師匠のぐるぐるおめめとギザギザ歯が俺を狂わせる・・・とは、謎の定型句である。
なお、原文はタグとして使えない文字数のため、特に話し合って決まった結果などではないが、ニコニコ静画のタグなどでは便宜的に師匠のぐるぐるとギザギザが俺を狂わせる…が代替としてふんわり使われているらしい。
概要
『ウマ娘 プリティーダービー』のツインターボに対して、動画に登場した際に発されるテンプレコメントのこと。正直、文言自体はあの見た目を見たままを述べており、特に特筆すべきことはない。
何分、みんなうろ覚えで使っているため、師匠がターボやツインターボになったり、最後の3点リーダーが半角になったり、ひらがなやカタカナや漢字の表記に揺れがあったりするのだが、初出と思われる初期のコメントではこのように表記されていたので、この記事名とする。
なお、たぬき動画でもツインターボが出てくると言われていたのだが、そもそもツインターボのたぬきはほとんど目をつむっているため、ぐるぐるおめめに関してはほとんど見ることができない。そのため、初期はその点にツッコミが入ったが、最近はスルーされている。
また、その後この「~が俺を狂わせる・・・」構文は、アストンマーチャンなど他のウマ娘にも拡大していき、ウマ娘界隈では特によく使われるが、やはりツインターボがファーストインパクトとして、この構文と特に紐づいたものとなっている。
ツインターボにはいつから言われていたの?
少なくとも『ウマ娘 プリティーダービー』がバズった、ゲームサービスイン当初にはすでにこのテンプレコメントが存在していたことは、当時ウマーマンシリーズ動画などを見ていた視聴者は記憶にも新しいと思われる。加えて、ツインターボ自体は、アニメ2期『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』が初登場のウマ娘のため、おおよそ2020年12月~2021年3月に初出を絞ることができる。
正直ローラー作戦での調査なので、あっているかどうかは定かではないのだが、おそらく最古のこのコメントかそれに近い存在が、この動画のコメント番号796(2021年2月7日1時33分13秒)と思われる。
端的に言うと、2021年2月2日12時に配信された、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』5話にて、ツインターボがドアップで映るシーンがあった結果、おめめがぐるぐるしていることに多くの視聴者が気づいてしまった。結果として、ぐるぐるおめめ、オッドアイ、ギザギザ歯、ツインテールなど、かなりの属性を盛った存在であることが、このタイミングで改めて意識されたのである。その証拠に、公式の5話の動画でもツインターボの属性の盛りっぷりに注目するコメントは、無料配信期間中に多々見られるのである(ただし、無料公開期間中にこのコメントを公式動画から検出することはできなかった)。
このため、おそらくこの定型句の初出は、2021年2月2日以降に絞ることができ、この近辺の『ウマ娘 プリティーダービー』関連の動画に他に該当コメントがないことから、あくまでも蓋然性のレベルなのだが、上記動画のこのコメントが最古かそれに近いのではないか、としておきたい。
それで結局一番の大本って何?
そもそも「狂わせる」ってなんだよ
まず、狂わせるとは、当たり前といえば当たり前なのだが、ワ行五段活用の動詞「狂う」の未然形+使役の助動詞「せる」である。ただし、終止形がうで終わっている動詞なのに、なぜワ行五段活用かというと、「狂う」はもともと古代はハ行四段活用の動詞「狂ふ」であり、もともと語尾はハ行だったからである。のだが、中世にはもうすでに「狂ふ」は「狂う」に近い発音になっていたとされ、その結果終止形のみ~うとなった、というわけである。
ここで、平安時代くらいまでいきなりさかのぼったのは他でもない。実は、古代には、「~を狂わせる」めいた動詞として、「狂はかす」という完全に固有の存在があったので、「狂ふ」の未然形+使役の助動詞「す」の終止形の「狂はす」はあんまり使ってなかったんじゃないかなあとも思われるのである。
例えば、『今昔物語集』には「其は傀儡神と云ふ物の狂かしけるなめりとぞ」と、狂わせるという意味で狂はかすを使っている。
しかし、はっきり言おう。助動詞というものがあるのに、自動詞と他動詞を全く異なる動詞で使い分けるの面倒じゃない?
ということで、室町時代くらいには、例えば能の『卒塔婆小町』に「その怨念が。つきそいて。かように物には狂はするぞや」という文言があるので、中近世にはもう「~を狂わせる」という意味では、「狂はす」のほうが使われていたのじゃなかろうかとされる。
このかなり有名な例が、松尾芭蕉の『奥の細道』の「そぞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神の招きにあひて、取るもの手につかず」である。
一般的な「(1人称)を狂わせる」という表記
なので、実はそもそも「狂わす」という言葉自体そこそこ新しいのではないか疑惑があるのだが、さらに言えば滝沢馬琴(曲亭馬琴)の『夢想兵衛胡蝶物語』に「わが狂はする猿」という文言があるので、1人称を狂わせる場合はこの頃はまだ違う表現をされていたのではないかとも思える。
ということで、「~を狂わせる」めいた意味で書く場合は、江戸時代は「~を」は基本モノか人などのカテゴリーなどに使われているのが多いのだが、18世紀に入ると、平賀源内の書いた浄瑠璃『矢口後日 荒御靈新田神德』に「我は物には狂わねど〳〵、物こそ我を狂わする」という対句の形で、「(1人称)を狂わせる」というまさにそのものの表記が出てくる。そして、19世紀にも山東京伝の『双蝶記』に「吾妻は我を狂はする」という表現もあるのだが、正直言って前近代に使われていた用例はほぼこの2つくらいといって過言ではないかなと思う。
しかし、この「(1人称)を狂わせる」という表記は、英語にある「drive me crazy」など、海外の表現の和訳の影響がかなり大きかったと思われ、明治維新後の初期の例が、福地源一郎の明治25年(1892年)に書いた『求女塚身替新田・女楠賢母教訓』に「われを狂はすれ」という表現が出てくるものであり、早い話平賀源内や山東京伝とミッシングリンクとなって急に出現し始めている。
ちなみに、この頃出た辞書などでは、狂わかす~?狂わすの亜種的なアレでしょ?めいた扱いになっているので、すでに狂わかすの存在感はほぼないに等しいようだ。
ということで、19世紀末期には既に「我を狂わす」という文言が使われている用例は散見され、大正時代初頭には『大正新美文』や『現代新美文』といった本に残された一般読者の投稿にも「我を狂わす」が散見される。ただし、正直なところ、たまにある用例でしかなく、広く一般的に使われるような表現ではなかったようだ。
しかし、こうした流れは戦後も着々と続いていき、「(1人称)〜を狂わせる」という表記は、1980年代には文学作品以外の雑誌記事などでも事例が見つかるほどになり、あくまでもメジャーシーンのみの調査なのだが歌などでも所ジョージの「TIME IS GREEN PEAS」など1980年代から散見され、1992年の稲垣潤一の「Ms.Joanna」、SMAPの「君に夢中 -FUNNY GIRL」あたりを境に、一般的に使われる用法としてよく見られるようになるため、昭和と平成の境目頃から日本人も使う頻度が増えたと考えられる。
実際のところ、オタクもほぼ同様に使うようになったと考えられ、20世紀末から21世紀初頭にかけて、恋愛ものや官能ものの小説やSSで使われている事例がそこそこヒットする。
構文としての起源
少なくとも、Twitter上での検索では、最古の用例は、2008年7月6日の、『マクロスフロンティア』のランカ・リーのキラッ☆に対するものである。そして、以後2010年頃には、既に構文として定着している。
Google検索で日付指定をしてこの近辺や以前の用例を探していくと2006年頃にアダルトゲームのユーザー投票に対して公式が抜粋したコメントが散見される。たとえば、『Fate/stay night』の第2回人気投票(2006年初頭実施)の 10位に入ったキャスターの特設ページには、「新妻キャスターが・・俺を狂わせる。」というコメントがあり、2006年6月頃に実施された『メイドさんと大きな剣』の人気投票で、結果発表ページ(※18禁注意)に「スリットが私を狂わせる~~」というコメントがあるので、おそらくいわゆるギャルゲーやエロゲー方面でオタクがたまに発する言葉ではあったのだろう。
しかし、両用法を考えると、たまに発されるはずの言葉が00年代後半に何らかの要素があって構文として定着したと考えられるのだが、あくまでも推測ながら心当たりがある。
2008年〜2010年とは、ニコニコ動画で違法アップロードの本編動画がまだ見れた時期と、良くも悪くもまとめブログがよく見られた時期であり、2chだのふたばだのの内輪のノリなどが以前よりも拡散されやすかった。このため、因果関係を調べるにはもう少し調査がいるのだが、この誰かが適当に言った発言が、ウケて使われるようになる土壌があったという、相関関係までは言えそうである。
関連動画
関連項目
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