準備預金制度とは、銀行などの金融機関に義務づけられる制度である。
銀行に対して中央銀行へ口座を開設することと一定の中央銀行預金を保有することを義務づける制度のことを準備預金制度という。
準備預金制度の意義として2種類の説明が行われる。
1つは、預金者の現金引き出しに備えさせるための制度と説明するものである。
1つは、銀行の決済資金の確保をうながすための制度と説明するものである。
かつては「準備率の変動を通じて銀行に中央銀行預金を吸収させたり放出させたりしてマネタリーベースを操作するための制度」と説明することもあった。しかし、その説明は時代に適合しなくなった[1]。
日本を例にとって説明すると、次のようになる。
銀行は、預金者から現金を預けられたり、信用創造で貸し付けしたり、他の銀行に預金する者から自分たちの銀行に預金する者へ振込が行われたりすると[2]、新たに負債として銀行預金を創造することになる。
そういったときの銀行の貸借対照表(バランスシート)をごく簡単に表すと次のようになる。
| 銀行の貸借対照表 | |
| 資産の部 | 負債の部 |
| 預金者から受け取った現金 | 銀行預金 |
| 貸付で得た金銭債権 | 銀行預金 |
| 他の銀行から送金された日銀当座預金 | 銀行預金 |
銀行預金というものは銀行にとっての負債である。銀行預金の中でも普通預金や当座預金は、預金者の要求があったら即座に現金を渡さねばならない[3]。定期預金であっても、満期が来たら預金者に現金を渡さねばならない。
このため銀行は現金を預金額に対して一定の割合で保持しておく必要がある。とはいえ、銀行の金庫に大量の現金を保管するのは危険である。このため銀行は「現金に即座に変更できる中央銀行預金(日本なら日銀当座預金)」を預金額に対して一定の割合で保持するという方法を選んでいる。
この「預金の引き出しに備えて確保しておく中央銀行預金(日本なら日銀当座預金)」を準備預金という。銀行預金の総額に対して準備預金がどれだけの割合になっているかを示す数値を準備率といい、百分率(%)で示される。
預金者は「現金の形で資産を持っていると盗難の恐れがある。銀行預金の形で資産を持っていた方が盗難されにくくて安心だ」と考えるものであり、すべての預金者が一斉に銀行預金を現金にする事態は考えにくい。ゆえに銀行は銀行預金に対して同額の中央銀行預金(日銀当座預金)を準備しておく必要が無い。つまり準備率を100%にしておく必要が無い。
しかし、預金者の中には一定の割合で「銀行預金を現金にしよう」と考えるものが出てくるので、準備率を0%にすることができない。
準備預金を確保するように銀行に対して強制する制度を準備預金制度という。それぞれの銀行は、中央銀行が考えた準備率を課されて準備預金の保有を強制される。
日本を例にとって説明すると、次のようになる。
銀行は、他の銀行から債券を購入するときに日銀当座預金を支払っている。また銀行は、自行の預金者が他行の預金者に振り込みを行うときに他行へ日銀当座預金を送金している。このため日銀当座預金には決済手段としての役割がある。
銀行は、自行の支払いや預金者の決済のために日銀当座預金を必要としている。これを「銀行は決済需要として日銀当座預金を必要としている」と表現する[4]。
日本銀行は準備預金制度にしたがって銀行に対して日銀当座預金をある程度確保するように要求していて、それを受けて銀行も日銀当座預金を必要としている。これを「銀行は準備需要として日銀当座預金を必要としている」と表現する。
日本においては、銀行が準備需要を満たすだけの日銀当座預金を確保していれば、自然と銀行の決済需要を満たすようになっているとされる[5]。言い換えると、日本の銀行は準備預金制度で営業日の終業時に一定の日銀当座預金を確保することを要求されているが、その要求に従っていれば、翌・営業日の朝からの決済需要にも十分対応できる。
諸外国においても、中央銀行が準備預金制度を運用し、銀行が決済需要よりも多くの中央銀行預金を確保するように準備率を設定しているところが多い[6]。
準備預金制度で銀行に対して保有を義務づける中央銀行預金のことを法定準備預金とか所要準備といい、その金額を法定準備預金額とか所要準備額という。
準備預金制度で銀行に対して保有を義務づけられているわけではないが銀行が保有している中央銀行預金のことを超過準備といい、その金額を超過準備額という。
市中銀行は超過準備を持つ必要性が無いので、「超過準備を『日銀当座預金よりも高い利回りの金銭債権』に変換して財テクしよう。できる限り超過準備がゼロに近くなるようにしよう」と考えるようになる[7]。
ある市中銀行があり、日銀当座預金を30億円だけ資産として保有していて、銀行預金を100億円だけ負債として創造したとする。その市中銀行の準備率が1%である場合、法定準備預金(所要準備)は日銀当座預金1億円だけで、残りの29億円の日銀当座預金はすべて超過準備である。
この場合、市中銀行は「29億円の超過準備を持っているのをやめよう。29億円の超過準備をすべて『日銀当座預金よりも高い利回りの金銭債権』に変換して財テクしよう」と考えて、実際にそういう行動を起こしていく。
短期金融市場のオープン市場の国庫短期証券市場に参加して29億円で国庫短期証券を買って「政府に対する金銭債権」に変換しても良いし、長期金融市場の債券市場の中期国債・長期国債・超長期国債市場に参加して29億円で中期国債・長期国債・超長期国債を買って「政府に対する金銭債権」に変換しても良いし[8]、短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場に参加して29億円を他の銀行に貸し付けて「他の銀行に対する金銭債権」に変換しても良い。
市中銀行にとって超過準備を国債に変換しておくことは理想的な行動である。国債を売って日銀当座預金にすることができるし、国債を日銀に担保として差し入れて日銀から日銀当座預金を借りることができるし、国債を他の市中銀行に売り現先[9]して日銀当座預金を一時的に得ることもできる。
市中銀行にとって短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場に参加して超過準備を「期間1営業日の銀行に対する金銭債権」に変換しておくことも好ましい行動である。1営業日だけ銀行に貸し付けるのなら流動性が非常に高い金銭債権で、1日経ったらすぐに日銀当座預金の形に戻る。
市中銀行にとって短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場に参加して超過準備を「期間2ヶ月程度の銀行に対する金銭債権」に変換しておくことも好ましい行動である。市中銀行に対する金銭債権は日銀が担保として認める傾向にあるので、市中銀行に対する金銭債権を持っておけば日銀から日銀当座預金を借用できるようになる。
準備預金制度は、世界中の国々で導入されている制度である。日本では1957年に準備預金制度に関する法律
と準備預金制度に関する法律施行令
が施行されて準備預金制度が導入された。
短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場が発達し、すべての市中銀行が中央銀行預金を即座に借用できる体制が整っているのなら、理論上は、準備預金制度が不要となる。
バーゼル合意(BIS規制)での金銭債権総額規制が整備され、すべての市中銀行が金銭債権の過剰な増加を押さえ込まれているのなら、準備預金制度で銀行預金総額を規制することで市中銀行の金銭債権の過剰な増加を押さえ込む必要が無くなり、理論上は、準備預金制度が不要となる。
銀行にとっては、負債として発行した銀行預金の総額から法定準備預金額(所要準備額)が決まるので、それを満たすため日銀当座預金を保有することになる。
ある市中銀行があり、銀行預金を100億円だけ負債として創造したとする。その市中銀行の準備率が1%である場合、法定準備預金(所要準備)は日銀当座預金1億円になる。
銀行預金総額×準備率=法定準備預金額(所要準備額)
100億円×0.01=1億円
以上のことは、バーゼル合意(BIS規制)がない時代でも、バーゼル合意(BIS規制)がある時代でも、共通することである。
バーゼル合意(BIS規制)がない時代なら、日銀当座預金の保有額を高めるだけで、負債として発行する銀行預金の総額を高めることができ、信用創造による貸し出しの可能額を増やすことができる。
ある市中銀行があり、日銀当座預金を1億円だけ保有しているとする。その市中銀行の準備率が1%である場合、負債として創造できる銀行預金の最大限度額は100億円になる。ところが日銀当座預金を何らかの方法で増やして2億円を保有して、それをすべて法定準備預金にして、引き続き準備率が1%である場合、負債として創造できる銀行預金の最大限度額は200億円になり、信用創造による貸し出しをさらに100億円増やすことができる。
2億円÷0.01=200億円
銀行が貸し付けると、その瞬間に、銀行の金銭債権と金銭負債(銀行預金)が同時に増える(信用創造)。銀行が貸し付けるというのは、銀行が負債としての銀行預金を増やすということと同じ意味である。
従って、「日銀当座預金を2億円保有していて準備率が1%の銀行は、銀行預金が200億円に膨らむまで貸し付けできる。貸し付けによって到達させることができる銀行預金総額は200億円である」という表現も可能である。
バーゼル合意(BIS規制)がある時代なら、次のようなことになる可能性がある。
ある市中銀行があり、日銀当座預金を1億円だけ保有しているとする。その市中銀行の準備率が1%である場合、負債として創造できる銀行預金の最大限度額は100億円になる。ところが日銀当座預金を何らかの方法で増やして2億円を保有して、それをすべて法定準備預金にして、引き続き準備率が1%である場合、負債として創造できる銀行預金の最大限度額は200億円になり、信用創造による貸し出しをさらに100億円増やすことができる。ただし、バーゼル合意(BIS規制)によって金銭債権の総額の上限が決められていて、すでにその上限近くにまで金銭債権の総額が膨らんでいたので、信用創造による貸し出しを増やすことができず、結局、日銀当座預金を2億円にして銀行預金限度額を200億円にすることを諦めることにした。
法定準備預金額(所要準備額)÷準備率=銀行預金総額 になるとは限らない
2億円÷0.01=200億円 になるとは限らない
バーゼル合意(BIS規制)というのは銀行に対して金銭債権の総量を規制する制度である。日本において初めて導入されたのが1992年度末(1993年3月)であり、比較的に新しい制度である。
バーゼル合意(BIS規制)はただの国際的な合意であって、これによって直接に銀行へ規制を掛けるわけではない。日本においては、銀行法などの法律をバーゼル合意(BIS規制)に適合するように改正して、法律によって銀行に規制を掛けている。
制度の概要は、「国際的に活動する銀行は、リスクアセットを自己資本の12.5倍以下にする。リスクアセットの8%以上の自己資本を持つ必要がある」「国内のみで活動する銀行は、リスクアセットを自己資本の25倍以下にする。リスクアセットの4%以上の自己資本を持つ必要がある」となる。
リスクアセットは英語のRisk-Weighted Assets(RWA)を翻訳した用語である。貸借対照表(バランスシート)の資産の部に着目し、資産の内容を一つ一つ確かめる。リスクがゼロの資産なら0%の数値にして、リスクが小さい資産なら10%とか20%の数値にして、リスクが大きい資産なら75%とか100%の数値にしていく。そうやって得られた数値をすべて合計したものがリスクアセットになる。
日本国債は0%、政府関係機関債は10%、金融機関に対する金銭債権は20%、個人に対する金銭債権は75%、格付け企業に格付けされている事業法人に対する金銭債権は格付けによって20%から150%まで変動、格付け企業に格付けされていない事業法人に対する金銭債権は100%、となっている(参考資料1
、参考資料2
)。
自己資本が10億円の銀行があり、国内のみで活動しているのなら、リスクアセットの上限は250億円となる。その銀行の総資産がすべて日本国債だけなら、総資産の上限が存在しない。その銀行の総資産がすべて日本の政府関係機関債なら、総資産の上限が2500億円になる(2500億円×0.1=250億円 250億円÷0.1=2500億円)。その銀行の総資産がすべて「銀行に対する金銭債権」なら、総資産の上限が1250億円になる(1250億円×0.2=250億円 250億円÷0.2=1250億円)。その銀行の総資産がすべて「個人に対する金銭債権」なら、総資産の上限が333億円になる(333億円×0.75=250億円 250億円÷0.75=333億円)。
銀行の自己資本の額によってリスクアセットの上限が決まるので、言い換えると、銀行の自己資本の額によって銀行の金銭債権の限度額も決まっていく。
各国の中央銀行は、準備率を上げたり下げたりして金融緩和したり金融引締したりすることがある。そういう金融政策を準備率操作という。
2021年現在では、中華人民共和国が準備率操作を行っている。「中国 準備率操作
」で検索するとその手のニュースが多数ヒットする。
かつての日本において準備率操作がしばしば実行された。とくに、1970年代前半の第一次オイルショックのとき、インフレ抑制のため準備率操作が行われた。
ところが、近年の日本において準備率操作を行わなくなってきた。最後に準備率が変更されたのは1991年10月で、それから30年経った2021年10月の時点までずっと変更されていない。
日銀が短期金融市場や長期金融市場で資金供給オペレーションや資金吸収オペレーションといった公開市場操作をすることで、短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場の無担保コール翌日物金利(代表的な短期金利)を操作するという金融政策が主流になっている。
2007年頃の量的金融緩和が行われていない日本において、日銀が金融引き締めの目的で準備率を引き上げていたらどうなっていただろうか。
市中銀行は「超過準備を『日銀当座預金よりも高い利回りの金銭債権』に変換して財テクしよう。できる限り超過準備がゼロに近くなるようにしよう」という方針に基づき、超過準備を国債や「他の市中銀行に対する金銭債権」に変更しているものであり、超過準備が限りなくゼロに近い状態を維持しているのが市中銀行にとってごく普通のことである。
そんな状況の中で、日銀によって準備率を引き上げられて法定準備預金額を増やされたら、市中銀行は次のようなことをする。保有している国債を売って日銀当座預金を増やしたり、短期金融市場のオープン市場の現先市場に参入して保有している国債を売り現先して日銀当座預金を他の市中銀行から入手したりする。
要するに、日銀は、準備率引き上げで市中銀行に「日銀当座預金を周りから吸収する行動」を起こさせているのである。それにより短期金融市場の銀行間取引市場のコール市場で日銀当座預金を欲しがる勢力が強まり、無担保コール翌日物金利が上昇して、短期金利が上がっていく。
日銀が準備率を引き上げて市中銀行に「日銀当座預金を周りから吸収する行動」を起こさせることと、日銀が資金吸収オペレーションをして「日銀当座預金を周りから吸収する行動」をすることは、本質的に同じ行動である。
日本では1957年に準備預金制度に関する法律
や準備預金制度に関する法律施行令
が施行されて準備預金制度が導入された。
対象となるのは銀行[10]と信用金庫(預金残高 1,600億円超の信用金庫のみ)と農林中央金庫である[11]。
日本の準備預金制度は少し複雑な形になっている。
日銀のこのページ
に、準備率が書いてある。一部を転載すると以下のようになる。
| 定期性預金(譲渡性預金を含む) | 準備率 | 区分 |
| 2兆5000億円超 | 1.2% | A |
| 1兆2000億円超~2兆5000億円以下 | 0.9% | B |
| 5000億円超~1兆2000億円以下 | 0.05% | C |
| 500億円超~5000億円以下 | 0.05% | D |
| ~500億円以下 | 0% | E |
日本の銀行が定期性預金だけを3兆円作り出したとする。それに対して必要とされる法定準備預金額はいくらだろうか。
「3兆円×1.2%=360億円、だから360億円」というのは、間違いとなる。正解は、次の通り。
3兆円のうちAに該当するのは5000億円なので、それに対して1.2%が適用される。(3兆円-2兆5000億円)×1.2%=60億円。
残った2兆5000億円の中で、Bに該当するのは1兆3000億円で、それに対して0.9%が適用される。(2兆5000億円-1兆2000億円)×0.9%=117億円。
残った1兆2000億円の中で、Cに該当するのは7000億円で、それに対して0.05%が適用される。(1兆2000億円-5000億円)×0.05%=3億5000万円。
残った5000億円の中で、Dに該当するのは4500億円で、それに対して0.05%が適用される。(5000億円-500億円)×0.05%=2億2500万円。
残った500億円はEに該当し、準備率が適用されない。
60億円+117億円+3億5000万円+2億2500万円=182億7500万円 答えは、182億7500万円となる。
この面倒くさい方式を超過累進制といい、1986年7月から導入され、2020年現在も続いている。
経済学や金融学の教科書では、「1つの銀行につき1つの準備率が適用される」として説明されることが多い。「定期性預金を3兆円持つ銀行の準備率が1.0%、ゆえに法定準備預金額の額は3兆円×1%=300億円」と単純明快に計算できて、初心者に教育するにはその方が分かりやすい。
※この項の資料・・・建部正義『はじめて学ぶ金融論 第2版』52ページ
、全国銀行協会の報告書63~64ページ
、『日本銀行の機能と業務(有斐閣)』日本銀行金融研究所 105ページ
日本の銀行が発行した定期性預金に対して要求される準備預金を算出する表は、次のようになっている(資料
)。
定期性預金とは、定期預金と定期積立の合計である(資料64ページ
)。短期金融市場や長期金融市場で銀行が日銀当座預金を借用するために販売するCD(譲渡性預金)もここに含まれる。
| 定期性預金(譲渡性預金を含む) | 準備率 |
| 2兆5000億円を超える部分にかかる準備率 | 1.2% |
| 1兆2000億円を超えて2兆5000億円以下の部分にかかる準備率 | 0.9% |
| 500億円を超えて1兆2000億円以下の部分にかかる準備率 | 0.05% |
| 500億円以下の部分にかかる準備率 | 0% |
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使って定期性預金に要求される準備預金の額を計算するには、次の数式を使う。
エクセルを使っている人が、A2のセルに「銀行が発行した定期性預金の総額」を入れている場合、それに要求される準備預金の数式は「=MAX(A2-2500000000000,0)*0.012+MIN(MAX(A2-1200000000000,0),1300000000000)*0.009+MIN(MAX(A2-50000000000,0),1150000000000)*0.0005+MIN(A2,50000000000)*0」となり、準備率の数式は「=100*(MAX(A2-2500000000000,0)*0.012+MIN(MAX(A2-1200000000000,0),1300000000000)*0.009+MIN(MAX(A2-50000000000,0),1150000000000)*0.0005+MIN(A2,50000000000)*0)/A2」となる。
オープンオフィスを使っている人が、A2のセルに「銀行が発行した定期性預金の総額」を入れている場合、それに要求される準備預金の数式は「=MAX(A2-2500000000000;0)*0.012+MIN(MAX(A2-1200000000000;0);1300000000000)*0.009+MIN(MAX(A2-50000000000;0);1150000000000)*0.0005+MIN(A2;50000000000)*0」となり、準備率の数式は「=100*(MAX(A2-2500000000000;0)*0.012+MIN(MAX(A2-1200000000000;0);1300000000000)*0.009+MIN(MAX(A2-50000000000;0);1150000000000)*0.0005+MIN(A2;50000000000)*0)/A2」となる。
※MAX関数やMIN関数の数式について、エクセルは「,(カンマ)」を使い、オープンオフィスは「;(セミコロン)」を使っている。両者の違いはそれだけである。
日本の銀行が発行する定期性預金の額とそれに応じて発生する準備率を対応させると次のようになる。
| 定期性預金の総額 | 準備率 |
| 10兆円 | 1.02% |
| 9兆円 | 1.00% |
| 8兆円 | 0.98% |
| 7兆円 | 0.95% |
| 6兆円 | 0.90% |
| 5兆円 | 0.85% |
| 4兆円 | 0.76% |
| 3兆円 | 0.61% |
| 2兆円 | 0.39% |
| 1兆円 | 0.05% |
日本の銀行が発行したその他の預金に対して要求される準備預金を算出する表は、次のようになっている(資料
)。
その他の預金とは、当座預金、普通預金、貯蓄預金、通知預金の合計である(資料64ページ
)。
| その他の預金 | 準備率 |
| 1兆2000億円を超える部分にかかる準備率 | 1.3% |
| 5000億円を超えて1兆2000億円以下の部分にかかる準備率 | 0.8% |
| 500億円を超えて5000億円以下の部分にかかる準備率 | 0.1% |
| 500億円以下の部分にかかる準備率 | 0% |
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使って「その他の預金」に要求される準備預金の額を計算するには、次の数式を使う。
エクセルを使っている人が、A2のセルに「銀行が発行したその他の預金の総額」を入れている場合、それに要求される準備預金の数式は「=MAX(A2-1200000000000,0)*0.013+MIN(MAX(A2-500000000000,0),700000000000)*0.008+MIN(MAX(A2-50000000000,0),450000000000)*0.001+MIN(A2,50000000000)*0」となり、準備率の数式は「=100*(MAX(A2-1200000000000,0)*0.013+MIN(MAX(A2-500000000000,0),700000000000)*0.008+MIN(MAX(A2-50000000000,0),450000000000)*0.001+MIN(A2,50000000000)*0)/A2」となる。
オープンオフィスを使っている人が、A2のセルに「銀行が発行したその他の預金の総額」を入れている場合、それに要求される準備預金の数式は「=MAX(A2-1200000000000;0)*0.013+MIN(MAX(A2-500000000000;0);700000000000)*0.008+MIN(MAX(A2-50000000000;0);450000000000)*0.001+MIN(A2;50000000000)*0」となり、準備率の数式は「=100*(MAX(A2-1200000000000;0)*0.013+MIN(MAX(A2-500000000000;0);700000000000)*0.008+MIN(MAX(A2-50000000000;0);450000000000)*0.001+MIN(A2;50000000000)*0)/A2」となる。
日本の銀行が発行するその他預金の額とそれに応じて発生する準備率を対応させると次のようになる。
| その他預金の総額 | 準備率 |
| 10兆円 | 1.20% |
| 9兆円 | 1.19% |
| 8兆円 | 1.18% |
| 7兆円 | 1.16% |
| 6兆円 | 1.14% |
| 5兆円 | 1.11% |
| 4兆円 | 1.06% |
| 3兆円 | 0.98% |
| 2兆円 | 0.82% |
| 1兆円 | 0.45% |
準備預金制度では、銀行が発行する「日本円建て銀行預金以外の負債」に対しても準備率を掛けて準備預金を要求している。
銀行は、金融債・社債・CPといった債券を発行することがある。そうした債券の総額に準備率0.1%が掛かり、準備預金が算出される。
銀行は、金銭信託(貸付信託を含む)という金融商品を発売している[12]。銀行にとって金銭信託は負債である。金銭信託の元本の総額に準備率0.1%が掛かり、準備預金が算出される。
銀行は、日本に居住していない個人・法人に対して外貨建て預金を提供している。非居住者向けの外貨債務の総額に準備率0.15%が掛かり、準備預金が算出される。
銀行は、日本に居住している個人・法人に対して外貨建て預金を提供している。居住者向けの外貨債務のうち定期性預金の総額に準備率0.2%が掛かり、準備預金が算出される。また居住者向けの外貨債務のうち「その他の預金(普通預金や当座預金など)」の総額に準備率0.25%が掛かり、準備預金が算出される。
そのほか銀行は、「非居住者円勘定にかかる債務の残高」や、「特別国際金融取引勘定からその他の勘定への資金の振替にかかる金額の残高」にも0.15%の準備率を掛けられ、準備預金を要求される。
以上のことをまとめると次のようになる。
| 対象となる銀行の負債 | 準備率 |
| 金融債・社債・CPといった債券 | 0.10% |
| 金銭信託(貸付信託を含む)の元本 | 0.10% |
| 日本に居住していない個人・法人に提供する外貨建て預金 | 0.15% |
| 日本に居住している個人・法人に提供する外貨建て預金の定期性預金 | 0.20% |
| 日本に居住している個人・法人に提供する外貨建て預金の「その他預金」 | 0.25% |
| 非居住者円勘定にかかる債務の残高 | 0.15% |
| 特別国際金融取引勘定からその他の勘定への資金の振替にかかる金額の残高 | 0.15% |
ある月の1日から月末まで、営業日なら終業時における「準備率が適用される負債に対して準備率を掛けて得られた数値の合計値」を記録し、休業日なら「休業日に入る前の最終営業日」の終業時における「準備率が適用される負債に対して準備率を掛けて得られた数値の合計値」を記録する。
月末を過ぎたら、それぞれの日における「準備率が適用される負債に対して準備率を掛けて得られた数値の合計値」を合計してから日数で割って平均値を出す。この平均値が実際の法定準備預金額になり、その月の16日から翌月15日までの積み期間において銀行に課せられる。
※この項の資料・・・日本銀行の機能と業務(有斐閣)日本銀行金融研究所 104ページ
、法令解説 準備預金制度に関する法律および準備預金制度に関する法律施行令
ある月の16日から翌月15日までの1ヶ月間を積み期間という。
この積み期間の各日において、営業日なら終業時における日銀当座預金残高を記録し、休業日なら「休業日に入る前の最終営業日」の終業時における日銀当座預金残高を記録する[13]。
積み期間の末日が終わったら、それぞれの日における日銀当座預金残高を合計してから日数で割って平均値を出す。
この平均値が「ある月の1日から月末までに算出された法定準備預金額(所要準備額)」以上であれば準備預金制度に適合しているとされる。
ある月があって、1日から月末までの期間で銀行の預金など(負債)を監視して法定準備預金額(所要準備額)を決め、16日から翌月15日までの期間で銀行の日銀当座預金(資産)の額を規制する。これを部分的後積み方式という[14]。
ある市中銀行の3月1日から4月15日までを表にすると次のようになる。
| 法定準備預金額を算出する期間 |
積み期間 |
| 日銀が銀行の預金など(負債)を監視する期間 | 日銀が銀行の日銀当座預金(資産)を監視する期間 |
| 3月1日 | |
| 3月16日 | 3月16日 |
| 3月31日 | 3月31日 |
| 4月15日 |
積み期間が始まる3月16日の時点ではまだ法定準備預金額が確定していない。ゆえに積み期間の前半は「たぶん法定準備預金額はこれぐらいになるだろう」と予測しながら日銀当座預金を確保することになる。
積み期間の中盤である3月31日を終えてやっと法定準備預金額が決定する。
積み期間の前半で多めの日銀当座預金残高を繰り返してきた市中銀行は、積み期間の後半で少なめの日銀当座預金残高を続けても平均値が法定準備預金額を上回ることになる。「積み期間の前半で短期金利が低くて借りやすく、積み期間の後半で短期金利が上がって借りにくくなる」と予測する市中銀行は、この状態を目指すことになる[15]。
積み期間の前半で少なめの日銀当座預金残高を繰り返してきた市中銀行は、積み期間の後半で多めの日銀当座預金残高を続けて平均値を上げないといけない。「積み期間の前半で短期金利が高くて借りにくく、積み期間の後半で短期金利が下がって借りやすくなる」と予測する市中銀行は、この状態を目指すことになる。
ある市中銀行の「積み期間の各日の終業時における日銀当座預金残高の平均値」が法定準備預金額(所要準備額)を下回ったら、下回った分の金額に「基準貸付利率(%)+3.75(%)で得られる年利(%)を1日あたり金利(%)に変換した利率」を掛けて金額を算出し、その金額の過怠金を日本銀行を通じて政府に納付しなければならない[16]。
「ある31日間の積み期間における日銀当座預金残高の平均値」が法定準備預金額(所要準備額)を1億円下回っていたとする。このことを「1億円が不足する現象が31回発生した」と解釈する[17]。
基準貸付利率が年利0.5%だとしたら、不足部分に掛けられる利率を年利で計算すると0.5+3.75で4.25%になり、4.25%を1日あたり金利に変換すると4.25÷365で0.011643836%になる。
「1億円が不足する現象が31回発生した」と解釈するのなら、過怠金の金額は、1億円の0.011643836%を31倍したものであり、3609万5890円になる。




』教えて!にちぎん。
』でもそのように解説されている。掲示板
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最終更新:2025/12/16(火) 13:00
最終更新:2025/12/16(火) 12:00
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