グロスフスMG42(以下MG42)とは、ドイツのグロスフス社が開発し、第二次世界大戦の最中である1942年に制式化された汎用機関銃である。
概要
MG42は、東部戦線やアフリカ戦におけるラインメタルMG34(以下MG34)の改良点を盛り込んで開発され、発射速度や威力から「ヒトラーの電動鋸」とも呼ばれて恐れられ、第二次世界大戦中に連合国兵士を恐怖のどん底にたたき落とした。実はUボートにも搭載されており、対空特化型U-Flak(フラック)となったU-441、U-256、U-621、U-953が装備。
その完成度の高さから、弾薬変更による薬室回りの改設計を経てMG3となり、戦後未だにドイツ連邦軍などで現役である。
MG34
MG42について記述する前に、その前身であった機関銃MG34について説明する必要があるだろう。
MG34は、ベルサイユ条約下における「水冷式機関銃の保有禁止」を逃れるため、空冷式機関銃MG30をより進歩させた、ラインメタル社にて開発された機関銃であった。
継続的な連射を行うと発生する銃身加熱による異常摩耗などの問題を、銃身を交換可能とする事によってとっかえひっかえ冷えた銃身で連続発射する事によって解決。通常時は2脚の軽機関銃として小隊と共に進撃可能、弾幕を張る時は専用の三脚(ラフェッテ34)によって重機関銃化し継続的な弾幕支援が可能と、1丁で軽機関銃にも重機関銃にもなれるという世界初の汎用機関銃であった。
おまけにこの専用三脚ラフェッテ34は、パイプフレームで軽量かつ揺架で振動を吸収しつつ同時に射界を前後に自動的に振り分け、しかも姿勢変更による高さ調節が可能で光学照準器による遠距離攻撃もおまかせ!という至れり尽くせり仕様であった。ラフェッテ34とMG34の組み合わせによる射界は3kmにもおよび、遠距離では弾道の影響で頭上から弾が降ってくるなど大戦前半においては猛威をふるった。
しかし、東部戦線やアフリカ戦線では機関部に巻き込んだ砂や泥による動作不良が頻発、冬に寒くなりすぎると油が凍って発砲不能、おまけにドイツ人の悪いクセである精密で手間ヒマかかる仕様になっていたので機関銃が足らねー!という事になり、改設計が行われる。こうして、プレス製作を多用し作りやすく多少の汚れにも強い、MG34の後を継ぐMG42が誕生する事となった。
MG42は、ドイツの敗戦後も、作りやすく強力な機関銃でなおかつナチスドイツ占領地にまとまった数があった事からほとんどの地域で使われ、戦後も連邦ドイツ軍を始めイタリアやスウェーデンを始めドイツ兵器と縁のある国で改設計されたMG3が現役であるほど息の長い機関銃である。
さらにMG34やMG42が作り出した”汎用機関銃”というコンセプトは戦後機関銃の中心たる考え方になり、いつもは2脚、3脚装備で重機関銃化、銃身交換可能が当たり前となった。
最近では分隊支援火器に喰われつつあるが、威力がある為車載機関銃などで今後とも使われていくであろう。
スペック・詳細
スペック | |
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開発 | ドイツ・グロスフス社 |
全長 | 1,220mm |
重量 | 11,600g |
銃身長 | 533mm |
機構 | ローラーロック式 (ショートリコイル) |
口径・弾薬 | 7.92x57mm モーゼル弾 ベルト給弾式 ドラムマガジン式 |
有効射程 | 1,000m |
MG42をMG42たらしめているのはその発射速度だろう。
MG34で毎分900発だった発射速度を、MG42では毎分1200発に引き上げ、さらにリコイルブースターの設定しだいでは毎分1500発まで発射可能と、すさまじい弾幕を展開可能であった。
秒間20発、弾薬ボックスの装弾数である250発を撃ち切るのに12.5秒というバケモノであった。もちろんこの発射速度では個々の発砲音を聞き分けることはできず、繋がったVoooooo!という独特音をとどろかせる事から「ヒトラーの電動鋸」と呼ばれ恐れられた。
おまけにこれまた専用の三脚架である「ラフェッテ42」使用時には3km先まで有効射程であるため、頭上からショットガンのように弾が降り注ぐわ、突撃すればハチの巣にされるわと、くらう側は堪ったものではなかった。
射撃音が布を引き裂くような音と言われていたが、実際まともに食らった兵士を上半身と下半身に引き裂くほど強力であった。
さらにMG34の弱点であった、リロード時の銃身交換時に被筒を回転させて抜き出し・セットするため時間がかかる欠点も、MG42では側面レバーを起こせば横に銃身が飛び出すので、引っこ抜いて新しい銃身を挿してレバーをセットすれば即完了!と、熟練射手だと3秒で再発射可能な鬼仕様になった。
でもなんで戦争に負けたの?と言われれば、敵が戦車を出してきて機関銃陣地を攻撃したり砲撃支援で狙われたりといった対抗手段によって機関銃陣地が排除されていったためである。いくら生身の人間に対して強力な機関銃を持っていようとも、装甲に覆われ高い攻撃力を誇る戦車や、そもそも機関銃陣地からは見えない敵である榴弾砲や迫撃砲の砲撃の前には無力であった。
おまけにドイツ軍は戦車火力が少ない為、対戦車能力に多少難を抱えていた点も原因に含まれるであろう。戦闘とは個々の兵器ではなくトータルの戦力によって勝敗がきまるのである。[1]
MG3[2]
戦後西ドイツは7.92ミリ弾を使用するMG42/59をMG1として採用、その後7.62ミリNATO弾を撃てるように薬室を改修して銃身内にクロームメッキを施したMG1A1に発展させた。さらに改良を加えたMG1A2、A3も作られたが、名称の複雑さを避けるためか、7.62ミリ弾使用型はMG2に、MG1A3をMG3に改称し現在に至っている。
MG3は薬室の変更と装填レバーや照尺、照門の変更といったマイナーチェンジを除けばMG42とほぼ同一といってよく、MG42の優秀性を無言のうちに物語っている。
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関連項目
脚注
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