三角関数とは、数学において特に有名な関数のひとつ。日本の数学教育においては、数学IIで初出する。
概要
- まず、紙、鉛筆、定規、コンパス、分度器を用意しよう。
- 紙に、鉛筆で十字をひとつ描こう。この時、十字は紙いっぱいに大きく描いて、真ん中で交差するようにね。
- 十字の交差したところ付近に小さくOと書き、交差点を中心に円を描こう。
- 円と十字の交差した4つの点のうち、向かって上と右に1、下と左に-1を書こう。
- これで準備は万端。どの角度にするか決めたかな?
- 円の3時の位置から、決めた角度だけ円周に沿って反時計回りに進もう。
- 行きついた点から、十字の縦線と横線にそれぞれ直角に交わるように線を引こう。
- それぞれの交わった点は、-1から1までの間にあるね。その点に対応する数を考えよう。
- ちゃんとした値を知りたければ、十字の交差してる点からの長さを測って、円の半径で割ればOK。
- 縦線と交わった点に対応する数が、その角度のサイン。横線ならコサイン。サインをコサインで割った値がタンジェント。割る数が0になるときは、値がないと言っていたり、無限と言っていたりするよ。高校数学では値なし。
- コサインをサインで割ればコタンジェントだし、1をコサインで割ればセカント、1をサインで割ればコセカント。ただ、これらは高校では出てこないよ。
定義
三角比の概念を一般的な角度に拡張したもの。三角比では0°から180°までしか対応しなかったが、三角関数では角度の大きさによる制約は受けない。求め方は概要に書いたとおり。サイン、コサイン以外は元々の定義ではないが、概要の通りに定義しても同値である。十字は座標軸、円は単位円、3時の位置は始線の方向、縦線との交点に対応する数はy座標、横(以下同文)はx座標を指している。
記号による書き方は、角度θに対して、サインはsinθ、コサインはcosθ、タンジェントはtanθ、コタンジェントはcotθ、セカントはsecθ、コセカントはcscθと表す。弧度法によって角度を実数として表すことができるが、その場合はθではなくxと書くこともある。
一般角
「角度の大きさによる制約は受けない」と前述したが、それは角度が負の値をとったり、360°を超えてもよいという意味でもある。負の角であれば、時計回りに角度の絶対値だけ動けばよい。360°+αであれば、1回転多めに回ってαの角度に行きつく。結果として、いかなる角度であっても360°で割った余りと同じ位置になる。だがそれは結果が同じなだけであり、過程は違うことを忘れてはいけない。後ろを向かせる命令でもまわれ右とまわれ左では動きが違うし、3回まわってワンと言うのと、ただ単にワンというのが違うのはおわかりであろう。
グラフ
三角関数は、その性質により周期的なグラフになる。特にサイン、コサインのグラフは波打ったようなグラフになる。サインのグラフは原点について対称な奇関数、コサインのグラフはy軸について対称な偶関数となる。サインとコサインのグラフは、π/2だけ横にずらせば重なる。
公式
三角関数には、非常に多くの定理や公式が存在する。それが三角関数の美しさを表現しているものだが、受験生にとってはその多さが悩みの種である。
相互関係
- sin(-x)=-sinx
- cos(-x)=cosx
- sin(x+π/2)=cosx
- cos(x-π/2)=sinx
- tanx=sinx/cosx
- cotx=cosx/sinx
- secx=1/cosx
- cscx=1/sinx
- sin2x+cos2x=1
- tan2x+1=sec2x
- 1+cot2x=csc2x
第1,2式は、それぞれ奇関数、偶関数の性質からわかる。第3,4式はグラフの平行移動からわかる。第5~8式は概要と定義で既に述べた。第9式は、点(cosx,sinx)が単位円上にあることからわかる。第10式は第9式の両辺をcos2xで割ったもの、第11式は第9式の両辺をsin2xで割ったものである。
加法定理
- sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
- sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ
- cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
- cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ
- tan(α+β)=(tanα+tanβ)/(1-tanαtanβ)
- tan(α-β)=(tanα-tanβ)/(1+tanαtanβ)
高校の教科書では、第1~4式のうち1つを図形的に証明し、残りの3式を相互関係から導く方法をとっている。しかし、後述するオイラーの公式を使えば、ものの数行で導き出せてしまう。第5式は第1式を第3式で割ったもの、第6式は第2式を第4式で割ったものである。また、α+β<π/2のとき、右図のように1つの図形だけで証明できる。
暗記法としては、「咲いたコスモスコスモス咲いた」「コスモスコスモス咲いた咲いた」が特に有名。但し、コサインの加法定理は符号も含めて覚えるために「コスモスコスモス咲かない咲かない」と覚える人もいる。重要な式だけあって、この他にも様々な語呂合わせが考え出されており、バリエーションはとても広い。
2倍角の公式
加法定理の式のβにαを代入した式。第2式の後半は相互作用の第9式より従う。
3倍角の公式
加法定理の式のβに2αを代入した式。教科書にはあまり載っていないので、2倍角は覚えてもこれを覚える人は少ないだろう。しかし作るとなると結構時間がかかったりする。ちなみに、これを巧みに用いて一部の3次方程式を解くことができる。
半角の公式
コサインの2倍角の公式において、αをα/2に置き換えて変形したもの。2乗がついているのはそのため。
積和の公式
- sinαcosβ={sin(α+β)+sin(α-β)}/2
- cosαsinβ={sin(α+β)-sin(α-β)}/2
- cosαcosβ={cos(α+β)+cos(α-β)}/2
- sinαsinβ={-cos(α+β)+cos(α-β)}/2
三角関数の積の形の式を和の形の式に変形する公式。加法定理の式を足したり引いたりすることで作れる。
和積の公式
- sinA+sinB=2sin{(A+B)/2}cos{(A-B)/2}
- sinA-sinB=2cos{(A+B)/2}sin{(A-B)/2}
- cosA+cosB=2cos{(A+B)/2}cos{(A-B)/2}
- cosA-cosB=-2sin{(A+B)/2}sin{(A-B)/2}
三角関数の和の形の式を積の形の式に変形する公式。和積の公式においてA=α+β,B=α-βとすることで導かれる。
三角関数の合成
asinx+bcosx=√(a2+b2)sin(x+α) ※但し、αはcosα=a/√(a2+b2), sinα=b/√(a2+b2)を満たす角。
2つの三角関数の和を1つの三角関数で表す式。これも加法定理から導き出される。
微分
このように、サインとコサインは微分においても深い関係性を持っている。微分についてよく知らない人からするとただ単に単純な式のように見えるかもしれないが、これは定義でも公理でもなく、定理である。この単純さこそが三角関数の美しさを物語っているのである。
オイラーの公式
eix=cosx+isinx ※eはネイピア数,iは虚数単位(i2=-1)
虚数単位によって指数関数と三角関数を結び付ける式。この公式により、今まで別物として考えられてきた2種類の関数が、実は非常に深い関係性にあることがわかる。この公式が導き出される過程で、前述の微分が重要な役割を担っている。オイラーの公式にπ(円周率)を代入したものは、数学で最も美しい式(オイラーの等式)とされ、非常に有名。
eiπ+1=0
複素関数としての三角関数
前述のオイラーの公式を用いて、三角関数の定義域を実数から複素数に拡張できる。
eix=cosx+isinx,e-ix=cosx-isinx
なので、これを足して2で割ると、cosx=(eix+e-ix)/2
引いて2iで割ると、sinx=(eix-e-ix)/2i
xをixで置き換えることによって、
cos(ix)=(e-x+ex)/2,sin(ix)=(e-x-ex)/2i
を得る。このことから、純虚数のコサインは実数、純虚数のサインは純虚数になる。ちなみに、この式は双曲線関数を用いて
cos(x+iy)=cosxcos(iy)-sinxsin(iy)=cosxcoshx-isinxsinhy
sin(x+iy)=sinxcos(iy)+cosxsin(iy)=sinxcoshx+icosxsinhy
となる。ちなみに、ここでのx,yは実数である必要はない。
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関連項目
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