2D6の期待値は5(にでぃーろくのきたいちはご)とは、TRPGなど2D6を用いるゲームの周辺で使われるスラングの一つである。
概要
「2D6」とは、「6面体のダイスを2個振る」ことを表すダイス表記である。「D」の前の数字が振る個数、後ろの数字がダイスの面数を表している[1]。
TRPGでは2D6がさまざまな場面で使われる。その使い方はゲームによって異なり、2個の出目を合計した値そのものを見る場合もあれば、そこにキャラクターの能力値や修正値などを加えて判定する場合もある。たとえば『ロストレコード』では、2個のサイコロの出目にPCの能力値や修正値を加えたものを「達成値」としている[2]。
つまり、TRPGで2D6を振ったとき、出た数字だけで結果が決まるとは限らない。必要な出目が低ければ5でも十分な場合があり、固定値が大きければ低い出目を補うこともできる。反対に、高い目標を狙う場面では数学上の期待値である7が出ても足りないことがある。2D6という同じダイスロールでも、その数字がゲーム上で持つ意味は判定方法や状況によって変わる。
出目や達成値が高いほど有利な判定では、目標値と固定値の関係によって、4~5程度の出目が成功と失敗の境界付近になることもある。たとえば『インセイン』では、修得している特技で判定する場合の目標値は5であり、出目5ならぎりぎり成功、4なら「1足りない」失敗となる。代用する特技が1マス離れて目標値が6となれば、今度は5が「1足りない」出目となる[3]。『ソード・ワールド2.5』でも、2D6に能力などの数値を加えた達成値を目標値と比較するため、固定値と目標値の差によって低めの出目が僅差の成否となる場合がある[4]。
一方、ダイスの値が低いほど有利な下方判定では事情が逆になる。たとえば『GURPS』では3D6を技能値以下に収めることで成功する方式で、低い出目ほど有利になる[5]。このように、「5」という数字そのものにTRPG一般で成功・失敗の意味があるわけではない。
こうした環境で使われる「2D6の期待値は5」の「期待値」は、数学における期待値の厳密な語義とは異なる俗用であって、独立した公平な6面ダイスを2個振った正しい「期待値」は7である一方、このスラングは、数学上の7よりも低い値を見込む表現として用いられる例があり、低めの出目を前提とする保守的な目安として扱われることもある。
用例・用法
2006年4月の「ParaSite2D6 RPG館」において既に用例は確認でき、コメント欄で「2d6の期待値は5」と書かれたのに対し、管理人が数学上の期待値は7であると指摘しながら、自分が振る場合はなぜか5程度になる、と応じている[6]。この例では、自身のダイスの出目を数学上の期待値より低く見積もる表現として使われている。
「迷宮キングダム」の攻略Wikiでは、2D6で7以上となる確率が約58.3%であるのに対し、5以上となる確率は約83.3%であることから、約8割以上を見込める値として5を採り、その記事内で意図的に「2D6の期待値は5」としている[7]。この用例では、「7以上」を見込むより「5以上」を見込む方が成立確率が高いことから、5が保守的な基準値として採られている。
また2D6に固定値を加えて目標値と比較する判定とも組み合わせられ、固定値だけである程度の達成値を確保できれば、ダイスに7を要求せず、5程度の出目でも成功できるようになる。実際に『ソード・ワールド2.0』のオンラインリプレイには、2D6の出目5に固定値を加えて判定に成功した直後、「2d6の期待値は5」と発言する用例も見られる[8]。
2D6の期待値と確率
このネタを心から楽しむために、数学的な定義についても確認しておきたい。数学における期待値とは、確率変数がとる各値を、それぞれの確率で重み付けして平均した1つの値である[9]。
6面ダイス1個(1D6)の場合、各目(1~6)が出る確率はすべて同じ 1/6 なので、期待値は以下のように計算できる。
(1+2+3+4+5+6) × 1⁄6 = 21⁄6 = 3.5
つまり、サイコロを1個振ったときの期待値は 3.5 となる。
では、サイコロが2個の場合はどうだろうか。
期待値には線形性という性質があり、E[A+B] = E[A] + E[B] が成り立つ。そのため、2D6の期待値は1D6の期待値を2つ足すことで求められる。
E[2D6] = E[D6] + E[D6] = 3.5 + 3.5 = 7
よって、2D6の期待値は紛れもなく 7 である。
実際にすべての出目の組み合わせ(36通り)を書き出してみても、「7」が合計36通りのうち6通りと最も出現確率が高いことがわかる。
一方で「5」は4通りしかなく、「9」と同じ確率である。
| 合計値 | 組み合わせ | 通り数 | 確率(約) |
|---|---|---|---|
| 2 | (1,1) | 1 | 2.8% |
| 3 | (1,2),(2,1) | 2 | 5.6% |
| 4 | (1,3),(2,2),(3,1) | 3 | 8.3% |
| 5 | (1,4),(2,3),(3,2),(4,1) | 4 | 11.1% |
| 6 | (1,5),(2,4),(3,3),(4,2),(5,1) | 5 | 13.9% |
| 7 | 6 | 16.7% | |
| 8 | (2,6),(3,5),(4,4),(5,3),(6,2) | 5 | 13.9% |
| 9 | (3,6),(4,5),(5,4),(6,3) | 4 | 11.1% |
| 10 | (4,6),(5,5),(6,4) | 3 | 8.3% |
| 11 | (5,6),(6,5) | 2 | 5.6% |
| 12 | (6,6) | 1 | 2.8% |
一定値以上となる確率
上表は、2D6の合計が「ちょうどその値」となる確率を示したものである。一方、TRPGには、出目や、出目に修正値を加えた達成値が目標値以上なら成功とする判定方式もある。この場合に重要なのは、特定の値がちょうど出る確率ではなく、その値以上となる確率である。
2D6で7以上となる組み合わせは21通りで、その確率は 21/36 ≒ 58.3%。これに対して5以上となる組み合わせは30通りあり、確率は 30/36 ≒ 83.3% となる。
このため、「7以上」を見込むより「5以上」を見込む方が成立する確率は高い。「迷宮キングダム」の攻略Wikiで5を約8割以上見込める値として採用している例は、この性質を利用し、数学上の期待値とは別に5を保守的な基準値として扱った用法である。
考察
「2D6の期待値は5」という言い回しについては、その感覚を数理的に説明しようとする考察も行われている。
2020年、無地文字氏はX上で、「2D6の期待値は5」という認識を、実際の出目の確率とプレイヤーが受ける印象とのずれとして数理的にモデル化する試みを行っている。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/plnlttrd/status/1324287138783850497
同氏は便宜上、出目5未満を失敗、5以上を成功とし、「失敗は実際より強く、成功は実際より弱く印象づけられる」と仮定した。その補正後の平均が5になる条件を求めると、失敗側には約3.7倍、成功側には約0.45倍の重みが必要になるとしている。
ただし、これは実際の認知傾向を測定したものではなく、「期待値を5と感じる」状態を単純化して表したモデルである。無地文字氏自身もリプライで、仮定の妥当性や真偽を保証するものではなく、出目ごとに異なる補正を考える余地があるとしている。
関連動画
関連項目
脚注
- *https://fujimi-trpg-online.jp/about/trpg.html

- *https://fujimi-trpg-online.jp/game/lostrecord.html

- *https://sazano123.com/trpg/インセイン/70661.html

- *https://groupsne.co.jp/products/magazine/GMW18/GMW21%20SWotamesh.pdf

- *https://www.sjgames.com/gurps/lite/3e/gurpslite.pdf

- *https://para.blog.fc2.com/?date=200604

- *https://w.atwiki.jp/makeyou_kingdom/pages/46.html

- *https://trpgsession.com/replay/topic151998478940/

- *https://www.stat.go.jp/dss/getting/pdf/upper.pdf(Wayback Machine)

親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 12
- 0pt

