SPEEDCORE(スピードコア)とは、HARDCORE TECHNO(ハードコアテクノ)から派生した音楽ジャンルのことで、具体的に言えば最低でも曲のテンポが200bpmを超えるスピードを持った攻撃的な音楽のことである。
(スピードコアの前に)BPMの概説
BPM(Beats per minute)とは、1分間あたり(Per Minute)に刻む拍(Beat)の数を示す単位であり、時報のダイヤル117に電話した場合の「ピッ、ピッ、ピッ、ポーン」は1分間に60個の音が並んでいるので、そのテンポは60bpm(1分あたり60拍)となる。 このBeat(拍)とは「心拍数」という言葉でも使われるように心拍音のことも表す。
次に曲のテンポとしての具体例を上げると、映画「となりのトトロ」のオープニング曲に「さんぽ」という曲がある。
あるこう、あるこう、わたしはげんき~。あるくのだいすき~、どんどんいこう~。
この曲を秒針付きの時計(またはウェブメトロノーム)と一緒に聞いていくと、ひとつあることに気がつく。
それは、この曲が先ほど例示した秒針が進むスピード(60bpm)のちょうど倍の120bpmのテンポに設定されていて、時計のカチコチ音と「さんぽ」のテンポは一緒で、ついつい体が時計のように規則的に動いてしまうようなテンポだということである。 この曲のジャンルはマーチとか行進曲といったものと考えられるが、行進曲はこの曲に限らず120bpm前後というテンポが多い。
これは、私達が普段の日常生活で使っている時計のカチコチ音という、皆の体に馴染んでいる「基準」のテンポを使うことで、列になって行進するときに全体が綺麗に統制して歩けるように考えた結果設定されたテンポなのである。
この120bpmという行進曲のテンポを基準にして考えたとき、音楽というのはざっくり3つに分けられると思う。
- 110bpmより遅い音楽:心が落ち着くヒーリング系や、子守唄、バラードなどの曲に向いたテンポ
- 120bpm前後の音楽: 行進曲・マーチといった規則性を感じる曲。基本的なテンポ
- 130bpmより速い音楽:聞いているとウキウキするような、気持ちが高揚する曲に向いたテンポ
しかし、テンポがさらに180bpmあたりを超え、スピードコアで用いられる200bpmを超えると、人間の体はある種の違和感を覚えてくる。それは、心拍数180を超える状態とは、心臓バクバクで動悸息切れといった、人間にとっては「非常事態の速さ」だからである。 つまりまずスピードコアとは、意図的に体が緊張感を感じるような高速テンポを用いた音楽である。
音楽におけるテンポの役割を押さえた上で、スピードコアの概要に進む。
(※ なお、この項は辞典や音楽教本に載っているような定説的な話ではなく、まったくもって編集者の独自研究です)
概要
スピードコア(SPEEDCORE)はハードコアテクノ(Hardcore techno)の一ジャンルであるが、そのハードコアもまたテクノミュージックの音楽ジャンルの枝分かれを繰り返し生まれてきて、しかも海外で生まれた曲やジャンルが多い。故に、これらすべてを振り返ると膨大になるし、日本人には聞き覚えのない曲も多いのでそれらを説明しても伝わらないように思う。よって、スピードコアの正式な流れはウィキペディアなど外部サイトに任せて、ハードコアテクノからスピードコアが生まれていった流れを日本国内における目線で簡単に概略する。
日本においての一般大衆にハードコアが認知されたのは、なんといっても1991年にオープンした「ジュリアナ東京」である。テレビがバブル時代を振り返るとき必ず挿入されるジュリアナテクノとお立ち台のイメージが日本人には焼き付いているわけだが(正確にはジュリアナ東京はバブルのピークを超えてから誕生したものであって、あれがバブルの象徴というよりはこの先日本はどうなるんだろうという混沌とした時代を象徴するシーンであり、バブル=ジュリアナとされるのは違和感があるのだが・・・)
あのジュリアナテクノは、日本ではハードコアというよりは「レイヴ」程度の扱いがされているが、海外においてはハードコアの中の「オールドスクール」という括りで語られ、音はそこそこアグレッシブだが、テンポはそれほど攻撃的ではなく、シンセがたまに攻撃的で、跳ねるようなベースとブレイクビーツ、そしてボーカルのシンプルなフレーズの連呼といった感じで、テンポはあくまで「扇子を左右に振りやすい」程度の緩やかなものであった。
ただこの時代に高速テンポを目指したジャンルがなかったわけではなく、日本でも当時知られたものに「ロッテルダムテクノ」があるが、実はこのロッテルダムテクノというのは完全な和製英語であり海外ではまったく通じない(編集者がオランダ人に直接ロッテルダムテクノを知っているか聞いてまったく無反応だった確認済み)ので注意が必要である。
ロッテルダムテクノは確かにロッテルダム在住のDJが作り上げたジャンルではあるが、これはエイベックストラックスが海外のコンピレーションアルバムを輸入販売するとき何かわかりやすいジャンル名はないかと考えて付けたもので、海外ではロッテルダムテクノとは言わずガバ(Gabba)と言う。
ガバ(Gabba)は、キックドラムの音にディストーションをかけ『ドゥゥゥン↓』とたわませた通称「ガバキック」を使って高速にビートを刻みつつ、既出楽曲のサンプリングや声ネタを使いまくるといった音楽で、よく言えば「DJの遊び心」、悪く言えば「既成の音楽の破壊」が見られるのが特徴である。
このガバ(Gabba)が現在のハードコアを語る上でのベースとも言えるもので、スピードコアもここから派生して生まれたのだが、この両者を比較するとき、曲のテンポの速さが、ガバが140bpm以上、スピードコアが200bpm以上という基準があるにしても、それぞれに300bpmぐらいの高速曲が存在するため、テンポだけで分類するのは難しい。
それではスピードコアの特徴とは何だろうかと聞かれると、前述のとおりガバキックは『ドゥゥゥン↓』といった余韻をもったキックドラムなのに対し、これをそのまま高速なスピードコアに適用してテンポを上げるとキックドラムが連続しているように聞こえてしまうことがある。
それを回避するためにキックドラムのアタック(音の立ち上がり)を強くするのだが、キックはよく聞き取れるようになるものの今度は道路工事の音のようなガガガガ音に近づいて行ったりする。
つまり、どちらをとってもフレンドリーな曲調ではない。
ハードコアを一言で表すのが「破壊」ならば、スピードコアはより進んだ「敵意」である、と思う。
スピードコアの超高速なサンプリングフレーズの連呼はコンピュータのフリーズ画面のような狂気を演出し、聞きなれない人には「これは果たして音楽といえるのだろうか?」と考えてしまうような敵意をもった音楽である。だがそもそも、作曲者(DJ)が意図的に脳への情報入力量をオーバーフローさせようとする音楽がスピードコアであって、「聞けるもんなら聞いてみな」という敵意を持って作られたその難解な挑戦状の中身が理解できたときの悦び・・・それは、
- ベラベラ高速にしゃべる外国人の言葉の内容が理解できたときの悦び
- 録画したビデオを時短高速再生させつつストーリーをしっかり掴めた悦び
- ニコニコ動画で動画中に1フレームだけ挿入された隠し絵を発見し、それをタイミングよく一時停止できた悦び
とかそんなものに近いのかもしれない。
冗長になったのでまとめると、最初からスピードコアが好きな人間などというものは存在しないはずで、小学生の頃は普通に「さんぽ」のようなテンポが好きだったものが、様々な音楽に触れることで心地良いと感じられるテンポが上がっていった結果、音楽に対する分解能力が異常に発達した人たちの間で好まれる音楽ジャンルがスピードコアである。
今はまだ良さが理解できない人も、低速な曲などから慣らしていくと、突然それまでノイズだったものが高度な音楽作品に聞こえる・・・かもしれない。
アーティストの例
海外
国内
レーベルの例
海外
- Industrial Strength Records
- Canadian Speedcore Resistance
- Terrornoize Industry
- Splitterblast Records
- Splitterkor Rekords Dziwko!!
国内
関連動画
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
- 音楽
- クラブミュージック (Club music)
- ハードコア (Hardcore techno)
- ナードコア (Nerd Core)
- レイブ (Rave)
- ガバ(Gabba)
- ニュースタイルガバ (Nustyle Gabba)
- ブレイクコア (Brake Core)
- ノイズコア (Noise Core)
- J-CORE
- スプリッターコア(Splittercore) 800bpm超のスピードコア
- エクストラトーン(Extratone) 1000bpm超のスピードコア
- 電子ドラッグ
- 作業妨害用BGM
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