MAD(マッド)とは以下の意味で使われる言葉である。
- 『気が狂った』『発狂した』『バカげている』などを指す英単語。mad 対義語balancad(安定している)。
- 上記の意味から派生した日本の特定の音楽・映像作品に対して付けられる名称。=音声MAD・MAD動画。
- 相互確証破壊(Mutual Assured Destruction)の略称。冷戦時代を象徴する概念。
- 磁気異常探知機(Magnetic Anomaly Detector)の略称。軍用対潜磁気センサのこと。
この記事では2の音声MAD・MAD動画について記述する。
概要
MADとは、動画や音声を編集、改編し新たな意味を付加された動画や音声のことを指す。つまり、二次創作物である。
本来MADとは、『気が狂った』などを意味する単語であり、MADと名の付く作品は内容に癖がある物が多い。しかし、MADの意味を深く調べていくと「夢中になる」という意味もある為、一概に悪い印象を持つ単語ではないことが分かる。
「MAD」の名前は日本の1970年代~1980年代にかけて作られた「MADテープ」に由来する。これのさらに前は「キチガイテープ」とも呼ばれていた。
そのためMADという単語は一般的には日本の作品しかささず、英語圏では別の単語が使われている。(例:アニメに別の音楽を付け編集した動画ならAMV等)
旧来は編集された作品がMAD(M@D等の表記もある)とされ、加工や編集等の妙が評価対象であり、音と音/音と動画の尺すら合わせずに別の音や映像を当てるだけの作品は面白ネタ扱いであった。だが動画サイトの普及に伴い、近年ではそれらもMADと分類する傾向が見られる。
歴史
もともとMADは歴史が古く、1970年代にカセットテープでセリフを繋げ合わせてヘンなものに仕立て上げる遊びが存在した。いわゆる「きちがいテープ」と呼ばれる代物で、一部の人たちが寄り持って遊んでいた。
一連の作品群が「MAD」と呼ばれる原因となったのは、30数年前に作られた「NEW MAD TAPE」シリーズの人気が高かった為である。
「MAD」は「きちがい」の英訳に相当する。
「NEW MAD TAPE」シリーズの流れを継承する作品として、1980年11月にラジオ番組「タモリのオールナイトニッポン」で「つぎはぎニュース」が誕生する。この「つぎはぎニュース」はニュースの音声を繋ぎ合わせ、大真面目な司会者に破天荒なニュースを「喋らせる」作品。当時大人気になった。
その後、ビデオデッキを駆使して作成するMADビデオも出現。最初期のものに『十二支団』製作の「えとけっとびでお」がある。それに影響され、『タクラミスト』製作の「タクラビジョン」、『株式会社イカスー』製作の「イカスービデオ」、『グループパンの耳』製作の「番頭ビデオ」など、数多くのMADビデオが作られた。なお、この頃のMADを今のデジタル編集のMADと区別して、「アナログMAD」と呼ぶことがある。
何らかの場所などで発表する事も増え、サークルが出来、その繋がりで広まっていくことも増えた。しかし、当時のMADはビデオダビングによって広まっていったため、画質はすこぶる悪かった。代表的なサークルは『宇治軍団』。
1990年代後半より、徐々にパソコンでのデジタル編集が行われるようになる。使用されるソフトは選択肢が非常に限られており、Adobe PremireやUlead Video Studioなどしかなかった。この頃の作品に『くるくるパロディブラザーズ』製作の「くるくるパロディシアター」、『はじおう』氏製作の「おたくのMADビデオ」などがある。一部は、2000年頃まで手渡しでの配布が行われていた。また、はじおう氏製作の『Gロボ体操』は非常に出来が良く、MAD界にジャイアントロボMADブームが起こった。インターネット普及に伴いパソコンによる動画作成が進むと、MADテープ・ビデオから『MAD動画』などに進化し、ネット上で流れることが増えた。
同じ頃、『Tactics』の「ONE ~輝く季節へ~」や『Leaf』の「雫」「痕」を素材にしたMADが作られ出すようになった。のちにこれらは動画を素材にしたMADと区別して、「静止画MAD」と呼ばれることになる。『Key』の「Kanon」や『Leaf』の「To Heart」がブームになると、静止画MADが数多く作られることになった。静止画MADの代表的な作者に、「神月社」氏や「乃怒亞女」氏などがいる。
1990年代も末期になり、AviUtlやVideoMaidなどのフリーの動画編集ソフトの登場によって、MAD作成の垣根は下がった。垣根が下がった事による作り手の増加に加え、勇者シリーズ最終作となる熱いアニメが話題になり、ガオガイガーMADブームが起こることになる。
2002年頃から「機動戦士ガンダムSEED」のブームにより、多くの女性が同作品のMAD作成に参入した。
2006年、「MUSASHI-GUN道-」という衝撃的な作品の登場によって、MADがブームとなった。この時は主にYouTubeに作品がアップロードされていた。
2006年末から2007年にかけ、「新・豪血寺一族」のPVである「レッツゴー!陰陽師」が話題になり、その後のリミックス系音MADに影響していくことになる。
2007年初頭、「THE IDOLM@STER」の登場人物・双海亜美の歌う「エージェント夜を往く」が話題になり、以降アイマスMADがブレイクすることになる。
これらの動画がYouTube等で公開されるようになって飛躍的に多くの人の目に入るようになり、またニコニコ動画で反応がダイレクトに返ってくる様になった為、MAD作品は一気に普遍的なものにまで発展した。
現在も日本各地で上映会が開催されており、時々その上映作品が投稿されることがある。上映会は著作権の関係から参加者を介しての紹介制のため、開催日時や場所等が公開される事はない。(以下上映会作品と確認されたもの)
Flash動画の影響
Windows 95からWindows Meの頃くらいまでは「動画再生能力が足りない」パソコンがほとんどであり、編集も難しかったことから、Flash動画がその間を支えることとなった。
ポエ山氏のゴノレゴシリーズやオラサイト(後にラサイト)、砂糖水氏、BUMPOFCHICKENのFlashが有名である。
動画サイトの登場、そしてそれを再生できるパソコンの性能向上に伴って、少しずつFlash動画の流行が引き始める。
ニコニコ動画とMAD
ニコニコ動画におけるMAD動画の数の多さは尋常ではなく、同サイトの独創的な文化を育んだ大きな要因のひとつでもある。MADには様々な種類があり、特に「組み合わせ方式」のMADは数も人気も高い。
なお、核となるネタとして有名なものは以下のものが挙げられる。
- 東方ネタ
- ドナルドネタ
- 遊戯王ネタ
- らき☆すたネタ
- KBCネタ
- ジブリネタ
- スパイダーマッネタ
- フタエノキワミネタ
- アイドルマスターネタ
- ひぐらしのなく頃にネタ
- 創価学会(久本雅美)ネタ
- チャージマン研ネタ
- レスリングシリーズネタ
- Z会(勉強シロイド)ネタ
など。
なお上記の内、アイドルマスターと東方はVOCALOIDと合わせて3つで「殿堂入りカテゴリ」として確立しており、同じく上記の創価学会、チャージマン研、レスリングシリーズの3つで「例のアレカテゴリ」として確立している。
MADと著作権
MADはその性質上、必然的に二次的著作物となり、著作権で保護された作品を無断で題材として扱うことは原著作物の著作権を侵害する行為となる。
ニコニコ動画を運営する株式会社ニワンゴは、有限責任中間法人日本動画協会、社団法人日本映像ソフト協会、社団法人日本映画製作者連盟の三団体と協議の結果、ニコニコ動画内に既に投稿されている三団体の会員社の著作権を侵害している動画についてはMAD動画を含めてすべて削除すること、新規動画を監視し、新たに投稿された三団体の会員社の著作権を侵害している動画をMAD動画を含めてすべて速やかに削除することに同意した。これは2008年7月2日に、ニワンゴの親会社である株式会社ドワンゴが明らかにしたものである。
MADの削除率
MADを投稿する時は、削除されやすいジャンルもあるので、消されたくない時はそれに気をつける必要がある。
例外
東方(二次創作(基本)自由のため、消されたとしたら他の理由が考えられる)
- レベル1…ドナルド・マクドナルド KBC 松岡修造 アイドルマスター 音ゲー ディズニー Z会(勉強シロイド) 政見放送 など
- レベル2…レスリングシリーズ らき☆すた ハルヒ ドラゴンボール 遊戯王 テニスの王子様ほか集英社アニメ など
- レベル3…ひぐらしのなく頃に スレイヤーズ 魔術師オーフェン 機動戦艦ナデシコ ほか角川アニメなど
- レベル4…星のカービィ 狩野英孝 ポケモン デスノート デュエルマスターズ ベイブレード 爆走兄弟レッツ&ゴー ほか小学館アニメなど
- レベル5…フタエノキワミ NHK ジブリ サザエさん スパイダーマッ 股尾前科 創価学会 ドラえもん ほかシンエイアニメなど
権利関係が不明なもの等はレベルが1~2程度下がる。例)エトレンジャー(NHK BS2で放映されたアニメ)
山本弘氏の「MADについて」5か条
ニコニコ動画中毒の小説家・山本弘氏は、『トンデモ音楽の世界』(2008年、小学館)にて現代のMADについてこう語っている。
- MADや同人誌などの二次創作は、創作者が想像力を働かせて元の作品を別の形にこね上げた、新たな作品であり、いわゆる「盗作」とは異なる。
- MADは削除しすぎるとファンの反感を買う。
- MADは原作の売り上げに貢献している(下のニコニコ市場を見れば明らかである)。
- つまり、MADのような二次創作はある程度黙認するほうが賢いやり方である。
- 同人誌業界から多くの漫画家が生まれてきたように、MAD業界からもいい映像クリエイターが生まれてくると思われる。
ただし、この考察はあくまで山本氏がMAD愛好家であるが故のある種一方的な解釈という意見もあり、全く別の意見を唱える者もいるので注意が必要である。
一部の動画に付くコメント
『MADテープが~』というコメントは、昔から使われているような古典的なネタを意味する。もしくは、元ネタとなったMADテープやビデオを知っている人のコメントである。
ニコニコで著名なMAD製作者
関連リンク
関連項目
- MAD関連タグ一覧 …作品によっては、その作品ごとのタグ(例:遊戯王MAD)がつくこともあり、必ずしもMADタグがつくとは限らないので注意が必要。
- アニメ・ミュージック・ビデオ(AMV)
- 手描き・手書きMAD
- 音系MAD
- 公式MAD
- 静止画MAD
- 良MAD
- 神MAD
- 洋楽MAD
- ゲームMAD
- 映画MAD
- 実況者MAD
- 台詞入りMAD
- Flash
- Flash黄金時代
- MAD削除問題
子記事
兄弟記事
- なし
- 54
- 0pt