」であるが、日本では老舗メーカーの商品化方針と普及努力により、Nゲージの方がナショナルスタンダードとなっている。無論、鉄道模型の他の規格と同様に『動かす』ことが前提の模型であり、金属製のレールから給電し、モーターのついた車両(1編成につき1~2両)を動かす仕組みである。レールにはパワーパック(パワーユニット)と呼ばれるコントローラーを接続し、ユーザーが任意で出力を調整することで車体の走行スピードをコントロールする。レールをテーブル上に周回するように組み、車両を走らせるだけでも楽しいが、本来は線路をきちんと組み、情景を整えたジオラマ(=レイアウト)で走らせて楽しむ趣味である。
レイアウトの規模や配線を工夫することで、速度や進行方向、ポイントの切り替えなどをコントロールし、リアリティのある運行シミュレーションが可能である。駅舎や鉄橋、道路や建物などの情景を整えるための関連商品(完成品・キット)も数多く販売されており、趣味・嗜好によっていくらでもハマれる危険な沼でもある。
日本における経緯と傾向
欧州の模型メーカーがNゲージ規格を提唱・展開し始めたのは1960年代であり、日本も時期的には大して変わりはない。1965年、関水金属彫工舎(現・関水金属=KATO)がC50蒸気機関車とオハ31系客車をリリースし始めたのが、日本の量産Nゲージ流通の第1号である。その後各社の参入があり、1980年代には日本鉄道模型界におけるメインストリームになっていった。ただブーム的な盛り上がりは1980年代末には終息し、以降は新規参入は限定的で、既存各社における新商品導入・改良が続けられている。
HOゲージ等の先行規格においては、ある意味「先鋭化」が進んでいた。この弊害として、完成品は少量生産で高級家電並みの価格になって手に届きにくく、一方自作・キット制作を志しても、製作技術の高度化のため途中で断念する人も多かった。こうした観点から、関水金属をはじめとする各社は、より幅広い層に鉄道模型を楽しんでもらう為、プラ製の「安価な完成品」をメインに、レールを含む関連商品も同様に安価に供給することとした。結果として「Nゲージャー」は当初、「飾るより運転」「車両よりレイアウト」「車両趣味に偏らない」といった価値観が共有されていた。この思想はどちらかと言えば、鉄道玩具の雄であるプラレールに近いスタンスと言える。
加えて初期商品群を「グリコのおまけ」とからかわれた関水金属の奮起は、必要以上のディテールの細密化等、質感の向上を商品価格に関わらず実現し、定着に至っている。後発メーカーは「安いのに質感がハンパない」という先行メーカーの商品水準とコストの両立に抗えず、撤退を余儀なくされる事例が目立った。また別の弊害として、自作車両が既製品に比べて劣って見えることからか、工作派は限定的である。
プラレールとの関係
プラレールは、乾電池駆動で自走する車両を、レールや情景部品を組み合わせて楽しむ玩具であり、就学前児童向けに玩具としての安全性や扱いやすさを追求し、レールは実物と似ても似つかぬ割り切った姿で、ディテールや走行システムはシンプルである。これに対しNゲージは「大人の趣味」であり、丁寧な扱いと定期的なメンテナンスが必須である。ちなみにプラレールを製造・販売するトミー(現・タカラトミー)は、Nゲージ製品群を「トミーナインスケール(現・TOMIX)」というブランドで1974年ごろから発売しはじめた[1]が、この頃からNゲージをプラレールユーザーの移行先として考えていた節がある。TOMIXの道床付レールは、プラレールを扱った経験があると取り扱いやすいシステマチックな規格で作られているが、旧来の鉄道模型におけるレールとは取り扱い方がかなり異なるものである。
いろいろな楽しみ方
集める/飾る
今や愛好者のかなりの割合が「集めるだけ」らしい。多々買わないと生き残れない…こじらせると、実車を見たこともないのに製品についてはやたらと詳しいとか言うコレクターになるらしい…。
もちろん、集めてしまっておくばかりではなく、動かさなくても「飾っておく」人もおり、「シーナリーセクション」というジオラマを作る人もいる。
走らせる
出発点はこれかと思われる。Nゲージ2大メーカー(関水金属・TOMIX)はいずれも入門用というべき「車両」「レール」「パワーパック」を同梱したセットを販売しており、前述の通りテーブルや畳の上でレールを組み合わせ、パワーパックを繋ぎ、車両を乗せて走らせるだけで 楽しい! ものである。
車両工作
HOゲージャーほどではないが、中には木材・工作用紙などでフルスクラッチする愛好者もいる。そこまででなくても、キットを組む人やいいパーツに交換したり塗り替えたり…自分だけのモデルにする楽しみがある…失敗したっていいじゃん! 次はもっとうまくできる!
レイアウト作り
Nゲージに限らず、小型鉄道模型の醍醐味はこれである。…何も初めから意気込んで作る必要はない。プラレールと同じように、まずは駅を購入して備えるだけでもいい。自分のモデルがすごく魅力的に見えるはずである。駅前に商店や路線バスを置いてみる…線路際に架線柱とか普通に立木を置いてみてもいい…少しずつ気長に、風景を作りあげていけばいい。技術の進歩により、今や模型車両にカメラを搭載できるようになり、自分が作った風景を電車内から見るように楽しめるのである…すごい時代だ。
ただ、どの楽しみ方であっても本気になるとかなりのお金と空間が必要となるので、家族の理解がないと難しい面もある。
主なメーカー
※かなり主観入っているようです。
現行メーカー
- 関水金属(KATO)
- 日本型Nゲージのパイオニア。ラインナップの殆どを国鉄・JR車両が占める。一応、東京メトロや近鉄、富山ライトレール等の私鉄・三セク車両も発売されているが、極めて少数派である。TOMIXと比べるとリーズナブルだがその分ディテールは少し劣る部分もある。例を挙げると、TOMIXの113系はクーラーやベンチレーターが別パーツで交換可能だが、KATO製は屋根と一体整形となっている。他にもいろいろと劣る点はあるが挙げていくとキリが無いので割愛。走行性能に関しては文句のつけようが無く、連続運転にも余裕で耐えうる耐久性を誇る。高出力のパワーパックも製造しており、長大編成も難なく走行可能。ただし、登坂力に関しては他社と比べると少し劣る事もある。長大編成のセットでも動力車が1両しかないケースが多いので、空転しやすいのがその理由。最近は蒸気機関車のリニューアルが盛んで、D51やC62の完成度の高さは目を瞠るものがある。車両番号は殆どの車両で印刷済みとなっている。チマチマしたインレタ転写をしなくて済むが、単品売りの客車等も番号が印字済みのため、大量に増備すると番号がエライ勢いで被ってしまうのが困りどころではある。
- トミーテック(TOMIX)
- こちらも今や老舗で、元タカラトミーのホビー事業部。113系や115系などの近郊型に定評がある。走行性能も申し分なく、KATO程ではないがラフな使用にもある程度耐える。JRの車両は大半手がけているが、蒸気機関車だけは車種が少ない。しかし、最近発売されているC57シリーズは概ね高評価であり、製品化発表されたC61 20号機の出来にも期待が寄せられている。ちなみに私鉄車両は大手私鉄の特急車両が中心のラインナップで、通勤型の製品化例は非常に少ない。細かなディテールに目を惹かれるが、ユーザー取り付けの部品が比較的多い上に値段も少し高め(特にHG製品)常点灯システムに対応した車両が大半を占めるが、高出力パワーパックの線路で故障したという報告アリ。また、一部のセットを除き、基本的に電車や客車等の車両番号はインレタで転写させる必要がある。
- グリーンマックス(GM)
- KATOとは反対に、ラインナップの大半が私鉄車両で占められている。通勤型から特急型まで何でもゴザレ。このメーカーだけでとある私鉄の車両が全種揃う…なんてことも。走行性能に関してはお世辞にも良いとは言えないという定説であったが、今はフライホイールが実装されたようである。走行性能を求めるのなら、KATOやTOMIX、マイクロエースで同型車があるなら間違いなくそちらを買った方が良いだろう。そんな動力だが、何故か急曲線には強く小型レイアウトでも走行可能な車両は多い。ぶっちゃけ、他所が製品化してないから買う、そんなメーカー。そして値段は結構高め…足元見やがって…。また、旧型国電や旧客、荷物電車等の未塗装組立キットも製作しているが、いずれも組立難易度は高い。名鉄850系など、素組みできないものまで存在する(現物合わせの切り継ぎ必須)。塗装済キットも存在するが、こちらは大手私鉄の通勤型がメイン。組立難易度もかなり下がっている。
- マイクロエース
- それなりに歴史のある模型メーカー
…今やアリイと言ってもピンとこないんじゃ…。JR私鉄関係なく、幅広いラインナップを誇る。バリエーションもかなり多いが、「腰高」と言われる蒸気機関車をはじめ、ディテールはあまりよくない部類に入っていた。最近の製品はディテール、走行性能共にかなり改善されてきており、KATOやTOMIXに匹敵するほどの製品もリリースされている。また、かなりマニアックなラインナップが特徴で、試作車両や時期によって異なる仕様の列車の初期バージョン、一時期のみ走っていたジョイフルトレインなど、他のメーカーがあまり作っていないような製品も多い。C63のように設計図しか存在していない車両がラインナップされてるのはここくらい。まぁ蒸気機関車は相変わらずの腰高スタイルだが…(9600やC52、C54等の例外は存在)。ちなみに、たまに地雷が混ざっているので予約購入はオススメしないが、基本的に再生産をしないので、欲しい製品は発売日に店頭でしっかり吟味して買うべし(但し、製品発売当日でも事前予約のみで完売するケースがあり、店頭に並ばない場合もある。ケースバイケースってことだねー)。急曲線も難なく曲がる車両も多いため、小型レイアウトもそれなりに走行可能。C56やC62でもミニカーブレールを走行できたとの情報も。こちらも値段はGMほどではないが高め。 - ハセガワ(MODEMO)
- こちらもそれなりに歴史のある模型メーカー。以前は、キハ30系シリーズやJR東海313系、小田急RSE車などを販売していたが、現在は江ノ電や箱根登山鉄道、名鉄美濃町線や東急世田谷線等の小型車・路面電車がラインナップの中心になっている。走行性能は並だが、急曲線にかなり強いので小型レイアウト、路面レイアウトのお供に最適。連接車はR140程度が限界だが、路面電車はそれよりも急なスーパーミニカーブやユニトラムすら通過可能な車両も多い。値段も小型車はかなり安価だが、ヘッドライト等の点灯機能がない車両が大半。中の人曰く、古い製品も順次ヘッドライト点灯化等のリニューアルをしていきたいとのこと。
- ワールド工芸
- 上記5社と違い、金属製の模型を製作している。金属製ならではの細かなディテールが特徴。ラインナップとしては昭和前半のレトロな車両がメインで、現役の車両の製品化は非常に少ない。塗装済み完成品、未塗装組立品の2種で販売しているが、金属製だけあってどちらもかなり値が張る。一番高い製品でなんと…8万円弱。
- 天賞堂
- 同じく金属製の製品がメインのメーカー
…ってか世間的には宝飾品の会社だろうな…。元々16.5㎜ゲージの老舗メーカーで、そちらの方が製品が充実しており、Nゲージでは蒸気機関車のみ製品化されている。ディテールに関しては最高峰と言って良い…が値段が超高い。機関車1両で10万円突破するのはここぐらい。ワールド工芸の完成品でもここまで高くないぞ。 - 【番外】鉄道コレクション
- TOMIXと同じくトミーテックが展開している『ジオコレ』の一種。通称鉄コレ。元来展示用であるが、別売の動力ユニットかトレーラー化パーツに換装することで鉄道模型として走らせる事が可能となる。ブラインドパッケージの通常シリーズとオープンパッケージ版が存在し、通常シリーズは、既に引退した地方鉄道の旧型車、地方私鉄に移籍した大手私鉄の中古車がラインナップの大半を占める。オープンパッケージ版は、移籍元の大手私鉄の車両やカラーバリエーション、後述する限定品の地方私鉄譲渡仕様、果ては101系や201系10両編成まで、多種多様なラインナップがある。ぶっちゃけ公式サイト見たほうが早い。また、イベント限定品、販売箇所限定品等も多数存在するが、大半の製品は動力組込を想定されていない。公式サイトでの販売アナウンスも殆ど無いため、各私鉄やイベント等のホームページで情報収集する必要がある。なお、中の人の趣味なのか、製品化される鉄道会社に結構偏りがあったりする。具体的には、大井川鉄道、豊橋鉄道、富士急行、銚子電鉄、一畑電車、秩父鉄道などの製品化例が非常に多い。これらの鉄道会社は大手私鉄からの譲渡車の割合が多く、バリエーション展開させやすいというのも理由の一つかもしれない。中古車の供給元である大手私鉄(東急、京王、名鉄、西武等)も限定品だったりはするものの、製品化例は多い。余談になるが、この鉄コレ動力、安価かつ高性能なため、他社製キットや自作車両等の動力に組み込まれる事も多い。GM動力から鉄コレ動力に換装なんてのは日常茶飯事である。
- 【番外】Bトレインショーティー
- バンダイから発売されている組立キット群。スケールは1/150だが、長さ方向をデフォルメした独特のスタイルをしている。これもバンダイ、KATO両社から動力ユニット、トレーラー化台車が販売されており、これらに換装することで走行可能となる。ショーティーなだけあってスーパーミニカーブレールも余裕で通過できるほど小回りが利くが、模型の性質上、普通のNゲージ車両と混在させないほうがいいだろう。小さな専用レイアウトを作り、そこをトコトコ走らせるのがベターかな?癒されるぞ~。
過去メーカー
- エンドウ
- 現在は16.5㎜ゲージ製品に専念している老舗メーカー。Nゲージでは電気機関車や電車を真鍮プレス加工にて製品化していた。固定ファンもいたが、関水などのプラ製品の細密ディテールと価格の安さに敗れた。
- 永大(エーダイナイン)
- プラ製車両をメインに、レールなどトータルシステム充実も志していたが破綻。一部の製品は学研が引き継いだ。他社の出さないディーゼルカーや機関車など独自のラインナップで、変わり種としてはNゲージ製品化第1号なのに足回りが4軸しかない「DD54タイプ」とか。
- 学習研究社(GAKKEN-N)
- 同社オリジナル品とエーダイ引き継ぎ品を展開したが、その後撤退。もともと海外メーカーの輸入代理店だった。実は0系新幹線電車のNゲージ製品化第1号だったりする。しかしオリジナル品とエーダイ引き継ぎ品の質の差が激しかった…。
- 中村精密(ナカセイ)
- 真鍮製の蒸気機関車(完成品/キット)とプラ製の戦前製旧型客車という、ある意味潔すぎなラインナップのメーカー。客車に関してはハセガワが金型を引き取ったらしい。
- リアルライン
- 比較的新しめの会社。D51のラインナップが豊富。というかD51以外作っていない気がするぞこの会社…。肝心のディテールだが、スケールは1/150になっており良い線を行っているものの、技術不足なのか組み付けのアラが目立つ。まぁそれでも腰高のマイクロエースよりは遥かにマシであるが…。ただし、曲線通過性能に難ありとのこと。…残念ながらすでに廃業した模様。
- 河合商会
- 主に国鉄時代の貨車を製造している会社。多種多様な貨車を製品化しており、タンク車に至っては各荷主毎の塗装をしっかり再現しているという手の込み様。貨車のラインナップで右に出るものはいない。国鉄時代のデコボコな貨物列車を再現したいなら、ここの製品をオススメする。2012年に廃業。鉄道模型製品は鉄道模型店のポポンデッタが事実上引き継いだ。
【番外】
- アンレール
- ㈱赤い電車が展開している鉄道模型…のようなもの。第二の鉄コレになれなかった存在。仙台空港鉄道SAT721系、JR東日本E721系500番台、そして名鉄&会津鉄道キハ8500系…のようなものをリリースしていた。初期のマイクロエース以下なディテール、ボッテボテの塗装、再塗装としようと思ってIPAにぶち込んだら車体崩壊…楽しみにしていた鉄道ファンを地獄のどん底へ叩き落した罪は重いぞテメーラ。そして今度は何をトチ狂ったかアンレールネクストなるシリーズの製作を宣言、専用動力を誂えてもらうのはいいが、最初の生贄製品がよりによって名車、東急5000系青ガエルの地方私鉄譲渡仕様…無駄にバリエーションだけは多いがやっぱりディテールは以下略…大人しくマイクロエース製買っておきましょう。それかTOMIXが青ガエル再生産予定なのでそれまで待ちましょう。もう新規品は無く在庫整理中、ざまあみろ。ここまでボロクソに言われるメーカー、ここ以外では今は無き東京堂ぐらいなもんである(あそこもいろんな意味で酷かった…)。
関連動画
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 6
- 0pt